vampire night〜影の城へご招待〜


       



<オープニング>


 両手には大きな紙袋、パンパンに中身が入っており大変重そうに持って歩いていく一人の少女。
 学校の門の前で立ち止まって、深呼吸。
 よっぽど重かったらしい。
「到着ー。ほんで、どないしようかなぁ……。そうや、真理ちゃんか誰かにメール送ってみよ」
「……銀誓館学園に何か用でも?」
「あっ!? えー。あ、私、山崎・あゆみって言います。あのー。招待状を持ってきたんですけど…?」
 携帯電話を取り出しアドレス帳の中から、この学園の見知った生徒へとメールを送ろうとした時、背後から聞こえてきた声に振り返る。
 振り返った先にいたのは王子・団十郎(高校生運命予報士・bn0019)が不思議そうにあゆみを見ていた。学園の生徒の言葉に、慌てるあゆみ。
 どうにかこうにか名前と用件をいいながら、あゆみは紙袋から招待状を一枚取り出すと、団十郎に差し出した。
 団十郎は少し困ったものの、差し出された1枚の招待状を受け取る。
「……それなら、学校の中で話を聞こうか」
「あぁ、ホンマに? 助かったー」
 中身を見た団十郎は、あゆみを促し詳しい話を聞くことにした。


「と、言うわけで、山崎・あゆみから城が出来たから皆を招待したいと申し出があった」
 集まった能力者たちに話を始める団十郎。
 彼の前には大きな紙袋二つ。
 中身は全て招待状。
「内容は正統派の舞踏会と砕けた感じのパーティーを催すといったものだ」
 あゆみからの説明をもうすこし詳しく説明する。
 アル君が主催するのは舞踏会。シンデレラなど御伽噺のようなものを想像すると分りやすいだろう。ドレスがなければワンピースやスーツなどでもよいし、当日その場で借りることもできる。
 あゆみ達が主催するのは、もっと砕けたパーティー。持ち込み歓迎で、みんなと楽しくやりたいらしい。電気も通っているけど携帯電話やテレビは使えない。文化祭の打ち上げなどを思い浮かべてもらえると良いかもとあゆみが言っていたと告げる団十郎。

「その他にも、豪華な料理を楽しんだり、中庭を散策したり、豪華な広間で演奏に合わせてダンスなどあるらしい」
 招待状を一枚広げて中身を見ながら、大体の内容をつけたす。

 送り迎えなどは向こう側が準備してくれているらしいから、この招待状に書いてある場所に集まってくれれば良い。
 そこで団十郎のが一息つくと、招待された場所。彼らの城についてのことを話し出した。
 その城は六甲アイランドの真ん中辺りに聳え立っている。が、能力者だけに『影でできた城』のように見えているという。
 その雰囲気はあゆみの言葉を借りるなら『でかい沢山の竹の子の影がにょっきり生えたような感じ』らしい。
 影の城に質量はなく、能力者だけがその姿を見ることはできて、一般人の目には見えない。
「城といっても、普通の城でないとも言っていた」
 御伽噺のお城のような外観をしているものの、中は中世の城塞都市のような街が広がっている。それなのに城と呼ぶのは影が城の形に見えることから。
 城内に入れるのは、この街に住んでいるものか、その住んでいるものに案内されたものだけだという。
 そこは一体どんな場所なのか、行って見なければ分からない事は多々あるだろう。
 
 そこまで説明をし終えて、団十郎は今一度、集まった能力者達を見た。
「来訪者の本拠地への招待だ、油断することはできない。だが彼らと戦わずにわかりあえるのならば、それは素晴らしい事だと思う。参加する者は油断せず、しかし失礼の無いように参加して欲しい」
 晩餐会の内容とあゆみに聞いた城のことを伝えると、団十郎は集まった能力者たちに注意を促した。

 白い月夜の夜、影の城で行われる優雅な晩餐会と、ちょっと騒がしいようなパーティー。
 どんなところで、どんな様子なのかこればかりは行ってみないとわからないだろう。

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<リプレイ>

●影と闇の間に浮かぶキャンドルの灯り
 招待状は紫色をした二つ折りのカード。
 開けば、左面には舞踏会への案内と、アルバート・ローゼスという主催者の名前。
 右面は、持ち込みパーティーの案内と、同じ様に主催である山崎・あゆみの名前が書かれ、そのほかには開催日時と集まる場所が記されている、ごくシンプルな作りの招待状だった。

 迎えに来ると書かれていた場所は六甲ライナーの駅のうちでも、一番賑わっているであろう『アイランドセンター』という駅の近く。
 そこから良く見えるのは大きな円盤がせり出した独特な外観の建物。シネコン、美術館、買い物や飲食が楽しめる大きなショッピングゾーンが入っている複合施設。
 だが、学園から集まった能力者の目には、その向こう側に大きな、黒い影が陽炎のように揺らめいている。
 そのシルエットは、大きな西洋の城の形をしていた。
 名付けるならば『影の城』というところだろうか。
「たくさん集まってきたね」
 約束の時刻を前に、周囲には500人を越える大勢の能力者達の姿がある。中には、既にイグニッションしている生徒もいれば、念のためにすぐイグニッションカードを取り出せるように、準備している生徒もいた。
「ようこそお越し下さいました」
 そんな彼らに近付いたのは、燕尾服姿の少年だった。年は、高校生くらいだろうか。間違いなく、彼が迎えの『吸血鬼』なのだろう。
 こちらへ、と身を翻した彼の案内で、能力者達は城へと近付いていった。

 影の城に近付くと、大きな陰のような場所があり、そこから城の内部に入るのだと吸血鬼の少年が告げた。
 彼が導くままに影の中へ入ると、地縛霊の特殊空間に入った時と良く似た感覚が能力者達を包む。
 そして……。
「ええっ!?」
 次の瞬間、能力者達の間から次々と、ざわめきが上がった。
 城の中に一歩踏み込んだ彼らを出迎えたのは、彼らが想像していたような、豪華できらびやかな広間では無かった。
 彼らの前に広がっていた光景。それは……。
 石畳が敷き詰められた、街並みだった。
「城の中に、街!?」
「何これ、どういうこと?」
 さすがの能力者達も、この光景には驚きを隠せなかった。
 建物はどれも、写真や絵本でしか見た事が無かったような、レンガや石造りの物ばかり。まるで、中世のヨーロッパにでもやって来たかのような光景だった。
 夕暮れから夜へと移ろうとしている空は、茜色に染まっていて。沈み行く太陽と、そっと浮び始めた月の姿が見えた。
「これが『城』なんですね……」
 信じがたい光景に驚きながらも、能力者達は思い思いに、その街並みを見渡す。
 と、そんな彼らに吸血鬼の少年が声を掛けた。
「そんなに凄いですか? お褒め頂いてありがとうございます。でも、そろそろお時間ですから、参りましょう」
 彼が促した先には、整然と並ぶいくつもの馬車。
 どうやら、これに乗って会場まで向かう事になるようだ。
 ひとつの馬車に乗れる人数は、大体20人程だろうか。窓から中を覗けば、それぞれの馬車に1人ずつ、吸血鬼らしき人物がいるのが見えた。
 生徒達が前から順番に乗り込むと、そっと扉が閉ざされて、馬車はひとりでに走り出した。
「御者さんとか、いないんだ」
「はい。しばらく移動となりますから、窓からの景色でもお楽しみください」
 石畳の道を進むうち、陽は完全に沈み、辺りを夜の闇が包み始める。行く手の街並みにはキャンドルが灯され、その明かりがぼんやりと道を照らしていた。
 ただ、キャンドルの明かりだけしか無いせいか、街路沿いの建物の奥は真っ暗で、その向こうの光景は良く見えない。
「建物の奥は、どうなっているんだ?」
「同じような街並みが広がっています。ちょっとした路地や、この道と同じような大通、その合間に並ぶ家々……もっとも、誰も住んでいない場所は真っ暗ですから、あまり良く見えないと思いますけど」
 ふと疑問を投げかけた能力者に、吸血鬼はそう窓の外を見やりながら、丁寧に説明してくれる。
「結構広い街なのですが、住んでるのはまだ100人くらいなので、誰もいない場所が多いんです。あ、もちろん館はちゃんと掃除してありますし、明るくて綺麗な所ですよ」
 そうくすっと笑う吸血鬼。
 馬車の前方を見れば、この道の両脇を、たくさんのキャンドルが照らしている。
 それは、会場への道しるべともいえた。
「来訪者の街、か。純粋に楽しめればいいが」
 守那・空弥が外の風景を見ながら、この場所に住んでいる他の者達にも会ってみたいものだと思う。
 その隣で、アーバイン・シュッツバルトは黙って、薄明かりの中の街の様子を観察していた。
「そろそろ見えてきますよ。ああ、あれです」
 吸血鬼はもう一度窓の外を見ると、そこには、町の中心部の一角にある、大きな屋敷が見えてきた。

●パーティーの始まりとアルバートという少年
 屋敷に着いた能力者達を出迎えた大広間は、能力者達が予想していたよりも、ずっと広かった。
 ダンスが踊れるスペースは広く、能力者達が全員入っても十分に余裕がある。それでいて、豪華な料理が置けるスペースもしっかりと取られていた。
 大広間の雰囲気は、まるで本当に御伽噺かなにかの世界のようで……。
 そして、その場所に、アルバート・ローゼスをはじめとした100人ほどの吸血鬼がいた。
 彼らは皆正装しており、年齢も、能力者達と大体同じくらいのようだった。
 能力者達を歓迎の言葉と共に招いたアルバートは、すぐさま乾杯用の飲み物が配るように指示する。
 給仕役は、仮面を被った少女達のようだった。黙々と飲み物をグラスに注ぎ、それを配っていく。
 ようやく、全ての者にグラスが行き渡ると。
「私達の互いの繁栄を願って」
 アルバートの簡単な挨拶の後、乾杯と共にパーティーが始まった。

「なぁ、みんなはこっちの方がえぇ?」
 大広間に行かない学園の生徒を見かけては、声をかけていく山崎・あゆみ。
 自分たちのパーティーはここではなく、向こう側の別の部屋でやっているからと告げる。
「今すぐになくても良いし、気が向いたら来てなー」
 お菓子を抱え込んだ彼女は手を振って、会場だという部屋に消えていった。

 大広間では和やかな雰囲気で、パーティーが始まっていた。
 詩泉・嗣天はシャーマンズゴースト・シャドウの慈泉と一緒に行動しても良いかと、ひとりの吸血鬼に尋ねたところ、屋敷の中なら構わないという返事をうけ、嬉しそうに慈泉と一緒に中庭の方に向かって行った。
「良いならアルバート君て良い人だね……」
 使役ゴーストのイフ君と嬉しそうに並んでパーティーを楽しむ主月・李鶴。
 既に学園の生徒に話しかけられているアルバートを遠目に眺める御神楽・霜司。ともかく何事もなく終わるのが一番だと、料理を楽しみながらも辺りを伺うのを忘れなかった。
「今晩は。お招き頂きどうもありがとう御座います」
「メガリス獲得おめでとう。悔しくないといえば嘘になるが、いまは素直におめでとうという気持ちを伝えます」
 神塵・丁は噂の吸血鬼の少年を見るために、主催のアルバートに挨拶をし、如月・清和も紳士的に挨拶をする。
「日本はどうです? こちらの生活に不自由はありませんか?」
「お気遣いありがとう。今のところは、快適に過ごしているよ」
「アルくんたちはここに住んでるのかな?」
「もちろん。ここが、私達の家だからね」
 狩谷・真司が挨拶をした後、笑顔で質問に答えるアルバートに、着物姿の瑞月・百実が尋ねる。
 近くでアルバートと学園の生徒達の会話を聞いている伊達・正和もしっかりご馳走を頂く。
「でも建築物構築だけじゃぁねーだろうし……この城、具体的にはどういう効果あるんだ?」
「ここは、私達が安全に暮らす為の場所になる。私達を護ってくれるのだよ」
 すげーなー。と言う緋桜・瑞鳳はくるくると大広間を何度も見渡す。
「私はまだ貴方の事をよく知りませんし、私達のこともそうでしょう。だから少しずつ、これからもっと分かり合っていければと思っています。ゴースト退治や人助けという事でなら、きっと協力し合っていけると……」
「前にな、互いのこと良く知らねーまま戦っちまって……結局、敵対してたのは互いを知らなかった為の誤解だったっつーのがあって……ま、今回はそゆのは避けたい訳だよ」
 遠野・優雨の言葉に、緋桜・瑞鳳が付け足す。分かり合えるのなら、哀しみが生まれることもないかもしれない。
「そうです。御国にはまだアル殿のお仲間もいらっしゃるのかとか。その方々も日本に来る事になるんですか?」
「そうだね。そのうち、みんなも此方に呼びたいと思っているよ」
 その二人の横で一条・凛は美味しいご飯に舌鼓をうっていたが、何かを思い出したように尋ねるとアルバートは小さく頷いた。
 浅草・紫郎はこの豪華な料理を持ち帰っても良いのかどうかが、気になって仕方なかった。
「おねーさん、ありがとーなの」
 一純・小鳥は大広間まで送ってくれた、仮面の少女に手を振り見送る。
 今から楽しむ気満々な 境・鷹男の横で、既に料理を食べながらも大きなシャンデリアに圧倒されている守久・美海は大きな口を開けて天井を見上げる。
 竜胆・真夜は何かあればすぐにフォローできるように、沢山の生徒たちの行動を見ていた。
 すぐに学園の生徒達に囲まれたアルバートを見て、影檻・鏡夜も、少しは彼と話せないかと思っていた。

