<殺意の金竜>終焉鎮魂歌


<オープニング>


 秋風が吹き込む山の麓。
 白亜の洋館には蔦が幾重にも重なり、其処だけは陰鬱な風景。
 人の気配も感じない場所なのに、どこからともなく聞こえてくる物音。
 低く響くその音を辿れば洋館の中。
 黄金に輝き蠢くもの。
 それは物語の中や神話に語り継がれている姿をしている。
 巨大で雄々しく、鋭い目つき。
 洋館の中をゆったりと徘徊する姿は雄大。
 時折、大きな唸り声を上げれば、地響きが響いた。
 
「緊急の依頼だ。しかも重要で危険な依頼だ」
 渡り廊下で能力者たちを出迎えた王子・団十郎(高校生運命予報士・bn0019)の声はいつになく低く神妙。
「黄金獣が現れた」
 団十郎のその言葉を聞いて、その場の空気が張り詰める。
 そんな能力者たちの様子を分ってか、更に話を続けていく団十郎。
「黄金獣を狙ってふたつの組織が動いていることも分っている。このまま放っておけば、山崎・あゆみ達の組織か海辺で遭遇した銀髪の女性がいる組織のどちらかに黄金獣を倒され、黄金の林檎の欠片を奪われてしまうことは目に見えている」
 だからここは学園側としても、急いで人員を送ることにしたと、集まった能力者たちに告げる。
 まずは命を掛けるような行動は慎む様にと団十郎が言葉を続けた。なぜなら相手勢力ふたつの実力が分からない状況なのだから。
 
「まず戦闘相手となる黄金獣だが、その妖獣は西洋の伝説に登場するようなドラゴン。体長は3メートルほど、全身黄金の硬い鱗で覆われていて防御力は高く、もちろん攻撃力も高い」
 ドラゴンの攻撃方法は長い尻尾を鞭のようにしならせ、振り回しての攻撃に加え、口から吐き出される炎は20m視界内の敵全てにダメージを与え、攻撃が命中すれば魔炎のバッドステータスがつく。
 ドラゴンの容姿は西洋ドラゴンの姿。
 背には一対の翼を持つが、飛ぶことは出来ない。しかし羽ばたけばその辺りに強い風が吹きぬける。
 今まで闘ってきた黄金獣に比べ物にならないくらい、強い妖獣という事が、団十郎の説明から伝わってくる。

「このドラゴンがいるのは、山の麓にある大きな洋館。今は使われず人知れずに廃墟になっている。洋館の作りは2階建てで、門を抜けてしばらく行くと大きな玄関扉があり、玄関をくぐると2階をぶち抜いた吹き抜けの広々とした玄関ホールになっている。身体の大きなドラゴンは、この玄関ホールか崩れ落ちた壁から出入りできる裏庭のどちらかにいる」
 玄関ホールも広く戦闘をするには手狭に感じないつくり。
 玄関から入って向かい側の両側には2階に上るための階段が備え付けられているが、ドラゴンは身体が大きいために2階へと上ることは出来ず、この玄関ホールと崩れた奥の壁を利用して裏庭と玄関ホールを行ったり来たりしているという。
 裏庭は昔は綺麗な花園だったらしく洋館に似合って広々としてる。今は雑草が伸び放題だが洋館が健在だったころはさぞかし豪華だったことが容易に想像できる。
 裏庭にはこの崩れた壁からしか、現在は行くことができなくなている。
 
「判断は現場にま任せる事になると思うが、状況は流動的である事を忘れないで欲しい。今後の動きを考えれば、今回のやりとりで決定的な状況を作り出してしまうのは避けなければならない。可能な限り、事を荒立てないのが良いかもしれない」
 それから…。と、もうひとつ話をはじめる。
「今回はお前達がドラゴンとの戦いに専念できるように、バックアップ班も向かうことになっている」
 だからといって、容易に作戦が遂行されるほど簡単なものではないことは分っている。
 団十郎の眉間に薄い皺が寄る。
「重ねてになるが、相手の実力も出方もわからないから行動派は慎重に、決して無理はしないでくれ」
 団十郎はそう言って、唇を閉じた。

