ふたりとふたり


<オープニング>


「綺麗だね……」
 学校の屋上にあがったヒトミは、一面に広がる夜景に歓声をあげる。
「花火までまだ時間があるな……少し早すぎたか」
 ヒトミの後ろでは幼馴染のタクヤが腕時計を眺め、夜の空を見上げた。
「ううん……この街とも、明日でお別れ……だしね」
 ヒトミはタクヤに向けて、はにかむように笑うと、
 生まれた時からずっと住んでいた街を名残り惜しむかのように眺める。
「……たまにメール位はいれてやる」
 強気な言葉とは裏腹にタクヤは俯き、その顔にヒトミも寂しさを覚えてしまう。
「手、繋いでもいい?」
「何言ってやがる! ガキじゃあるまいし」
 顔を赤くしてそむけたタクヤに、ヒトミは無邪気にその顔を覗き込む。
「花火がいきなり上がったら、私、腰を抜かしちゃうよー? 怪我するかも」
「……ったく、しゃあねえな」
 ぶっきらぼうにタクヤが差し出した左手をヒトミの優しい右手が握り返す。
(「タっちゃんの手、暖かいな」)
(「……ヒトミの手、白くて柔らかいな」)
 小さい頃からこの手に私は、俺は何度も助けられ、励まされてきた。
 離れてしまえば、この手を握る事もできなくなってしまうだろう。
 胸の内に寂しさが広がった2人は、共に言葉が出なくなってしまった。
『仲がいいね……』
「「え?」」
 か細く聞こえた声に、2人は周りを見渡すが、屋上にはヒトミとタクヤしかいない。
 それなのに。
『私達の方が仲良しよ……』
 こんどははっきりと声が聞こえた。
 タクヤが聞こえたのは左耳から。
 ヒトミが聞こえたのは右耳からで。

 ……チャリ

 鎖が引きずる音が鳴る。

 ぎこちなく振り返った2人のすぐ目の前に、
 血まみれの服を着た同じ顔の少女が2人立っていた。
 
「……みんな、こんばんわだ」
 武羽・和史(小学生運命予報士・bn0099)は、真顔で能力者達を見渡すと、
 淡々と説明を始める。
「……とある学校の屋上に現れた双子の地縛霊のテリトリー内に、中学生が2人入り込んでしまったんだ。今から急げば、2人が地縛霊に遭遇する直前に間に合うと思う」
「肝試しにでもしに来ていたのだろうか」
 能力者の言葉に、和史は黙って首を横に振る。
「……いや、2人が屋上に来たのは、夜景と花火大会の打ち上げ花火を見るためなんだ」
 無愛想なタクヤと、明るく優しいヒトミは性格は違えど仲の良い幼馴染みだった。
 しかし親の都合でヒトミが転校する事になり、タクヤはせめて最後の思い出にと、
 2人が生まれ育った街がよく見える屋上で、夜景と花火を見る計画を立てた。
「……大切な人に楽しい思い出を作ってあげたい。その思いがゴーストによって砕かれようとしている」
 和史はキャスケット帽の鍔を少しだけ下げる。
「……屋上へは校舎の外から屋上まで行ける非常階段があるのでそれを使ってくれ。屋上には転倒防止柵が備えてあって、戦うのに十分な広さもある。戦闘中は2人以外に人はいないし来ないので、2人を守る事と戦う事だけに集中して欲しい」
「2人を屋上から避難させる事はできないか?」
 能力者の問いに和史は首を横に振る。
「……地縛霊達が目的を果たすか、地縛霊達を倒さないかぎり屋上からは出られない」
 地縛霊の目的は仲が良い2人組を殺す事……それは2人の死を意味する。
「……地縛霊は2体。片方が範囲系の眠りを誘う歌声を、もう片方が長剣を振り回すように連携を仕掛けて攻撃をしてくる。生前何があったのかは知らないけれど、地縛霊達は仲がいい2人組を集中的に狙ってくる癖があるみたいだな」
 そこを上手く狙う事ができれば、2人をより安全に守れるだろう。
「……ヒトミサンとタクヤサンの仲を超えるように見せるのならば、カップルに扮するのが一番かもしれないけれど」
 クスっと笑った和史に、能力者達は困ったように互いの顔を見合わせた。



