<リプレイ>
●シャレにならないくらいに今年は暑い 「ここが……、今回の目的地ですかぁ。……空気が……重いですねぇ」 予め旅行用のキャスターがついた鞄に、氷と水やジュースの入ったペットボトルを入る限り詰め込んだクーラーボックスと花束を入れ、月詠・愛莉(悠久の月・b27925)がサラリーマンの地縛霊が確認された現場にむかう。 サラリーマンの地縛霊は山の斜面にある墓場にある大木で確認されたらしく、そこまでは無人の駅から徒歩で30分ほど掛かる。 幸い駅の近くに派出所があったため、そこにいた警察官から墓場までの行き方を聞いた。 「……暑いっ!!!! ただでさえこんなに暑いのに、更に暑くする奴がいるとは……、確実に喧嘩を売っているよね。今時のサラリーマンは、クールビズで夏場はネクタイなんてしないわよ……ったく! ああ、暑くてイライラしていたから、自ら命を絶ったのかしら?」 全身に汗をビッショリと掻きながら、伊集院・翠姫(霜剣の使い手・b08151)がブツブツと愚痴をこぼす。 一応、暑さ対策のため冷却シートを用意しておいたが、すぐにカラカラになってしまうので、ほとんど役に立たなかった。 「確かにここまで暑いと死にそうになりますが、さすがに自殺する事はないと思いますよ。イライラし過ぎて人を襲う事はあると思いますが……」 あまりの暑さに不機嫌な表情を浮かべ、クロニカ・エルフォード(月の揺り籠・b29198)が答えを返す。 だんだん話をするのも面倒になってきたため、途中から無言になっている。 「夏……、蝉の奏でるハーモニーも、サタニックビートに思える今日この頃……。ちゃっちゃと片付けてカキ氷でも食うか」 派出所の警察官から聞いた話を思いながら、櫻・広樹(踊るハイエナ道化師・b03077)が山道を登っていく。 自殺したサラリーマンはションボリとした表情を浮かべて駅を降り、トボトボとした足取りで山まで登っていったらしい。 その間も何度か住民達に目撃されて呼び止められたらしいのだが、力なく笑みを浮かべて『山頂に登って綺麗な景色が見たい』と答えていたようだ。 「……カキ氷か。どうせならクーラーがギンギンと効いた店内で、ノンビリと食いてえな」 氷が溶けて水袋と化した氷嚢を顔に当て、浜戸・或人(高校生ゾンビハンター・b29039)がフラフラと歩く。 既に気温は40度を超えており、熱射病で死傷者が出ているらしい。 「それにしても、かような奥地でサラリーマンの地縛霊とはのぅ。先の不景気でリストラでもされたのかのぅ」 ハンカチで何度も汗を拭きながら、ブリュンヒルデ・ユグドラシル(赤炎の舞姫・b28752)が山の中腹にあった水飲み場にむかう。 自殺したサラリーマンはバックだけを持っていたらしく、その中には一日分の着替えと家族の写真だけが入っていた。 「どうやら夏のボーナス前に痴漢と間違われて会社をクビになったようじゃのう。しかも家族もその事を疑わなかったため、子供を連れて家を出てしまったらしい。そんな事が重なって生きる事が辛くなってしまったんじゃろうな、きっと……」 疲れた様子でベンチに座り、大越・武光(中学生白燐蟲使い・b19210)が当時の新聞に目を通す。 痴漢自体は免罪だったようだが、周囲の目は非常に冷たかったらしく、彼の犯行を誰も疑わなかったらしい。 逆の言い方をすれば彼ならやりかねないと思われていたため、何度も疑われて精神的に追い詰められていたようだ。 「それじゃ……、行くか。墓場まで目と鼻の先だしな」 サラリーマンの気持ちを察し、奈々瀬・アスカ(ビートプラネット・b28444)が深い溜息を漏らす。 照りつける太陽が能力者達の身体をピリピリと焼き、まるで両足に錘がついているように重くて上がらない。 「彼は何を思いながら、一人このような場所で果てて行ったのでしょうか。……それを思うと気の毒にも思いますが犠牲者が出る前に、彼には眠っていただかないといけませんね」 ようやく墓場が見えてきたため、遠山・樹(縁側で日向ぼっこ・b22681)が顔から溢れ出る汗を拭う。 墓場はヒッソリとした場所にあるため、サラリーマンの死体が発見された時には、身体が腐り落ちていたらしい。 