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参加者
此花・悠禅(五行纏殺・b00479)
羽柴・紫弦(の偽者・b01189)
音羽・葵(高校生魔弾術士・b01390)
相澤・悟(業を背負った天然疫病神・b03663)
希龍・浩一(中学生魔剣士・b04069)
神井・上人(何時か終わる白夜・b04328)
天道・矜恃(黄昏の魔剣・b06410)
小野寺・響(サイレントレクイエム・b07282)
清村・御風(焔狐・b07683)
碑刻・奏也(棺連なる迷いの葬列・b15692)
島原・真魚(ランブルフィッシュ・b17091)
桐見・和也(空想と現実の狭間で・b17974)



<リプレイ>

●Introitus
 その場所はとても静かだった。
 本当ににおとぎ話の中に迷い込んだような風景。
 緑の中に浮かび上がる白亜の館。緑色の蔦が更にその大きな洋館を包み込んでいる。
 白亜の洋館に捕らわれたお姫様が眠っているような、現し世の世界に紛れ込んだ、絵本の1ページの様な雰囲気。
 ただ絵本の世界の中の出来事ではなく、ちゃんと現実に起こり得ていることなのは事実。
 待っているのはお姫様ではなく、黄金に輝くドラゴン。
 そのドラゴンから零れ落ちる黄金の林檎の欠片。
 1/8の確率でメガリスになるという、林檎の欠片。
 その黄金の林檎を求めて集まった3つの組織。
 まずは自分たち、銀誓学園の能力者組織。
 何度か会っている山崎・あゆみが所属している組織。
 砂浜で黄金の林檎の欠片を奪っていった、豊かな銀髪の女性が所属している組織。

 自分たちがなんとしても林檎の欠片を手に入れるのだと、この依頼に参加した銀誓学園の能力者たちは総勢、42名。
 ドラゴンを倒すために集まったのは17名。
 メガリス確保に25名。

●Seqentia
 大きな錆びた門をくぐった。
 玄関までは少し距離がある。
 足元に辺りに注意をしながら、ドラゴンが待つ洋館へと向かう。
 玄関扉に近づくに連れて、只ならぬ雰囲気と時折聞こえる地鳴り。
 この向こう側で何かが居る事が否応なしに分る。
 希龍・浩一(中学生魔剣士・b04069)が近くなる蔦に包まれた白亜の洋館を見上げる。
 まるで西洋の御伽噺。
 しかしコレは現実、けれども御伽噺なら物語の最後はハッピーエンドがふさわしい。そうなる様に全力を尽くすしかない。
 扉に近づいたところで、碑刻・奏也(棺連なる迷いの葬列・b15692)が中心となり作戦の最終確認などを行い、ドラゴンの翼から巻き起こる突風対策にゴーグルなどを持ってきたものはここで装着した。
「相手はドラゴンか…相手にとって不足はねぇぜ。行くぜー!!」
 清村・御風(焔狐・b07683)が大きな声を上げて扉を開け、先に扉の向こう側に滑り込むように入っていく先行グループ。その数秒後に残りの6人が扉の向こう側へと消えた。

「………!!」
 その光景に思わず誰もが息を飲み込んだ。
 玄関ホールは吹き抜けで開放感があるにも関わらず、そこに佇む黄金に輝く鱗を持つドラゴンの存在で少し手狭にさえ感じてしまう。
 自分たちが扉から入ったすぐ後、ひとりの少年を先頭に数名の少女達が勢い良く駆け込んできた。
 少年は黒い服に身を包み、ドラゴンからの攻撃を交せば結わえた金髪と黒いマントの裾が翻った。
 少年は一度だけちらりと、後にいる能力者たちを一瞥しただけで、再び視線はドラゴンへと戻る。

 ―――――――アレが…、アル君?