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参加者
幸坂・太陽(いつも心に太陽を・b01396)
九櫛・宿禰(十六夜白光・b03017)
明鏡・止水(高校生白燐蟲使い・b06966)
ジャック・ヴァレンタイン(ブラックストライカー・b19605)
迎居・睦(絵に描いたような平凡・b20910)
秋月・陸奥(闇の福音・b24571)
アルティ・スフォルツァート(聖寂なる雷光の使い・b25606)
皇・紫音(ハイドロジェナスプロミネンス・b26234)



<リプレイ>

●仲良し2人は危険な香り
「たこ焼きを買いたいなんて、言ってられませんね」
 仲間達と共に屋上への階段を駆け上がっていた明鏡・止水(高校生白燐蟲使い・b06966)は、
 八重と共に少々の焦りを感じつつも、屋上への扉を抜けた。
「「!!!」」
 能力者達が目にしたのは、突然現れた双子の地縛霊とその前に立ち竦む2人であった。
 一般人2人よりも先に屋上に上がり、地縛霊を呼び寄せると考えていた者が何人かいたが、
 今回は『急げば2人が双子の地縛霊と遭遇する直前に間に合う』というものだ。
 先回りをする事は困難な上に、何処かで足を止める事は2人の死を意味していた事に気付く。
「せっかくの思い出作りを邪魔するなんて許せないよね!」
 大事な人との大事な思い出を壊させる訳には行かない、
 皇・紫音(ハイドロジェナスプロミネンス・b26234)は長剣を持つ地縛霊に向けて、
 牽制するようにして2丁拳銃から弾丸を放つ。
「まあ、こっちはこっちの仕事を確実にこなすだけだ」
 秋月・陸奥(闇の福音・b24571)は周囲の状況を把握しやすいようにランプを付けた。
 恐怖で固まったヒトミを庇うかのようにタクヤは彼女の前に立っていたが、
 突然起きた状況に為す術無く立ち尽くしたままだ。
 このままでは2人が狙われてしまう。
「ジャッククン、行くわよ!」
「仲良いのは結構だが、俺とマコトの仲は無敵だぜ」
 迎居・睦(絵に描いたような平凡・b20910)のヒュプノヴォイスがタクヤとヒトミを
 眠りへと誘うと、ジャック・ヴァレンタイン(ブラックストライカー・b19605)が
 俺達の仲の良さを見せつけてやるとばかりに睦の隣に立つ。
「……」
 期待で少し赤面してしまう九櫛・宿禰(十六夜白光・b03017)。
「……」
 ごく普通に眺めるアルティ・スフォルツァート(聖寂なる雷光の使い・b25606)。
「いいな〜……」
 ちょっと羨望の目で二人を見つめる紫音。
「…仲良しカポー二人よりも仲良し、ねぇ…」
 むしろ、どうでもいい陸奥。
 しかし……
「……で、何をすればいいんだ?」
「「えぇ!!!」」
 ジャックの問いに、何人かが突っ込みに似た悲鳴の声を上げる。
「え……っと、思いっきり熱々なところを見せつけてやればいいと思うけど」
 睦も指を顎に当てて、うーんと悩んでいたり。
 囮2人の役目はタクヤとヒトミよりも仲が良い事を見せつけて地縛霊の攻撃を
 惹き付ける事だったが、2人ともどうやって見せつけるかは考えてなかったらしい。
『私達の方がずっといい漫才ができるわ!』
『姉さん、それ違うから』
 地縛霊2人も思わず乗せられていたりする。
「剣が姉で、歌が妹……ね。……まぁ……どの道、両方排除するのだけど……」
 流れに乗る事なく冷静に分析したアルティは静かに獲物を構えると、
 光輝く4つのコアを発動させ、己の能力を高める。
「この2人は…生前、漫才をしていたのだろうか」
 少女ながらも長剣を振い、眠りの歌を使う双子の少女達、そんな彼女達が死に至った理由は何だったのだろうかと、幸坂・太陽(いつも心に太陽を・b01396)は思っていたものだが、何処か納得したように言葉を続けた。
「成る程、漫才師ならばその特技も何となく理解が……」
『『漫才師じゃ、ないわよっ!』』
 どうやら違ったらしい。
「お、お2人の方は私に任せてください」
「ポ、ポメも2人を守ってね」
 その隙に美月は眠りに落ちたタクヤとヒトミの元へ駆け寄り、スーパーモーラットのポメも
 主人である八重の命令に耳を動かすと、跳ねるようにして美月の後を追った。
「ジャッククン、こうなったら思いっきり熱々なところを見せてやりましょう」
 初デートの前座は色気も何もあったものが無いものとなりそうであったが、
 それでも睦は恋人と一緒に戦える事に嬉しさを感じて笑みを浮かべると、
 ジャックの首に両の腕を巻き付ける。
「マコト?」
 睦は不敵に笑うと、えいっと飛びつくように抱きついた。