●残る疑問、少しの不安感と好奇心に駆り立てられて
 このパーティーの主催であるアルバートに屋敷の中を散策しても構わないかと尋ねる藤波・純。アルバートは、屋敷の外に出ないのなら、好きに中を散策してもらって構わないと返事を返す。
「わーい。お城だお城だ! 探検だーーっ!」
 お城の中にある屋敷というだけでなんだかワクワクしてきた平川・明音は、片っ端から見て地図を作っていくことにする。焔井・悠樹もゆっくりとまずは屋敷の探索に出掛けた。
 大きなお屋敷の『探検』をするものも少なくなかった。
「この機に、僅かでも新たな情報が得られれば良いのだが……」
 斎宮・鞘護もそのうちのひとり。何かあればすぐにイグニッションできるようにして、屋敷の中を見て回る。
 好奇心に任せて、一人であちらこちら見て回っていく幸野・忠明。
「それにしても……でけぇ」
 そんな言葉を思わず呟かずには居られない梶原・玲紋。大広間から持ってきたサンドイッチを頬張りながら、一通り見た後はあゆみたちの会場の方に向かう。
「おーし、これでバッチリだぜ?」
 七面鳥の足をくわえながら、霧雨・御室が気になるものや、屋敷の見取り図のメモを取る。一見すれば、窃盗の下見に見えなくもない。
 裏沢・由唯も誰も気がつかないのに街一つという、非常識なお城は調べないのは失礼だと、探索といいながら適当に屋敷の中を歩き回る。
「影の城にお屋敷! メッチャ興味深いっす!」
 楽しそうに屋敷のマッピングに励む武藤・旅人も、ちゃっかり美味しそうな食事は頂戴していた。
 バニラッタ・パーシバルがはぐれないように石動・刹那と手を繋ぐ。
「流石に危険な目には遭わないとは思うけれど……はぐれたりしないようにね」
 観光気分で二人はアチコチ見て回ることにした。
 屋敷の窓から外を眺めるウィル・アルトリオス。料理もダンスも良いけど、今日はこうして普段見れない風景を楽しむ。
 屋敷の中を迷ったフリをしながら探索していた神那岐・キリトは、スーツの上から胸元を押さえ、懐のロザリオにそっと祈る。
「お互いの安息が永く続くものになりますように」
 種族も能力も違う彼らと共存する事は、本当に可能なのだろうかと考え込んでしまう。
 エリアード・タナトスも知的好奇心を満たすために、あちらこちらと見て回っていた。

 食事を楽しんできた笠原・飛燕と真崎・晃も探索に乗り出す。おかしな位置に窓が付いていないかとか調べたものの、変わったところは見受けられず、二人はまたパーティーを楽しむことにする。
「さて義姉上、俺たちはパーティに浮かれている間に屋敷を探索さてて貰おうか。仮想敵を自分の拠点に招き入れるとは、策略をもっての事か、ただの馬鹿か、まあ大馬鹿だと一番厄介だが」
 妃・天の言葉に、赤羽・不死鳥は敵の数と種類、天は食料庫の位置、水源の位置、ホールなど戦闘がしやすい場所などを調べようとした。しかしここには吸血鬼とあゆみをはじめとしたひみつ倶楽部の少女達、そうして仮面の少女しかいないし、食料庫や水源の位置などは良く分らなかった。
 こういう建物が好きな村主・理駆は、時折飾ってある絵を動かしてみたりしたりもしながら、純粋に屋敷探検を楽しむ。
 兄妹でできる範囲での屋敷探索をする三神・ヤマトと三神・楓華。だが、色々な心配をしているヤマトの横では、パーティーを楽しんでいる様子の楓華がいた。
 屋敷の中の見取り図を手に入れるために歩いてきた道を全て、スケッチブックに書き込んでいく旋風・九蔵の姿もある。
 これが本当の中世なら、テラスとかでパーティーを抜け出したお姫様に出会えそうな気がする皇・光。
「しっかしまぁ大した場所だな……何考えてるのかね、連中」
 暇つぶしのために屋敷内を歩き回る藤堂・修也は、その大きさに呟かずには居られなかった。
「さて、未鳥クン。ダンスでもどーだね?」
「ンぁ、よしきた任しとけ! ……足踏ンじャったらゴメンさい」
 ある程度探索し、何もないことが分ると四神・巽が憂崎・未鳥をダンスに誘う。

「突撃、隣のお宅拝見! パーティーもいいけど探検したい!」
 カメラ片手に屋敷のあちらこちらを撮って回る縁・ノエル。
「あれー? ここ入ったら会場に戻るよね? ……まぁ、いっかー。せっかくだから、飲み物もらってこよーっと」
 広いから気をつけないと思っていた矢先、綾辻・李鳥は別の場所に行こうと思ったのにまたもとの大広間に戻ってきていた。
 大きいがそんなに複雑な形をしてない屋敷。だがそれでもやっぱり迷子になったりするものが出てきていた。
 屋敷の中の探索も飽きて、大広間に戻ろうとした桐嶋・千怜が、乾いた笑い声を上げていた。
「はっはっは。ここはどこだ? え、もしかして私迷子ですかー? だが何とかなると信じてー」
 こんなに大きな屋敷なんだし、隠し通路とか秘密の部屋の一つや二つはあるに違いないと、鳳・流羽もあちこち見て回っているが……自分が迷子になっている事に気が付くのは、もう少し後のこと。
「まいご〜、まいご〜」
 屋敷の中をフラフラと歩き回っていた結果、一緒に来ていた仲間とはぐれてしまった黒鯨・珠子は、迷子だというのにそれはそれで楽しそう。
 フラフラとはぐれる天才の紫乃月・美桜ははぐれないように必死で、本物のお城ににんまりしている夜久・紀更。そんな二人を母親気分で見守る天河・翔。しかしそんな母親が一番キョロキョロとと辺りを見渡していた。
「あ、あれ? ここ、どこです……?」
 来た道を戻る途中で迷ってしまい首を傾げている綾木・レン。
 司・葬は可能な限り、広範囲を歩いてみることにする。

 見たこともないお城にその中の屋敷。大内・瑞穂は何か面白いもが見つかるのではないだろうかと、楽しそうに探検を続ける、
「……明葉、足元気をつけて」
 男装した十六夜・瞳と明葉・如路は偽装カップルを装い、屋敷内のあちらこちらをデジタルカメラに写真を収めて行く。画面を見ると、確かに写真には撮れていた。
 猫変身の黒峰・英二が来栖・小夜の横を歩いていく。誰にも見つからずに探検をできたらな。と、一人と一匹はずんずん歩いていく。
 パーティーを楽しむ事は他の皆に任せて、一人で屋敷内を探索していく魔護・位威。
「似合うな、ドレス。舞踏会じゃなくてよかった。会場に居たら、男性の視線から君を護るのに苦労しそうだしな」
「有難うジーク。アタシも色男の王子様を王女様の下に帰すまでしっかり護衛させてもらうわね?」
 ジークヴァルト・ヴァーリとアリエノール・イェラハは屋敷の中を調べていく。
「それにしても大きいね。迷っちゃいそう……」
「これだけあるなら、一つぐらい持って帰ってもバレなそうじゃない?」
 色々屋敷内を楽しげに見て回っていく永嶺・エリカと桐生・恭平。沢山ある調度品に、思わずそんな冗談まで飛び出る。
「生憎、わたくしは間に合っておりますのでご遠慮させていただきますわ」
 食事や飲み物を楽しみたいのも山々なのだが、ピジョン・ブラッドは屋敷探検の方が先と大広間を後にする。
 蕭・仲は気になるものを見つけてはカメラに収めて行く。
 屋敷を歩き回り疲れたアセルス・ロワージュは、その場に座り込み休憩。
 敵か味方か、そんな事は今は置いておく。ピリピリしていても、互いに楽しくないだろうから。鳴瀬・美鶴は美味しい食事を楽しんだ後、ふらりと屋敷内の散策にでる。
「どこ行っちゃったんだろ……ハレハレー!」
「美味しいお肉がありますよー出てきてくださいー」
 逸れてしまったハロルド・ロックと咲河・晴。手を繋いで置くべきだったと、ちょっと後悔のハロルド・ロック。肉を片手にハロルド・ロックを探す咲河・晴。感動のご対面は、もう少し後に用意されていた。
 相手に敵意があるのかどうかちょっと悩んでしまう真田・雪杜。もしかしたら此処が戦場になってしまう事もあるかもしれないと、今日は色々見て回ることにする。
「ふむ、興味深い場所ですね」
 窓の外広がる景色に言葉を洩らす拓葉・恵之助。その手にはタッパーが持たれていた。
 その横をローラーブレードを履いた七蔵・光雄が鼓・万里をお姫様抱っこして通過していく。
「前よりちっと重く……」
 光雄の言葉は、万里の手によって続くことはなかった。
 珍しい場所という事で、堕落・白庵は今後作る作品のために色々見て回る。
 色々見て回っている『四季活動部』の面々。
 あゆみちゃん達の仲間に男性はいないのだろうかと、あゆみのパーティー会場を覗き込む櫻井・なずな。大和・美奈子は並ぶ調度品を写真に収めて行く。十茅・まひるは美奈子が写真を撮っている美術品を眺めていた。
 こんな機会でもない限り、屋敷内をゆっくり見て回る事なんでできないだろうから。
「それにしても人数凄いよな、何というかこう……ご苦労様」
 すれ違う多くの学園の生徒を見ては、誰に対してか分からないが呟かずにはいられない榊・リクの首には、ポラロイドカメラがぶら下げられている。
 篠山・六花はひとりで屋敷の間取りなどを調べに回っていた。同じようにジーヴ・イエロッテも堂々と歩き回り、屋敷の構造を覚えていく。きっと、その方がばれないと思うから。

 人狼という敵対勢力もいる状況でのこの催しは、友好の意思を表すためなのか。色々と憶測だけが頭の中をよぎるが、来訪者の本拠地を見学できるというのは良い機会。色々と見て回ることにした双月院・成章。
 こんな感じのパーティーには以前も出席したことがあるセラフィナ・トウドウ。だが、流石にこのようなお屋敷でやるのは初めてで、新鮮な気持ちになる。早々に小腹を満たせば、屋敷内の探索へと向かった。
「やっぱり、つららさんは舞踏会の方がよかった? きっとドレス似合ってただろうしね」
「ダンスはあまり得意ではないので、こうしてのんびりと見て回っている方が楽しいです」
 屋敷の中を見て回る矢坂・孔明が雪女・つららに尋ねる言葉に、つららもはこっちの方が楽しいと笑って返す。
 屋敷の中は広く、はぐれないようにと手を繋ぎゆっくりと歩いていく翠簾野・樹弦とラクウェル・シルヴァランス。手を繋ぐことが少し気恥ずかしい感じもするが、少し家族のような気がして嬉しいラクウェル。他愛もない話でもしながら、ゆっくりと時間は流れていく。
 好奇心に任せて、誰もいない方向へと足を進めていく三佳・霖と赤津坂・伊孔。
「いや、だってこんな大きなお屋敷のキッチンって、気になりませんか?」
 伊孔の言葉に頷く霖だが、あまりに広い為か、結局キッチンは見つけられなかった。
「しっかし、六甲アイランドにこんな場所があるなんて、まじすげぇなぁ」
 大広間から拝借してきたサンドイッチを齧りながら、屋敷探検中の荻沼・新弥と高月・世良。他にはどんな場所があるのかと、食べ歩きで楽しむ二人。
 アルバートは大広間で学園の生徒に取り囲まれているのを確認して、泉野・終夜は、くまなく屋敷の中を調べていくことにする。
 敵か味方かハッキリしない状況でのパーティー。何か情報を持ち帰りたいと屋敷の中を見て回るエンナ・エンナ。しかしそれは建前、ただ探検がしたいだけだったりして。
 廊下に置かれている調度品や、壁にかかっている絵画を眺めてのんびりと時間を過ごす淵叢・雹の傍では、男性用のスーツを着た葉桐・千季は面白そうなものが見つかるんじゃないかという期待と、どんな造りになっているのかという興味で、あちこちを見ていた。
「はいはい。走らないようにー……って言うそばから走るな!」
「にゃー、つい興奮しちゃうー……」
 静かな廊下に響き渡る琴月・立花の声。妹の琴月・歌奈が、興奮のあまり暴走するのを止めるのも一苦労。そんな二人のやりとりの間をひとりフワフワと、屋敷の中を歩き回るヴィオレット・リンデルングが通っていく。
 観光気分でブラブラしている霧島・屠龍も自分と同じような感じの永陸・武史を見つけると声をかけてみる。互いに何か面白い情報でもあればな、なんて話ながら歩いていく。その近くには不思議な屋敷のトイレを探している虹原・悟の姿があった。

 屋敷探索の許可を貰ったフィアッカ・フォンティーユたちは色々と見て回ることにした。メガリスの力でこんな事ができるなんて、本当に驚いてしまう。
 氷鳥・雪は気になるものを見つけると片っ端から写真を撮っていく。結社の壁にずらっと貼れるかなとか考えていた。
 ワクワクしていた平島・歩だが、なんだかよくわからないお高そうな壷や絵画を目の前にすると、少し尻込みしていた。
「あの……これ、大事なものですか? 良かったら譲って欲しいんですけど……」
 可愛らしい装飾用のリボンを見つけた大脇・留衣は、コレを譲って欲しいとあゆみに交渉に赴くと、あゆみは笑顔で「えぇよ」と答えた。
「あれすごいすごいー」
「素敵なお屋敷に見えるけど、影の城の中にあるって事は……影なんだよね? ここも」
 珍しいものがあればすぐに口にだしては大騒ぎの峰尾・麻花の横で、静かに内装を見つめている音切・友喜。
「……ここ、どこでござんすか?」
 後方を振り返った山河・風来の後ろに、友喜と麻花の姿はなかった。
「吸血鬼のお屋敷なんだよね。コウモリさんいるかな?」
「わ、つばさちゃん、その、あんまり、走っちゃ、だめですよ」
「そういえば、中庭もあるんですよね」
 無邪気に走る小森・つばさに小さな声で注意する木村・小夜。それに橘・鞠絵が中庭に行って見ようかと誘ってみる。
 壷居・馨も気の向くまま風の向くまま、城の中を歩いていく。
 一緒にいたはずの九龍寺・白時と地龍寺・赤時がおらず、探しに出る三國・又兵衛。その頃赤時も気が付いたら、白時が居ない事に気が付いた。ようやくみつけたと思って手をとった赤時の手。しかしそれが赤時とは分らずに惨劇が繰り広げられた。
 どこからともなく聞こえる悲鳴を聞きながら、豪華な内装の廊下を黙って歩く蓮杖・荘介。
「罠かもしれないんだもんね……忘れてたけど」
「大丈夫だって、ほらほら……こっちこっち」
 荘介に代わって賑やかな黒瀬・朱夏と庚・斗祓。

