<Halloween>きらめきゆらめき


<オープニング>


「ハロウィンのランタンって、ちょーっと怖いけどなぁんか可愛くも感じるんですよねぇ」
 こーゆーの、と何だか歪んだかぼちゃお化けを黒板に落書きしながら笑う三石・沙恵(中学生運命予報士・bn0061)に、高瀬・綾乃(内気な白燐蟲使い・bn0006)は困惑の表情でその背中を見つめた。
「あっ、すみません。もちろんお仕事に関係することなんですよう? あのですねぇ、とある公園でハロウィンパーティーが開かれるんですけど、その公園の奥のちょっとした林に野良犬のリビングデッドが二匹出るんですよー。その退治をお願いしよーかなーっと思いまして。ほっとんど腐ってますんでー、さくーっと倒せると思いますけど♪」
 林の中に入れば寄ってくるだろうから探す必要はないと、沙恵は軽い口調で続けた。
「で、終わったらそのままハロウィンパーティーに繰り出すのはどーでしょーか? 仮装していれば、自由に参加可能なんですー」
 仮装は必須だが、あっさりしたものでも凝りに凝ったものでも構わないそうだ。
 メイン会場は二つ。
 ランタンや蜘蛛の巣で飾り付けられた木々に囲まれた大広場と、噴水広場である。
 大広間ではお姉さんやお兄さん方がお菓子を配ってくれているそうだ。かぼちゃのケーキ、パイやパン、キャンディやクッキー、チョコレートなど様々なお菓子が配られている。ここではお菓子を貰うことはもちろん、持参した自慢のお菓子を配ることもできる。
 お菓子を配る人は主催側から黒猫のブローチを貰いそれを身につける決まりになっている。ブローチをつけていればお菓子を欲しがる子供が寄ってくるだろう。ブローチをつけていると悪戯をされる可能性があるので注意が必要だ! 逆に言えば、ブローチをつけている人には悪戯をしかけることも可能ということである。もちろん、やり過ぎない配慮は必要になるだろうが。
 噴水広場に向かえば、噴水池に浮かべられたパンプキンキャンドルが出迎えてくれるだろう。
 噴水の止められた池一面に広がるジャック・オ・ランタンというのも少々怖いものがあるかもしれないが、星空の下水面に映り揺らぐ灯りはさぞ綺麗なことだろう。
 二つの会場を繋ぐ道にも両脇にランタンが並び飾られ、足元を照らしてくれている。
「ま、特に派手な何かがあるってーわけじゃーないですが、仮装するだけでもいつもと違った気分になれますしね♪ お菓子を貰ったり配ったり、悪戯をしてみたり。たまにはのんびり楽しむのもいーんじゃないでしょーか? キャンドルを浮かべ眺めてしっとり楽しむのもいーですよねぇ」
 うっとりと言う沙恵に、綾乃がこくこくと首を縦に振って同意している。
「高瀬さんも、周りの人みーんな仮装してるんですから、恥ずかしがらずに楽しんできてくださいねー」
 沙恵の言葉に頷いていた綾乃の動きが固まって、やや逡巡したのち、綾乃は遠慮がちに頷いた。
「ってゆーことですんで、めーいっぱい楽しんできてもらって構わないですけど、退治の方もお忘れなきようー。せっかくのパーティー、台無しにされちゃたまらないですもんね」
 お願いしますね、と微笑んで、沙恵はぺこっと頭を下げた。

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参加者
風見・莱花(白薔薇の令嬢・b00523)
叢雲・更紗(ダブリス・b01029)
アキシロ・スチュワート(碧眼の従者・b01500)
鷹宮・雛姫(薄紅の小さな祈り・b01814)
二条・里奈(桃花千歳春・b06793)
姫路・紗英(荊棘・b14789)
柴崎・奏子(奏でる詩・b32640)
塩谷・誠一郎(高校生土蜘蛛・b32726)
NPC:高瀬・綾乃(内気な白燐蟲使い・bn0006)




