<リプレイ>
●選手入場 雲一つない秋の空。明るい陽射しに照らされて、輝き運ぶ青春の風。 爽やかな心は戦士の証。今日、銀誓館学園で行われる運動会でトップを競うライバルの証。 ほら今も、静かに視線が送られている。続く競技、仮装マラソン中学生の部の選手入場を、今か今かと待ちわびて。 送られる視線は期待か好奇かはたまた闘志か。 様々な思いが渦巻く中、今まさに一人目が姿を現した。 ――スタートラインに、立つために。
走る者が戦士なら、特殊な装い加えた彼らは勇者だろう。 戦いのゴングが鳴るその前に、各選手の紹介へと参ろうか。
初めに姿を現したのは小柄なシスター。 Y字チェーンのロザリオ光らせて、ロングパニエたっぷりの聖職者服を身に纏い、分厚い聖書を胸に抱く、あどけない少女。 その名は守久・美海(白銀を纏いし萌える幼き龍・b06353)! 神との誓いを胸の奥へと仕舞いこみ、約束のゴールへと立ち向かえ!
続いてきたのは少年刑事。 カーキ色のロングコートに、紺色スーツと白いワイシャツ。赤いネクタイをワンポイントに、モデルガンと銃ホルダーまで備えてる。 追ってる奴はどこにいる? 皐那・燐(特定天然記念物・b11483)! 少年の心を信念に換え、ゴールという名の犯人を捕らえる事はできるのか?
怜悧なお姉さんは好きですか? 細身の体を包むのは、丈をギリギリまで上げたスカートと、胸元開いたウェイトレス風のドレス。 大胆な格好で望むのは、ヨギ・レカルド(狂紅の神罰代行人・b14772)! 恥らわないのは大人の余裕か。幾人もの男子を魅了して、勝利のメニューを運び出せ!
おおっとお次は場違いか? ぺたぺたと歩く大きなペンギン春宮・静音(バトルマニアガール・bn0097)! 高い背丈で可愛らしいこの格好。果たして他者への受けはいかに?
真っ赤に顔を染めているのは、あどけない少女の証だろうか。 大胆なバニー服で体を多い、網タイツで肢体を包む。ただしうさ耳ではなくネコ耳被り、お尻の尻尾もネコのもの。 バニースーツの子猫ちゃん、その名も静月・明良(闇を切り裂く雷鳴の剣・b24511)! 男子へとダイレクトアタックする恥らう姿、エネルギーへと返還しゴールへ走る事はできるのか?
妖しい笑みは何へのものか。 白の上着と紺のスカート。そしてガトリングガンを担ぐ姿。 一言で例えるならセーラー服とガトリングガン、ジャルナ・ドゥールンギ(水のソルティレージュ・b25602)! 花も恥らう女子中学生が、ガトリングガン片手に暴れまわるぞ!
次なる選手は……あれか、モチーフはあれなのか! 全身黒光りするスーツに、長い触角。独特の形状を持つ羽を背負う姿は……しかーし! そんな姿を恥らう事無く、胸を張り凛々しく立つ姿はただただ純粋にカッコイイ! そう、それはきっと女王様の証、宵咲・羽散(魔女姫・b01851)! 黄色い声援浴びながら、ゴールへ向かって飛んでいけ!
本人小柄であるが故、大地揺らすような印象は与えない。 サッカーボール片手に歩いているのは、お相撲さんのコスチュームに身を包み、笑顔振りまく元気な少女。 送られるのは暖かな微笑み、アルテア・マッコイ(看板娘・b25367)! 微笑み振りまく癒しの星となりて、いざ戦い後へと赴かん!
活発そうな彼を包むは、民族衣装をベースとした妖精の形。 ゆったりとした衣装に身を包み、犬耳犬尻尾をを携えて、大きな蕗の葉っぱを傘とする。 今、この銀誓館学園に舞い降りたコロボックル、春夏秋冬・未来(アカシャの使い・b30189)! 精霊の力を内に抱き、邁進するはゴールへの道!
これ以上マッチした姿はないだろう。 黒い上着とズボンに白いシャツ。蝶ネクタイを結び、グラスを載せたお盆を片手に持てば、それはまさに執事のもの。 頼りがいのある長身執事、その名も永陸・武史(恵みの叢雨を志す剣士・b26923)! 落ちること無いグラスの乗った、お盆片手に疾風の如く走りぬけ!
