フランス人形館の怪


<オープニング>


●フランス人形館
 閑静な住宅街の一角に、フランス人形館と呼ばれる場所がある。
 人形師である男が、亡き夫人を模して作ったフランス人形。
 だが、どの人形も夫人の美しさを完璧に表現する事が出来なかった。
 すべてが出来損ないの失敗作。
 男の不満は募るばかりであった。
 そして、男が人形館で謎の死を遂げる。
 一応、事件は自殺として片付けられたのだが、いくつもの謎が残ったままだった。

「みんな、集まったな。それじゃ、話を始めるか」
 運命予報士、王子・団十郎(高校生運命予報士・bn0019)。
 今回の依頼は彼の口から語られる。

 フランス人形館と呼ばれる場所で、女性の地縛霊が確認された。
 この地縛霊はとても美しく、フランス人形と見紛うほどだ。
 いまのところ人形館と関係があるのか不明だが、調査をすれば何か分かるかも知れない。
 地縛霊は自分の身体が傷つく事を極端に嫌っているため、身の危険を感じると人形達を弾丸の如く飛ばしてくる。
 人形達は室内にギッシリと置かれているため、いっぺんに襲われると厄介だ。
 そのため、誰かが人形達を相手にしている隙に、地縛霊を退治すれば被害を最小限に抑える事が出来るだろう。
 地縛霊を倒すまで特殊空間から脱出する事が出来ないから、くれぐれも気をつけてくれ。

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参加者
黒月・冬弥(天位剣士・b00372)
山田・龍之介(のキワミ・b02920)
木嶋・栞(凶ツ祓・b03097)
国津原・梔鬼(淵獄の鬼童子・b07002)
天野・夏優(黄昏の月・b12698)
波多野・のぞみ(這いずる者達の女王・b16535)
玖波・心太郎(奇想曲・b22776)
八神・海音(夜想曲・b28336)
クロニカ・エルフォード(昏れる紅・b29198)
霧島・屠龍(轟炎の射者・b31930)
鬼神楽・鈴音(高校生土蜘蛛・b32780)
十・しづ璃(淡粧の花・b33216)