●全てが豪華なその中で
 大広間の大きなシャンデリアや豪華な装飾に、ぽかーんと口を開けて見上げたままの明智・ミツヲ。
「キラキラしてるのは良いですねえ。ウフフ素敵素敵」
 イケナイイケナイと、ミツヲは先を行くみんなの後を追いかける。
「って、ヒデヲさん!? 唇が青くないけど大丈夫!?」
「アジアの蝶気取りですか!」
 明智・ヒデヲの唇が青くないことにびっくりした司・忍の言葉に、彼女の姿を見るヒデヲの一言。
「これでこの城に来た収穫があったというものだな……」
 コレが本来の姿、化粧を落とした男性の素顔に驚かされるとは新鮮な気持ちの忍。
 そんな彼らの横で河上・総一郎はがっつりと涼しい顔をして、豪華な料理を食べていた。
「ぶ、舞踏会って言うからこんな格好してるんだよ。変な勘違いしたら中華に売り飛ばすよ」
 ロリータファッション系のドレスを着た鷹田・理沙は、照れ隠しに一言発してから広間に入ってきた。
 今日は男装して男として楽しむことにした東雲・祐羽。しかしずっとこの恰好というのも肩が凝ってくる。
「でも……何がどう転ぶか分からないから、ね」
 ドレス姿の学園の生徒を見れば、ちょっと羨ましいのも事実。
「……誰か誘えば良かったな」
 エスコートする相手がいない柴沼・朔は、壁際に立って賑やかなフロアを眺めていた。戦わずに済むのならそれに越したことはないと。
 こういった場所にくるは当然初めての山県・遼はまずは料理を食べることから始め、尾崎・シモンもパーティーに加わる。
 ルーベット・アキモトは自前のフルートでの演奏で、その場を盛り上げていた。
「色気より食い気!! 取り敢えずそこの料理貰ったぁ!!」
 屋敷の内部と豪華な料理が今日のメインの紅月・燎。とりあえずここは、美味しそうなものを食べてから探検に出ることにした。
 青砥・凛も一人で不安だけれども、今日は楽しみたいと思っていた。
 美沼・瑞穂は料理には口につけず、そっとタッパーに持ち帰って持ち帰って色々調べたいと思っていた。
 入り口付近に比良山・蓮介、ちゃっかり料理を持ってきている風魔・姫耶呂羅院の横で、何も食べずにいる龍臥崎・まきな。飲み物ぐらいは大丈夫だろうと叢雲・律がグラスを傾ける。大広間を歩いて様子を伺っている穢宮・風月。

 ある程度屋敷内の探索をし、この屋敷は広いが迷いやすくは無い構造という事が分った。しかし城の内部は特殊空間であり、変幻が自在かもしれないな、なんて事を話しながら『Aquarium』のメンバーは大広間で食事を楽しむ。
「このパイ、サクサクですねー」
「ホンマ。おいしいなぁ」
「料理は本物なんだろうか」
 季節の果物がふんだんに乗ったパイを食べて唐松・亜希が美味しいと声を上げると、棉貫・遊弥も同じものをひとつ食べて同じように声を上げる。そんな二人の様子料理を交互に見て訝しげな幸原・文悟。ここは食べて確認と、一口。しっかりと味も食感も口内に広がる事を確認すれば、後は食事を楽しむ事にする。
 その横でちゃっかりと皆が美味しいといったものを食べている武生・亮二は涼しい顔。折角ドレスアップしてきた姿を恋人に見せられない涼宮・杏樹は、少し残念そうに胸元の薔薇コサージュを眺めた。
 偶然この場で遭遇した、御神楽・美守と佐藤・大輔。
「美守、吸血鬼の少年を直に見てみたいのじゃ。一緒に探しましょうぞ!」
「やれやれ……仕方ない」
 『彼らと戦わずに分かり合えるなら』運命予報士の言葉を聞いたときの高揚がそのままの美守は、大輔を引っ張っていく。

 知っている料理から知らない料理まで、沢山の料理を前に鬼無瀬・織葉は、今日は少し冒険しても良いだろうと、知らない料理を皿に取ってみる。
「わー、そのロブスターとかいいなー!」
 織葉の取った大きな赤いエビを指差す御厨・和沙は、この雰囲気にもうドキドキ。佐波・凛は既にあれやこれやと目に付いたものを食べ出している。
「敵対せずに、仲間になれば良いんだけど、な」
 皆の楽しむ様子を見ながら人知れずそんな事を呟く高木・誠。
 普段と変わらず、皆で他愛もない話をしながら美味しい食事。しかもこの雰囲気が素敵な思い出になる事だろう。
 普段と変わらないのは『A crossroads』も同じ。
「こういうお屋敷のパーティって初めてだけど素敵だな!」
「ほら、こういうパーティには肉とかいっぱいあるだろー!!」
 甘いものをもう右の端から全て食べてしまいたい神風・忍は、綺麗に盛り付けられたスイーツと城の雰囲気にちょっとうっとり。その横で彼女の幼馴染の雪白・ハクヤは甘いものではなく肉に釘付け。
「……あ、おいしーねコレ!」
 色々心配してもしょうがないと江間・良将も、美味しい料理ににんまり。
「皆、普段と違ってて素敵よぅー、可愛いし、かっこいいわ!」
 そんな皆の様子と城の雰囲気に、玖凪・蜜琉も声を上げてしまう。
 まずは美味しい料理でお腹を満たし、その後は屋敷の中や中庭に皆で散策に出掛けてみる事にする。
「外国のお屋敷は、こんな感じなんです、ね」
 辺りを興味深げにキョロキョロと見ている新城・紫織だが、叢雲・識の横からは離れない。そんな識は少し離れた場所にいるアルバートの姿を見つめていた。そこへロールプレイングゲームの様にタンスチェックができない不満を発散するべく、リーシャ・エスペランスと黒峰・一が抱きつきに来る。
 今日は楽しみに来たのだからとアーミーナ・ブレアは、今日は気分を変えて、真紅のドレスを借りていた。しかし吸血鬼たちの狙いが何かはとても気になるところ。
「終焉だ! アルコールは無いぜ! ワン。トゥー。スリー。フォー!」
 スーツ姿と眼鏡でびしっと決めた朝穂・魅臣が突然現れて、ラジカセのスイッチを押すと聞きなれない音楽が流れ出す。
「いいなーでっかいお屋敷、欲しいなぁー…アっちゃんにくれ! っていったらくれないかな? ね、やっちゃん。ブルちゃん」
 今井・海里の案外本気ぽい視線はアルバートに注がれる、それにブルース・レイは何てこたえたら良いものか迷ってしまう。
「平和だ……ものすごく……」
「一緒に中庭に行こうよ、人がたくさんいるの苦手なんだ」
 そんな事はお構いなしに隅っこでジュースを飲む黒傘・やみぴ。そんなみやぴを見つけたブルースは中庭に誘ってみた。
「この場所が全部、黄金りんごで出来ているって噂してるが……、うまいのかなっ?」
「こんなんどうやって建ててんだろ。やっぱメガリスか? 壊れても直ぐ直るとか?」
 口の中に沢山の料理を頬張りながら、天井や壁を見るクオン・モリア。同じ様に天井を見上げる相澤・悟。そんな悟が浮気まがいの行動をとらないか行動をキランと監視してる黒田原・絹子。
 そんな皆の様子を見守っている階・杜夜。その近くには玖月・戒理。どうやら離れると煩いらしい。

「ま、お招き頂き感謝。ってとこか」
 他の参加者の様子を眺めながら、今日は純粋にこの場を楽しむことにする桐崎・凍佳と、何でできているのかとっても気になる逢坂・一真も、触るのはやめて楽しむことにした。
「こんな盛大な晩餐会を催せるなんて凄いですね」
 飲み物を運んでくる一人の仮面の少女に、声を掛けてみる高遠・深哲。言葉は返ってこなかったけれども、少女は小さく頷いて、用事を終えるとその場を離れた。
 こんなに広いと給仕はいるのだろうか。特にメイド……なんて思っていた朱鴉・詩人も、歩いている仮面の少女に目が行く。
「夜空の月も、とても綺麗な事だし……ね」
 外を眺めれば、この世界でも普段見ている月と同じように、月が空に浮かんでいる。それを見上げながら、深空・悠花は皆で中庭に出てみないかと誘ってみる。
 豪華な装飾に料理に目を奪われながらも、アリシア・カナードはしっかりと食事を楽しむ。
 あゆみの説明に『竹の子』なんてあったから、竹の子が食べたくなってしまった小太刀・菖爬。ずらっと並んだ料理の中から竹の子料理がないものか探してみる。
 楽しそうに広間探検をしている出雲・小夏。遊園地みたいで楽しいなんて思っている。全力で楽しんでいる小夏に代わって水月・郁は周りへの注意も怠ることはなかった。
 桂木・ケイも少し不安な言葉も聞いたので、その警戒を怠ることはなかったけれども、目の前の美味しそうな料理を堪能する。
 壁際にもたれてみんなの様子を見ている七夜月・黒刀は、平然そうに見えて内心はドキドキで一杯だった。
 アルバートやあゆみは沢山の人に取り囲まれてしまうだろうからと、立風・翔は他の正装をした吸血鬼の少女へと話しかけてみる。
「さあ血沸き肉踊る、ぶとーかいのはじまりはじまりですわよ!」
 ぶとーかい、違いのリタ・ワルプルギスは大声を張り上げたものの、すぐに学園の生徒によって抑えられ、正しい知識を教え込まれていた。
 月見里・宗司は相変わらず人だかりのアルバートを見て、軽くでも話しができないものかと考える。
「しかしまぁ、不思議なものだな。……何というか、トンネルを抜ければなんとやら、とでも言うか」
「料理も凄く豪華ですねー……偶にはこういう料理も作ってみましょうか」
「まさか日本でこんな場所を満喫出来るなんて思わなかったデスねー」
「って、狐! 私は別にはしゃいでなんか……! 確かに大好きだけど…っ 」
 柏木・隼人が呟く横で、豪華な料理に釘付けになる白瀬・友紀。住んでみたいとは思わないが、本が沢山置けそうだと笑いながら言うと、天月・狐白が焦る佐苗・蓮をにこにこと見ていた。
 今日は隅から隅まで覗かせてもらう勢いで、カーテンの裏まで点検する鉦屋・きとりのだが、新しい料理が届けば、すぐさま片っ端から食べていく。

 中庭もまた大広間に引けをとらない造りだ。
 広く隅々まで手入れが行き届き、大広間の混雑に疲れたら、ここで一休みすると丁度よかった。
 制服姿に割烹着とちょっと目立つ恰好の村上・裕弥は、中庭の風景を楽しみながら歩いていく。
 中庭を歩くアルバートの姿を見つけた呼亞・嗚唖は、ドレスを直すフリをして持ってきた手鏡で、彼が写るかどうか試してみる。チラリと見えた姿は、しっかりと鏡に写っていることを確認した。
 同じように茅耶・由季も、持ってきた鏡にアルバートの姿が写るのかどうか確かめていた。もちろん、由季の鏡にも少年の姿は写っていた。
「ヴァンパイアの邸宅なんて初めてだよ。映画で見た世界に入ってしまったみたいだね、こういう雰囲気って好きだなあ〜」
 ダンスを踊った後、中庭に出てきた風見・玲樹と森山・樹里。玲樹の言葉に頷く樹里も、こういう雰囲気は好きだった。二人は手を繋ぎ、のんびり歩いて行く。
 ダンスを見ているのも飽きてきた天谷・朝も中庭へと出て行く。
「それにしても裾長くてしかもヒールで歩きづらく……って、わわ!」
 中庭を歩く奏織・緋奈姫は、歩きなれない靴に裾の長いドレスに翻弄され、大きく転びそうになったが、その体をロイト・グレイフィルの腕が抱きとめた。
「危ないから走るなよ」
 そう告げたロイトの胸には、緋奈姫がこそりとつけた赤い薔薇のコサージュが飾られていた。
「タイムトリップしたみたい」
「迷子になんなやな?」
「ん」
 天之川・連雀が喬邑・青の手を取り声を掛けるが、既に好奇心で一杯の青は目をキラキラさせて感動しきりだった。
「あまり現実味はないよねぇ……」
「ま、二度と体験できないであろう、貴重な体験を楽しみましょ」
 豪華な料理を満喫した麻生・日和と神楽・漣は、次は美しい中庭を眺める近くで、椎名・悠はゆったりとしたソファで一眠り。
「うわぁ。広いのさー、やっぱり実物は違うさ」
「映像とかじゃ良く観るけど、実際歩くと印象違うなー」
 のんびりと武田・由美と七条・紫門は手入れの行き届いた、中庭を歩いていく。

「そういや蒼雅はどこ行った? あいつの為のデザートもキープして探しにいくか」
 仮面舞踏会を気取った恰好の烏有・大地。の横で甘いものを中心に皿にとって行く媛苑・基青が、媛苑・蒼雅が居ないことに気が付いた。
「ホントに帰り方がわかんなくなっちゃった!? だーれーかー、みつけてー!」
 そんな蒼雅の叫びが届いたのか、榊・遠夜と月見里・優陽が蒼雅を連れてかえってくる。と、二人とも小さなレディをダンスに誘う。

 大広間のバルコニーから下を見下ろす。丁度下は中庭になっている。
 街並みが見えるかもと思っていた漣・夜半と竜胆・螢だったが、広がる中庭を見ながら、この屋敷に到着するまでに見た街並みについて思い出していた。螢はそっと夜半の肩を抱いた。
 屋敷の一番高いところまではいけなかったから、大広間の上のテラスに烏森・メジロと水菜・渡里がいた。渡里はこそりとグレートモーラットのシィを呼び出すが、上から見下ろす中庭では普通に使役ゴーストといる学園の生徒を見つけた。メジロが降りようとするのに、渡里も付いていく。