<リプレイ>

●輝く夜にさよなら
 這い出てくる屍の目に映るのは、北斗七星が刀身に刻まれた太刀に施された白燐蟲の淡い光と、四人が生成した魔法陣の輝き。耳に聞こえるのは、長ドスと長剣が高速回転により鋭く空を切る音。
 本能が危険を告げて腐った体を突き動かすより早く、風見・莱花(白薔薇の令嬢・b00523)の背後に生まれた十字架型の後光に包まれ放たれた裁きの光に貫かれ、二匹は身を跳ねさせた。
 二条・里奈(桃花千歳春・b06793)は素早い動きで距離を詰め、三日月の軌道を描く蹴りを放つ。
「ハロウィンだからって悪戯が過ぎてはダメなのですよ」
 合わせるように鷹宮・雛姫(薄紅の小さな祈り・b01814)の投げつける鋭い水流の刃が体に突き刺さった。
 莱花の光の十字架の光の波が二匹を襲い、
「仕事は仕事です。早く終わらせましょう」
 アキシロ・スチュワート(碧眼の従者・b01500)の放つ聖なる矢が一匹の命を滅した。
 残る一体を、叢雲・更紗(ダブリス・b01029)の狙い定めた正確無比な雷撃が撃ち貫く。
「楽しむためには、退治をしっかりしないとね」
 年頃よりも大人びた口調で冷静に呟き、姫路・紗英(荊棘・b14789)が術式を編み込んだ雷を走らせた。
 弾ける雷の中に塩谷・誠一郎(高校生土蜘蛛・b32726)が飛び込んでいく。ばくんと背中から開いた蜘蛛の足が生きる屍を貫き、その命を吸い尽くした。
 ようやく眠りにつくことができた二匹の犬の亡骸を前に、雛姫がそっと傍にしゃがみこむ。
「……お土産、持って行ってね」
 名もない二匹にも楽しいハロウィンの思い出をと、雛姫は鞄から取り出したクッキーを二つ地面に置いた。
「……ハッピーハロウィン……」
 その横でそっと両目を閉じた里奈が囁くように呟く。
 仕事を終えて林を後にする皆を、少し離れた所で人が来ないか見張りをしていた柴崎・奏子(奏でる詩・b32640)が迎えた。
「余裕だったみたいだね。こっちも誰も来なかったよ」
 皆強そうだし、と笑いながら言う奏子も、人が来なかったおかげでヒュプノを使わずに済んでいる。
 拍子抜けするほどあっさりと戦いの舞台は幕を下ろし、煌く夜の幕開けを迎えた。