<リプレイ>

●人形館
「謎の死を遂げた人形師と、その館か……。ありがちではあるが、それ故にそのまま放置するわけにも行くまい。色々な思惑があるにせよ、ゴーストが関わっているのなら尚更だな」
 フランス人形のように美しい女性の地縛霊を倒すため、黒月・冬弥(天位剣士・b00372)が閑静な住宅街の一角にある洋館にむかう。
 この洋館は別名『フランス人形館』と呼ばれており、可愛らしい人形が屋敷を覆い尽くす勢いで置かれている。
 そのせいで屋敷には不気味な雰囲気が漂っており、誰ひとりとして近づく者はいない。
「こういう雰囲気は、ちょっとどきどきしますよねー……」
 緊張した様子で辺りを見回しながら、クロニカ・エルフォード(昏れる紅・b29198)がゴクリと唾を飲み込んだ。
 いかにも何か出そうな雰囲気が漂っているせいか、恐怖心よりも好奇心の方が勝っている。
「どれも似たような顔をしたフランス人形ばかりですね。大量生産したものでないはずなのに……、不気味です」
 窓越しに見えるフランス人形を見つめ、波多野・のぞみ(這いずる者達の女王・b16535)が口を開く。
 フランス人形は人形師の妻を似せてつくられており、晩年に近づくにつれて細部まで拘りが出てきている。
 だが、その違いを見分ける事が出来るのは人形師だけで、素人目では全く同じようにしか見えない。
「どうやら人形師が狂ったのは、妻の死がキッカケだったらしい。それまで近所付き合いも良好で、大きなトラブルもなかったようだしな」
 険しい表情を浮かべながら、霧島・屠龍(轟炎の射者・b31930)が溜息を漏らす。
 自分の妻が亡くなってから人形師は部屋に閉じこもり、まるで何かに取り憑かれたように人形を作り続けていたらしい。
 そのため、付き合いのあった住民達が人形師を心配して様子を見に行ったのだが、鬼のような形相を浮かべて怒鳴り散らされた挙句、まともに話をする事も出来ないまま追い返されてしまったようだ。
「それじゃ、ネットで噂されている人形師のイメージってのも、奥さんが亡くなった後に作られたものだな。噂だけが一人歩きしているせいで、真実を語っているものは、ほとんどないが……」
 インターネットを使って集めた情報をプリントアウトした紙を見つめ、天野・夏優(黄昏の月・b12698)がボソリと呟いた。
 噂では屋敷の地下に出来損ない人形が山積みされているという話や、妻に似せるため死体を掘り起こして材料にしたと言う話があるのだが、事実関係を確認する事が出来なかったので信憑性に欠けている。
「何か理由があった事は間違いないようだけど……、それを知るためには情報が少な過ぎるね」
 予想以上に情報が集まらなかったため、国津原・梔鬼(淵獄の鬼童子・b07002)が洋館を睨む。
 集める事が出来た情報の大半が憶測なので、人形師の性格や思いも歪んだ形で伝わっている。
「でも、地縛霊と化した奥さんの手に掛かって亡くなったのなら、この屋敷の主さんも本望だったんじゃないでしょうか? ……って、地縛霊の殺害を認めちゃいけませんね」
 図書館で借りた資料に一通り目を通し、木嶋・栞(凶ツ祓・b03097)がクスリと笑う。
 人形師の作品はそれなりに評価されていたようだが、夫人についての情報は皆無で写真などを入手する事は出来なかった。
 しかし、屋敷に飾られている人形が夫人を模している事から、生前の姿をある程度なら予想する事が出来る。
「死して尚、この世に縛り付けられる程の想い。……善悪は抜きにして、それだけ純粋で強い想いだった……って事ね。……なんにせよ、倒すべき敵である事には変わりはないのだけれども」
 自分自身に言い聞かせながら、鬼神楽・鈴音(高校生土蜘蛛・b32780)がドアを開けて洋館に入っていく。
 洋館の中にはズラリとフランス人形が並んでおり、無表情のまま能力者達のいる方向を見つめている。
「これが夫人を模して作られた人形か。フランス人形と見紛う程、綺麗とか言われてもなー。正直、あんま想像つかん。身の回りにいないタイプだし。……とは言え過去に何かあったのは間違い無さそうだしなぁ。ま、俺らはやれる事やるとするさね」
 夫人の姿を想像しながら、山田・龍之介(のキワミ・b02920)がフランス人形を睨む。
 フランス人形は氷のように冷たい表情を浮かべているが、その瞳は吸い込まれるほど美しく魅力的である。
 そのギャップでフランス人形の魅力がさらに引き出されており、油断していると時間を忘れて見入ってしまう。
「人形が動き出すとか、人形の髪が伸びるとかだったら、結構ホラーものであるけど、人形を弾丸の如く飛ばしてくるなんて、もうB級どころかC級ものだよなぁ。……ま、相手する俺らからすれば面倒な事この上ないんだけどね。ともあれ、海音もいるしカッコ悪いとこは見せれんさね。さくっと倒して帰りに美味しい甘味でも食いに行きますか」
 苦笑いを浮かべながら、玖波・心太郎(奇想曲・b22776)が気合を入れる。
 地縛霊にとって人形は自分の身を守るための捨て駒でしかないらしく、人形師の気持ちをまったく理解していない。
「人の勝手で、生まれ……失敗作と、屠られるなんて……。人形師は、夫人をとても愛していたのでしょうね。……だけど余りにも、作られた子達が哀れすぎるわ……。どうか、館に存在する全ての者達に、安寧を与えられますよう……」
 人形達を見つめて悲しげな表情を浮かべ、十・しづ璃(淡粧の花・b33216)が祈りを捧げる。
 夫人が亡くなってから人形師が外部との接触を断っており、その頃から作り始めた人形にも狂気が宿っていたと彼らの友人が述べていた。
 それが何を意味するのか分からないが、確かに不気味な雰囲気が漂っている。
「ふむ、余にはこの人形は失敗ではなく良く出来てるようにしか見えぬ。動かぬ、物言わぬ人形で、愛するものを失った悲しみは拭えないという事なのだろう。……となると人形師の死も、彼女の手によって起こった事かも知れないな」
 フランス人形をマジマジと見つめ、八神・海音(夜想曲・b28336)が通路を進む。
 そして、能力者達は地縛霊が確認された奥の部屋へと辿り着いた。