●彼らについて問うてみたい
「聞いてみたかったんですけど……ずっとショタなんですの?」
「ショタ……? 初めて聞いた言葉だ。すまないが、よく分からない」
 姫琴・睦美からの突然の質問に、不思議そうな顔をするアルバート。
「どこから来たのじゃ?」
「ヨーロッパからだよ」
「前、そっちの協力者が地縛霊探しをしていたようだけど、それってアル君の指示なの?」
「ああ、あの事か。ここに拠点を構える前に、周囲のゴーストの様子を調べていたんだ。ゴーストが多数いるような土地に拠点を構えるのは、何かと不都合が多いからね」
 十二単の九条院・晶からの質問に答えると、すぐに称得・唱から次の質問が来る。その返事を、唱は「ふーん」と聞いている。
「吸血鬼と呼ばれているようだが、やはり一般の人々から吸血するものなのか?」
「君が想像しているような吸血ではないと思うよ。吸血は、僕らにとって、とても神聖な儀式だからね」
「生きる為に吸血が必要不可欠……という訳では無いのかぇ?」
 相澤・頼人から貰ったグラスを傾けながら答えれば、それについて更なる質問が神奈・環奈から投げかけられる。御堂・燐やアリス・トゥルーも彼らの会話に耳を傾ける中、そういう訳ではないと首を振るアルバート。
 だが、なんにせよ、無断で人の血を吸ったり、更には吸血鬼の眷属になってしまっては問題だと環奈は続ける。
「妾は、多種族が共存するには、ある程度の妥協が必要だと思っておる……こちら側はそなた達が血を吸うのを黙認する、そちら側は命を脅かさない程度に血を吸う……という所かの……どう思うかぇ?」
「君は、少し誤解しているようだね。僕らの吸血は神聖な儀式だし、それに吸う血はほんの少しだけだ。何より、この儀式は相手の同意が無ければ出来ない。だから無闇やたらに血を吸ったり、仲間を増やすような事は不可能なんだ」
 だから、危惧しているような事は起こらないし、起こす事も無いだろうとアルバートは言い切った。
「まるで絵本の中にいるみたいだね……。これから、ここで、どんなお話が始まるんだろう」
「そうだね……僕達のページは、まだ真っ白だ。これから紡いでいく物語が、互いに取って良い物になる事を願おう」
 付け髭をした蓮・弥介の何気ない言葉に、笑顔を返すアルバート。
「ヒミツ倶楽部は来訪者集団『吸血鬼』に属する結社の一つで、組織全体のトップは別にいる、って認識でいいんだよね?」
「組織とは、結社が集まってできるものだからね。僕達だけが吸血鬼という訳ではないよ」
「じゃあ、人狼との関係について教えて頂いても良いですか?」
「世界結界ができる前の時代から、人狼は吸血鬼を滅ぼそうとしていた。僕達は、それに対抗し続けてきたのさ」
「他に人狼について、何か知っていることはありますか?」
「そうだね……彼らは侵略者だが、見方を変えれば有能な兵士と言い換える事もできるかもしれない」
「ところで、人狼の毛皮って、もふもふなのかな?」
 葦若・紗津希と霧宮・凪乃からの問いかけ。その後には山川田・太一郎がもう少し人狼について尋ねていた。
 その人狼の毛皮が気になっていた瑞口・奏も質問すれば、アルバートは微かに面食らいつつ、特にそういった事は無いと思うと返事を返した。
 常にアルバートの周りには沢山の能力者達がいた。その様子に、斉藤・亮と浅瀬・透は軽く会釈だけしてその場を離れた。
 アルバート以外にも吸血鬼はいるから、亮は他の吸血鬼達と会話を楽しみ、透は優雅な立ち居振る舞いの少女たちを見て、彼女らをナンパしようかどうしようかを考えていた。
 静かに、そんなアルバートの様子を伺っている葛城・時人。
 アルバートではなく、他の吸血鬼ウォッチングをしてる穂乃村・翠もいる。ある程度吸血鬼ウォッチングを楽しんだ後は、料理を楽しむ。そんな翠を見てため息交じりの吐息を吐き出す風見・隼人。こんな場所で踊れないのは少し残念に思うが、今は学園の生徒で妙な動きをするものがいないか、監視と警戒にあたった。

「まさか、日本で中世の街並みを堪能できるなんて、想像もしていませんでした」
「この城は、特別だからね。建物も僕らの暮らしていた場所の物だから、日本の様式とは大きく違っているはずだ」
「人は……いや、吸血鬼はここに居るのか?」
「僕も、彼らも、皆ここに暮らしているよ」
 天草・薙とアルバートとの会話に玖田・宗吾も混じる。アルバートが周囲の仲間達を見やりながら、そう答える一方、この沢山の料理がどうやって作られているのか観察してみるが、出来た料理を運ぶ仮面の少女の姿こそ見かけても、どうやって料理を準備しているのかまでは分からない。
「アルバート……お前を信頼してもいいのか?」
「それは僕達が決めることではないね。でも、僕達は、君達を信頼したいと思っているよ」
 鬼谷・蒼玄が切り出した言葉に、アルバートは真正面から答えた。一瞬だけ言葉が途切れ、そういえばと思いついた様子で七海・霧人が尋ねる。
「そういえば、あゆみちゃん達とは、どこで知り合ったの?」
「あぁ、この神戸でだよ」
 彼女達は皆、神戸で知り合ったのだとアルバートは応じた。
 少し会話に混じっていたテレーゼ・ブリュークは、中庭の様子も気になるので、後で散策に出掛けてみることにする。
 結社の皆がアルバートと会話しているのを眺める神城・菜月。その表情はにこやかなものだが、彼の言葉に誠意が感じられるかどうかを、じっと聞いていた。
「姫野様っ、僕の手を握って!」
「ん? 涼音君、エスコートしてくれるの? 有難う。後で一緒に踊ろうね」
「お姫様お手をどうぞ」
「って僕お姫様じゃないしっ」
 楫・涼音が姫野・息吹をエスコートするのを微笑ましいなぁ、なんて眺めていた織原・聖は、自分をエスコートしてくれるディーン・リンドブルムの言葉に突っ込む。
 その後で彼らもアルバートに質問を投げてみたところ、この城は生き物では無い事が分かった。この城に住んでみたいと言えば、仲間になった後ならば、いつでも歓迎するよと、にこやかな返事がもたらされた。
「さすが、アルくんは人気ね。学園の生徒に囲まれちゃってるわ」
 アルバートの様子を観察している九重・美珠と九椚・斑鳩。けど警戒するべき相手なのは変わりないと頷き合っていた。天宮・泉水も腹の中で、色々と画策してそうな顔してるなぁ。なんて思っている。
 そんな仲間の横で、何故か納豆をコネながら観察中の服部・半蔵。
「ホホホホホ………ちょっと失礼いたします」
 魔諭羅・夜魅がリュックに料理などを詰めていると、狩魔・幽魅が足払いを掛ける。その結果、夜魅がリュックの中に入り、幽魅は何事もなかったかのようにリュックを抱え走った。
「こりゃ、うっかりしてたら、はぐれちゃうね」
 なんて言いながら、石川・五右衛門は軒猿・志摩と蓮見・雪之丞とで屋敷の中探検をしていた。、

「アルくんとあゆみちゃんってどうして仲良くなったんですか?」
「そう改めて問われると難しいな。強いて言うなら、仲間だから……かな」
「それよりも気になるのは……あゆみさんの事、どう思ってるの? 付き合ってるのっ?」
「この地に来て最初の仲間なのだから、もちろん大切だと思っているよ。それに、今日この日を迎えられたのは、彼女のお陰でもある。僕にとっての恩人とも言える存在だね」
 音無・夕月が不思議そうに尋ねると、そこへ華神・御守が無邪気に尋ねる。その内容は、女子高生モード全開。それらの質問に、アルバートは小さな笑みを浮かべながら答えた。
 その和やかな雰囲気に、龍宮寺・命が入ってくる。
「お主、吸血鬼なのかぇ?」
「そうだね。ただ、君達が小説などで知っている吸血鬼とは、少し違うと思うけど」
 率直に認めるアルバート。命はそんな彼に頷き返すと、自分のモーラットのタマを紹介する。
 そんな中、深海・香澄がアルバートの国に伝わる歌などの文化について尋ねると、自分達の祖先は古くからヨーロッパに住んでいたから、その影響も受けているのだと説明した。
 燈蛹・暁がアルバートに質問しに行こうとすると、八椿・朱香が料理を盛っ皿を片手についていく。
「このお料理、美味しいね! アルバートはお料理上手?」
「気に入って貰えて良かったよ。けど、僕はあまり料理を作る事は無いね」
「……ぁー朱香、食べすぎ」
 暢気に料理を食べながら、暁より先に朱香が料理を食べながら質問する。その食べっぷりに呟く暁だが、しっかり皿から料理は頂いていく。
 芦夜・恋月もチャンスを見計らって、挨拶がてら「これからもよろしく」と小さな吸血鬼に伝えた。
「わたくし魔術をたしなみますので、皆様に親近感がございますの。銀誓館へ仲間入りをお望みかどうか、ぜひともお伺いしたいのですわ」
「お誘いはとても嬉しいが……城の外は、危険だからね。少なくとも、人狼がいる間は難しいだろうね」
 シリルーン・アーンスランドの言葉には、アルバートはそう残念そうに首を振った。
 その横では、柊・海斗が物凄い勢いでタッパーに料理を詰め込んでいる。あわよくば、この城に移住しようかと思っている四象・深癒は、料理を食べながらアルバートと話す機会を探っているようだ。
 リーン・アンティネスは、アルバートに今度は学園に彼らを招きたいと話す。その横で、銀乃・澪音もここに興味を持った事を伝えると、アルバート達にも、自分達に興味を持って欲しいことなどを話していた。

 近衛・華琥がアルバートに年齢を尋ねてみると、ちょうど10歳であるとの答えが返った。
「凄いお城ね! この様子だと観光目的じゃなさそうだけど、誰かと戦争でも始めるつもりなのかしら?」
「そんなつもりは無いよ。できれば、戦争なんてしたくないね」
 紗片・ハルミの問いにアルバートは首を振る。と、何度かあゆみと顔を合わせている氷室・冷羅が近付いた。
「どうも。貴女の事はあゆみさんから聞いているわ。こんなに来て大丈夫だったかしら?」
「あゆみが何度か世話になっているようだね。こちらこそ、こんなに大勢で来てくれて嬉しいよ」
 挨拶代わりの言葉に微笑み返すアルバート。冷羅は返事を聞きながら、声のトーンを落として本題に入る。
「……人狼、って組織と戦う時のために、手を結んでおこうという魂胆かしら? それとも、何か他に陰謀でもあったりするの?」
「陰謀なんて。……戦争は出来るだけしたくないけど、いつ人狼が襲ってきても、不思議じゃないからね。その時には、君達とも協力できたら嬉しいと思っている」
 彼女の問いにアルバートはきっぱり首を振ってから、そう率直に述べた。
「人狼の他の来訪者の存在とかはご存知で?」
「ああ、勿論知っている。まあ、今の時代に生き残っているかどうかまでは、分からないけどね」
 流茶野・影郎の質問には、こくりと頷くアルバート。
 芝本・五六八は、アルバートが質問責めのその場所から、出てくるのを待っていた。
 伝承の吸血鬼について調べて、警戒していた天谷・夜だが、何も起こらないと解かった後は、目の前のご馳走を食べて楽しむことにした。
 学園の生徒たちがアルバートに質問をしていくのを眺めている蒼波・浅葱。彼もまた、今日は特別聞きたい事もないからと、目の前にある豪華な料理を楽しむことにする。
「こうして見ると、普通の男の子なのにね……」
 グラスを片手に篝・絶佳が、少し離れた場所にいるアルバートを見ながら呟く。
「葡萄ジュース、如何デスかしら?」
 レディ・シルヴァーがアルバートにグラスを渡すと、久遠寺・絢音は彼に、土蜘蛛と学園とのこれまでの経緯などを話していた。
「この前は学園祭があったんだぜ。その時に来てもらえれば、俺たちの銀誓館の『良さ』も分かってもらえたんだがなぁ。いっそ転入してこないか?」
「そうだね。外が安全になったら、それも考えても良いかな」
 獅子守・大地が軽い口調で告げると、それに虎乃門・真白も料理を食べながらうんうん、と笑顔で頷いている。
「彼はとても良い方ですね、んふふ」
 仲間とアルバートの会話を聞いていて、最後にルシェイメア・ハルドゥーンが呟いた。

 アルバートへの質問に区切りがついたところで、お腹が空いている鳳茜・遙は、料理が並ぶ方へ彼を誘う。
「アルくんも一緒に食べにいくのだー!!」
 遥にひっぱられて、一緒に料理を食べるアルバート。
「私、最近お料理に凝ってますの。お好きな物はおありですか?」
「好きなもの? 最近あゆみに連れて行ってもらった、『明石焼き』は独特な食感で美味しかったね」
「本日のお招きのお返しに、何れご馳走出来たら嬉しいですわ」
 リンネ・ベルナデットの質問に意外かもしれない答えをサラリと返し、リンネの言葉に笑顔で、その時はご馳走になるよと返す。
 アルバートが学園の生徒に混じって、美味しそうにケーキを食べているのをじっと見ている黒執・躑躅。なんかワインとか飲んでそうな彼のイメージが先行してしまっていたが、そのような事は無いようだ。
「カラオケしたことある?」
「ああ、あゆみに連れられて行ったことはあるよ。なんだか分からない歌を覚えさせられたね」
 羽角・ひなたの質問に、その時の様子を思い出しながら答えるアルバート。どうやら、今をときめく6人組男性アイドルの歌だったらしい。
「今最も興味のあることとかあるか?」
「興味という程ではないが、『富士宮やきそば』が美味いとあゆみ達が騒いでいたので、どんな物なのかは気になっている」
「じゃあ、好きな四季なんかあるか?」
「生命の息吹きが感じられる春が好きだね」
 疲れただろうと神宮・戒の差し出したグラスをありがたく受け取りながらの答え。あゆみを筆頭に少女たちに色んな事を吹き込まれているようだった。そこへ他愛もない天羽・十六夜の言葉が続いた。
 伽羅・もえぎも同じように趣味や好きなものなど、他愛もない会話をしてみる。そこへ熱田・智延が入ってきた。
「歓談のトコ、無粋でワリィんだけどよ……お前は俺らの敵か? それとも味方か?」
 それに言葉を返そうと、唇を動かしたアルバートの言葉を遮ったのは、智延の言葉だった。
「まっ、今日一日は、どっちでもいいけどなっ!!」
「このお城の外観や城内のデザインは、アル君の趣味ですかー?」
「僕の趣味というわけではないよ」
 そのまま、ひょこっと顔を出した紗白・すいひの言葉に、返答の機を逃したアルバートは、すいひにそう首を振るだけに留めた。
「君の事、友達だって思ってもいいのかな?」
「そうだね。僕は、そんな関係になれたら良いと思う」
 続いての涼風・蛍は、アルバートのその答えに、にっこりと笑い返した。
 アルバートへの質問は皆に任せて、料理を思う存分楽しむ阪佐野・利奈。
 羽休め程度にと、イオン・ローレルがアルバートに普段の生活などの質問をすると「普段は君達とあまり変わらない生活だよ」といった言葉が返って来た。
「図らずしも大勢で押しかける事になってしまったんですけれど、パーティの準備は大変では無かったですか? 此方はこれだけの人数ですし」
「大変じゃなかった、と言えば嘘だが……正式の舞踏会としては、まだ小規模な物だったから、どうにかなったよ」
 バランスよく料理をてんこ盛りにした皿を持って、相模・幸宏がアルバートへと質問すれば、これでも小規模だという返答に驚かされてしまった。
「お城作って、これからどうするの?」
「まずは、新たな城で、古い仲間達と再会したいね」
 料理を楽しみながら瑞月・百実が思ったことを素直に尋ねれば、アルバートも普通に会話するかのように返す。霧雨・零時もまた料理を楽しむ一人。アルバートと話ができれば、普通の会話を楽しんだ。
「最近、リリスが地縛霊や妖獣と一緒に行動するという事があるようなんですよ」
「リリスは知恵があるからね。何か考えがあって、そのように行動しているのだと思うよ。ゴースト同士、何か通じるものがあるのかもしれない」
 リリスを取り巻くいろんな事を明鏡・止水と話しているアルバートに、真田・陸王が近付くと、冬の花々で作った花束を渡した。

