かわいい兎にご用心


<オープニング>


 んもぉ〜。
 のどかな牧草地に牛の鳴き声が木霊する。冬も間近とは言え、まだまだここには青々とした牧草が、広々とした大地に生い茂っている。吹き抜ける風も若干冷たさを帯びてきてはいるが、それでも高原独特の清々しさは失われてはいない。
 この牧草地は、権田さん(71歳、おとめ座)の所有地。自然の恵みを受けて、非常に味がまろやかと評判の牛乳の生産者である。今日も今日とて、乳牛の放牧を行い一息ついていた。
「ふ〜……少々風が冷たくなってきたのぉ……」
 積まれた枯れ草の横にしゃがみ、愛用の煙草を取り出していた、その時。突然視界の隅で草を食んでいた牛の姿が、忽然と消え失せたのだ。何事かと思い駆けつけたそこには、足を負傷した牛が悶えていた。その足には何か鋭利な刃物で切られた痕が残っていたのだが、辺りに牛の足を切るような草や農具などは見当たらない。幸い傷は浅かったようだが、権田さんは訳も分らず頭を捻るのだった。

「皆さん、お集まり頂き有難うございます」
 集まった一同を前に、藤崎・志穂(高校生運命予報士)がぺこりと頭を下げる。
「早速ですが、依頼の説明を始めますね。今回はとある牧場に現れる、ウサギの姿をした妖獣を退治して頂きたいのです」
 志穂の話によると、牧草地に放牧された乳牛がウサギ型の妖獣に襲われ、足を負傷すると言う事件が続いているらしい。その妖獣、一見すると可愛らしいウサギなのだが、その前足はまるで蟷螂のような鋭い刃になっていると言うのだ。現在の所、足を怪我する程度で済んでいるのだが、いつこれが牛の命や、ともすれば人間の命を狙い出すか判らない。被害が拡大する前に倒してほしい、と言うのが今回の依頼のようだ。
「そのウサギさんってば、何匹くらい現れるの?」
 集まったメンバーの中から、金森・あかね(中学生符術士・bn0003)が質問する。
「はい、妖獣は4匹います。白いもの、黒いもの、白と黒の斑模様、白と茶の斑模様、ですね。大きさは全て30センチほどですが、いずれも前足は蟷螂のような鋭い刃になっています。この刃で牛の足を傷つけていたようです」
 あかねの質問に、志穂が答える。妖獣は元は牧草地から少し離れた、滅多に人間が入らない手付かずの森に住んでいたのだが、その雄大な自然を理由した観光地……ペンションやレストランなどの開発のために、森を切り開かれたため十分な残留思念を得る場所を失い、牧草地まで下りてきたみたいです、と志穂が付け加える。
「妖獣はその前足の刃と、やはり鋭い前歯による噛みつきが主な攻撃手段のようです。ただ、それらの攻撃手段に気をつければ、さして強くは無いと思います」
 一番の攻撃手段は、そのかわいらしい外見かも知れませんね、と志穂が苦笑いを浮べる。
「うっ……そ、それは確かに強力かもね……」
 あかねもつられてあはははは、と苦笑いする。どうやらかわいいものに弱いらしい。

「妖獣の現れる牧草地は、権田さんと言う方の所有地です。権田さんには社会見学のため学生が数名ご訪問します、とご連絡してありますから、皆さんがいても怪しまれる事はないかと思います」
 なるほど、確かにそのほうが都合がいいだろう。
「権田さんは近所では大の子供好きとして有名だですから、きっと歓迎してくれますよ。絞りたての美味しい牛乳などご馳走してくれる事でしょう」
 牛乳、の言葉に志穂が目を細める。自分も行きたいけど、と言うような目をしているのは気のせいだろうか。
「解決したらご馳走になるのもいいかもしれないわね。どう? みんなで一緒に行ってみない?」
 あかねが集まったメンバーを振り返り微笑みかける。美しい自然の中で、その自然に育まれた牛乳を飲むのも味なものだろう。あかねの微笑みに、メンバーは頷いて返すのだった。

