季節外れのFREEZING


<オープニング>



 運命予報士から事件の説明をしたいからと、集合場所に指定されたのはなぜか屋上だった。
 それも、一番太陽が高く昇り一番気温が高い時間にだ。
「暑つぃ……俺らを焼き殺す気か」
 無駄だとは理解りつつも手にした下敷きで仰ぎながら、ウクバ・スハイル(高校生月のエアライダー・bn0093)は雲一つ無い空を見上げ呟く。
 うだるような暑さに集まっていた能力者達も各々体感温度を下げようと努力していたが余り効果がない。
「うふふ、そんな暑がりの皆さんに朗報がありますのよ」
 皆と同じく暑いはずなのに、汗一つ流さず笑顔の運命予報士の手には一枚の印刷物が握られていた。
「つい最近、ある地方の展示施設にリビングデッドが住みついてしまったのです。このままだと、罪のない一般の方々が襲われ命を落とす危険性がありますわ。そこで皆さんにこれらの退治を依頼したいのです」
 予報士は手に持っていたパンフレットを皆に見えるように開くと、涼しい表情で説明を続けた。
「灼熱のコンクリートジャングルから抜け出して、白く美しい銀世界で皆さんの力を存分に奮って来てくださいね」
 その事の何処が朗報なのかと能力者達は首をかしげたが、パンフレットの涼しいの言葉に気が付き予報士の手からパンフレットを取り上げた。
 奪われたことは気にせずに彼女は言葉を続ける。
「氷で出来た滑り台、ブランコなどがある公園や…カマクラ体験コーナー、バナナで釘が打てたりと面白そうです」
「……なんで北極体験館にマンモスの模型を展示してるんや」
「あら、原始人の模型もありますわ。きっと極寒の寒さを色んな角度から表現して皆さんに知ってもらいたいのでしょうね」
 パンフレットを見ていた能力者達からの質問に、予報士はすぐに答えるがどこかずれている。
「……なんで館内が室温マイナス15度に設定されているんや」
「北極体験館ですもの、寧ろまだ暖かいかと思いますわ。入館時、希望者には防寒着は貸し出されるので冷え性の方は心配ありませんわ。でも、皆さんはとても暑がっていたので着なくても大丈夫ですわね」
 笑顔で答える予報士に、皆は視線を向けたものの大きく肩を落とすと息を吐いた。
「まあええわ…それで、こんな場所に住み着いたリビングデッドの説明をしてくれ」
 ウクバの言葉に頷くと予報士は、ポケットからメモを取り出した。
「リビングデッドが住み着いている場所は、マイナス50度体験ボックスの部屋です。そこには先程説明した原始人の模型が数対展示されているんですが、どうやらその原始人の格好をしてその模型に成り済まし獲物を狙っているようですわ。勿論、武器は石斧です。投げてよし、撃ってよし……以外に万能な武器になりそうですね」
 説明を受ける能力者達は突っ込みを入れたいという衝動に駆られたが、先程の会話の内容を思い出し黙っている。
「そして、一緒に現れる援護ゴーストですが……クリオネが現れますわ」
「……クリオネ?」
「はい、皆さんもテレビで見たことがあると思いますが…ひらひらしたアレです。泳いでいる姿はかわいいですよね。因みに現れるクリオネは全長2mで1体現れます……」
「……?!」
 その説明に能力者達は息を飲む、だが予報士はにっこりと笑い言葉を続けた。
「……が、床に寝てただ両手のヒラを動かしているだけなので問題ないと思いますわ。まな板の上の魚ならぬクリオネですわね」
 これが水中であればとても大変でしたけど、と予報士は少し眉を顰めて付け加えた。
 心配するところはそこじゃないだろうと皆は思ったが、そのまま聞き流す。
「これらのリビングデッドには特殊能力はなく皆さんであれば問題なく倒せると思いますわ。展示コーナーを回るついでにさくさくっと天誅しちゃってくださいませ。では、お気をつけて涼しんできてくださいね」