 中庭に出たアルバートを呼び止めたのは、宵咲・狂華。
「……良い月夜じゃのぅ、吸血鬼。……人狼はどんな連中で、どんな思考の持主なのじゃ?」
「侵略者さ。彼らは兵士としては非常に優秀かもしれないが……なんにせよ、僕らにとっての敵だ」
「……何故日本に?」
「ここは、詠唱銀が満ち溢れているからね。世界中を見渡せば、他にも無い訳では無いが……これほど広い地域は、日本だけだから」
「そちらの最終目的は何だ?」
「その質問は難しいな。それは、君達に『人間の最終目的は何か?』と聞くのと同じようなものだよ。まぁ、強いて言うなら『幸せに暮らすこと』かな」
 狂華の質問の後、西垣・直貴が尋ねると、その目的を問う鈴木・聖斗の言葉に、小さな笑みを携えて答えるアルバート。
「吸血鬼とは存在するのでしょうか……?」
「君が今、話しているのが吸血鬼だよ。まあ、君達に良く知られている物語の中の吸血鬼とは、違う存在だけどね」
「吸血鬼っていうけど、本当に吸血鬼なのか?」
「疑り深いな。まあ、君達の言う『本当の吸血鬼』が、ブラムストーカーの小説でも指しているのなら、全然違うものだと答えておこう」
 マリアベールをした如月・楓雅からの質問に答えたところで、吸血鬼というものについて鳥羽・白夜からの問いがある。
 ひとつ質問が上ればまたひとつ。
 中庭を歩きながら答えていくアルバートの姿を、氷上・靜が見ていた。自分は、相手を信じることからはじめたい。まだ何も、始まってさえいないのだから。
「どうもこんばんは。本日はお招きありがとうございます。楽しませてもらっていますわ」
 アルバートを見かけて挨拶をする天乙女・姫沙乃。普段の様子からはかけ離れた優雅な身のこなしに、一緒に来た信田切・すずめは目をぱちくり。
「それにしても、姫沙乃さん、まるでお嬢様みたいですね。結社でお話ししている時とは別人です!」
 おおー。と言いながら小さな拍手。けれどもすずめは悪気はないらしい。
「此度は、貴組織の拠点にお招き頂き感謝の極みだ」
 ヱーテル・メディスはアルバートの前にくると礼をした後、鎌倉の美味しい店など他愛もない会話をする。
「あゆみちゃんたちは、種族的に人間でしょぅか?」
「もちろん、彼女達は人間だ。僕らのような来訪者とは違うよ」
 アイリス・ローエングリューンは、質問の答えにそうですか〜。と、頷く。
 瑚城・花楓が結社名物のロシアンチョコを、今日誘ってくれた礼にとアルバートに差し出す。無臭にんにく入りのが数個あるという品らしい。
「……お、俺も食うでな! ……うぐっ」
「な、お前が当ってどうする!」
 とりあえずひとつ食べてみるアルバートだったが、それは普通のチョコだった。が、伏見・厳道は当たってしまい、物凄い顔で口元を押さえていた。
 その様子を見ても、きょとんとしているアルバート。彼はコレが何なのか、さっぱり分かっていないようであった。
「初見になる。毛利・周だ。この度の招待、感謝する」
 攻め難く守り易い所に城を建てたものだと思いながら、アルバートの姿が見えると挨拶に訪れた毛利・周。
「アルバート卿、お招き感謝する。貴方がたの『城』にこれだけの人数を招いて頂いた事、それ自体が信頼の証だと……まぁ、俺ァ考えてるよ。願わくば、あンたらとはこのまま友好的な関係を築きたいもんだね」
「料理は美味しいし、こうして庭の散策もできたし……今日はありがとな。招待してくれて」
 しっかりと考えていた挨拶をアルバートに告げる篁・夜月だが、お約束のように、最後の方はもう敬語ではなかった。それに便乗して、桐嶋・宗司も今日の礼を告げる。
 沢北・朝海がアルバートに向かって携帯電話を構える。
「やっぱこういう時って撮りたいじゃん?」
「あゆみたちも、良くそうやって撮っているよ」
 撮っても良いとアルバートが返事すると、朝海は彼が学園の生徒と歓談している光景を収める。
「……また遊びに来てもいいか? ま、そっちばっかに用意させるのもなんだし、今度は遊びに来いよ。鎌倉もいいもんだぜ?」
「勿論だとも。いつになるかわからないが、また君達を招きたいとは考えていると。そうだね、機会があれば、それも楽しそうだ」
 にやりと笑った陰針・薫に合わせるように、アルバートも笑って答える。
「せっかく出会えたのに1日だけでさよならなんてもったいねぇしな。最初はメル友とかペンパルでかまわねぇからよ。アルはメールとかするのか? するならアドレス教えてくれよっ。メールしねぇなら手紙書くぜ」
「残念ながら、この城の中には電波は届かないんだ。それに、僕は携帯電話を持っていないからね。手紙も、普通の方法では、ここまで届かないだろうから、何かあったら、あゆみか誰かに伝言して欲しい」
 具合が悪くなった古波藏・伊呂波が、他の吸血鬼に介抱されているのを見つけたアルバート。そのアルバートに話しかけるも、彼は携帯電話もパソコンも持っていないようだった。
 連絡方法はあゆみ頼りという事が分ると、乾・舞夢は違う質問をしてみる。
「ここって、どんな人達が住んでるの?」
「皆、僕の仲間達だよ」
「それと、この『城』はとても広いようですが、人口はどれくらいなのか?」
「今ここで生活しているのは、大体200人くらいだね」
「我々は友好的に付き合えると思って良いんでしょうかね?」
「そうだね。僕も戦いは嫌だから……後は、君達次第ってところかな」
 時任・薫がここで暮らしている吸血鬼達の数について尋ねると、それならと風月・陽炎はひとつだけ問いかける。
 そこへ水守・梢がドレスの裾をつまんでお辞儀をひとつした後、どうぞと飲み物が入ったグラスを渡すと、ありがとうと受け取るアルバート。
「流れてくる音楽も素敵ですけど、静寂の中の微かな音もとても綺麗だと、私、いつも思ってるんです」
 今日は人が多いけど、普段なら静かなのではないかと司條・千雅子の言葉に、アルバートは静かに頷いて聞いていた。
 そんな様子を セツナ・フォンティーユが眺めていた。どんな人物なのか気になっていたのだが、なんだかあまり怖い感じはしない気がした。
「神戸は、お好きですか?」
「あぁ、好きだよ。とても素敵な場所だと思う」
 白神・直刀からの質問には、にこりと頷く。
「壊す予定のメガリスを交換すれば、メガリス入手分の成長が余計に出来て、両方が得すると思うんだ。そんな訳で、壊す以外に使い所の無いメガリスを手に入れたら、考えてみてくれないだろうか」
「それは、きっと、あまり意味が無いと思うよ」
 何かを思いついた佐原・利也が駆け寄ってきて、そうアルバートに提案してみたが、彼は首を振った。メガリスのもたらす力は、そのような物では無いという事だろうか。
 櫻・広樹もその輪に加わり、アルバートや、その他の吸血鬼たちと料理と一緒に会話や、この雰囲気を楽しんだ。
「これからも是非、仲良くしてください……」
 アルバートの周りは常に人が沢山居て、その周りをただウロウロして様子を伺っていた雀宮・棘だったが、意を決し一歩踏み出しアルバートの前へと出ると、花筐を差し出した。花篭に生けてあるのは辛夷と藤。アルバートはありがとう、と優しく笑みながら、その花筐を受け取った。
 可愛いなぁ、クールな表情が素敵だと思いながら、九野寺・しいながアルバートに近寄り、大広間から持ってきたケーキを一緒に食べようと誘った。
 皆が質問してるのを聞いていたリュン・ガーフィールドは、豪華な内装の大広間の写真を撮っていたが、アルバートへは色々思うところがあり、カメラを向けることはなかった。
「土蜘蛛という来訪者が居ることは伝承で知ってはいたけど……そんな事があったのか」
 此花・さちかが、学園と土蜘蛛との争いをどう思ったかを尋ねると、アルバートはそんな風に零した。

 チャールズ・バレンタインはアルバートの歩調に任せて、中庭を一緒に歩いた。
 中庭では山之上・哩進が得意のヨーヨーを披露している。
「貴方がたは学園と、どのような関係を築きたいのでしょう? 話せる限りでかまいませんので、教えていただけないでしょうか?」
「そうだね、戦いになる事は避けたいと思っている。よき隣人として仲良くしていけると良いが……後は、君達次第かな」
「……ちと失礼するゼ。己はまだるっこしいのが苦手でナ、無礼承知で単刀直入に言わせてもらウ。世界結界の現状維持を望まねえ相手は、世界結界が弱る事を望んでる訳だからナ、どう考えても仲良くなんて出来ねえ」
「僕達としては、強大な敵を封じてくれる世界結界は、むしろ有難いくらいなのだけどね。これがいつまで保つ保障は無いが」
 気分を悪くしたらすみません、と言いながらも質問する葬月・黒乃。その質問に、更に突っ込んだ質問をする四柄衆・砕。それらの質問に言葉を返すと、今度は瀬崎・直人がもうひとつ疑問を投げかける。この話題に凄く興味があったイルミット・ペルヴェールも興味深く、アルバートの話を聞いていた。
「能力者じゃねぇ人間をどう思ってる? 普通の人間って連中を、だ」
「昔の人間は、酷い事をするものだと思うよ。元々、この世界の全ての人は、能力が使えたのだから」
 それを自ら封じてしまうのだから、と呟くアルバート。
 番場・論子が人狼の情報について求めてみると、クロミツ・トリイも輪に加わって、黙って耳を傾ける。と、片瀬・翔香が突っ込んだ質問をした。
「人狼もメガリスを持っているのか?」
「少なくとも1つは持っているはずだ。それ以上持っている可能性もある」
 アルバートは真剣な眼差しで述べる。
「彼らのメガリスは、破壊を呼ぶ力だ。僕達の、護りをもたらす力とは、正反対だね」
「それでは、来訪者間でのルールみたいなものは、あるのかな?」
「相手にもよるけど、来訪者同士ならば、少なくとも有無を言わさず攻撃という事は無いね」
 犬神・隼人の質問に耳を傾ける楊・梨花。少しでも多くのことを、知っておきたいと思うから。
 次から次へと飛び交う質問と、その返答を黙って聞いている緋勇・龍麻。鷹峰・陵もまた、その会話の輪の中に入っていく。
 ジェノ・サイトウが交渉をしたいのなら、自分は力になると告げると、アルバートはありがとうと静かに笑み返す。
「今回の招待は、この城の試運転といった意味もあったのでは……?」
「アルバートさん……とお呼びして良いかしら? ……もしかして、ウチの学園の可愛い女の子でも見たかった、とか?」
「そうだね、日本には美しい女性が多いから……はは、冗談だよ。試運転というのは良くわからないが、引っ越した後に、隣人を自宅に招くのは、普通の事じゃないのかな?」
 銀・狼貴とレムリア・ローゼンクロイツの言葉に、アルバートは日本では違うのだろうかと小首を傾げた。どうやら、彼にとっては、ここに引っ越してきたので、その引っ越し祝いのようなパーティであったらしい。
「……なぁ、そういえばお前さんの周りって女ばかりな気するんだけど、なんでだ?」
「あゆみ達の事かな? そうかもしれないが、女性ばかりなのは偶然さ」
 そんな会話を耳にして、ふとエクスカリバー・デュランダルが挨拶を兼ねて話しかけると、アルバートは軽い口調でそう返した。
 田嶋・真揮も皆が質問しているの聞き、とりあえず今は今日招待してくれたお礼を伝えた。ベルナデッド・デルヴロワも他の誰かが自分の聞きたいことを聞いていたのを聞いて、今は彼の姿を見ながらグラスを傾けていた。
「お城、なぜ六甲なんですか〜?」
「このあたりでは、此処しか城を建てられる場所がなかったんだ」
 ホーリィ・ランプフィールドと浅海・佳和の質問に、にこやかに答えるアルバート。
「招待してくれてありがとう、僕たちを信用してくれてるんだね。安心して、一般人に迷惑かけない限り、僕らは敵じゃないよ」
 水原・流惟はグラスを掲げ、アルバートと乾杯を交わす。
 のんびりと二条・尊はアルバートと中庭の散策を楽しみ、霧島・双一が声をかけてきた。
「銀誓館の皆と直接話し合ってみて、どうだった?」
「知り合ったばかりだから、まだ良くわからないね。でも、君達の中には、色々な人がいる事は分かったよ」
 皆がアルバートと歓談してるのを見ながら、久司・大介はここに人狼が忍び込んでくる可能性について考えていた。アルバートが手すきになると、今がチャンスと八神・弥勒が友達になろうとアタックしに行く。
(「あいつか。……きにいらねぇ目だ。まるで見下してる様な。俺の気にしすぎかもしれねぇがな」)
 遠巻きでアルバートを見た武田・克己は、すぐに興味が失せたかのように、その場から移動する。
「この城には、どのような力があるのです?」
「僕達が安全に暮らす為の場所になる。外にある危険から、僕達の事を護ってくれるのさ。この城は頑強だから、そう簡単には破壊できないよ」
 アリスティア・ハルパニアの問いに答えるアルバートの言葉は、暗に人狼の事を示しているようだった。

●普段と変わりなく
 ここも屋敷の中だというのに、まるで別の場所かのように、その部屋は実に手作り感が漂っていた。
 ざっくばらんに机をひっつけたり、直に座れるように敷物をしいたりしたり。
 食べているのはコンビスイーツや、スナック。
 まるで友達の家に遊びに来たかの様な雰囲気。
 ここに、正装した吸血鬼たちは居なかった。
「今宵はDJ SHIDOが影の城にファンキーなサウンドをお届けするぜ〜!」
 天河・翼と後月・悠歌がパーティーの開会を宣言するようにタイミングを合わせてクラッカーを鳴らし、獅堂・雅輝が自ら持ち込んだ機材で、音楽を流せば会場は盛り上がる。
「今日はお招きありがとうございます」
「アルバートとの出会いとか聞かせてもらっても良いか?」
「えー? アル君との出会いー? アレは運命の出会いやってん。そうそう雨の日にな、段ボール箱に捨てられとったアル君が見つめてくるから、つい拾ってん………って言ったら信じる?」
「アルくんとやら、怖くなかったのかや?」
「いや、最初はただの家出小学生やと思ってたし、今も別に怖くはないで。ま、小うるさいけど」
「……で、誰がアルくんとデキてんの?」
「そんなんありえへーん。なー、ひとみ?」
 久瀬・透輝が焼いてきたパウンドケーキを差し出す横から、芳賀・柊輔が質問するとその場が静まり返る。
 あゆみがちょっと懐かしむように、仲間のひとみをからかいながら話す内容は、冗談なのか本気なのか。でもあゆみの口調はとても楽しそうだ。
 彩島・亜璃砂の質問には「小姑みたいやねん」なんて付け足して。そこへさらに突っ込んだ讖在・瑠璃の質問に、一瞬空白ができたものの、少女達は手を叩きながら大笑い。
 そんな様子を、アルト・グランデも楽しそうに見ていた。