●きらめき
 大広場は不気味にお茶目に飾り付けられ、この夜ばかりは様変わりを遂げていた。
「今年のハロウィンはちょっと大人の雰囲気を出してみたかったのだけど、どうかしら?」
 広場に足を踏み入れて、莱花はくるりとアキシロを振り返る。纏ったサキュバスの衣装は色っぽく、際どく布地が揺れた。胸元もかなり開き、すらりとした足も惜しみなく覗かせている。
 従者である彼はどう思うだろうかとアキシロを見上げながらも、時折人目を気にして視線を周りへ移す。そういえば林に向かう途中も視線を気にしているようだった。
「よく似合っておられますよ」
 露出の多さには特に言及せず、穏やかに答えるアキシロは自身のペールブロンドを雪を思わせる真白な長髪のウィッグで隠し、隙間から単の覗く狩衣を纏っていた。外人の彼ではあるが、幼少時を日本で過ごしたせいか純和風の装いも違和感なく着こなしている。眼鏡の代わりにコンタクトを入れ、鬼を模して頭から二本角を生やしていた。
「今日は普段出来ないことも思い切りやってみたいわ♪」
 普段はお嬢様らしく上品に心がけているけれど装い変えた今宵は、と莱花は楽しげに声を弾ませながら黒猫のブローチを胸につけた。
 広場には皆も含めて沢山の人が黒猫のブローチをつけてこの時間を楽しんでいる。
 吸血鬼の装いでラッピングしたクッキーや飴を籠に入れ配っている更紗の周りには子供が集まり、お菓子を貰った子達が彼女の纏うタキシードを憧れの目で見上げていたり、悪戯に勤しむ子達が羽織った黒いマントを引っ張ったりとじゃれ付いていた。
 余程楽しみだったのか、そわそわしながら更紗の後ろに回った奏子は、じゃれる子供達に混じってばさっとマントを捲り上げた。
 急に涼しくなった背中に楽しげに小さく笑いながら、振り返った更紗は手袋に包まれた奏子の手にお菓子を乗せてやった。
「この調子でイタズラしまくるよ!」
 短く礼を言った後、奏子はマフラーと魔女っ娘衣装を揺らし、被った大きな帽子を落とさないようにしながら、見つけた莱花の姿を次のターゲットにして駆けていく。
 木々を飾る蜘蛛のおもちゃを一つ拝借して悪戯突撃する奏子に、莱花は思わず悲鳴を上げかける。おもちゃだとわかってほっとするものの、その隙を狙ってか彼女には悪戯好きの子供たちが殺到した。
「おねーちゃんお菓子ー!」
「悪戯したから、どうしようかしらね♪」
 悪戦苦闘しつつも莱花は仕返しにとお菓子を隠し悪戯を返しておどけて見せる。
 子達とじゃれる莱花の姿を、傍らのアキシロは優しい眼差しで見守っていた。
 そんな二人の横を、衣装を整え走ってやってきた里奈が姫を探してきょろきょろしながら通り過ぎていく。
 子供に群がられている綾乃の姿を見つけて、がんばれー♪ と声援を送りながら里奈は姫を求めて派手過ぎない青と金の装飾が施されたロイヤルブルーを基調としたジャケットを翻す。
 シルバーの襟と先の広がった袖、紺のパンツに黒いブーツを合わせ、大きなベルトに剣を下げた姿は、王子様そのものであった。
 笑顔の多い会場の中で誠一郎は少々難しい顔をしていた。人そのものに慣れない彼にとって、これだけの人に囲まれた状況は些か気の重いことなのだろう。彼にとっては、当然強敵であるゴーストより目下の難敵は人なのである。
 はしゃぎ回る子供たちの姿に気圧されながらも、誠一郎は覚悟を決めて荒療治のため進み出た。
「来るべきでは……いや、やらねばならんのだ」
 持参した菓子を見て寄ってくる子供たちに一瞬怯むが、これも実地訓練とそれを押し隠して表情を引き締め、まなじりにきっと力を込める。
 服装こそ制服のままだがガーゴイルをイメージした角や尻尾、イミテーションの牙と、鉤爪代わりのアーマーリングを付けて、口を開くのを得意としない彼は目が合った子供に片っ端から菓子を差し出す。菓子を受け取った子達は笑顔で礼を返したり、子供らしく打ち解けて悪戯に精を出す。