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参加者
風見・玲樹(スーパー痛快ぼっちゃま・b00256)
栗夢乃・せら(秘密基地のボス・b02620)
久澄・綾(スカーレット・b04694)
多々羅・瞳(蹈鞴姫・b05660)
綾瀬・律(日日是事無・b18293)
真田・英雄(高校生白燐蟲使い・b26723)
石田・三成(大一大万大吉・b27676)
鬼無瀬・織葉(レインドロップ・b28825)
NPC:ウクバ・スハイル(高校生月のエアライダー・bn0093)




<リプレイ>


「暑い日が続いてるから、こういう依頼はちょっとうれしいね♪」
 順番に受付を済ませた石田・三成(大一大万大吉・b27676)は笑顔で北極体験館の建物を見上げた。他の仲間達も同じ意見なのだろう、皆も同意のそぶりを見せる。
「みんな受け付け済んだ?それじゃ、出発しま〜す」
 ライオンの着ぐるみに身を包んだ真田・英雄(高校生白燐蟲使い・b26723)は、夏休み体験ツアーと書かれた手作りの旗を軽く振りガイド役として皆の先頭に立った。受付に座る年配の女性達も、着ぐるみガイドの後についていく学生達を笑って見送ってくれた。
 建物入り口に入ると、この先の部屋から冷気が流れてきているのだろう足元からヒヤリとした風が流れてきている。横手に綺麗に並べてあった防寒着のサイズを確認し、其々気に入った色や柄を手にとっていた。
「暑さにぐったりしていたから、涼しいとこでのお仕事って聞いて…こっそり楽しみにし てたんだけど」
 綾瀬・律(日日是事無・b18293)が防寒着を着ながら楽しそうに呟いていたが、室温-15度に設定されている展示・体験スペースに一歩足を踏み入れると、すぐに小声で訂正する。
「…うん、確かに気温は低い、低いんだけど…マイナス15度は低すぎだね…」
「そうね…まさに、外とは別世界って感じね」
 白い息を吐き冷静な感想を述べる鬼無瀬・織葉(レインドロップ・b28825)が、物珍しげに辺りを見渡していた。能力者達を最初に出迎えたのは、氷で出来た彫刻のオブジェだった…それもまったく統一感のない…
「これって確か有名なタワーじゃねぇ?こっちは……どっかの写真でみたことある城だよな!」
 目を輝かせながら栗夢乃・せら(秘密基地のボス・b02620)は、並ぶオブジェ一つ一つを見ては声を上げていた。そして、また何かに興味を引かれるとぱたぱたと足音を立てて声を上げている。
 そして、同じようにはしゃいでいるのは風見・玲樹(スーパー痛快ぼっちゃま・b00256)だった。
「こっちは、なんか動物の彫刻だよ!!…わぁ、ペンギンだ。可愛いな」
 皆が物珍しげにオブジェを見て回る中、多々羅・瞳(蹈鞴姫・b05660)は展示スペースの案内板を見つけると例の体験ボックスの場所を確認していた。
「特殊環境下での作戦、零下50℃の決戦になります。長期戦はこちらに不利、超短期決戦で臨まなくてはいけません…」
 そう言いながら厳しい表情で、自分の手の中にある白いモノを見下ろした。
「……よし、いい?暑苦しい真っ赤なんだからちゃんと役に立つようにがんばって頂戴ね」
 皆から少し離れた場所にシャーマンズゴースト・フレイムを呼び出すと久澄・綾(スカーレット・b04694)は、使役ゴーストへと言い聞かせた。そして出現を横で待っていた英雄は、自分が持つ旗と同じものをシャーマンズゴースト・フレイムへと手渡し嬉しそうに声をかける。
「はい、ガイド用の旗だよ。一緒にガイド頑張ろうね」
 手渡された旗を見ていたシャーマンズゴースト・フレイムだったが、英雄の様子を真似て旗を振りだした。その横では、感涙しながらシャーマンズゴースト・フレイムを見て声をあげているウクバ・スハイル(高校生月のエアライダー・bn0093)が居た。
「……可愛ええなぁ」
 必要以上に近づくウクバにシャーマンズゴースト・フレイムは、手にした旗を振って不快感を示していた。
「涼みたいのもあるけれど…とりあえずは敵を倒すことに集中しなくては、ね」
 一通りこの展示スペースを見学し終えた能力者達は、瞳が見つけた案内板の前で再度作戦の確認をする。次の部屋へと向かう通路から例の体験ボックスへと向かうことが出来ることが分かると、織葉の呟きに皆頷いた。
 マイナス50度体験ボックスの入り口の扉に窓は無く、中からの冷気が漏れないよう分厚く造られていた。
 まずは、連絡役が先行しその後囮役の…題して『見学にきた小学生と保護者』が入る。
「まずは僕たちだね、しゅぱ〜つ」 
「それじゃ。私が扉を開けるまで待っててね、みんな」
 英雄、シャーマンズゴースト・フレイムを先頭に綾と……巨大クリオネが両ヒレを無駄のない動きで水中を泳ぐかの様に動かしながら凍るような寒さの部屋へと入っていった。
「多々羅さんのクリオネ、とっても本物っぽかったよね」
「そうだね〜、ヒレの動きなんかもう泳いでいるみたいだったよね」
 後発組の律と三成はこれならリビングデッドもきっと騙されるね、と笑顔で先発組を見送った。