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参加者
有坂・サリア(高校生フリッカースペード・b00347)
酒井・浩交(高校生魔剣士・b00731)
緋月・涙音(中学生霊媒士・b02972)
一・二三(小学生符術士・b03331)
山田・シンクレア(高校生青龍拳士・b03363)
御門・悠輝(中学生符術士・b04748)
リーフィ・マオ(中学生霊媒士・b07192)
メグミ・ベネポーチット(中学生ゾンビハンター・b09432)
NPC:金森・あかね(中学生符術士・bn0003)




<リプレイ>

●爽やかな風に吹かれて
 見渡す限りの緑。
 吹き抜ける風は秋風。
 都会の喧騒から離れ牧場にやってきた一行はまず、この広々とした自然に感嘆の声を漏らす。
「なるほど、聞いてた通り見渡す限りの牧草地じゃのぅ」
 緋月・涙音(中学生霊媒士・b02972)が目を細め呟く。バスから降りて歩く事30分。一行はようやく目的地……権田さんの牧場に辿り着いていた。まだ牛の姿は牧草地の中には見ることが出来ない。おそらくは見学のために訪れる学生――一同の事だが――が来てから、見学がてら放牧するつもりなのだろう。
「今回の目的はあくまで兎の妖獣退治だからな。楽しむのは倒してからにしよう」
 すでに浮かれ気分の数名に諭すかのように、酒井・浩交(高校生魔剣士・b00731)が忠告を与える。権田さんの牛乳目当ての者もいるが、本来の目的は蟷螂の手を持つ兎の妖獣退治。捜索範囲が広いのも災いして、かなり骨が折れるのは間違いない。
「何故か兎には近親感を感じ、一番好きな動物ですが……ゴースト相手にそんなこと言ってられないですね」
 浩交の言葉に、有坂・サリア(高校生フリッカースペード・b00347)もうんうんと頷きながら答える。
「そうね……いくら兎で可愛いとは言っても妖獣は妖獣。遠慮なくやらせてもらうわ。さっさと終わらせて美味しい牛乳飲みたいしね」
 気だるそうに背伸びして周囲を見ながら、御門・悠輝(中学生符術士・b04748)も同意する。そう、相手は可愛い外見をしていてもゴーストなのだ。舐めてかかれば痛い目を見るのは火を見るより明らかだろう。
「……でもある意味……兎達も人間の開発による犠牲者なんですね……」
 少し沈んだ面持ちで考え込むように、一・二三(小学生符術士・b03331)が呟く。だがそうも言ってはいられない。いつ新たな犠牲が出るか判らない今、災厄の目は早めに摘まねばならない。二三もその考えは理解しているのだが、やはり引っ掛かるものがあるのだろう。
「それはいいアルけど……遠すぎアル……」
「本当、かなり歩くよね……うん、もう少しだよ、きっと」
 話しながらも歩みは止めなかった一同の中で、リーフィ・マオ(中学生霊媒士・b07192)がへばり出す。そんなリーフィを元気付けながら、金森・あかね(中学生符術士・bn0003)も汗を拭きながらてくてくと歩いていく。やがて前方に厩舎と家が一体化しているような建物が見えて来る。おそらく目的地だろう。建物の前で待っている2人の老人はおそらく牧場の持ち主、権田さん夫婦だ。その姿を確認した一同の足は、自然と早まるのだった。