「まぁ……、自分がやっていない罪で社会から抹殺されたら、そりゃあ死にたくなるんじゃないのかなぁ……。どっちにしてもゴーストは迷惑千万なんでサヨウナラ〜って事で」 警戒した様子で墓場を通っていきながら、アンジェリカ・ソアーウィンド(堕天の銀・b10646)が異様な気配に気づく。 それと同時に土の中からリビングデッドが顔を出し、彼女の足を掴もうとして右手を泳がせた。 「……リビングデッド狩りの面々は、フリッカー系と巫女……。墓場でダンス(巫女の舞)付きのライブ(フリッカーアビ)。じつに粋と思われる。十字架もあるため、ゴスペル(宗教音楽)が良いだろうか」 すぐさまイグニッションし、セイオリス・ネクローム(シリウスハート・b19402)が鉄球を振り回す。 そのため、リビングデッドが土の中に隠れ、他の場所から別のリビングデッドが左手を伸ばした。 「みんなでもぐら叩き頑張るよーっ!」 一気にスポーツドリンクを飲み干し、結城・さがら(デシジョンベル・b00496)がリビングデッドの退治にむかう。 その間に他の仲間達が地縛霊を倒すため、大木まで走っていくのであった。
●リビングデッドは暑さでクサイ 「きゃあ!? 誰かアタシの足を掴んだ!?」 驚いた様子で笛を吹きながら、アンジェリカが光の槍を撃ち込んだ。 笛の音が鳴るたびリビングデッドの居場所を特定する事が出来るため、能力者達にとっては逆に狙いやすかった。 「淑女の足を鷲掴みするなんて、すっごいシツレーよねっ! ゲーセンのモグラ叩きで両手を使うのは反則だけど、今日はちゃんと正々堂々と頑張っちゃうよーっ!」 リビングデッドの居場所を特定しながら、さがらが瞳をキラリと輝かせる。 ただし、能力者達が近づかねば、リビングデッドの腕が出てこない。 そのせいで能力者達は何度も足止めを喰らう事になった。 「Let's play」 リビングデッドの右腕が伸びた瞬間を狙い、セイオリスがフレイムキャノンを撃ち込んだ。 あまりの熱さに墓穴から飛び出し、リビングデッドが悲鳴を上げて走り出す。 「わわっ……、怒って……墓穴から……出てきたどす……」 慌てた様子でリフレクトコアを展開し、愛莉がリビングデッドのタックルを受け止める。 そのため、リビングデッドは大量の腐汁を撒き散らし、呻き声を上げて崩れ落ちた。 「さぁ、妾に平伏せ! 謝れ! 降参しろ! 命乞いをしろ! さもなくば撃つ!」 リビングデッド達に冷たい視線を送り、ブリュンヒルデが牙道砲を撃ち込んだ。 その一撃を喰らってリビングデッドが吹っ飛び、次々と墓石を倒していく。 「また生きてもない相手に歌うのか。……まあいい、あたしの歌を聴け!!」 墓石をステージ代わりにして飛び乗り、アスカがショッキングビートを叩き込む。 そして、リビングデッドが麻痺したところで、ブラストヴォイス。 「リビングデッド達が襲ってくる前にバババーンとやっつけちゃお〜」 能天気な笑みを浮かべながら、アンジェリカが光の十字架を放つ。 次の瞬間、リビングデッドの左腕が浄化され、辺りに呻き声が響き渡る。 「墓場で火葬ライブだ。月詠は舞え。音は我らが奏でよう! 十字架の元に、死人の大炎を灯し、ここは一心不乱の大! 墓場ライブとなる」 コトダマヴォイスを使って合図を送り、セイオリスがリビングデッド達に攻撃を仕掛けていく。 リビングデッド達は墓石を倒しながら、墓穴から這い上がって咆哮を上げた。 「ああ……、声が枯れるまで……歌ってやるさ!」 墓石の上に乗ったままの状態で、アスカがショッキングビートを掻き鳴らす。 そのため、リビングデッドがアングリと口を開けたまま、マヒしてピクリとも動かなくなった。 「我が拳に……、砕けぬものはない!!」 一気に間合いを詰めて獣撃拳を叩き込み、ブリュンヒルデがリビングデッドを倒す。 しかし、リビングデッド達は次々と墓穴から這い上がってくるため、彼女達が休んでいる暇はない。 「戦いが終わったら、冷たい飲み物で乾杯だよーっ! ……絶対に!」 忙しなく蝉の鳴き声が響く中、さがらがヒュプノヴォイスを歌い出す。 すべてのリビングデッドを眠らせる事は不可能だが、何とか時間を稼ぐ事が出来るはずだ。 「このまま……安らかに……眠ってもらいましょう……」 そして、愛莉はリビングデッド達を引きつけ、光の十字架を放つのだった……。