 連絡組が入室後、暫らくしてドアが再度開くと体験ボックス内が騒がしくなった。
「ここが北極体験コーナーかぁ!……ここまで寒いと、もう寒さを通り越して、寒さが痛い!」
 すこし大げさに声をあげるのは『保護者役』の玲樹。そして、その周りではしゃいでいるのは『小学生役』のせらだ。先に入室した連絡役の3人と使役ゴーストは、入り口付近で各自その場に溶け込んでいた……少なくとも本人達は。
「れいにーちゃん、あっち行ってみようぜ!!」
 氷河期時代をイメージしてあろう、氷の壁に飽きた様子を見せ奥の展示スペースを指差しせらは声をあげ走り出した。彼の指差す方向には、数体の原始人模型と何やら毛に覆われた見たことも無い怪しい生物との戦闘をイメージした配置になっている。
「あんまり走ると滑って転んじゃうよ」
「ほら、大丈夫だろ。はやく、はやく」
 心配気な『保護者』の言葉に、せらは展示コーナーの前で振り返り手を振り返すと笑って見せた。そんな彼を見て終始笑顔だった玲樹の表情が、突然驚きに変わり声を上げる。
「せらさんっ、後ろ!!」
 その台詞にせらが反射的に振り返ると、彼の瞳に映ったのは今にも自分へと飛び掛らんばかり姿勢を低くし自分を睨みつける原始人だった。

