【オモチャが来たりて】TINPLATE NIGHT

<オープニング>


 そこは積み木の塔の上。
 巨大な鳥籠に入れられた少年が、ぶらんと夜空に吊されていた。
『お前はどうすれば絶望する?』
 ナイトメアの問いかけに、少年はぷいとそっぽを向く。
『お前を助けに来た正義の味方が、もしも無惨な最期を遂げたなら、やはりお前は絶望するか?』
 少年の眉がピクリと動く。
『フ、フフハハハ! ならば絶望させてやろう! 行け! 我がブリキの兵隊達よ!』

 真っ暗……いや、真っ黒な空。
 輝く星は、どれもこれも金属製。
 積み木で出来た家々の間を、ブリキの兵隊達が進み来る。
 空を飛ぶのは、爆弾を一杯に積んだブリキの戦闘機。
『目標捕捉。全力ヲ以テ此を排除スル!』
 能力者達に向けて爆弾が投下され、銃剣を持った兵隊達が一斉に突撃してくる。
「くそっ……こいつら、俺達の邪魔しようってのか!」
「けれど、そうはさせません!」
 遙か先に見える塔の上に、悪夢に囚われた少年がいる。
 彼をナイトメアの手から救い出すための戦いが、今、始まる──!
 
 
「大変なことになっちゃったワ……。悪夢を見ている少年が、ナイトメアに捕まっちゃったみたいなの」
 久慈・久司(高校生運命予報士・bn0090)はそう言って、少し不安げに口元へと手を当てた。
「細かなことは多分みんなの方がよく分かってると思うけど……とにかく、その子、今は積み木の塔のてっぺんに囚われてるみたいなの」
「だったら、その塔へ行って少年を救い出しましょう!」
 ひとりの能力者の言葉に久司はこくりと頷き、夢の世界の説明をしはじめた。
「今度の夢も、やっぱりオモチャの世界なの。けれど、この間みたいに明るくはないわ。真っ黒な天板で覆われた夜空、金属で出来た星……夜の世界なのよ」
 そして、現れるオモチャ達も、ぬいぐるみやミニカーといった可愛らしいものでなく、ブリキで出来た兵隊人形や戦車、戦闘機など、どれもこれも好戦的なものばかりなのだそうだ。
「そのうえ、彼らはアナタ達を完全に「敵」として認識してるワ」
 つまり、絶対に戦いは避けられない。
「少年の捕らえられている塔までは、なだらかな石段がずっと続いてるワ。距離にして200メートル、道幅は10メートルないくらいカシラ。3〜4人並ぶのが精一杯ネ。道の両脇は積み木の家に囲まれてるから、逃げ道はないわ。そこを、塔の方から、ブリキの兵隊と戦闘機が攻めてくるの」
 兵隊達は銃剣を構えて能力者達へと突っ込んでくる。殆どが雑兵だが、馬に乗った兵隊は、どうやら階級持ちらしく他より強いらしい。
「馬に乗った「兵長さん」は、全部で5体、馬上からの素早いサーベル捌きは、クレセントファングに匹敵する威力だワ。そして白馬に乗った「軍曹さん」が2体、彼らは馬上槍による直線攻撃を得意としているワ。そして、ひときわ大きな白馬に乗って、最後尾に控えてるのが「鬼軍曹」。彼の怒号はブラストヴォイスそのものヨ!」
 戦闘機は全部で6機、上手く射抜けば一撃で落とすことも可能だが、投下される爆弾はかなり厄介だ。
 
 それらの敵を倒し、塔に辿り着けば、次は塔を護るガーディアンとの戦いが待っている。
「ガーディアンは、塔の中の螺旋階段を上った先に控えているワ。階段の途中にも兵隊はいるけど、全部雑兵だからガンガン蹴散らしちゃって頂戴!」
「で、ガーディアンってのはどんな奴なんだ?」
「ロボットよ。ブリキの」
 勿論、でかい。そして強い。
「戦いの場は、階段を上りきったところにある円形の広間になると思うワ。ロボットの攻撃方法は、力任せのぶちかまし、腕を振り回しての範囲攻撃、そして自己修復よ」
 そして、この強敵との戦いに勝利すれば、漸く天井に吊されている鳥籠に手を伸ばすことが出来る。
「少年は鳥籠の中で、アナタ達が助けに来てくれるのを待ってるワ。だから、一刻も早く行ってあげて! そして今度こそ、悪夢の世界から救い出してあげて!」
 久司はそう言うと、能力者達にふたたびティンカーベルの不思議な粉を手渡した。
「何度も同じことを言うようだけど……万が一怪我をしたり、命を落とすようなことになったら……」
「大丈夫、分かってます」
 頷く能力者達に、久司はニッコリと微笑み、彼らを送り出した。

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参加者
一花・糸(日陰カラフトマスブラウン・b13033)
和宮・優姫(ディバインメイデン・b14444)
武羅雲・生摩(蝿の王・b18211)
綾瀬・律(日日是事無・b18293)
向坂・結奈(夢の国から来た小悪魔・b18887)
雪白・ハクヤ(マシュマロ雪狼・b22971)
八歳・沙紀(香木の枝・b23537)
烏森・メジロ(いつか月に行ってみたい・b26804)
峰谷・清士郎(魔弾演奏者・b30614)
明星・心和(泣いた土蜘蛛・b32742)