「ほっほっほ、いやいや遠い所ご苦労さんじゃのぉ。まぁ見たとおり何も無いところじゃが、ゆっくりしていきなされ」
「今日は宜しゅうに」
 権田さんの出迎えに涙音が丁寧な挨拶を返すが、そんな涙音の後からぎゃーぎゃーと騒ぐ二人が顔を出す。
「牛乳、飲むと背、伸びるデスヨネ! ワタシでも伸びるデスヨネ? ネ!?」
「飯でやんすー! 牛乳でやんすー!」
 自身の身長の低さを気にしているのか、山田・シンクレア(高校生青龍拳士・b03363)が権田さんに必死にすがるような目を向ける。そしてその横からメグミ・ベネポーチット(中学生ゾンビハンター・b09432)が、これまた早く牛乳を飲ませろと言わんばかりに身を乗り出す。その後から二人を必死になだめ止めようとするサリアと悠輝。二人がいなければ、今頃権田さんが食べられていたかも知れない。そんな勢い。
「まぁまぁ落ち着きなされ。まずは牧場の仕事から教えるから、ついて来なされ。これから半数を放牧するでの」
 権田さんがにこやかに微笑みながら、厩舎へと向かう。一同はそっと目配せをして、その後を着いて行くのだった。作戦開始は放牧直後。皆の意識はすでに対兎戦闘へと向いていた。
「……乳牛は脂肪が少ないから美味しいアルヨ。どんな調理するアルカ……」
 牛料理のレパートリーを記憶の中から探すリーフィ。……訂正。1名を除いて向いていた。

●兎戦・それぞれの奮闘
 権田さんの飼っている牛は全部で40頭。そのうち半数……20頭をコツを教わりながら、全員で牧草地へと誘導する。なかなかの重労働で、あっちこっちへ寄り道をする牛を誘導するのに手間取る一同。それでも30分後にはなんとか全ての牛を牧草地へ誘導していた。
「さて、これで放牧はひと段落じゃの。次にやる日課は牛の乳搾りでの……」
「ムゥ!アレは! 正に東洋の神秘! 原理を説明する事を要求シマス!」
 最初に行動を起こしたのはシンクレアだった。厩舎内部にちらりと見える何だかよく判らない機械を指差し、有無を言わさず権田さんの腕を取り、無理矢理連行していく。リーフィとあかねもその後について行くが、あかねが残った6人に振り返り、ウインクをする。
「よし……作戦開始だな。手早く片付けよう」
「じゃの。いつまでもあの調子では権田さんも疲れるじゃろうて」
 浩交の言葉に涙音も頷き、一斉にイグニッションを行う。それぞれの手に現れる詠唱兵器、そして姿を現す召喚獣。4頭の兎を狩るべく、今全員が行動開始したのだった。

「……いました。2頭いますね」
 オペラグラスで広い牧草地を探していたサリアが、草の隙間でぴょんぴょんと跳ね回る兎の姿を補足する。全員が戦闘態勢を取り、音を立てないよう徐々に距離を詰めていく。
「……黒と、白黒の斑ですね。もう視認出来る距離です」
 二三が飛び回る兎の姿を見る。確かに情報にあった内の2頭だ。時々止まり立ち上がるその姿は確かに愛らしい。その腕の鎌さえなければ、だが。
「じゃ、あっしと悠輝、浩交で退路を絶って囲むように殴るでやんす。涙音とサリア、二三は後から攻撃、でやんすね」
「了解。戦ってる最中に奇襲受けないよう注意ね」
 メグミと悠輝が提案した意見は皆に了承される。そして更に距離を詰め、20メートルほどまで近付いたその瞬間。
「この歌、その身に響いて……!」
 先制はサリアのブラストヴォイス。その歌声は2頭を確かに範囲内へ収め、確実にダメージを与えていく。兎も突然の奇襲に驚きつつも、敵を認識して向かってくる。
「ぅぅ……かわいい……」
「……可愛くても敵ですから……」
 愛らしい敵に躊躇しつつも涙音が雑霊弾、二三が呪殺符を放つ。奇襲とは行かなかったためか、双方の攻撃は共に兎の横をすり抜けていく。サリアのブラストヴォイスによる追撃をその身に受けつつも更なる敵を認識して、兎達はなおも向かってくる。しかしその前に立ち塞がるように、影が2つ現れる!
「さて……狩の時間だ」
「次に生まれる時は鎌を捨ててくるのね」
 黒い兎には浩交の長剣から、唸りを上げて放たれた黒影剣が見事に命中!一撃の下にその身を霧散させる。さらに白と黒の斑には、悠輝の手に装備された手袋から放たれた炎の魔弾が炸裂。その身を焼き尽くさんと燃える魔炎に兎は力尽き、やはり空気中へと溶けるようにその姿を消滅させた。
「これであと2匹でやんすね。さっさと片付けるでやんす♪」
 メグミが消えた敵を確認して、皆にピースを向ける。まだ敵はあと2匹いる。一同は気を引き締めなおし、再び捜索へ戻るのだった。