 誠一郎は同じように菓子を配っている更紗の菓子を受け取ったり、不器用ながらに交流を持とうと試み、綾乃や奏子に声をかけていたりする
 悪戯は気にしていなかったが子供があまりに尻尾を引っ張るものだから、誠一郎はそれが壊れる前に少年の脇に手を入れ抱え上げた。表情を変えないまま、仕置きだと友人の暴れ独楽を思い出しながらぐるぐると回る。
 しかしそれも子供には遊びでしかないのだろう。誠一郎の腕の中で子供はこれ以上ないほどはしゃいでいた。
「楽しそうね」
 噴水広場に向かう途中でそれを目にした紗英は、思わず頬を緩ませながら呟く。そうだろうか、と眉をひそめる誠一郎に、紗英は頷いて答え笑った。
 皆のそれぞれに似合った衣装と、その姿が雰囲気が作り出す独特の空気に包まれた空間は、普段とは一味違って特別に見えて心が弾む。
 向かう途中で出会った子供に菓子をねだられて、紗英は微笑みながら鞄から取り出した菓子を手渡した。
「ハッピーハロウィン!」
 笑顔で告げて、ベリーダンスの踊り子に扮した紗英は羽織ったベールをふわりと遊ばせながら歩いていく。
 人の多さにおろおろしていた雛姫は、あたふたしつつ一生懸命やっている綾乃を見て、自分も頑張らないと、と一つ息を吸い直した。
 歩く度に揺れる薄紅色のふわふわドレスは沢山の硝子ビーズがあしらわれ、その背中からは透き通った妖精の羽が生えている。
 お姫様に扮した雛姫はやっと見つけた里奈の姿に少々見惚れて頬を赤らめながら駆け寄った。
 それに気づいた里奈は、可愛いなぁ、と心で呟きを零しながらお姫様を笑顔で迎えた。
「羽……妖精のお姫様ね!」
「テーマにあわせて、ね」
「妖精と人の恋のお話かぁ。……あ、そうだ、花を持ってきたんだ」
 飾らせてねと里奈が微笑むと、雛姫はこくんと頷いて少し屈んだ。茶色の髪に赤い秋桜がそっと飾られる。
「きっとこの花が二人の世界を繋いでくれる」
 微笑みあって二人は手を取り、しっかりと繋いだまま噴水広場へと向かった。
「綾乃お姉さんー!」
 大好きなプリンを見つけて山ほど味わい、思う存分悪戯を堪能している奏子は、綾乃を見つけて悪戯っぽく笑い後ろから近づいて脇腹をくすぐった。
 身をくねらせ頬を赤らめて振り返る綾乃は、奏子の姿を見て照れたように笑う。
 きらきら輝く瞳でメイド服を着て欲しいと奏子にお願いされて、綾乃は奏子さんがお嬢様になるのでしょうか、と遠慮がちに笑いながら首を縦に振った。
 可愛らしいメイド服に衣装替えして、綾乃は奏子の魅せる踊りに拍手を送る。
「Trick or treat」
 急に暗くなった視界に綾乃が驚き振り返ると、そこには気づかれないよう近づき後ろから両手で綾乃に目隠しを仕掛けた更紗の姿があった。
「綾乃の仮装は可愛らしいな……よく似合ってる」
 更紗がそう続ければ、綾乃は照れの余り真っ赤になってしまう。
 人に酔ってはいないかと気遣いの言葉をかけながら、更紗は噴水広場で少しゆっくりしないか? と綾乃を誘い出す。綾乃は嬉しそうに誘いを受け取った。
 思いっきり遊んで一息ついた莱花は、騒ぎの余韻に頬を緩ませながら視線を噴水広場の方へと向けた。
「参りましょうか、莱花さま」
 そんな彼女の手を取って、アキシロは繋いだその手を優しく引いた。
 執事の服装でないこともあってか少々従僕らしさの抜けたアキシロの行動に、莱花は彼の思惑通り目を丸くする。けれどすぐに微笑みを浮かべてその手を握り返した。
「トリックオアトリート! お菓子をくれなきゃ、悪戯しちゃうわよ?」
 隣に並ぶ莱花にそう見上げられ、今度は用意のなかったアキシロが少々戸惑うこととなった。
 すぐに冷静な表情に戻る彼にくすくすと笑いながら、莱花はランタンの並ぶ道を歩く。繋いだ手から伝わる温もりに温かな安堵を覚えた。