●妹は紡ぐように歌を歌う
『仲の良い2人は、私の歌で眠りへ誘ってあげる』
『そしてあなた達の仲を、私の剣で断ってあげる』
 囮2人の行動に刺激された2人は敵意を持って声を揃えた。
『『永遠にね』』
 妹は両手を大きく広げると、囮を中心にして眠りの歌声を解き放つ。
 続けざまに長剣を握りしめた姉が、眠りに落ちたジャックに一撃を振った。
「大丈夫ですか、皆さん! しっかり!」
 眠りを警戒して後方に待機していた宿禰が、赦しの舞を舞う。
 神聖な舞はジャックの傷を癒し、眠りに落ちた仲間達の意識を取り戻していく。
「自身の攻撃が敵に届く事は、自分にも攻撃が届くという事だな」
 眠りから覚めた陸奥も、宿禰の舞で目覚めなかった仲間に向けて赦しの舞を舞った。
「ちょっと黙っててくれるかな?」
 紫音のダブルトリガー「ルーチ&オンブラ」から放たれた炎の蔦が唸りをあげ、
 長剣を持つ姉へと絡み付こうとするが、姉はそれを身をよじってかわす。
「剣の方は私が抑えます」
 太陽は仲間達が妹の方へと集中攻撃をかけられやすいように、姉の気を惹くようにして
 積極的に攻撃を仕掛けるが、姉が狙うのは囮である事に変わりは無い。
 前衛が複数いれば足止めになったのだろうが、1人ではそれもままならない。
(「私達だけで守れるのでしょうか……」)
 それとなく頼みますと太陽に言われたものの、一般人2人の壁は美月とポメのみだ。
 彼女1人では中学生2人を運ぶのも、安全な場所へ避難させるのも難しい。
 囮役が距離を離すように誘導していたならばその心配は無かったとは思うが、
 2人とも遠距離アビリティで積極的に妹の方に攻撃を仕掛けていたため、
 美月含めた一般人2人は今も地縛霊達の攻撃範囲内に入ったままだ。
 そして、悪い事は重なった。
「うぅ……」
「うーん」
 なんと揃いも揃って目が覚めてしまったらしい。
(「どうしましょう……」)
 たとえ一般人といえども眠りの効果は長く続くものではない。
 声を出して皆に知らせるべきだろうか、しかし地縛霊の注意を惹き付ける恐れもある。
 目覚めてしまった2人に美月は迷う。
「もう少し、眠っていてくださいね」
 いざという時には2人の盾になろうと近くにいた止水が異変に気が付くと、
 2人に向けてヒュプノヴォイスを放つ。
「別れの日に嫌な思いや奇妙な記憶があるのは気持ちの良いものではないですから」
 少しでも心の中に残るモノならば、良い思い出として残って欲しい。
 そのためには今は夢の中にいて欲しいと止水は歌を紡ぎ、2人を再び眠りへと誘った。
「目障りよ……あなた……」
『きゃあああ!!』
 アルティが無愛想のまま放った雷の弾丸が妹の体を貫くが、
 妹は残った力を振り絞るように眠りの歌を放つ。
 その歌声に次々と仲間達が倒れた。
『今すぐ断ってあげるわ』
 眠りに落ちた太陽の横を難なくすり抜けた姉は、睦に向けて長剣を振り下ろす。
 しかしその凶刃が睦に届く事は無かった。
「黙っててよ!」
 長剣から走った光を、囮の近くまで間合いを詰めていた紫音の拳銃が受け止め、
 その光を跳ね上げる。キィンと甲高い音が響いた時には、紫音は跳ね上げた力を
 勢いに乗せたバックステップを取り、剣の勢いを殺した。
「まだ、眠る時間じゃねえよ」
 陸奥は仄かに青白く光る飾り気のない片刃の刀を手に優雅に舞う。
 その聖なる舞が仲間達を眠りから解き放ち、あるいは傷を癒すと、
 ブラストヴォイスが、雷の魔弾が、弾丸が、次々と畳み掛けるようにして放たれた。
「貴女方が何故カップルを狙うか知りませんが…もう止めにしましょう」
 中学生の2人には良い思い出を、そして貴女方には安らかな眠りを……。
 宿禰の思いが込められた破魔矢が妹の胸を真っすぐに貫いた。
『ねえ……さ…ん』
 か細い声をあげた妹は、そのままコンクリートの地面へと打ち崩れる。
 彼女が再び歌を紡ぐ事は、もう無かった。