<リプレイ>

●第一次玩具大戦
 黒い天板で覆われた空に、金属製の星が輝く。
 そこは、人工的に作られた夜の世界。
「ここが夢の世界ですか……。思った以上に変な場所ですね」
 少年の夢の中に初めて足を踏み入れた和宮・優姫(ディバインメイデン・b14444)は、辺りを珍しげに見回し、そして五感が普段と違うか否かを確かめるように、手足を動かしたり瞬きをしたりしてみた。
 目の前には、延々と続くなだらかな石段。その先に見えるのは、積み木で出来た巨大な塔。
「あの馬野郎……いきなりかっさらいやがって、ただじゃおかねぇ!」
 雪白・ハクヤ(マシュマロ雪狼・b22971)の緑眼が、塔のてっぺんをギッと睨みつける。
 あの塔のてっぺんに、少年がいる。自分達の目の前でナイトメアに浚われた、まだ名も知らぬ少年が。
「むぅ……今度こそお兄さんをここから起きれるようにするのー」
「はい、今度こそ必ず助けてみせます」
 烏森・メジロ(いつか月に行ってみたい・b26804)と明星・心和(泣いた土蜘蛛・b32742)も、同じように視線を向ける。
 もし後ろを振り返る者がいたならば、そこに道がないことに気付いただろう。
 しかし、それに気付く者は1人もいなかった。

 ザッザッザッザッ……。
 徐々に近付いてくるブリキの兵団の足音。
 ゴォォォォ……。
 轟音を上げて迫るブリキの戦闘機。
「今夜ぁ派手にキメてやんぜ黒馬野郎!」
 峰谷・清士郎(魔弾演奏者・b30614)が、拳をパンと掌に打ちつける。
『敵ヲ目視ニテ確認! 此ヲ全力ヲ以テ排除スル!』
「それは……こっちも同じだよ!」
 イグニッションカードを取り出し、掲げる綾瀬・律(日日是事無・b18293)。そして10人が同時に叫ぶ。
「「「イグニッション!」」」

 第一次玩具大戦、今ここに、開戦!

●Tinplate Solder
『排除セヨ!』
『排除セヨ!』
 銃剣を構えたブリキの兵隊達が、能力者達目掛けて一斉に突撃してくる。
「引き受けた仕事は最後までやり遂げるのが俺の流儀だ、少年は今度こそ返してもらうぜ、玩具共!」
 深い呼吸で気の充実をはかった武羅雲・生摩(蝿の王・b18211)は、チェーンソー剣「ベルゼブブ」を構え、最前列中央に立った。その隣には心和。後ろには蜘蛛童もちょこんと控えている。
「夢は、心ときめくものじゃなきゃダメでありんす!」
 夢の使者を名乗る者として、こんな暴挙は絶対に許さないとばかりに、向坂・結奈(夢の国から来た小悪魔・b18887)が空を飛ぶ戦闘機へと光る十字架を放つ。2機の戦闘機が忽ち光に呑まれて消えたが、残る4機はまったくの無傷。そして、投下される爆弾。
 ヒュルルルル……ドカーン! ドッカーーン!!
「うわっ!」
「……痛ッ……でも、悪い軍隊さんなんかに負けないんだから……!」
 大丈夫──そう言ったのに、少年を守ることが出来なかった……だから今度こそ助け出し、一緒に元の世界へと帰りたい。
 きゅっと唇を噛み締め、八歳・沙紀(香木の枝・b23537)が皆を癒す舞を踊る。
「邪魔邪魔、とっととどきやがれ!」
「さぁ、ここを通してもらいますよ。邪魔するならゴミ箱行きです!!」
 ハクヤが兵隊達に弾丸の雨を降らせ、その討ち漏らしを優姫が叩き壊す。
「ふざけた真似してくれた借りは数百倍返しだね」
 へらりと笑いながら、最後に「馬野郎」と吐き捨てるように付け加え、一花・糸(日陰カラフトマスブラウン・b13033)が水刃手裏剣で戦闘機を狙う。片翼をもがれた戦闘機は、よろよろと積み木の町へと突っ込んでゆき、大破した。
『『『排除セヨ!』』』
 心和めがけ、3体の兵隊が一斉に銃剣を突き付ける。白い腕にほんの僅かに血が滲んだ。しかし心和は動じることなく、目前の兵隊を赤手で一撃の下に叩き伏せた。
「この位置なら……!」
 律は2機の戦闘機を直線上に捉えると、龍撃砲でまとめて撃ち抜き、落とした。
 ──ドッカーーン!
 最後の1機が、悪足掻きとばかりに爆弾を投下する。
「へっ、煩ぇんだよカトンボどもが!」
 爆風をその身に受けながらも、炎の魔弾を空へと放つ清士郎。派手な爆音とともに、最後の戦闘機が砕け散る。
『排除セヨ!』
 馬に乗った兵長が、ガシャーンガシャーンと両手のサーベルを打ち鳴らし、生摩目掛けて突っ込んでくる。生摩はそれをすんでの所でかわし、チェーンソー剣で馬ごと真っ二つに叩き斬った。
 排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除セヨ!
 ちくちくぶすぶす、鬱陶しいほどに群がってくる兵隊。後方では、軍曹が馬上槍を構えている。
 だが、数こそ多いものの、その攻撃力は微々たるもの。銃剣で3カ所も突かれた優姫でさえ、メジロの舞いでほぼ元通りの体力を得た。
「射角調節、OKでありんすよう♪」
「いきます!」
 結奈と沙紀が、息を合わせて光の十字架を放つ。その眩い光の二重奏に雑兵の殆どが姿を消し、代わって兵長、軍曹、そして鬼軍曹が前へと進み出てきた。
 兵長のサーベルがハクヤの腕を斬りつける。軍曹の馬上槍が、心和と蜘蛛童、結奈を纏めて貫く。そして、鬼軍曹の怒号が辺りに響き渡る。
『排除セヨォーーーー!!』
「わっ、すげぇ声……!」
 びりびりと震える空気が、能力者達の身体に傷を刻む。
 けれど、彼らもやられてばかりではない。
 糸が手裏剣で兵長を倒し、蜘蛛童が雑兵を噛み壊す。その隙間から、優姫とハクヤが一気に鬼軍曹へと詰める。
 律の龍撃砲が兵長と軍曹を撃ち、清士朗がスラッシュギター「花下春逝」を振り翳して止めを刺す。
 排除排除排除排除!