 部屋の外で待っている4人は開けば直ぐに飛び込めるように気を抜かず、じっと扉を見つめていた。皆の視線が集まる中、鈍い金属音をたてて扉が開くと笛の音と共に綾が顔を出す。
 そしてすぐさま扉から中に雪崩れ込むと、三成は怪我人が居ないか確認する。
「皆さん大丈夫ですか?傷ついていたら回復を……」
 奥では、リビングデッド原始人へと詠唱兵器を構え対峙している仲間が確認できたが……入り口の左右の隅では巨大クリオネが二匹同じ動きで床の上で動いていた。
 待機組と連絡組は一瞬二つを交互に見比べながら首を捻る。
「……えっと、このクリオネはどっちが瞳かしら?」
「そうですね、動きがどちらとも滑らかで違いがわかりませんね」
 織葉の言葉に律も頷いて、もう一度見比べるが首をかしげるばかりだ。
「っていうか、何時の間に現れたの?扉開けるまでは居なかったのに」
 クリオネをみながら仲良く首を捻る仲間に、英雄は声をかけた。
「あの……あっちを早く退治しないと」
『あっ……!!』
 その言葉に片方がガバッっと音を立てて起き上がると、中から瞳が出てきた。
「あ、こっちだったんだ〜分からなかったよ」
「す、すいません。直ぐにリビングデッド退治しましょう」
 英雄がそう言うと、瞳は真っ赤になりながらも詠唱兵器をてにするとリビングデッド原始人と対峙する仲間の元に走りよっていった。
「いっくぞー、これでも喰らえー!!」
 驚かしてくれたお返しにとせらは、ハンマーをリビングデッド原始人の腹目掛けて振り回した。そして、当たると同時に呻きながら、軽くその場から吹っ飛ばされる。
 負けてはいれない、とリビングデッド原始人は手にしていた石斧を雄叫びと共に近くの人影へと投げつけた。
「………お返しね」
 当たれば痛そうだがあまりコントロールも宜しくなく織葉は避けると、詠唱兵器をリビングデッド原始人へと向け低く言い放った。
 それを合図に、仲間達の一斉射撃が始まりそれ以上抵抗することなくリビングデッド原始人は倒れ動かなくなった。
 あっけなく勝負のついたリビングデッド原始人の次は…部屋の隅でただ動いている巨大クリオネだけだ。
「すいません……やる以上は、徹底してやるべきと、身も心もクリオネになりきってしまって……」
「でもすげぇよな!本当、どっちが本物か区別がつかなかったもんな」
 恥ずかしそうな瞳に、せらは目を輝かせながら手振りを付け言う。彼のその言葉に賛同し、他の仲間も力強く頷いていた。
「それじゃ、これ…どうしようか?捕まったらすっごく不気味な捕食シーンを見られるんだろうけど…」
 私は嫌だなという綾の言葉どおり、近づけば万が一という事もある……能力者達は距離を置いた集中砲火で倒すことにした。
「君に罪はないんだけどね…」
 抵抗なしのクリオネへと降り注ぐ炎を見ながら、英雄はライオンの着ぐるみの首を可愛くかしげるとそう呟いていた。


「すげぇ、この氷の滑り台!!びゅーって滑るぞ!もう一回♪」
 氷の公園に、せらの元気な声が響いた。滑り台にのぼっては滑って声をあげている。
 彼と先程まで走り回っていた玲樹は、先程のマイナス50度体験ボックスで是非遊んでみたいことがあるからと、もう一度戻っていったきり帰ってこない。
「シャボン玉が凍るか試したいんだ。あ、みんなも気になったら来てね。他にも色々普段じゃ出来ないことをしてみるから」
 そんな彼らとは対象的なのは織葉だ。特に何をすることもなく、かまくらの中で英雄やウクバと共に仲間達を見てまったり過ごしていた。
「……二人とも、とても元気ね」
「せやな……それじゃ、俺は少し休ませてもらうか」
 せらの声に混じり、公園に小さく澄んだ音が響いていた。公園の隅には氷柱で出来た自然の打楽器が設置されており、三成が木琴バチで叩いて楽しんでいた。
「いいなあ、次は僕にもやらせて?」
「いいよ〜、はい……折角だから、何か一緒に演奏してみようか?」
「え?うん、うん。楽しいそう」
 その氷柱琴に興味を示しかまくらから出て近づいてきた英雄に、三成は持っていた木琴バチを一つ手渡すと何を演奏しようか思案する英雄と一緒に氷柱を叩き始めた。
「ねえ……そろそろ太陽の下へ戻ろう、ここは寒すぎるよ」
 流石に寒くなってきたのか律は軽く身震いすると、砂場ならぬ雪場で何やら集中して創作活動にいそしんでいる二人に声をかけるが動く様子はない。
「陶芸みたいに後に残すことは出来ないけど……これはこれで面白いね」
「そうですね。残せないのは残念ですが……それはそれで面白いです」
 綾と瞳は互いの作品を見せては感想を述べるなど、皆とは違う楽しみ方をしている。
「……まぁ、この寒さを体験したからって外の暑さが和らぐわけでもないしね」
 各自この寒さを満喫している様子を見ていた律だったが大きく肩を落とすと、観念したように呟き自分もみんなのように今のこの寒さを楽しもうと遊具を見て回ることにした。


マスター:汐凪 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2007/08/23
得票数:楽しい10 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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