●姉は断つように刃を振う
『よくも妹を……』
 眠りの歌を紡ぐ片割れはもういない。
 刃を振う姉は深い憎悪を込めた目で能力者達を一瞥した。
『ゆるさない!』
 妹無くしてそれでも囮を執拗に狙うのは、仲が良い者の命を断とうとしたものの、
 逆に断たれた怒りなのだろうか……、姉は容赦なく剣を振る。
「花火大会の前座だ、派手に暴れてやろうぜ!」
「私とジャッククンの仲はこんなことじゃ引き裂けないわよ……!」
 ジャックは無骨な長剣で攻撃を受け止めたが、傷を負い続けた体は限界に近い。
 睦は自身が呟いた恥ずかしい台詞で顔を赤くしつつも、己の真紅のチャイナドレスを
 さらに紅く染めようとする恋人の傷を白燐蟲の光で癒した。
「皆さん、頑張ってください!」
 宿禰の赦しの舞が囮2人を中心にして、仲間達の傷を癒していく。
 囮が倒れずにいたのは、宿禰と陸奥の回復が滞る事無く届いていたのと、
 眠りの歌を紡ぐ妹を早めに倒した事が、少なからず余裕を与えていたのだろう。
「さっさと成仏して貰おうか。今を生きる人間の絆を守る為にもな」
 双子が偽りの生を為すのは今を生きる者だけで無く、双子にも不幸でしかない。
 太陽は弧をかくように武術短棍を振り下ろす。
『っつ!』
 その一撃に呻きをあげ、守りが疎かになった姉の隙を逃がす能力者達では無かった。
「いい加減眠ってよ……!」
 紫音の2丁拳銃から噴いた無数の弾丸が華奢な体を打ち砕く。
「八重、行きますよ」
「了解! 止水兄ぃ」
 止水が一気に間合いを詰めて蟲籠を振うと、八重もガンナイフのトリガーを引く。
 義兄弟の息が合った攻撃を姉は辛うじてガードしたが、その背をアルティが狙う。
「……いい加減消えなさい……」
 魔弾の射手で強化されたアルティの「ミサ・ジ・レクイエム・ペル・シュジャイ」から
 放たれた雷の魔弾がその背を直撃し、姉は動きを止めて片膝をついた。
「仲良し、ってんなら、二人一緒に眠らせてやるよ」
 これで終わらせる、そしてその為に……全力を尽くす!
 陸奥の手から放たれた破魔矢が姉の胸を貫く。
 奇しくも妹を倒したのも破魔矢だった事に陸奥が気が付いた時には、
 すでに姉は剣を振るう事は無く。
「人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死んでしまえ〜〜!……って死んでるからゴーストなんだっけ……」
 長剣の地縛霊が崩れ、そして消えた場所を紫音は見つめる。
 2人を守り、2人を救う戦いは、終わった。