「これ、お土産ー」
「たくあんやー! 誰かご飯持ってきてー!」
「メガリスって確か、使うにゃデカイ代償がいるって聞いたけど……」
「うん。黄金のリンゴは、所有者がドラゴンに殺されるってものらしいんよ。けど今回は、所有者おらんかったみたい」
 言乃葉・伝からたくあんを貰ってバカウケのあゆみへと、質問をした高屋敷・鉄平は、自分たちが生贄じゃないことにホッと安心していた。
 会話のきっかけとして猫変身を披露したファブニール・クリューガーは、あゆみのジョブについて聞いてみた。
「あゆのジョブ? 殴る蹴る系って言うんかな。本業は従属種ヴァンパイアで、今のバイトはファイヤフォックスやねん」
 しゅっしゅっと拳を構えて見せたりしつつ、そう答えるあゆみ。ヴァンパイアという単語に、能力者の反応が一瞬止まる。従属種というのはよく分からないが、アルバートに従っているというような意味なのだろうか?
「……あゆみはんって『アルくん』とかいう吸血鬼に協力しとる人って聞いとるけど、その吸血鬼って、何や特別の力とか持ってるん?」
「えー? そんな特別な力なんてあったかなぁ。せやねぇ、私を能力者にしてくれた事とかかなぁ。けどみんなの方が猫に変身できたり、特別ちゃうんやろか?」
 野菜チップスを齧りながら源真・神那が尋ねると、今見た猫変身が新鮮だったのか、うーんと首を傾げるあゆみ。だが能力者にとっては、あゆみの語るアルの能力の方が、よほど興味深かった。
 あゆみを能力者に変えた力とは、アルバートが言っていた『吸血とは神聖な儀式』という言葉と、何か関連でもあるのだろうか。
 鎌倉銘菓のハトの形のサブレをお土産に持ってきた葉月・玲は、愛用のデジカメで会場の中の写真を撮っていた。
「お城すごいねぇ。どうなっとるん?」
「うちも最初はビビったよ。ま、中は普通の街一個って感じかな」
 唯鋼・神鉄の手作りのアゲハチョウを受け取り、質問に答えるあゆみ。
「手作りはやっぱり美味しいな〜」
 あっちのクッキー、こっちのケーキ。手前にあるコンビの新作スイーツとたらふく食べて行く坂木・崎と手作りのお菓子に幸せそうな吉国・高斗。
 そんな仲間の様子や、あゆみや少女達を見守っている鬼一・法眼の姿も、会場の端にあった。
「僕も時々地縛霊を退治しに行ったりするんだけど、最近地縛霊のそばにリリスってゴーストが一緒にいるって事があるんだって、でも、そんなこと最近までなかったんだよね」
「んー。ほら、地縛霊は動けへんやろ。せやからリリスが、地縛霊を利用してるんちゃう?」
 風華・八重の言葉に、自分の考えやけどね、と言いながらあゆみはそう告げた。

「きゃー。みんな久しぶりやねぇ。元気やった?」
「お城を作って……次は何をするのかな」
「パーティー終わったら、後片付けして、そん後はアル君の古い友達の出迎え準備ちゃうかな」
「この前の林檎。アル君はどう言ってました?」
「なんも言わんと、『黄金の林檎』やでって言ったら、ちょっと信じてたで。後でものっそ否定しとったけど」
 何度か会ったことがある、学園の生徒たちを見つけて、あゆみが駆け寄ってくる。
 夕凪・渚がたくさん作ってきたプチシュークリームを差し出していると、周船寺・叶も寄って来て、以前自分が作った林檎で作った黄金の林檎の欠片の話をして、あゆみと顔を見合わせて笑いあう。それに緋沢・真理も加わり、学園でのダイナミックな運動会のことなど、話す話題には尽きない。
「今回は随分と大人数になったわね。お城は初めてなのだけど……こういうのも素敵ね?」
「わぁ。夜子ちゃんの最新刊やん。この間もらったコレ、チョーおもろかってん」
 葦原・夜子はお手製のアップルパイと『本当にあった怖い話』ノートの最新版に、あゆみはうれしそうな笑みが全開。
「神戸の美味しい店たくさん知ってるんだよね。シュークリームの美味しい店ってあるかな」
「シュークリームやったら、やっぱり御影にある店があゆは好きやなぁ」
 那智・れいあが帰りに食べて帰りたいというと、このあたりからの電車の乗り継ぎと駅前にあるその店までの地図を描くあゆみ。
 嘉久見・比鶴がどっさりな量のドーナツをあゆみに渡しながら、招待状のお礼を言いい、氷花・龍志は早速、比鶴が持ってきたドーナツを食べる。
「……はぐはぐ……もぎゅもぎゅっ…」
 みんなが持ってきた差し入れを美味しそうに食べているテン・ナンバーズの手も、もちろんドーナツに伸びてくる。そんなテンの様子にシグンリュード・フィオルティアは自分が作ってきたプティ・フール・フレも食べてと差し出す。
 そんなあゆみの様子を離れた場所で見ている百地凛花と百地・凛花。此処にあるものは手をつけず、自分たちが持ってきた御菓子だけを食べていた。

「はーい。一発何かやりたいと思います!」
 元気良く手を上げた文月・昇が、突然瓦を高く積み上げたかとおもうと、一気に割ってみせた。
 それにおおーっと拍手する一同。
 黒霧・ちはやも拍手をしながら、もってきたクッキー以上に、はるかに食べている量のほうが多かった。
 そこへサーカス団のコスプレをした『キアラ様の宮殿』メンバーが登場。
 マジシャンコスプレのナミル・アルファルドが華麗な手品を披露し、猫耳猫尻尾付きの派手コスプレの丙・朝陽のジャグリングで大盛り上がり。そこへネコミミ・しっぽをつけた京丸・紫音がハーモニカ演奏で花を添えると、タキシード風レオタードのエルカ・ランチェスター、ライオン姿の芳野・もとの玩具や、ぬいぐるみを使ったコント。それは少し間がずれていたのだけれども、それがかえってみんなの笑いを誘う。周囲からは、惜しみない喝采が贈られた。
「君は、異種族との愛は成立すると思うか?」
「つか、好きになるのに理由はいらんよねー。なー、ひとみ?」
 レオタード姿の支倉・時雨のからの質問に、またしても彼女の仲間であるひとみをからかいながら答えるあゆみ。
 藤枝・優美奈はあゆみと一緒に居る少女達に視線を向ける。
 以前の『土蜘蛛の協力者』にあった狂気的な要素が無いかを見ているが、あゆみにも他の少女達にも、そのような気配は見受けられなかった。

「そういえばお姉さま達は、以前地縛霊のいる場所を探しておられたみたいですけど、何のためだったんですか?」
「あれは、うちの周りの危険な場所をチェックしてたんよ」
「ナイトメアってご存知ですか?」
「ナイトメア? 何それ、知らんわ。ちょっと教えてくれへん?」
 他の少女達に叉菅・剛句が興味深い様子で尋ねると「それはねぇ」「うふふー」と笑いながら答えていたが、灯神・漣弥のナイトメアという言葉には笑い声が途絶え、俄然興味を持ったのか、身を乗り出し逆に尋ね返される始末だった。

「おっ、リリスのコスプレかい? ヘビ触ってもいい?」
「きゃー。えっちぃー」
 この部屋にも仮面の少女がいるので、一之瀬・きさらが仮面の少女の蛇を指先で撫でようとすると、あゆみ達から黄色い声があがった。何故エッチなのかは、少女達にしか分からず、きさらは『?』マークを浮かべている。
 エリカ・マイヤーは少女達と、会話や甘いお菓子を楽しむ。
 如月・菫とドリーナ・アモットは、甘く美味しいものを食べながら何か起きないか、目を光らせていた。
「今までも色々招待してくれよったりしとったし、あゆみがそう思ってくれてるゆうのは、めっちゃ嬉しいことやねんで。これからもよろしゅう頼むわぁ」
「ホンマ? あゆもそう言うてもらえると嬉しいんよ」
 藍月・煌があゆみに手を差し出せば、嬉しそうにあゆみは煌の手をとりしっかりと握手した。
 空乃・詩漣はクッキーを差し入れた。
「いやー凄い人数で……人ごみ酔いしそうで……」
 人に酔い会場を出て行く雨谷・雅貴。それに付き合うレイデル・アヴェイソン。可愛い女の子は万国共通でかわいい思っていた。それに雨谷・雅貴ががっつりおやつを抱えて追いかけてきた。
 九重・夜魅子は一端、あゆみ達の会場を出て戻る途中で、迷子になっていた。

●音楽が鳴り始まるダンス
 正装した吸血鬼たちがそれぞれに楽器を持ち、音楽を奏で出すと大広間の中央でダンスが始まる。
「凄いお城ですね。アルバートさんたち、どうしてこんなパーティ開いたんでしょうね。俺は敵対というイメージはなかったので、どちらかというと、運命の糸が結ばれるといいですね……」
「……そうだね、こんなに素敵な舞踏会を開いてくれる仲間がいたら、それは素晴らしいことだと思うよ」
 素朴な思いを藤枝・唄彦に尋ねてみる月野・彰良。
「おしろすごいのーみんなきれいなのー」
 全て初体験な瀬名・雪乃は危険意識ゼロで辺りを見渡し、ワクワクしている。と、そこへ……。
「私の名は御桜深柑。アルバート・ローゼス、今夜は楽しませてくれるかしら?」
 積極的にアルバートに進み寄る御桜・深柑。すると、恭しく彼女の方へ手を差し出すアルバート。その手を取りフロアでダンスを楽しむが、実は少し緊張していた深柑。
「今宵から永きにわたる友好になるか、明日から敵になるか……どちらにしても、今は招かれたものとして、わたくしと一曲踊って頂ければ幸いですの」
 アウレリア・ディンブラからの申し出に、彼女に手を差し出すアルバート。
「お耳のかたちが変わってますの!」
「そうかな? 普通だと思うけど」
 クロエ・ヴェルジェはアルバートと踊る中、小さな疑問を尋ねてみるが、アルバートは特に意識した事は無いようだ。
 その後、和宮・優姫もアルバートとのダンスを楽しむ。
「人と、人ではないものが本当に共存できるのか……私は見極めたいと思うの」
 そう言って、アルバートの手を取るブランシェット・エフェメローズ。
 堀北・吏緒はアルバートとのダンスの途中、彼の揺れる金髪に見とれ、夢をみている気分になる。
「私の仲間達に手を出すなら容赦いたしませんよ」
「それは怖い。良く覚えておくよ」
 ダンスの最後、空木・紫唖はにっこりとした笑顔を作り、アルバートに釘を刺した。
「一期一会という言葉があるの。一生に一度だけ出会えるという意味なんだ。だからあたしは心をこめて、悔いの無いようにあなたと踊りたい」
 そんな言葉でアルバートをダンスに誘った関・銀麗。もちろん断る事無く、彼は彼女の手を取る。
 そんな中、アリス・ルビーティアは、女性からは誘ってはいけないというマナーを護りながらも、相手をして欲しそうにアルバートを見ていた。その視線に気が付いたアルバートは、紳士的に彼女をダンスに誘う。
「あゆみさんには仲良くしていただいてます。よろしければお相手願えますか?」
 何度かあゆみに会っている巫・翠鈴は、今日はアルバートにダンスを申し込む。
「お相手有難うございました。とても有意義なひと時でした」
 アルバートとのダンスを純粋に楽しんだ久遠寺・紗夜は、踊り終わった後、優雅にお辞儀をした。
「月明かりを。静かなひと時を分かち合って……守っていきたいの……」
 三船・琶月は相手のことをきちんと知れば、いらない戦いをしなくても良いだろうと、アルバートの手を取った。
 伊勢・小綾は頃合を見計らって、慣れない衣装に気が回らずスカートの裾を踏んで転んだ……というフリでアルバートに頭突きをしようと思ったが、残念ながら頭突きは成功せずに、クルクル回っているのをアルバートに止められていた。
 一度見てみたかったアルバートとのダンスを楽しむ高宮・琴里。彼の瞳に信念を感じられることができるのかどうかを確かめる。
 ダンスに慣れた頃、ルシア・バークリーはアルバートをダンスに誘うつもりだ。踊っている時に、これからも学園と手を取り合って欲しいと告げる為に。
「アルバトさんは、どこでダンス憶えてきたですか?」
「嗜みとして、小さな頃に教えてもらった事はあるよ」
 インラインスケートでくるくると回る綾瀬・千鞠。
「本日はお招きありがとうございます。私……エスコートしてくださるはずの方にすっぽかされてしまって、宜しかったらお相手してくださいませ。小さな城主様」
 アルバートの前で跪き頭を垂れる貴船・沙那に、彼は静かに彼女へと手を差し出した。
「舞踏会だし、王子様とおどってみたいー!」
 河嶋・ほたるは元気良く、アルバートを誘いに行く。

「本日はお招きありがとーございます。あ、あの……よろしかったら踊っていただけませんか?」
 ミオン・ファーフィルの誘いを受けるアルバートは彼女の手を取り、フロアの中心へとエスコートする。
「素敵な夜を、ありがとうございました」
 こんな場所でダンスを踊るのはもちろん初めてという瑞月・千歳が、緊張した面持ちでアルバートとのダンスを楽しむ。
「やあ、人気者はお忙しそうですね。一曲お付き合い頂けませんか?」
 人だかりを押し分けて黒葛・つぐみがアルバートに片手を差し出すと、その手を取るアルバート。
「俺達を此処へ招いた目的は何だ?」
「あゆみと共に世話になった組織に、お礼をしたいと思っただけさ」
 アルバートとのダンスが終わろうとしている時、綾瀬・風流が疑問を投げけると、アルバートは手を離しながら答えた。
 自分が小柄だから見つけられないかなぁ、と思っていた藤宮・美紀も、アルバートとのダンスを楽しむ事ができた。
 その後、アルバートの相手をしたのはフリーズ・レイン。
「あゆみちゃんは、言っていたわ。『あゆたちを狩ろうとする狼の眷属がいる』って。けど、傍から見ていると良く分かるわ。狼が狩ってるのは、最初からメガリスと来訪者の貴方達だけ。貴方が彼女達を盾にしてるから狙われる。それをすり替えて、恩を売り、騙し、盾に利用する為の狡猾な嘘。違って?」
「あるいは、そういう考え方もあるのかもしれないね。けれど、損得ばかりで物事を考えてしまうのは、少し寂しくはないかい?」
 彼女の挑戦とも取れる言葉に、アルバートは、今まで変わらずにこやかな口調で返した。

