汚泥溢れる河川にて


<オープニング>


「それじゃ、依頼の説明を始めるわね」
 甲斐原・むつき(中学生運命予報士・bn0129)は淡々と依頼の概要を口にする。
「実はね、運命予報されるほど強力な残留思念が発見されたの。これがゴースト化して世に放たれれば大変な事になるわ」
 場所はとある河川の下流付近である。昔から水害が多かったこの河川沿いの町では、何人もの人が水難事故で命を失ったという。そうして上流から流されてきた遺体が決まって発見されるのが、泥や石がうずたかく押し寄せるこの下流近辺だった。
「詠唱銀を振り掛けると、ゴーストは河川の中ほどに現れるわ。水かさは膝くらいまでしかないから安心して」
 泥に足を取られて少しばかり動きづらいだろうが、それは相手も同じことである。

 出現するゴーストの数は全部で6体。地縛霊が4体に妖獣が2体だ。
「地縛霊は子どもが2体に大人が2体。子ども型は通常攻撃の他に射撃での怒り攻撃を持ってるわ。大人型は遠距離用の回復ね。妖獣は水草と泥を鱗代わりにつけた巨大魚みたいな姿。猫みたいな足が10本生えてて、体当たりと毒を持つ射撃攻撃が武器よ。地縛霊よりも強めだから気をつけて。体当たりは吹き飛ばされる可能性があるわ」
 彼らは子ども型1体、大人型1体、妖獣1体でひと固まりになって動く。つまり同じ編成で2チームが作られるというわけだ。その習性を利用する事が出来ればこちらも戦いが楽になるだろう。敵の数が少ない分、一体一体の防御力や攻撃力は高めと考えていい。

「生まれたばかりのゴーストといっても、今回の敵は強力よ。決して油断だけはしないでね」
 むつきはそう言って最後を結ぶ。ついで小さく頭を下げてから、能力者達を送り出した。

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参加者
天原・三月(天穿・b01037)
赤札・櫟(シュトゥルムニンジャ・b01421)
レイラ・フォーティー(剣姫の銀星・b03068)
風見・隼人(用心棒・b03643)
媛苑・基青(皓月の青祷・b06538)
焔堂・さやか(高校生魔剣士・b15942)
波多野・のぞみ(這いずる者達の女王・b16535)
楊・ユノ(その誓いは未だ果たせず・b28997)
葛乃葉・恭一(高校生ゾンビハンター・b30082)
綾瀬・千鞠(祝福の娘・b31068)



<リプレイ>

●河川にて
 水の事故に見舞われた人達の遺体が流れ着いたという河川下流域。冷水と泥に膝までつかりながら、一行は詠唱銀を振りかける。
「……水の事故って、やっぱ凄く苦しんだんだろか」
 遠距離攻撃の届く距離を見極めながら、天原・三月(天穿・b01037)が呟いた。泥に足を取られないよう、足元にも充分気をつける。
「自然災害で失われるのは悲しいことだが……死んだ後まで現世を彷徨うことも無いだろう」
 三月に応える風見・隼人(用心棒・b03643)は既にイグニッションを終えてその手に鬼切丸を携えている。同じく赤札・櫟(シュトゥルムニンジャ・b01421)は大黒天の刃を閃かせ、呟いた。
「今回はハナっから全開で行く。弔いは後だ」
「ええ。よろしくね、櫟」
 櫟の視線を受けて、レイラ・フォーティー(剣姫の銀星・b03068)がこくりと頷いてみせる。まだ被害が出る前に叩いておけるのだ。悪くない、と媛苑・基青(皓月の青祷・b06538)はひとりごちた。
「難破船の時のような思いはしなくていい……ってことだよな。生まれたてのとこ悪いけど、全力で行かせてもらう」
「もちろんだ。多数の命には代えられぬからな」
「そうです。力を合わせてやっつけちゃいましょう!」
 頷く焔堂・さやか(高校生魔剣士・b15942)の手には二本の長剣。綾瀬・千鞠(祝福の娘・b31068)の手にはうさぎさんスペシャルだ。ではでは、と手を振った千鞠は出来るだけ岸に近い場所に布陣する。その少し前に基青、やや離れた所に三月といった具合だ。前衛を務める者達は川の中ほどまで踏み入って、ゴーストの出現に備える。
「イグニッション解除すると元に戻るといっても……」
 やはり泥まみれになるのは気が進まない。あとでお風呂に入りたいかも、と楊・ユノ(その誓いは未だ果たせず・b28997)は思わず呟いた。
「いずれにせよ、早く退治しなければなりませんわね。よろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ」
 波多野・のぞみ(這いずる者達の女王・b16535)に頷いて、ユノもまた自らの詠唱兵器を構えた。ガンナイフと、リボン型の蛇鞭。のぞみの両手には榊がある。
 葛乃葉・恭一(高校生ゾンビハンター・b30082)はスパナで自分の肩を叩きながら同じ班の仲間を振り返った。
「今回は難しいこと考えなくてすむから俺向きで助かるわな。……っと、一応確認。俺らは左側の連中をやればいいんだよな?」
「ああ、その通りだ。我々のチームプレイの方が勝っていると、敵さん達に思い知らせてやろうか」
 口元に笑みを刷いたさやかの言葉が合図となる。詠唱銀を得た残留思念は次々とゴーストを生み出し、能力者達の前へと立ちはだかった。