 能力者達の脳裏によぎったひとりの少年の名前。
 今はその真意を確認する事よりも、目の前のドラゴンを倒す事の方が先だと、能力者たちは作戦通りに自分たちの陣形を展開する。
 先に入った6人はドラゴンの右側へと移動する。
 右の前衛を担う羽柴・紫弦(の偽者・b01189)が、ドラゴンに詰め寄り自分に施す森羅呼吸法。
 同じ班の仲間の回復手としての島原・真魚(ランブルフィッシュ・b17091)は、自分たちよりも先に戦っている少女達の戦闘に巻き込まれないように、位置取りに注意する。皆が良く見える位置に付くと、すぐに白燐奏甲を自らにかけておく。
 三日月の軌跡が残る高速の蹴りでドラゴンを攻撃するのは此花・悠禅(五行纏殺・b00479)。
「魔術師としては竜退治は願ったりかなったりね」
 音羽・葵(高校生魔弾術士・b01390)が、ドラゴンの右側に回りこみ、安全な位置がどこかを探す。
 その時ドラゴンの目が動いて、葵の姿を捉えた。
 瞳の色も黄金でその中心に闇のように黒い縦長の瞳孔が凶悪に光ると、次の瞬間長い尻尾がブンッ! と音を立てて葵目掛けてしなった。場所取りを気にしてた最中の出来事、ドラゴンの攻撃に気が付くのが一瞬遅れた。
 尻尾が迫り逃げようとしたが、遅く鞭のようにしなった太い尻尾の攻撃を身体で受け止める葵。
「―――ッきゃあぁッ!!」
 か細い身体がしなり、苦痛に歪む顔。かろうじて膝を付きながら、態勢を保つ。
 攻撃後、すぐに次の攻撃に繰り出せないドラゴンの隙をついて相澤・悟(業を背負った天然疫病神・b03663)が、バス停を構えロケットスマッシュを放つ。ロケット噴射に乗ってドラゴンの体目掛けて攻撃をする。手ごたえは感じるものの、大きなダメージを与えていない事はドラゴンの様子を見て取れる。
「ドラゴンスレイヤーとなるか骸となるか……」
 仲間よりも後方で神井・上人(何時か終わる白夜・b04328)が白銀に輝くハンマーを頭上で回す。視線は変わらずドラゴンを捉えたまま、その行動を観察している。
 攻撃の予兆行動がないかどうか。
 葵の傷はサポートについているアーバインが癒す。
 同じくサポートののぞみはこれからの備え、自らに白燐奏甲を掛け回復力を上げておく。

 黒衣の少年のガンナイフでの攻撃。
 少女達の攻撃。
 しかしドラゴンに効いているのかいないのか、ドラゴンの様子が変わったところは見受けられない。
 その少女達の中の巻き毛が特徴的な少女がナックルを振り上げ向かい、同じタイミングでもう一人の少女は長剣でドラゴンを斬りつける。

 先のグループが入ってから、10秒程度遅れて残りのメンバーが玄関ホールに入ってきた。彼らはすぐに左へと展開し、右と左からドラゴンを挟み込むような形をとる。
 目の前のドラゴン。
 本当に物語のワンシーンのよう。
 小野寺・響(サイレントレクイエム・b07282)がちらりと、自分たちと別にドラゴンに向かう組織を見た。
 色んな意味で苦しい戦いになるかもしれないが、今はやるしかない。と、仲間が良く見える後方で、いつでも援護できるように準備を整える。
 浩一も素早く左の前衛に位置付けばすぐに霧影分身でドラゴンの攻撃に備える。視線はドラゴンから離さない。攻撃の予備動作のひとつでも見つけられればと、じっと見ていた時、ドラゴンが右側へとゆっくりとした動きで向き首を動かす。その後、吼える様な声が響く。それはとてつもなく大きく響きさえ感じるほど。
 口を大きく開けたと思えば、灼熱の炎を口から勢いよく吐き出した。
 右側に居た仲間達が受ける攻撃、けれども手を休めてはいけない。
 天道・矜恃(黄昏の魔剣・b06410)は金色の刀身の長剣を振りかざし力任せに振り落とす。柄についている鎖が誰の耳にも届かないほど小さな音を奏でた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
 ドラゴンに負けない雄たけびを上げて御風が、衝撃波を撃ち放つ。見えないそれは自分たちに後ろを向けているドラゴンの背に見事に命中する。その攻撃に気が付いたドラゴンが緩慢な動作で首を左側へと向ける。
 右側の仲間がドラゴンの攻撃によって、態勢が崩れている今、奏也が積極的に動き回るとその動きが鬱陶しいというように、黒く縦に長い瞳孔が動き奏也の動きを捉え尻尾が波打った。
 太い鞭はドラゴンの緩慢な動きとは対照的に、素早くしなり奏也の体を叩く。
「……ッ!!」
 重い痛みに、それ以上動く事が出来ず膝を付く。
 膝をついた奏也よりも前に出る桐見・和也(空想と現実の狭間で・b17974)。奏也のの回復はサポートの優貴に任せ、今は右側の班の攻撃態勢が整うまで、それ以上の攻撃を右側に向けないように長剣で黄金の鱗に斬りかかる。
 右側からの攻撃が止んだかと思えば、左側からの絶え間ない攻撃。
 鬱陶しいとばかりにドラゴンが背中の翼を羽ばたかす。
 刹那、玄関ホールに突風が吹き荒れる。
 咄嗟に顔を腕で覆ったり、態勢を踏ん張ったりする能力者たち。
 ゴーグルをかけていた能力者たちは、舞い上がる塵やホコリ、砂利から目を守る事は出来たが、ゴーグルをかけていない能力者たちはしばらく目を開けれる状態ではなかった。
「アル君ッ!!」
 少女の声が響いた。
 アル君と呼ばれた黒衣の少年が、少女の指差す方向を見た。
 突風吹き荒れてホコリが舞う中、玄関口に銃を構えた砂浜で林檎の欠片を奪っていった時のメンバーがそこに立っていた。
 黒衣の少年の眉が不機嫌そうに顰められたのも一瞬、また目の前のドラゴンに向かう。
「………吸血鬼か」
「……人狼」
 まだ少し残る風に銀髪を靡かせた女性が興味なさそうに低く告げる言葉と、黒衣の少年の呟き。
 ふたつの視線は絡まること事はない。
 銀髪の女性は銀誓側の能力者たちを一瞥した後、ドラゴンを見据えた。