 一方。シンクレアの見事な誘導により連行されていた権田さんだが、牧草地で何やら音がするのに気が付く。
「はて、何じゃろう?」
 様子を見に牧草地へ戻ろうとする権田さん。とっさにリーフィが、厩舎内に繋がれた牛へと走り出す!
「あの牛、美味しそうアルナ……一口良いアルカー!」
 口から流れる涎を拭きつつ、リーフィが牛の1頭へと飛び掛ろうとする。言ってる事は無茶苦茶なのだが、権田さんは突然のリーフィの行動に驚き慌てて止めようとする。
「ほわわわ、これこれ、牛は生じゃ食えんぞぉー!」
「……ツッコミ所はそこなのね」
 あかねが二人の様子を見ながらそっとため息を吐く。と、シンクレアが突然ぶるぶると震え出す。何が起きたのか。体調でも悪いの? あかねが問おうとした時、シンクレアが突然つかつかと権田さんに近寄り、その肩をがしっと掴み、そして。
「……おトイレは何処デショウッ!?」
 顔を真っ赤にして衝撃の事実を伝える。権田さんは一瞬ぽかんとしていたが、苦笑いしながらも気を取り直しシンクレアを案内してトイレへと向かう。
「……うむ、足止め成功アルナ」
「二人とも、すごいよね……」
 ふふん、と自慢げに胸を張るリーフィに対して、あかねは何か言いたそうな目を向けるしかなかった。

 場面は再び牧草地へ。しばらく捜索を続けていた一同だが、なかなか敵の姿は見えない。足止め班が頑張ってるとは言え、それもいつまで持つかわからない。焦りの色が見え始めたその時。
「……ん? 牛が倒れた……?」
 双眼鏡で捜索していた涙音が異変に気付く。確かに柵近くにいたはずの牛の姿が視界から忽然と消え失せたのだ。手早く散らばっていた仲間に合図して現場へと急行する。
「……いましたね」
 サリアがこっそり呟く。牛の足を斬りつけた白い兎と白と茶の斑兎が、牛の傍で今にも飛び掛らんとしている。権田さんのためにも、牛を殺させる訳にはいかない。真っ先に行動を起こしたのはメグミだった。兎の前に躍り出て、霧影分身術を発動させる。瞬時に生み出された霧が、メグミの姿をもう一つ映し出す。
「さぁさ、お立会いでやんすよっ! どっちが本物でやんすかね?」
 突然現れたメグミの姿にびくっとするも、やがて兎は敵意をむき出しにして手の鎌を構える。
「追い出されてしまった事には同情するが……他を傷つける理由にはならん!」
 メグミに気を取られた隙を狙い、浩交が再び黒影剣で白兎を斬りつける。命中はしたものの、やや浅かったのかダメージは軽微のようだ。逆に反撃の鎌が浩交の足を捉える!
「く……!」
 制服ごと足を斬られ、浩交は顔をしかめる。幸い傷は深くはなく、素早く悠輝の治癒符が飛び、さらに自身のモーラットでその傷を癒す。
「ぅぅ……やっぱりかわいい……言われたとおり手が凶悪じゃ……アレさえなければのぅ……」
「……現状で被害が出ている以上、倒すのは仕方ないですね」
 再び放たれる涙音の雑霊弾と二三の呪殺符。今度は意識が逸れていた分共に寸分違わずに命中!涙音の攻撃は白兎の残った体力を全て奪い去り、二三の呪殺符は斑兎の体力を一気に消し去る。同時に2体は霞のように霧散して果てる。それは権田さんの牧場に平和が訪れた瞬間だった。