●熱血サラリーマンは嫌われ者 「こ、ここは……、特殊空間!?」 サラリーマンが自殺した大木に辿り着いた瞬間、例えようのない違和感に襲われ、樹が霧影分身術を発動させる。 それと同時にサラリーマンの地縛霊が出現し、特殊空間内の温度を一気に上昇させた。 「なんで気温を上げてくるのじゃ? お主、暑いのが好みじゃったのか?」 あまりの暑さに上着を脱ぎ捨て、武光が白燐奏甲を発動させる。 生前のサラリーマンは仕事一筋の熱血タイプ。 唯一欠点があるとすれば、いかにも痴漢をしそうな顔立ちだった……。 「あっ……、暑い……。暑くて……溶ける……」 荒く息を吐きながら旋風の構えを発動させ、広樹がサラリーマンめがけてダークハンドを放つ。 しかし、サラリーマンの周辺が酷く熱いため、近づくだけでも大火傷をしそうである。 「……ただの……サラリーマンとは言え……、油断大敵です……ね」 イライラする気持ちをグッと抑え、クロニカがサラリーマンに炎の魔弾を撃ち込んだ。 そのため、サラリーマンの身体が一気に燃え上がり、余計に特殊空間内が暑くなった。 「堪え性がないわね。こんな姿になっちゃってさぁ。……やれやれね。さあ、大人しく眠りにつきなさい!」 祖霊降臨を使って攻撃力を上げ、翠姫が黒影剣を叩き込む。 その一撃を喰らってサラリーマンが悲鳴をあげ、自分の首に絞めていたロープを伸ばして攻撃を仕掛けてきた。 「死んでいる癖にイキがいいな」 ロケットスマッシュを使ってロープを弾き、或人が疲れた様子で溜息をつく。 その間も特殊空間内の温度がどんどん上がっていくため、全身から溢れてる汗が滝のように流れ出る。 ……能力者達に残された時間は僅かであった。 早く地縛霊を倒さなければ、命を落とすのは自分達だ。 このまま特殊空間から脱出する事が出来なければ……、死あるのみ! 「あ、暑い……。これじゃ、冷却シートも役に立ちませんね」 サラリーマンに水刃手裏剣を投げつけ、樹が生温くなった冷却シートを放り投げた。 特殊空間外に冷たい飲み物が置かれているため、早く地縛霊を倒してホッとしたいと思っている。 「うぉぉ、暑さには負けんぞい! こんな事になったのも、おぬしがみんな悪いんじゃああ!」 暑さのために冷静な判断をする事が出来ず、武光がサラリーマンに八つ当たりした。 そのため、サラリーマンはロープを使って反撃しようとしたが、怒りのこもった獣撃拳を喰らって大木の身体を叩きつける。 「新しい力……、試させてもらうぜっ!」 斬馬刀を使ってロープを切り裂き、広樹がダークハンドを炸裂させた。 その一撃を食らって悲鳴を上げ、サラリーマンの左腕を切り裂かれ、辺りに悲鳴が響き渡る。 「自然の摂理を外れしモノ、恨みはないけどもっかい死んで貰うわ!」 それと同時に黒影剣を叩き込み、翠姫がサラリーマンの右腕を切り落とす。 サラリーマンはパニックに陥って絶叫し、特殊空間内の温度を一気に上昇させた。 「悪いが地縛霊と心中するつもりはないんでな!」 全身が燃えように熱い感覚に襲われながら、或人がロケットスマッシュを叩き込む。 紅蓮の炎に包まれ、叩き潰されるサラリーマン。 最後は消し炭すら残らず消滅し、特殊空間が崩壊していった。 「……やっと終わりましたね。……もう体力の限界です。……さっさと帰りましょうよ」 グッタリとしたモーラットを拾い上げ、クロニカがホッとした様子で溜息をつく。 そこには冷たいドリンクを持って、仲間達の帰りを待つ能力者達の姿があった……。
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参加者:12人
作成日:2007/08/24
得票数:カッコいい3
ハートフル3
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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