 ここに黄金の林檎を求める三つの組織が揃った。

●Offertrium
 銀髪の女性が発した言葉に、耳を疑ったのは学園の能力者たち。
 物語でしか聞いた事のない言葉。
 この黒衣の少年が『吸血鬼』だというのか。
 しかし今は、その真意をはっきりさせるよりもやることがある。
 黒衣の少年と少女達がドラゴンに向かって攻撃を繰り返す。
 銀髪の女性と銃を構えた戦士たちも、素早い動きでドラゴンの周りに散りそれぞれに銃を構えて乱射し始める。
 大きくなる戦闘音。
 ここに集まった3つの組織が、今だけはどこの組織にも干渉せずにただドラゴンを倒すことに集中している。
 ドラゴンも自分はやられるつもりはないらしく、その攻撃の手を緩めることはない。
 炎の息を吐き出し、近くによれば尻尾をしならせる。
 複数でドラゴンに直接攻撃を仕掛ければ、鬱陶しいとばかりに翼をはためかした。

 右側に展開してる能力者たちは、炎の息で崩れた態勢を立て直している。
 自分で回復手段を持っているものは、ドラゴンの攻撃範囲から一時離れ、傷を癒し再び戦闘できる位置に戻る。
 ゴーグルをつけていなかった紫弦は、ドラゴンの翼から巻き起こった突風で前が醜かったものの、ドラゴンの姿を見つけると詰め寄りフェニックスブロウを放つ。
 真魚は周りの傷ついた仲間達を回復する作業に専念する。
 ドラゴンの尻尾の一撃だけでも、大きな体力の損傷を受けるから、早め早めの回復を心がける。
 ドラゴンの視線が動いた。
「尻尾がくるぞッ!」
 尻尾での攻撃の時のクセを見抜いた真魚が大きな声を振り上げる。大声を上げれば他勢力に情報が漏れることになるのだが、仲間の安全を考えればそんな事を気にもしてはいられなかった。
 態勢を整え再びクレセントファングでドラゴンに向かっていこうとしていた最前線の悠禅にも聞こえ、ドラゴンの視線が悠禅を捉えた後、尻尾が動いた。
 真魚の声を聞いていた悠禅は、しなる尻尾の攻撃を交わすことが出来た。
「Go Bullet of thunder」
 ドラゴンが攻撃を仕掛けてきたすぐに、葵が雷の魔弾を放った。
 魔弾は真っ直ぐにドラゴンの体に命中。
 大きな怒号を上げるドラゴン。
 無機質な黄金の瞳が、ギラリと葵を見る。
「こっちやぞッ! この金ぴかドラゴンッ!」
 まだ万全にはならない戦闘態勢に悟が大きな声を張り上げながら、ドラゴン音足元に一気に走りこみバス停を振り上げて、力の限り振り落とす。
 悟の存在に気が付いたドラゴンは首を動かした後、大きく口開いた。
「……来ますよ! 皆、回避準備!」
 その動きの後に、炎が吐き出されることが分った上人が叫ぶ。
 叫び声の後、吐き出されるの炎。
 まだ回復などをし態勢を整えられない後ろの仲間の盾になるように、悟はそのまま至近距離でドラゴンが吐き出した魔炎に包まれる。
「―――――ッ !!」
 苦痛に顔が歪む。
 熱いのか痛いのか良く分からない。
 炎が吐き出された後、その場で膝を付いた。魔炎に包まれる悟にすぐにのぞみが赦しの舞を施す、魔炎の効果は消えたものの悟は肩で大きく息をするのが精一杯。