「こんばんは、一曲踊ってくださるかしら?」
 月代・奏華の申し出に彼女をリードして踊るアルバート。身長差があるものの、踊り慣れているのか、しっかりと彼女をリードしていく。
「ところで、このお城の一番偉い人って君でいいんだよね?」
「今のところは、僕が代表をしている。古い仲間が皆揃ったら、誰かに代わってもらうかもしれないけどね」
 踊り終わった後の浅上・空の質問には、とりあえずは今のところは自分が代表だと告げると、アルバートはまた次の女性とのダンスに赴く。
 赤い靴に赤いドレスの島宮・火蓮は、クルクルとアルバートと踊る。
「こんな舞踏会が定期的に開かれるような関係になるといいわね」
「そうだね」
 ダンスの最中の言葉に、アルバートも静かに頷いた。
「見て、あの人綺麗ー!」
  知らない誰かに指を指され、完全に女性に間違えられてしまった石十口・律は、ショックを隠せない。
「私も美歌もダンスができないので、教えていただけませんか?」
「えぇ、喜んで」
 アリア・アマティの申し出に頷くアルバート。柊・美歌はアリアの後ろの隠れていたが、アリアが男性役、美歌が女性役でダンスを教わると、大好きなアリアと踊れることが嬉しかった。アリアは踊る楽しさを教えてくれたアルバートに「ありがとう」を伝えた。

「すばらしいリードでしたわ。有難うございますの」
 アルバートと踊り終わった後、鈴下・茉莉が優雅にお辞儀をひとつ。
 ミリア・シルフィストはアルバートと踊った時に「イグニッションできるかどうか」と尋ねたところ、「面白い能力らしいね。残念ながら、僕達には無い技術だ」という返答が返った。
 二人が踊る様子を見ていた桐沢・司は、次の順番のためダンスのステップを一生懸命に覚えている。
 北川・智と踊った後、折角だから一緒に踊ろうと誘ってきたルーマ・ネイブだが、アルバートもルーマも男性だ。
「俺達の場合、どちらが女役になるんだ?」
「そうだね。君の踊りに僕が合わせるのは、どうかな?」
 くすくすと笑いながら、アルバートはルーマの手を取った。

 これもホストの務めなのか、次から次へとダンスの相手をしていくアルバート。
「どうして、わたくし共をご招待して下さいましたの?」
「引越し後に、隣人を新居に招待するのに理由が必要なのかな?」
 野乃宮・彩華と踊りながらそんな会話をすれば、曲が終わり次の相手、ホウジョウ・エクスフィールドと踊る。
 仲良くできるのが一番だと、壱条・ひかるは勇気を出してアルバートをダンスに誘い、彼と踊ることができた。
 一緒に踊れば、アルバートがどんな相手か少しはわかるかもと、草間・静音がアルバートにダンスを申し込む。
「舞踏会だし、王子様とおどってみたいー!」
 無邪気にアルバートとダンスを踊る河嶋・ほたる。すると比良坂・史恵が二人のためにヴァイオリンを奏でる。
「城主殿、一曲付き合っていただけぬか? レディのお誘い、よもや断ったりせぬじゃろうな」
「もちろん。喜んで」
 大堂寺・静の差し出されたの手を恭しく取るとフロアへと誘う。
「そなたらと友好的な関係を築きたいが、そちらはどう思われておるのじゃ?」
「戦いは嫌だと思ってるよ。あとはそうだね、君達次第かな」
 踊る中、尋ねられる言葉に答えると、静からまた別の相手へと変わる。
 次のお相手はメイド服姿の蒼野・憐。来日の目的を尋ねられれば、詠唱銀が満ち溢れている地だからと返す。
 振袖姿の崔・根室ともダンスを楽しむアルバート。
 その後、付け髭を片手に望月・英二がやってきた。
「ヒゲダンスという、小粋でお洒落なシュールなダンスがあるんだ、良かったら一緒に踊って欲しい」
「ヒゲダンス? どんなダンスなのか、一度踊って見せてくれないか?」
 首を傾げるアルバートの前で、おなじみのあのダンスを披露する英二。はじめてみるコミカルな動きに目を丸くするアルバート。しかしコレを踊るには付け髭をつけるのかと、少し悩んでいるうちに、英二の姿はダンスを踊る人の波に消えてしまった。
「あの、アルバートさん……踊っていただけますか?」
 アルバート相手ならしっかりと誘いの言葉を言える紫水・晶。本当は今日は誘いたかった相手が居たのだが、誘いの言葉は言えなかった。だが、せめて今日は、せっかく練習してきたダンスを楽しみたかった。
 雪村・更紗もアルバートと少し踊れたことに満足していた。
「アルバートさん……しゃるうぃーだんす……?」
 セーラー服に似た華やかドレスに身を包んだ桜都・姫花からの誘いも断る事無く、彼女の手を取る。
 ダンスの途中「オーホッホッホッ!」という高笑いと共に登場した獅堂院・乱。彼女もアルバートがダンスを誘いやすいそうに行動すると、それが分ったのか彼女をフロアへと連れて行く。
 九重・飛鳥とのダンスの中での「貴方は銀誓館についてどう思う?」という質問には「あまり戦いたくはないね」と返していた。
「好戦的な第3勢力との戦いに彼女達を参加させた理由……坊やが紳士と自負するなら、彼女らを護る算段や力があってのことか? それとも、それほど追い詰められていたのか?」
「第3勢力? 吸血鬼と人狼の歴史的な戦いに現れた、第3勢力とは、君達の事だろう?」
 神凪・円もまた、アルバートとのダンスの間に疑問に思っていることをぶつけてみると、違うのかな? と小首を傾げるアルバート。その彼の手を取るとフロアへと連れて行く竜胆路・絣。
 クルクルと優雅に続けられていくダンス。
 アルバートもその輪に加わっている一人だ。
 ただ、次から次へと相手の女性が変わるのが、他の人とはちょっと違ったかもしれない。
「ふふ、ところで吸血鬼殿。おぬしにとって……ヒトとは隣人か、それとも餌か? 一応もうヒトの側に与する事になったのでのう。おぬしの、長としての考えを知りたいのじゃ」
「全ての人間が能力者であった頃は、敵か、味方か、或いは他人かのいずれかだったね。今の世界結界を作り出している人間は、そうだね……隠れ蓑、って感じかな」
 鹿島・阿須波の質問にはこう答えて、また違う女性とのダンスになる。
「私の名前は阿野次のもじ! 好きな踊りは阿波踊り! 同じ阿がつきゃ、踊らなそんそん。ということでアルバートくん一曲勝負よ」
「アルくん初めましてーッ。僕はエチュードって言うんだ。早速だけど……僕とダンスバトルしない?」
 阿野次・のもじは阿波踊りでのダンス、エチュード・クロスハートはヒッポホップでのダンスを申し込んだ。が、この後どうして良いものか、アルバートは少し困った顔で二人を見比べていた。

「出来れば、彼女達を学園の一員として迎え入れたいの。そして……貴方達とも、共に歩んで行きたいと願っているわ」
「そうだね。まだ外には人狼もいて、安全とは言えないから、安全になったら考えよう」
 アルバートの手を取った水月・氷璃の言葉には、まだ人狼が自分たちを狙っていることを示唆した。
 そんな風に次から次へと踊っているアルバートの様子を、ずっと見つめていたキャロル・モモカワ。何か不穏な動きがあれば、すぐに彼へと光の槍を放つ準備だけはできている。
 しかし学園の生徒達も、自分たちの仲間が妙な行動を起こすのではないかと、警戒しているものが数多くいたことも事実。彼女がもしその行動に出たとしても、仲間達にすぐに取り押さえられただろう。
 相崎・陣は先ほどから、キャロルが妙な動きをしているのを見て声を掛ける。
「止めろ、私らは招待された身だぞ? 此処で問題を起こしたいのか、君は」
「どうかしたのかな? 折角のお呼ばれのパーティー。楽しまないとね」
 陣だけではなく、彼女が少し殺気立っているように感じた美沢・罪がキャロルの方へと近づき声をかけた。
 それ以上、キャロルには何も出来なかった。
 
 アルバートと踊る草壁・志津乃。それに水鏡・白都が環薙・紅吏を誘うとフロアへと躍り出る。
「流れたり、誘えなかったり……噛みあわないなぁ」
 そんな仲間の様子を見ていた刈谷・紫郎は、呟かずにはいられなかった。

●愛しいと思える人と
 フロアに花を添えるのは音楽ばかりではなく、踊り行く学園の沢山の生徒達。
 九鬼・桜花と藤梨・かがみ、久利・那波は交代でフロアに花を添える。
「姉様二人と踊れるとは夢のようじゃな」
 変則ワルツに那波は嬉しそうな笑みで桜花とかがみを見る。
 佐神・忍にべったりと寄り添う庭井・よさみ。
 気負わず普段どおりに振舞おうとする蜩・加奈。スーツ姿の加奈にエスコートされて登場する夜刃・柊。色々と思うところもあるけれども、今日は純粋に二人でこの場を楽しむ。
 平然と柴咲・亜子をエスコートする国後・弘一だが、内心は初めてだらけの事に緊張していた。しかし亜子からのフォローもあり、一緒にダンスを楽しむことが出来た。
「私には忍ちゃんさえ居れば……な。忍ちゃんも……そうやろ?」
 周囲の目など気にする事無く、終始べったりと寄り添っていた。
 帝・飛鳥の誘いでやってきた羽崎・セピアは、彼女にダンスを教えていた。ダンスが苦手な飛鳥は、セピアの足を踏まないように気をつけながら、教わったようにステップを踏む。
「セピアと来れて嬉しかった! ありがとう」
 嬉しそうな笑みをセピアに向ける飛鳥。
 此花・樹が神門・夜守の前で跪き、彼女の手の甲に口付けを落とす。
「それじゃあ一緒に踊ってくれますか、俺のお姫様?」
「た、戯け者め……」
 その行為に顔を赤くした夜守は、慌てて樹の胸元に顔を埋めると、そのまま音楽に身を任せた。
 はぐれないようにと手を繋いでいる更科・久遠に、改めてダンスを申し込む真視・御鏡。
「それでは……一曲お相手願えますか?」
 初心者同士の二人のダンスは、少しぎこちないかもしれないが、充分に雰囲気を楽しむことが出来た。
 敷島・桜を見つけたゼイム・イシュロードが優雅に彼女を誘う。
「Ciao bella! ワタシと踊ってくれませんか?」
「よ、よろしくお願いします」
 ドキドキしてゼイムの手を取る桜。
「えぇぇぇ!!!」
 大きな叫び声は佐崎・梗と東雲・春夜。
「なんでお前も?! もちろん俺が男役だろ?!」
「ぇえ!? なんで決まってるんだよっ」
 どっちが男役か女役かでもめる二人だったが、音楽が始まれば梗が女役となって、二人は踊り出した。
 そんなカップル達を眺めている暁・明美。
「やはり銀誓館はいい。可愛いものの宝庫だ」
 少し離れているものの、その視線からカップル達が外されることはなかった。
「ここで、今年のクリスマスのパートナーでも見つけられればと思ったけど、こりゃ無理だね」
 楽しそうに踊っている学園の生徒たちを見て呟く寺尾・晶。
「皆さんのダンスやドレスが素敵ですね〜!」
「月白さん、ドレスとても似合ってますね」
「ありがとうございます。空さんもドレスとてもお似合いですョ」
 月白・ミライと月心・空が可愛らしく手を取り合うと、その場の雰囲気や料理などを楽しんだ。

 幸野・紗耶香の姿を見つけると、セイジロウ・マグスは優雅に片手を差し出しダンスへと誘う。
「とても可愛いね。踊って頂けますか?」
「タキシード、男前やで? あ、セイジ、つかまってもええ?」
 その行為に少し照れながら手を取るも、全く着慣れないドレスは歩き辛い紗耶香は、困ったような照れ笑いでセイジロウを見た。
 フロアの中心でゆったりと踊るのは杜宮・律花と櫻葉・籐眞。
「……踊り……本当にお上手なんですね」
 一緒に踊る燕糸・踊壺のステップに見惚れる平賀・双葉。このまま一緒に踊るよりも彼女を見ていたいとも思う。
 雪村・初音、椎名・零、がダンスを踊るのを見る鬼瓦・真名。
「こ、これも大人なれでぃーになるための嗜み。が、頑張るか」
 大胆なドレスに戸惑いながらも皆が踊るのを見よう見まねで踊ってみることにする。
 黒鋼・鏡は何か土産になるものでもないかと探す。
「さて、練習の成果を披露しようか。準備はいいかね、フロイライン」
「……よろしくお願いします、ヘル・コーガ。うまくエスコートしてくださいね」
 コートを脱ぎサングラスを取る翡翠・孔臥。そんな彼にエスコートされる綾之瀬・キッカ。
「中世のお姫様と王子様みたいですね……」
 フロアの中心に出れば、御伽噺の中に溶け込んだ気分になる。
「えっと……エスコートをして欲しいですの。その、腕を貸していただいて……」
 笹木・智成にエスコートを頼むアヤ・ソフィア。しかし踊り出せば彼女の方がダンスの心得があり、踊りながら智成に教えていく。
「えっと、手の位置はこう、腰に当てて、ステップは始めは見ていていただいて構いませんので、こう……こんな感じですの!」
 即興のワルツだけれども、初めて好きな人と踊るダンスはそれだけで楽しかった。
 鷹月・亞衣の誕生日祝いを兼ねて彼女をダンスに誘うオーレスト・サーマルト。
「誕生日おめでとう。これからも宜しく」
 西洋風のダンスに戸惑う亞衣の耳に届いたオーレストの言葉。その言葉は、彼にしてみれば告白の言葉だったのだが……亞衣の元に、しっかり届いたのだろうか。
「お誘い有難う」
 誘ってくれた逆上・夜刀にお礼の言葉を告げるユリア・カールソンは、彼のエスコートで人の少ない中庭へ。二人はここで流れてくる音楽にあわせて踊る。
「余がプレゼントした靴が良く似合う」
 歯車・影真が鹿島・麗子をエスコートしての入場。
「余の横に相応しいのは貴方のような女性かもしれない」
 ダンスの最中、影真は麗子を引き寄せ耳元で囁く。足を包むガラスの靴の鳴らす音が、とても心地よいと思う麗子。もう少し、このまま踊っていたいと思う。
 サブリエール・テフィーは騎島・亮と踊りながら、大広間の中の事を記憶している。それが終わった頃合を見計らって、亮が声を掛けた。
「タンゴは如何かな、お嬢さん」
 サブリエールと亮はバルコニーへと向かい、覚えたことをメモに書き留める。
「……で、なんで僕の足を踏むの? というかその動きは何?」
 レウィ・スペンスに誘われて一緒にフロアに出た塗歩・蒼。しかし誘ったレウィは踊れずに蒼の足を踏み続ける。フラフラと踊る蒼に付いていくように踊るレウィ。それでも二人は一曲踊りきった。
「俺と一緒に踊ってくれますか?」
 小手毬・はのみの手を取る浦里・茜。格好よく誘ったものの、踊り出すと実はイッパイイッパイだった。はのみは一緒に踊る茜との小さな出会いの縁のことを思い出していた。来訪者の皆とも何かの縁があったからこそ。だからきっとこれから仲良くしていけるだろうと。
「何だか不思議なお城ね。まるで映画のセットみたいだわ。ヴァンパイアって伝説の生き物かと思ったけど、違うのね。でも、出来ることならヴァンパイアさんとも御友達になりたいわ、私はね」
「……踊っていただけますか? お嬢様」
 辺りを見渡しては凄いと漏らす風見・莱花に、ダンスを申し込むアキシロ・スチュワート。そうして二人は華麗にフロアへと躍り出る。