 美月が未だ眠る2人の中学生の無事を皆に知らせると、誰もが安堵の溜息を吐く。
「お二人を起こしましょうか」
 止水はヒトミを、ジャックは睦と共にタクヤの肩を揺する。
「おい、大丈夫か? 花火見物の為に来てみたらお前達が倒れててビックリしたぞ」
「……うぅ」
「あ、あれ? あの子達は?」
「寝てるみたいだったけど、こんなとこで寝ると蚊の餌になる挙句に風邪ひくぞ。気を付けろよ」
 何事も無く振る舞うジャックに、タクヤとヒトミは落ち着きを取り戻していくが、
 ヒトミが突然、「あっ!」と、大きな声をあげた。
「どうした?」
「時間よ、時間! 今何時?」
 ヒトミがタクヤの左手を掴み、その腕に巻かれた時計を見たその瞬間、
 
 ヒュゥゥーーードドドン!!!
 静寂に包まれていた空に、大輪の華が咲いた。

●絆
 漆黒のベールに覆われた夜空に、色とりどりの花火が満開に咲きだすと、
 その美しさと迫力に大きな歓声が沸き起こる。
「楽しいですか?」
「花火……とても奇麗です」
 今年、都会に出て来たばかりの美月にとっては、屋上から眺める都会の町並みも、
 夜空に満開に咲く花火も宝石のように美しくて奇麗で楽しくてたまらない。
 色とりどりの華を掴むように手を伸ばし、背伸びをする美月の姿に太陽は微笑んだ。
「依頼のついでにデートって言うのも良いだろ」
 2人は囮の疲れを見せる事なく、次々と咲く花火の下で初デートを堪能していた。
 夜景が奇麗に見えるのも、花火が美しく見えるのも、疲れを感じないのも、
 それは傍らに愛しい人がいるからなのかもしれない。
「…好きよ、ジャッククン」
 睦は己の右腕をジャックの左腕に絡ませると、そっと寄り添った。
「花火……奇麗ですね」
 止水と八重は、ポメが一般人2人に見えないようにと2人から距離を置いた位置で
 静かに花火を楽しんでいた。
「ポメも楽しい?」
 八重の腕の中で花火を見上げていたスーパーモーラットのポメは主の声に
 可愛らしく首を傾げる。その姿に止水は微笑みながらその頭を優しく撫でた。
「花火…綺麗ですね。…僕も特別な誰かと見たかったです」
 ふと周りを見渡してしまった宿禰は、独り身の狭さと重さに耐えきれずに
 しょんぼりと肩を落とした。

 花火大会もフィナーレを迎えたのだろう、最後を飾るかのようにして
 沢山の華という華が夜空に咲き乱れる。
(「終わったら、もう一緒にいる事もなくなる……」)
 空に広がる華やかな光とは対象に、ヒトミの胸に広がるのは寂しさだ。
「ヒトミ……これ、やるよ」
 ずっと黙っていたタクヤだったが、腕から時計を外すと、ヒトミに差し出す。
 年期が入ってはいるが、ずっと大事に使われていたのだろう、そんな時計だった。
「……壊したら、承知しないからな」
 それは、困ったら何時でも連絡をしろという意味と、
 そして、何時か返せよという2つの意味を込めて……。
「ありがとう……」
 確かな絆を胸に抱き、腕に絡めたヒトミは満面の笑みを浮かべる。
 離れても2人の絆は消える事は無い……これからも。

 楽しそうに花火を見上げる2人をアルティと紫音、陸奥は静かに見守っていた。
 もう大丈夫だと確信した3人は邪魔にならないように、そっと扉の方に向かって歩き出す。
「私にもいつかできるのかな〜……?」
 2人の仲睦まじさに少し照れたのか、紫音は赤くなった頬を掻いて苦笑する。
「後はまぁ…野となれ山となれ、だ」
 人の色恋沙汰や事情に口を挟むつもりは無い。
 陸奥は口を閉ざすと、花火を眺める者達の邪魔をしないように静かに足を早める。
「……これで終わりね……」
 地縛霊を倒し、2人を救い、2人の思い出を守った。
 これ以上、自分達が関わる事は無いだろう。
 ……だけど。
「……お幸せに……」
 アルティは足を止めると、2人の方へ振り向いて小さく呟く。
 そして、何事もなかったかのように、静かにその場を立ち去った。


マスター:御剣鋼 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2007/08/22
得票数:笑える3  ハートフル4  ロマンティック3 
冒険結果:成功!
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