●汚泥に沈む怨念【1班】
 今回倒すべき敵の編成はとても分かりやすいものである。子ども型の地縛霊と大人型の地縛霊、そして猫の足を生やした魚型の妖獣がそれぞれ1体ずつ。それが2組現れるのだ。
「子供相手に気が引けるが……許せ!」
「悪いな。お前が一番厄介なのだ」
 情は断ち切りきれずとも、容赦はしない。隼人とさやかが発した闇は汚泥を突き抜けて真っ直ぐに子ども地縛霊の体を撃った。続いて恭一が躍り出て、黒影剣を突き立てる。
 攻撃はまだ終わらない。
 後方、ぎりぎりで遠距離攻撃が届く位置に立った基青と千鞠がそれぞれ光の槍と破魔矢を生み出していた。
「悪いけど、こっちは遠距離攻撃得意なんだ」
「はいっ。なんなら千鞠に倒されちゃってくれてもいいんですよっ!」
 足場が悪いのなら、無理に動かなければいい。基青の槍と千鞠の矢は互いに競うようにして宙を滑走、相次いで地縛霊の胸を貫いた。
 全員で息を合わせての総攻撃。脇に控える大人型の地縛霊が回復をかけるが、明らかに充分ではない。
「おっと、いかせねぇよ!」
 突撃してきた妖獣の攻撃を前へ出た恭一が受け止めた。派手に吹き飛ばされるが、すぐに立ち上がって駆け戻る。
「大丈夫ですかっ?」
「ああ、まだいける」
 恭一の返事を聞いて千鞠は再び破魔矢を紡ぐ。子ども地縛霊の腕があがり、基青を指差した。精神状態を狂わされた基青は通常攻撃を行うために移動を余儀なくされる。
 だが、残りの仲間全ての攻撃を受けた子ども地縛霊はそのまま消滅。基青もすぐに自分の持ち場へと戻る。
「次の標的だ、打ち合わせ通りいくぞ!」
「了解!!」
 隼人に返答した仲間達は次々と自己強化技をかけていく。敢えて戦闘開始直後にはこれを行わず、厄介な状態異常技を持つ子ども地縛霊を速攻で討つという作戦は見事に成功した。
「ゴーストをコテンパンにするのは前衛さん達にお任せしますっ!」
 頑張って下さい、と千鞠はダメージを受けていた恭一を優先して前衛に祖霊降臨をかけていく。ここからは回復優先で構わない。基青はまだ攻撃を優先し、光の槍を解き放った。さやかは旋剣の構えを発動しながらもう1班の援護に向かう。
「無理はするなよ」
「そっちこそ」
 隼人と恭一は頷きあい、今度は大人型の地縛霊へと肉薄する。ただし妖獣の動きにも注意して、出来るだけ自分達の方に攻撃が行くよう仕向けた。後衛にまでダメージを通させはしない。
「単調な攻撃っていえばそれまでだけど……」
 決してその場を動かず光の槍を打ち続ける基青は、けれどと口を開く。
「悪いが、その分の本気を一撃一撃に込めさせてもらってるんだ」
 妖獣に背後をつかれた恭一がダメージを負って膝をつく。だが、千鞠の祖霊降臨がそれを支えた。自らも旋剣の構えで回復して立ち上がる。その様子を目の端に入れながらも、基青は決して自分の役目を違えなかった。
「これで終わりだっ!」
 たとえ怪我を負っても、千鞠が控えていてくれるために安心して攻撃に回ることが出来る。大人型地縛霊は自らを回復させる事で手一杯だ。攻撃、回復。攻撃、回復。けれどいたちごっこはいつまでも続かない。
「待たせたな」
 ややあって、仲間の援護に出ていたさやかも復帰する。さやかと隼人、2本のダークハンドが恭一の黒影剣とともに踊り狂う。
 それらはこれでもかと地縛霊を斬り裂いて、終わりを与えた。
「さてと、ラストだな」
 ちょうど光の槍を使い切った基青はこのタイミングでリフレクトコアを発動。白い錫杖を手に前衛のフォローへと出る。
 これで前衛が4人。
 この段階で、既に勝負は見えていた。