 赤い顔を背けるイーリィ・シルウェストル。
「は、逸れたら……その、寂しいですからね」
 洋服の裾を掴もうと思っていた長谷川・柚奈の手はイーリィの手と繋がる。柚奈は自分が誘ってもらえて嬉しかったから、今日はイーリィにも笑って楽しんで欲しいと思う。
 子どもの頃、四辻・乙夜がシンデレラのような舞踏会に憧れていた事を覚えていた寿・司。
 夢を叶えるチャンスかなと誘った司。誘われた乙夜は、本当に嬉しかった。
「ねぇ司、知っていた? 舞踏会では、女性からダンスを誘うことってできないの、よ」
「御伽噺の王子様には程遠い相手だが、それでも良ければ一緒に踊るか?」
 そんな事を司に告げてくすくすと笑ってみせると、司が乙夜を誘う。
 眼鏡執事姿の冴神・沙羅が、ドレスが可愛く似合っている有月・優斗を見つけて、手を差し出す。
「あ、いたいた。……お嬢様、お手をどうぞ」
「良かった……見つけて下さったんですね……」
 後は雰囲気に任せるだけで充分だった。
「ふふ、沙羅ちゃんのドレス姿可愛いわね。よく似合ってるわ」
「えへ。楼心さんのタキシード姿もなんだか新鮮で素敵です」
 くるくるとダンスを楽しむ桜・楼心と藤野・沙羅。こうして踊っていると、取り合っている互いの手から伝わる暖かさ。とても近くにある相手の顔を見つめ、このままずっと踊っていたくなる。
「すみません、すみません」
 月守・千歳の足を踏んでは謝っている高城・蒼。けれども千歳のフォローもあり、暫くすれば蒼にも周りを見る余裕が出てきた。
 女の子同士、南・スバルと六御・リネ。女の子同士という事もあってか、くるくると可愛らしい。
「遅れましたが、そのドレス、似合ってますよ」
「ありがと〜だよっ」
 蒼の言葉に嬉しそうに微笑み返す千歳。
 桐生・蘭人の選んだスリットの深い赤いドレスを着た月宮・友梨が、女の子らしくいつもより甘い微笑を浮かべる。
「元は敵同士だったのに、今はこうして君とダンスを踊れる。……こんなに嬉しい事は無いね」
 蘭人の言葉に頷く友梨。彼らとも共に歩けるのかもしれないと、二人は同じように踊る吸血鬼たちを見る。

「フフフ、奈々ちゃんと踊れて楽しかったわ。できればまたこんな機会があった時も踊ってもらえるかしら?」
「わたしは次も先輩とでも、いいんだけどなー」
 小早川・奈々にダンスを教える波多野・のぞみ。二人ともある程度踊り終えると休憩を取る。のぞみの言葉にぼそりと答えた奈々の呟きは、のぞみに聞こえたのかどうか……。
「お前みてぇな落ち着きの無ぇ奴にゃ、優雅に踊るなんて無……痛っ!」
 藤原・洸太の何気ない一言に大いに傷ついた山田・八重は、彼の足を態と踏んづける。洸太もさすがに悪いと思ったのか、頭を撫でてなだめる。
 今は色々と気にかかることもあるのだが、今は来栖・零里とのダンスを楽しむ御剣・瑛斗。今日はダンスを踊りに来たのだから、今だけは私のことだけ見ていてと思う零里。
「マドモアゼル。踊って頂けますかな?」
「私でよろしければ」
 芝居かかった一之瀬・雅の誘いに、同じような台詞口調で返す神狩・焔華。焔華の胸元ではプラチナの首飾りが光っていた。
「ふふっ……楽しまなきゃ損……よね」
 敷武・雷にリードされて踊る神谷崎・刹那。所々怪しいところは彼女がリードする。
 豪華な料理に豪華なパーティー。それなのに一緒に踊る丘・敬次郎が普段と何も変わらないことに、どこか安堵をする望叶・タマエ。
 罰ゲームで女もののドレスを着ているウェイン・レイニーは居場所がなく困っていると、六道・和に声を掛けられた。
「何なら一緒に踊ります? 1曲位踊らないと勿体無いですよ?」
「今まで飯食ってた奴に言われたくない!」
 料理が山盛りの皿を持ったままの和に、突っ込まずにはいられないウェイン。
「若菜ちゃん、一緒におどろ!」
 五十嵐・琴音の誘いに嬉しそうに手をとる秋條・若菜。女の子同士可愛らしいダンスが繰り広げられる。
 そんな頃、銀鼠・用宗と秋條・蒼嗣は中庭の散策に出掛けていた。

 大広間は大変広かったけれども、それでもダンスを踊る人、まわりで食事や歓談を楽しむ人達で、常に賑わっている状態だった。
「一度はぐれたら合流は難しそうだな……。……手を」
 小鳥遊・影斗が月島・眞子の手を取ると、二人はそのままフロア中央に向かっていく。
 あまり踵の高い靴には慣れていないだろうと気遣いながら、守矢・小織の手を引いて、フロアへと連れて行く街田・良。
 引き寄せた彼女の香りが心地よく、このまま離れがたくなってしまう。普段とは違い眼鏡をかけていない良のいつもとは違った表情に、ちょっとドキドキしながら、この一時を楽しむ小織。
「――さて、姫君、僕と一曲踊って頂けますか?」
「今日は貴方だけを見ているから、貴方も……私だけを見ていてね……」
 アラストール・セブンセントラルに手を取られ、一緒に踊る水無月・音音の一言は彼へと向けて。
「綺麗だな……」
 普段よりも大人っぽく感じる地祇谷・是空に弘瀬・章人が呟く。夢のような束の間の時間、心を込めて踊る二人。
「余所見はよくないね、だろう?」
「心配しなくても、今は貴女しか見えませんよ」
 ダンスの最中、何かありはしないかと回りばかりを見ている鳳凰堂・虎鉄の顔を、両手で自分の方に向ける裏沢・由那。そんな彼女に虎鉄は微笑む。
「……もしかして、ワルツですらも踊れないド不器用だって事がバレるのが恐いんですか、ヨギ?」
「……いいデショウ、ワタシがド不器用かどうか、証明して上げマショウ……」
 ゼラシエル・アンソールの挑発にまんまと乗ってしまったヨギ・レカルド。ダンスの合間、ゼラシエルに服が似合っていると言われて、ヨギが返したのは吐息だけ。
 相手が来れなくなってしまった北神・鈴乃は、皆が踊る様子を眺めている。
「蛍。今日は誘ってくれてありがとう。場所が場所なので、羽目を外しすぎるのは危険だが、せっかく来ているのだから舞踏会を楽しもう」
 八月一日・螢の手を引っ張り、フロアへと連れて行く武蔵坊・玲綺。音楽が始まればダンスを踊り出す。
「ごめんなさい! ほんっとうにごめんなさい!」
「んー、大丈夫だよ。最初より、動きがよくなってきてるよ〜」
 足を踏む毎に謝る篠塚・清蓮に、優しいリードを心がける瀬良・黎斗。その甲斐あって、遠賀野尾張の頃には大分と彼女は上達していた。
「なんだかおとぎ話みたいだねえ、張先生っ」
 エスコートしてくれる張・潤風に任せて動くイドラ・ヒルマ。イドラが楽しめるように、潤風は何が起こっても不思議ではないと、辺りを警戒することは忘れなかった。
 董院・紗響と董院・桔梗は若干不本意だが、姉弟同士という事で、何も言わなくても華麗なダンスを披露していた。
 しっかり宵乃月・ブランシェをリードしたいリュシアン・メイユールだが、なかなか思い通りには行かない。それでも一緒に踊ると楽しい気分になってくる。
 楽しい時間はあっという間、もっと踊っていたいけれども、1曲はすぐに終わる。
「今日は、楽しかった……」
 鴻月・るうが小さな笑顔を蒼月・凪に向ける。

 あゆみも慣れないながらに誘われれば、ダンスを楽しんでいた。
 大広間で音楽がかかりだすと、すぐに滅炎・仁はあゆみをダンスに誘い、その後は菅野・生真と踊るあゆみ。
「今日は誘ってくれてありがとう。これからもこんな風にキミたちと仲良くしていけたら嬉しいけど、キミたちはどう思っているのかな?」
「そうやね、あゆも皆と仲良くしていきたいと思ってるんやで」
 楽しそうに笑いながら答えるあゆみ。迦遼・華蓮も女の子同士だけどと、あゆみをダンスに誘うとあゆみは彼女の手を取り、楽しそうに踊る。
「もしも、ですけど……あゆみさん達に何らかの危険が迫った時は、私達に助けを求めてくれませんか?」
「ホンマ? えぇのん? ……ありがとうな!」
 ダンスを踊る松屋・楓の申し出に、あゆみは物凄く嬉しそうな笑顔になる。
「アル君の周りって君みたいな可愛い女の子が多いけど、それってアル君の趣味なのか?」
「あぁー。どうなんやろね、結果的にはそうなるんかなぁ」
 鹿取・隼人とのダンスの時の質問に考える時間ができ、あゆみは彼の足を踏んづけてしまった。
 ワルツが流れると武蔵・賢嘉が優雅にあゆみをリードする。彼に体を任せるだけで、あゆみは上手く踊ることができた。
「あゆみさん、ご一緒に、踊りませんか?」
「うん、踊る踊るー。けど、あゆ下手やで」
 紫苑・涙の誘いにも楽しげに手を取るあゆみ。
 毒島・毒子も上手くダンスにあゆみを誘い、華麗なステップであゆみを上手くリードしていく。
「レディ、私と踊っていただけますか?」
「そんな風に誘ってもらえると、何か映画みたいやな」
 照れたように占月・迫刃の手をとるあゆみ。
 周りの目など気にせずに、あゆみと自分が楽しめるように踊る黒崎・零時のスーツの背中には『風林火山』の文字。
 クルクルと踊るのは初めて、こんなパーティーも始めて。
 だけど、ここで皆に会えて騒いで踊ったことが、とてもあゆみには嬉しかった。

●余韻を残してサヨウナラ
 やがて、大広間に奏でられる曲が止まり、パーティは終わりを迎える。
 アルバートの周辺を警戒していた祝詞・勢と志衛亭・響は財政が厳しいからと呟きながら、懐からタッパーを取り出していた。
 その目の前を、後片付けに取り掛かる仮面の少女が通り過ぎる。彼女らはあゆみによると『喋ったりする事は無いが、戦う時には一緒に手伝ってくれる仲間』なのだという。その説明からすると、おそらく使役ゴーストのようなものなのだろう。
 アルバートの身辺をさりげなく警備していた、北山・湊人とミキ・ツキサワは、何事もなくパーティーが終わりを迎えてほっとしていた。
 終始SP気分の朱鷺野・稔も、肩の荷が下りた感じがした。

 アルバートらに見送られ、再び自動馬車に揺られて帰っていく学園の生徒たち。
 今回の舞踏会は危惧していたような事は何も起こらず、人狼の奇襲もなかった。
 平穏なパーティの夜は、能力者達に、吸血鬼について詳しく知り、そして理解を持つ為の機会を与えてくれた。
 アルバートをはじめとした吸血鬼たちは、鏡にも写れば、にんにくも十字架も別に苦手では無いようだ。その名の由来である吸血行為も行うようだが、それは決して無差別なものではなく、とても神聖な儀式の時だけであるという事も知った。
「また、お会いいたしましょう」
 馬車を降りる能力者達を、ここまで一緒に来てくれた吸血鬼達が見送る。
 彼らの導きで『影の城』を出た能力者達は、再び六甲アイランドへと戻った。
 アルバートによると、故郷のヨーロッパには、まだ多くの仲間がいるらしい。その仲間達も近いうちに、ここに呼びたいのだと言っていた、アルバートの様子が思い返される。
 その時には、この城の内部は、どれほど賑やかになるのだろうか……。
「この城は凄く特殊な場所のようですね。外からの攻撃には無敵だと言っていましたし」
「近所の人達に迷惑を掛けてるような事も、無いみたいだね」
 アルバートの言葉を信じるのなら、そうなるだろう。
 だが、果たして、どこまでが真実なのだろうか?
 信じたい。けれど、信じきっていいのだろうかという疑念が、拭いきれないのもまた事実。

「まあ、とりあえず帰るか」
 なんにせよ、いつまでもここに立ち尽くしている訳にもいかない。
「帰ったら、早速現像しなくっちゃ」
 何人かがカメラを手に呟く。ポラロイド撮影した写真は、影の城の外に出ても問題なく確認できた。もしかしたら消えてしまうのではと心配していた者もいたが、どうやら大丈夫のようだ。これなら、デジカメやフィルムなどで撮影した物も大丈夫に違いない。
 アルバートやあゆみ、仮面の少女に屋敷の光景……それらの写真は、今日は来ていない仲間達へのお土産話の種にもなる事だろう。
 能力者達は、影の城で過ごしたひとときを胸に、銀誓館学園への帰路についた。


マスター:櫻正宗 紹介ページ
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いまいち
参加者:594人
作成日:2007/11/22
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