●人形達
「……廃屋にこれだけ人形が有るとホラーの雰囲気バッチリですね〜」
 部屋から溢れんばかりに並んだ人形を見つめ、栞が感心した様子で懐中電灯を照らす。
 人形達は山のように積み上げられており、その中心には夫人の肖像画が飾られていた。
「何か、おかしい! 気をつけろ!」
 ハッとした表情を浮かべ、海音が素早く横に飛んで人形を避ける。
 そのため、人形が壁にめり込み、派手な音を立てて弾け飛ぶ。
「人形は投げるものじゃないですよー。壊すものでもないですけどっ!」
 バラバラになった人形の破片を避けながら、クロニカが炎の魔弾を撃ち込んだ。
 その一撃を喰らって人形の身体が魔炎に包まれ、そのまま力を失ってポトリと落ちた。
「背後から狙われなかっただけマシね」
 白燐奏甲を使って攻撃力をアップさせ、のぞみが人形を避けていく。
 その間も次から次へと人形が飛んでくるため、なかなか前に進む事が出来ない。
「ご、ごめんなさいっ!」
 申し訳無さそうに人形達に謝りながら、栞が魔弾の射手で強化した水刃手裏剣を放つ。
 それでも人形達は無残な姿を晒したまま、能力者達に向かって飛んできた。
「……嫌な感じね。……さっさと終わらせておさらばしたいわ……」
 屋敷の奥から異様な気配を感じ取り、鈴音がどこかに隠れているはずの地縛霊の気配を探る。
 しかし、辺りの空間が歪んでいるせいで、地縛霊の姿が見当たらない。
「まさか人形の中に紛れ込んでいるんじゃないだろうな」
 警戒した様子で辺りを見回しながら、屠龍が身を屈めるようにして人形を避けた。
 いつの間にか特殊空間に引きずりこまれていたせいか、地縛霊の気配があちこちから漂っている。
 そのせいで冷静な判断をする事が出来ず、手間取っているようだ。
「それじゃ、手当たり次第に壊すしかないって訳か。何だか呪われそうだな、人形師に……」
 引きつった笑みを浮かべながら、夏優がバレットレインを撃ち込んだ。
 次の瞬間、人形達の身体に風穴が開き、バランスを崩して床に落ちていく。
「……仕方がないわね。蟲達よ、まずはあの人形達を喰らい尽くしなさい!」
 祖霊降臨で強化した白燐拡散弾を放ち、のぞみが片っ端から人形を破壊する。
 そのため、人形達は白燐蟲に喰われて跡形もなくなった。
「どうか安らかに、お眠りなさい…」
 壊れた人形達に祈りを捧げながら、しづ璃がゆっくりと目を閉じる。
 人形達は地縛霊の道具として使われていただけなので、ようやく哀れな呪縛から解放された事だろう。
「やれやれ。やっと終わりましたねー」
 ホッとした様子で溜息をつきながら、クロニカが辺りの様子を窺った。
 それと同時に肖像画の中から夫人の地縛霊が現れ、凍るように冷たい視線を送る。
「うわっ……、無茶苦茶綺麗じゃん。これなら旦那さんも未練タラタラだっただろうなぁ。まさに絵に描いたような美人って感じだから」
 納得した様子で地縛霊を見つめ、心太郎がゴクリと唾を飲み込んだ。
 夫人の美しさは人形など非にならず、彼女に似せた人形を作ろうとした事自体が愚かに感じた。
「確かに綺麗だと思うが、人形と同じで無機質な感じだな」
 険しい表情を浮かべながら、夏優が地縛霊をジロリと睨む。
 地縛霊は恨めしそうな表情を浮かべ、何もない空間から人形達を出現させた。
「これ以上、人形達を苦しませるのは止めてくれるかしら。あなたの我が儘で人形達が苦しむ姿を見たくは無いの」
 薙刀をギュッと握り締めながら、しづ璃が少しずつ間合いを取っていく。
 それと同時に地縛霊が悲鳴をあげ、一斉に人形達を飛ばしてきた。
「……分かりました。早速ですが楽になって下さい」
 それが地縛霊の答えであると判断し、梔鬼が飛んできた人形達を破壊する。
 この人形達は地縛霊が作り出したものなので、破壊する事も全く躊躇しなかった。