●あまーい! 美味しい牛乳を囲んで
 何とか合流した一行はその後、つつがなく社会見学と称した牧場体験を終え、楽しみにしていた瞬間の訪れを待っていた。
「ほっほっほ、お待たせじゃ。これがたった今、皆で搾った牛乳じゃよ」
「絞りたてというのは初めてかも……早くー早くー♪」
 権田さんはわくわくして待ちきれない、と言った様子の涙音に微笑みながら、牛乳をテーブルに置く。その横には権田さんの奥さん特製の手作りクッキー。もちろん、これもここの牛乳を使って作られた物である。
「この時こそ、飲みダメのチャンス……賞味期限の切れてない牛乳。しかも新鮮! いくらでもいけるデヤンス!」
 悲しい事実を口走りながらメグミもそわそわしている。皆のグラスに牛乳が注がれる。
「それでは、かんぱーい!」
 乾杯の合図と共にカチャン、と皆でグラスを合わせ、それぞれが牛乳を飲み干す。
「……おいしいー!」
「やっぱり、絞りたてって美味しい物ですね」
 あかねとサリアが素直な感想を漏らす。一同の満足そうな笑顔を見ながら、うんうんと頷く権田さんご夫婦。子供好きと言う噂の通り、色々と大変そうなこのメンバーにも親切な二人はきっとこれからも子供達に慕われる事だろう。
「絞りたての牛乳って店で売ってるのとはまた違った味わいね」
 悠輝も感心しながら牛乳を味わう。その横ではメグミがクッキーを頬張りつつも、4杯目をおかわりしている。飲みすぎ。
「うー、頑張って飲みまくルデスー! 目指せナイスバディデス!」
 シンクレアも親の敵と言わんばかりの勢いで飲みまくる。そんなにすぐには効果は出ません。
「食べられないなんて反則アルヨ……でもどこかに必ず食べられるやつがいるはずアル!」
 一方のリーフィは涙をだばだば流しながら、クッキーと牛乳を味わっている。兎の妖獣を調理しようと考えていたのだが、倒すと霧散してしまうため調理など出来るわけもない。それでもいつか巡り合う食材のため、次こそはと意気込んでいた。
「……金森、初依頼の成功おめでとう」
「あっ、浩交さんもお疲れさまっ! 怪我は大丈夫なの?」
 こっそりとあかねに声をかける浩交に、あかねも少し心配げに足に目を向ける。癒しの効果のためさほど大事にならなかったのは幸いと言えよう。
「大した事はないさ……これからも色々あるだろうが、お互い頑張っていけると良いな」
 浩交の言葉にあかねは笑顔で答え、グラスに牛乳を注ぐ。と、あかねの隣に座る二三がグラスを持って考え込んでいるのに気が付く。
「? どうしたの?」
「……あかねさん、能力者って本当に必要な存在なのでしょうか」
 倒した兎もある意味人間の犠牲者なのだ。本来なら糾弾されるべき人間の味方として、能力者は存在している。本当にその存在は正しいのだろうか?
「……難しい事はよく分んないけどね」
 あかねが不意に神妙な口調になる。しかしその表情は柔らかい笑顔のまま。
「わたし達が戦う事で救われる人がいるなら、それはそれで必要なんだと思うな。まだ能力者って実感も沸かないけどね」
 笑顔で語るあかねに少しは救われたのだろうか。二三の硬い表情も少しだけ緩む。
「頼まれてたの忘れてたでやんす! あかね、あっしらの結社に入らないでやんすか?」
 突然割って入ったメグミにぽかんとするあかね。苦笑いを浮かべながら考えておくね、と一言だけ伝える。と、牛乳を飲みながら遠くを見ていたサリアが突然立ち上がる。
「こういう広い場所に来ると唄いたくなりますね……一曲歌ってもよろしいでしょうか?」
「おお、おお。構わんとも。嬢ちゃんの歌を聞かせておくれ」
 権田さんの許しを得て、サリアがそれでは、とおずおずと歌い出す。
 美しく澄んだ歌声は爽やかな秋風に乗り、やがて来る冬の訪れを忘れさせるようなひと時を皆に与えたのだった。


マスター:嵩科 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2006/10/31
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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