続いて……。
紹介が一通り済んだころ。スタートまでのしばしの間、選手たちは各々準備に入る。 「体育は得意だし、普段のトレーニングの結果見せてやる!」 「美海は優勝を狙うですよ。静音ちゃん、勝負なのですよ」 「絶対負けないからねー」 「私だって、負ける気はないわよっ」 「ふっふっふ……正々堂々と勝負デス!」 執事とシスター、虫の女王とペンギンとスモウレスラー……もとい、武史と美海、羽散と静音、アルテアは、笑顔で互いを牽制しあう。 共に全力で戦うため。控える戦いに勝つために。 傍では、自らの衣装にほっと胸を撫で下ろす燐。 刑事服という装いなら、特に妙な面も無い。何より思いっきり、走れそう、と。 「神ヨ……我に勝利を……Amen」 祈りを捧げるヨギの手には、陽光に煌くロザリオが。口付けする様は、ウェイトレスの衣装であるにも拘らず神秘的。 「ふふふ……」 ジャルナはセーラー服の裾をつまみながら、何だか楽しそう。……ベクトルが変な方を向いているのか、どこか妖しいものになっているが。 「はっはっは……」 別の意味合いで笑い声を上げるのは未来。コロボックル姿のこの衣装。見た目に問題は無いが、服が纏わりついて走り辛い。 「お前ら……」 総じて、恥かしがってる様子なし。 「ちょっとは恥らえよぉぉぉぉぉ!!」 子猫バニーな明良を除いては。 彼女は様々な衣装を着た……特に自分が提出したウェイトレス服を着ているヨギに対し、盛大なるツッコミを言葉として吐く。 曰く、裏切り者と。 答えるものは誰も無く。否、時が訪れたため答えることのできるものは居らず、各々スタートの位置へと歩みだす。 目標は一つ。 一位で、ゴールテープを切る事。ただ、それだけ。
●走破距離は三千メートル 燦々と輝く太陽の下。賑やかな空気に包まれながら、告げられた言葉はスタート準備。 各々自らの策を思い描き、走るための構えを取る。 続いて聞こえてきたのは、銃声。スタートを告げる、大きな音。 飛び出したのはペンギンもとい静音と、セーラー服姿のジャルナ。追うのはシスター美海にウェイトレスヨギ。少し下がった所には黒く光を跳ね返す羽散と、犯人を追いかける燐。 (「動かざること山のごとし」) 今はまだ攻める時ではないと、犬尻尾を引き摺りながらペースを抑える未来。更に下がって子猫バニー明良とスモウレスラーアルテア。最後方に執事武史という状況。 まだまだ衣装による差異は見られず、各々自らのペースを護り走ってく。 衣装で風を、切りながら。 やがて四週目も半ばといった頃、ヨギが静音とジャルナに追いついた。……否、静音とジャルナがペースを落とし、ヨギに追いつかれた形だ。 少し下がった場所には美海がいて、懸命にトップを追いかける。 ここに来て、羽散と燐がペースを上げた。 (「さてと、誰にしようかなー」) 続いて、マークする相手を見定めながら、やはり未来もペースを上げる。 後ろからはやはりアルテアがペースを上げ、未来を追う。明良と武史は、今はまだ動かない。 全距離の半分を過ぎた頃。静音、美海は動き辛い衣装からスピードを保てず、ジャルナはガトリングガンが邪魔で無駄にスタミナを消費する。 逆に動き辛いからこそ温存していた未来は、少しづつだけれど確実にペースを上げていた。 順位の入れ替わった六週目の半ば。 (「負けマセンヨ」) トップを走るのはヨギ。すぐ後ろに羽散、燐、未来が並び、少し下がってアルテアがいた。静音とジャルナ、美海はトップ争いから遠ざかり。 (「よっしゃ、ココからは飛ばすぜ!」) 武史と明良はスパートをかけ、彼女たちの横から飛び出してく。 他の者たちも、これからが勝負時。各々ペースを上げていき、最終周のゴングを聞く。 ヨギは逃げる。追う者たちから。 追うのは羽散、燐、未来、アルテア。そして猛然と明良が突っ込んで来る。 後ろではやはり突っ走る武史と、追い抜こうと苦心する静音、ジャルナ、美海。 生徒達の声援を受けながら、頭一つ飛び出したのは……羽散! 羽散はヨギの隣に並び、追い抜こうと最後の力を振り絞る。 無論ヨギも抜かせない。負けない負けられないとの思いを胸に抱き、鋭い走りで逃げていく。 逃げれば追いつき追い抜き。追い抜けば追いつかれ追い抜かれる。 いたちごっこの繰り返し。けれどもいつかは終わるレースのさが。 土煙を上げながら、ゴールテープを切ったのは……ほぼ、同時! 続いて飛び込んできたのは燐で、明良と未来がほぼ同時。その次にはアルテア。後ろの争いは静音が制した形で終結し、ジャルナと武史が同時にラインを割った。 そして美海がゴールする頃には……判定が終わり、告げられる。 誰が一位で、誰が二位なのか。即ち、詳しい順位の内訳が。
――一位羽散、二位ヨギ、三位燐、四位明良、同着未来、六位アルテア、七位静音、八位ジャルナ、同着武史、十位美海!
●輝く青空の下で 一つの戦いがここに終結した。 雲一つない空の下で、勇者達は一時の休息を噛み締める。 「まぁ、こんなものデショウ」 ギリギリで一位を逃したのが悔しいのか、あるいはいつもの様子か、ヨギはロザリオを握り締める。微笑みを、浮かべながら。 近くでは羽散が、静音をぎゅっと抱きしめてから両手で握手。 「また勝負しようねっ! 次も負けないからっ」 「……次は、勝つわよ!」 負けた事に対する悔しさはあるけれど、そんなものは些細な事。 不敵な笑顔で返す静音は、続いて美海に抱きつかれた。 「楽しかったですよー」 「ええ、本当に楽しかったわ」 健闘をたたえあい、笑いあう二人。 続いてアルテアともハグしあい、楽しかったと笑顔で話し……友情を、深め合う。 影では、こそこそ着替えに行こうとしているジャルナの姿が。曰く、このセーラー服は静音ちゃんの私物っぽいから、と。 静音は何かを感づいたのか、とりあえず釘を刺す。持ち帰らないでね、と爽やかに。 未来は参加者全員と、握手して回っていた。結果は結果で、過程は過程。お互い頑張った事を、たたえあいながら。 「詰めが甘かったか……もっと精進しないとな」 武史は結果を残せなかった悔しさをバネに換え、誓う。もっと、速くなると。 そして一通り、心に抱く想いを整理して、笑顔で皆に提案する。今の姿で、写真を撮らないかと。 さっさと着替えに行こうとしていた明良を連れ戻し(あるいは連行し)、カメラのタイマーをセットして、各々思い思いのポーズを取る。 突き抜けるような青空の下。 健やかな風が吹く場所で。 今、青春の一ページが、刻まれる――。
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参加者:9人
作成日:2007/10/08
得票数:楽しい11
笑える2
カッコいい1
怖すぎ1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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