●地縛霊
「おまえさん、もしかして人形師の奥さんかい?」
 森羅呼吸法で攻撃力をアップさせ、龍之介が地縛霊と対峙する。
 しかし、地縛霊は何も答えようとせず、怒りに身を任せて人形を放つ。
「……人形より私を愛して欲しかった、とでも言いたいのかしら……? ……考えられるのは、それだけだわ……」
 人形の間を擦り抜けるようにして避けていき、鈴音が地縛霊の懐に潜り込んで紅蓮撃を炸裂させる。
 その一撃を喰らって地縛霊が表情を強張らせ、唇をグッと噛み締めた。
「ここはうぬの想い深き場所であるがゆえに、ここに迷い出たのだとは思うが、その鎖、断ち切らせていただく!」
 地縛霊の攻撃が止んだ隙に間合いをつめ、海音が近距離から水刃手裏剣を投げる。
 そのため、地縛霊は痛みに苦しみながら身悶えし、特殊空間全体に響くほどの絶叫をあげた。
「そんなに大声を上げなくても、レクイエムを歌ってやるさね。とっとと次の生へ向かっとけ!」
 リフレクトコアを展開しながら、心太郎が地縛霊に光の槍を撃ち込んだ。
 それに合わせて地縛霊も人形を飛ばし、能力者達の攻撃を何とか防ぐ。
「襲ウ以上ハ……消エル覚悟モアルヨナ」
 無表情のまま冷徹に、梔鬼が森羅呼吸法で強化した牙道砲を放つ。
 次の瞬間、地縛霊が人形共々ふっ飛ばされ、壁に身体を叩きつける。
「こんな所で彷徨っている場合じゃねーだろ」
 不機嫌な表情を浮かべながら、龍之介が地縛霊にフェニックスブロウを叩き込む。
 その一撃を喰らって地縛霊の力が一気に弱まり、辺りに浮かんでいた人形達が一瞬にして消える。
「あの世で旦那が待っている。……迷わず成仏するんだな」
 地縛霊が奇声をあげて体当たりを仕掛けてきたため、冬弥がダークハンドを放ってトドメをさした。
 そのため、地縛霊は肉体を維持する事が出来ず、断末魔をあげて特殊空間と共に消えていく。
「やれやれ、これですべて片付いたな。結局、夫人が人形に嫉妬したって事か? だったら余計に人形師が哀れだな」
 元の場所に戻ってきた事を確認し、屠龍がボソリと呟いた。
 部屋の中には人形達がギッシリと並べられており、そのすべてが能力者達の方を向いている。
「それじゃ、人形達も被害者って訳か。人形師には捨てられ、夫人には嫉妬され、いい迷惑だな。せめて俺達だけで供養してやるか」
 部屋に置かれた人形を手に取り、冬弥が疲れた様子で漏らす。
 地縛霊が退治された事で、この洋館もいずれ壊されてしまうだろう。
 その時、人形達がすべて破棄されてしまうため、能力者達が供養をするため持ち帰る事になった。
 そうしなければ人形達がさらに辛い状況に置かれてしまうため、そのまま放っておく事が出来なかったのである。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2007/11/27
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