●汚泥に沈む怨念【2班】
「いくよっ!」
 仲間達と目配せを交わした三月は、打ち合わせ通り右側にいる子ども型地縛霊を狙って龍撃砲を発射した。それを追うようにして、後衛からは櫟の水刃手裏剣とユノの雑霊弾が飛んでいく。
「私を抜けられると思ったら大間違いよ」
 最初の標的は、こちらの班でも子ども型地縛霊を狙うと決めていた。肉薄したレイラは旋剣の構えを発動、体勢を整える。
(「信じちゃいるが、余り無茶してくれるなよ……」)
 その背中を見送りながら、櫟はそんな心配を胸の内に押し留めた。彼女を援護するように、水刃手裏剣を再び放つ。
「蟲さん達、皆に力を貸して!」
 レイラの後ろについたのぞみが白燐蟲を解放した。前に出た彼女を狙って、妖獣が泥を跳ね上げて突進してくる。
「危ないっ!」
 それにいちはやく気づいた三月が間に入った。だが、吹き飛ばされて陣形が崩される。
「任せろ!」
 代わりに櫟が妖獣を引き受けて、前へ出た。だが攻撃の狙いは子ども型地縛霊につけたままだ。第二手目の攻撃を凌ぎきった子ども型地縛霊の指が持ち上がり、のぞみの回復が封じられる。
「櫟はやらせない」
 ダメージを負った櫟を庇うようにして、今度はレイラが前に出た。櫟は素直に後ろへと下がり、魔弾の射手で回復する。その頃には三月も前線へ復帰し、再び龍撃砲を放った。
「助太刀するぞ」
 そして、一足先に担当班側の子ども地縛霊を倒したさやかが加勢に加わる。ダークハンドはユノの雑霊弾とともに地縛霊を貫き、消滅させた。
「ゆっぴ、おいで!」
 それを確認したユノはすぐさま自分のスーパーモーラットを呼び戻す。前では三月が自らに白燐奏甲をかけ、怒りから立ち直ったのぞみが櫟の武器に白燐蟲をまとわせているところだった。
「ここからが正念場ですね」
「ええ、絶対に負けませんわ。蟲さん達、敵をお願い!!」
 大人型の地縛霊が回復をしようとしたのを見て、のぞみは白燐拡散弾を放つ。回復の手を止めることは出来ないが、少しでも体力を削る手伝いは出来たはずだ。前衛を務めるレイラと三月は妖獣の攻撃も受けるため、敵の数が減るまではどうしても回復に手を取られる。
「私に触れるにはまだ早いわよ!」
 だが、やはり火力の差が物を言った。もう1班と同様自らを回復させることで手一杯となった大人型地縛霊へと、レイラは角兜での頭突きを試みる。
「これでどうだっ!」
 かたや、三月が繰り出すのは龍尾脚。更に櫟とユノの援護射撃を受けた地縛霊は遂に消え去った。
 これでこちらも、妖獣を残すのみ。

●昇華
 隼人の剣が閃き、さやかの剣が舞う。恭一のスパナが叩き込まれ、基青の錫杖が軌跡を描いた。千鞠が踊る舞は彼らの受けた傷を癒して憂いを絶つ。
 最も強い敵相手にアビリティが尽きた状態で挑むのは少しばかり分が悪い。だが、既に敵は1体。難なく勝利を手にした彼らは、すぐにもうひと班の援護に向かう。
 水刃手裏剣を使い果たした櫟はレイラとともに双璧を為し、蟲笛をふるう三月と並んで敵の足を留める。彼らに守られたユノとのぞみはそれぞれの役目を果たして、攻撃と回復に専念した。
 最後に妖獣へ加えられたのは怒涛の連撃。
「やりましたっ!」
 全ての敵を倒して、千鞠は嬉しそうに飛び上がる。そのせいで更に仲間は泥まみれ。
「うー、この泥だらけどうしましょう〜」
「確か、イグニッションを解けば大丈夫なんですよね?」
 ユノが答えて、岸辺にあがってからイグニッションを解く。ちゃんと元通りになっているのを見下ろして、ユノは「ほんとだ」と感心したように呟いた。
「ふぅ……櫟、無事?」
「ああ」
 レイラの問いに櫟は満足げな様子で応える。
 静けさを取り戻した川辺に、基青の歌う鎮魂歌が静かに流れる。それには二度と同じような残留思念が生まれないようにと、そんな願いが込められていた。


マスター:ツヅキ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2007/11/05
得票数:カッコいい23  ハートフル1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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