●ゆらめき
 暗い池の水面に数多のジャック・オ・ランタンが浮かび、おどけ笑う顔がキャンドルの光に照らし出されている。
「ハロウィンは、日本のお盆に当たる行事なんですよね」
 池の傍に寄ったアキシロはキャンドルを手にしながら、今夜は冥界と地上の境がなくなり死者が現れると言われるのだと続けた。
「今でも、明後日は万零節と言って亡くなった人を惜しむ日となっています」
 言いながら、アキシロは小さい頃に亡くした両親に見せるようにパンプキンキャンドルに火を灯した。
 沢山のキャンドルを抱いた水面を携帯で撮影していた莱花は目を移して、詳しいのねとその横顔を見つめる。思い出したように流れる風が露出度の高い彼女の衣装を揺らして、肌寒さを思い起こさせた。
 それに気づいたアキシロは、自身の狩衣を脱いで莱花の肩にかけてやる。莱花は感謝の笑みで答えて、狩衣に身を包んだ。
「今日は一緒に来てくれて有難う、アキ。久々に小さな子供に戻った気分だわ」
 しっとりとした雰囲気に浸って、莱花は口を開いた。
「子供の頃から、貴方はいつもそばにいてくれたわね。これからもずっと一緒にいられるかしら?」
 いられるわよね、とにっこり微笑みかけると、アキシロは優しい微笑みを返した。
「お嬢様が、風邪をお召しにならないうちに帰りましょう」
 しばしの間を置いて返って来た言葉はいつもの執事らしい彼の言葉で、莱花はまた小さく笑った。
 少し離れた所で、池の傍に屈んだ紗英は小さな火の揺れるそれを静かに池に浮かべて、また一つきらめきを増やした。
 やってきた更紗と綾乃と目が合って、静かな空間にあわせ微笑みを交わしながら、紗英は噴水広場の周りを囲むベンチの一つに足を向けた。
「確かに……これは少々アレなものもあるが、灯りはとても綺麗だ」
 揺らめく光に目を奪われて、更紗は小さく呟きを零した。
「知っているか? 元々このランタンは南瓜ではなく蕪で作られていたんだそうだ」
 キャンドルから視線を移して更紗が問いかけると、綾乃は首を横に振る。
 今でも蕪を使って作る国もあるが、アメリカへの移民達が蕪よりも加工しやすい南瓜を利用するようになったのが広まったらしい、と続く話に、綾乃は更紗さんといると賢くなれる気がします、と尊敬の目を向け照れ笑う。
「Happy Halloween」
「は、ハッピーハロウィン、です……」
 彼女の笑顔と綺麗な灯りとに、更紗は嬉しそうに微笑んだ。
 時折柔風に吹かれて揺れながらも、灯る火を絶やすことないキャンドルを見つめ、雛姫は言葉に迷い同じように池に映り込んでいる里奈の顔に目をやり、水越しに目を合わせた。
 少し鼓動の早くなった胸にクッキーの袋をそっと抱いて、深く呼吸をする。一拍置いて勇気を出して、雛姫は里奈の目を真っ直ぐ見つめてその袋を差し出した。
「里奈ちゃんに食べて欲しくて作ったの。貰ってくれるかな」
「クッキー! わー、もちろん頂きます!」
「それと……一緒に、踊ってもらえませんか?」
 嬉しそうに受け取って早速開けようとしていた里奈に、頬を赤く染めた雛姫が言葉を被せる。
「うん、踊りましょ! ……じゃなくて、喜んで」
 言い直して恭しく礼をして見せ、里奈は雛姫の手を取った。
 静かに寄り添い、少し遠く聞こえる奏子の歌声が混じる広場の喧騒を音楽に、二人は足を踏み出した。
 リードしてくれる里奈の手を取る手にそっと力を込めて雛姫が微笑むと、里奈も微笑みを返した。
 お互いの顔の向こうに見えるキャンドルの灯が、少し眩むほど綺麗にきらめいて見えるのはこの幻想的な雰囲気のせいだろうか。
(「この夢がずっと終わりませんように……」)
 声に出さずに願った雛姫は、心の中に里奈から貰った永遠に消えない暖かな光を感じて頬を緩ませた。
 幸せそうな雛姫の表情を見てつられるように笑う里奈は、繋いだ手の温もりを確かめるようにぎゅっと雛姫の手を握る。
「……大好きだよ」
 今日は真っ直ぐ瞳を見つめて言える言葉を里奈は迷わず告げた。
「私も……大好き」
 輝くキャンドルの数よりもっといっぱいの思いを込めて雛姫も答える。
 月明かりだけになっても、こうしていられたらいいなと思いながら、里奈はすべての光の先にあるような雛姫を見つめた。
 まるで御伽噺の王子様とお姫様のように、二人は踊り、踊る。
 ぼんやりと夜に浮かび上がる池と周りの笑顔を静かに眺めていた紗英は、揺らめく光ときらめく水面に感嘆の息をつく。
(「灯りが揺らいで、本当に綺麗……」)
 絵画のように美しい光景なのに、キャンドルの光は優しくてどこか暖かみを感じさせ胸を満たした。

 特別な夜は胸を熱くさせ、心に想い出を残して過ぎていく。
 そこかしこに飾られたジャック・オ・ランタンは、何だか楽しげに笑って皆の夜を見守っていた。


マスター:月白彩乃 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2007/11/08
得票数:ハートフル2  ロマンティック13 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
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