 右側の班が大きくダメージを負い続けているのを見れば、左側の班がドラゴンの気を此方に引くために大きく動く。
 此方に気をとられている間、少しでも右側の班が回復でき態勢を整えられたらと。
 しかし攻撃を繰り出しているのは自分たちだけではなく、他に2つの組織。
 あちらこちらから当たる攻撃に、大分とドラゴンにもだめ0時が蓄積されているのは確か。
 目に入るものたちに容赦ない攻撃を闇雲に繰り出すドラゴンは、苛立ってきているよう。
 最後まで気は抜けない。
 時折起こる突風の中ゴーグルを掛けていない響は、塵やホコリで目が開けていられず、顔の前腕をかざし目を庇いながら傷ついている仲間のために歌い上げる、柔らかい歌声。その歌声で周囲に居る仲間の傷が癒える。そうしてまた立ち上がりドラゴンに向かっていく仲間を見て思う。
 色々な人に支えられて、今ここに在る。
 この戦いも自分たちだけの戦いではない。
 だから自分の力を尽くすだけ、この体が少しでも動く限り、気力が続く限り…。
「行くぞッ!」
「あぁ、構へんでッ!」
 浩一がすぐ隣に居る矜恃に声を掛ければ、二人同時にドラゴンに斬りかかる。
 浩一と矜恃の握る長剣と日本刀に纏う闇のオーラ。
 一気に駆け寄り、そのまま勢い良く振り落とす。
 硬いドラゴンの体に食い込む感触が手に伝わる。
 ダメージが蓄積されてきたドラゴンは、先ほどまで気にもしなかった攻撃にさえ敏感に反応をしだす。
 ゆっくりとゆっくりと、緩慢な動作で右側よりだった体を左側に向け視線を二人に向ける。
「諦めない限り、心が折れない限り。負けじゃねー」
 御風が二人よりも前に出て、力の限り拳を叩きつける。
 ドラゴンは次から次へ繰り出される痛みに、耐えるのが精一杯になってきたのかやたらと移動を繰り返すようになった。
 後、もう一息と攻撃を仕掛けようと詰め寄る。しかしアビリティを使うのか通常攻撃で攻撃するのか判断に一瞬の迷いが生じた。
 その瞬間、太い尻尾が飛び込んできた。
 長い尻尾に後退が遅れた御風と、判断が遅れた奏也が重い衝撃に襲われて倒れてしまう。
 そこへ和也が両手に握り締めた長剣で斬りかかる。その黒影剣はドラゴンの鱗に食い込み、痛みに絶えきれずドラゴンは吼えた。

 何度も何度も攻撃と防御を繰り返す。
 自分たちの他にも人が居るせいで大分と動きづらかったりもしたが、ドラゴンと向き合っている時はどの組織も自分たちに攻撃を向けてくることはなかった。
 紫弦の獣爪に不死鳥のオーラが宿った。
 間合いを詰めると一気に、そのままドラゴンの体に叩き込んだ。

●In Paradisum
 ドラゴンが天井に向かって、怒号を吼える。
 地団駄を踏むように、片足で力強く床を踏み込めば、地鳴りが響き出す。
 
 黄金のドラゴンの姿が……。
 今までここにあった、絶対的な存在感が消えていく。
 金箔がはがれるように。
 金粉が舞うように。
 ドラゴンの姿が消えていく中、姿を現すものがあった。
 1/8の林檎の欠片。
 引力に従って落下してくる。
 
 ―――――林檎だッ!

 その場に居た皆の視線が一気に、零れ落ちる林檎に向けられる。
 林檎に近くに居たものたちが林檎目掛けて手腕を伸ばした。


マスター:櫻正宗 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2007/10/05
得票数:楽しい2  泣ける1  カッコいい135  怖すぎ1  知的3  ロマンティック2  せつない1 
冒険結果:成功!
重傷者:相澤・悟(業を背負った天然疫病神・b03663)  碑刻・奏也(棺連なる迷いの葬列・b15692)  桐見・和也(空想と現実の狭間で・b17974) 
死亡者:なし
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