 排除排除!
 ガシャガシャと打ち鳴らされるサーベルをチェーンソー剣で受け止め、生摩が最後の兵長を斬り倒す。
「あと一息なのね!」
 残るは軍曹1体、そして鬼軍曹。メジロが、一番傷の深い糸へ祖霊を降ろす。
 軍曹の馬上槍と結奈の光の槍が交錯し、結奈の足から血が零れる。だが軍曹は馬から落ち、壊れた。
『排除、セヨォーーーーーッ!!!』
 鬼軍曹が怒鳴る。
「させませんっ……!」
 凄まじい衝撃波に膝を折りそうになりながらも、沙紀が皆を癒すために舞う。そしてメジロもそれに加勢する。
「これで終わりにさせてもらうよ!」
 律の宝剣「彩風」が、やわらかな光を放ちながら鬼軍曹へと振り下ろされる。
『排……ジョ、セォォオォォ………』
 がっしゃーーん。
 ブリキの鬼軍曹は壊れ、倒れた。
「さあっ、一気に行くでありんすよぅ☆」
 能力者達は、瓦礫まみれになった石段を、積み木の塔目指し一気に駆け上がっていった。

●錻力の軋音
『クソッ、あいつら……!』
 塔の最上階から、地上での戦いを見下ろしていたナイトメアは、呆気なく蹴散らされてしまった兵隊達を見てギリギリと歯を軋ませた。その頭上では、鳥籠に入れられて吊された少年が、やんややんやと拍手を送っていた。
『えぇい五月蠅い!』
 ナイトメアは少年を一喝し、黙らせると、自らの背後に佇む巨大なブリキのロボットを見、にやりと笑った。
『まぁいいだろう。所詮奴らは、単なる時間稼ぎでしかない。ゴミどもの排除は、吾輩自らネジを巻いたこのロボットが、貴様の見ている目の前で思う存分にやってくれるわ!』
 少年は鉄柵をギュッと握ると、遥か眼下、塔の中へと駆け込んでくる能力者達を見つめ、呟いた。
「……負けないよ、みんなは」

 塔の上階へと伸びる、長い螺旋階段。そこにも、ブリキの兵隊達は多数いた。
「オラオラオラ! 邪魔だぁーっ!」
「てめぇらに構ってる暇はねぇんだよ!」
 先頭に立った生摩とハクヤが、片っ端から兵を蹴散らしてゆく。
 そして、どれくらい登っただろうか……目の前に、重たそうな鉄の扉が現れた。
「この向こうに……」
 沙紀が扉に手を伸ばす。
 すると、扉はギィーッと音を立ててひとりでに開き、彼らの目の前に円形の広い部屋が現れた。
 そしてその中央に佇む、ブリキの青い巨大ロボット。
「あれがガーディアン……。ラスボスだけあって一筋縄では行きそうにないですね……」
 四角い顔に四角いボディー、目には黄色、胸には赤のランプ。まるでペンチのような手をした、いかにも古くさいロボット。けれど伝わってくる異様な威圧感に、優姫がゴクリと息を呑む。
『フハハハハハ! よくぞここまで辿り着いたな!』
「……ナイトメア!」
 声は、上の方から響いてきた。
 見上げればそこには、少年の囚われている鳥籠。そしてその鳥籠に取り憑くように、ナイトメアが黒い影を落としていた。
「みんな……来てくれたんだね!」
「うん! だからお兄さん、もうちょっと待っててなのね〜」
「まってろよー、すぐに助けてやっからなー!」
 身を乗り出す少年に、メジロとハクヤがぶんぶんと手を振る。
『助ける? フハハ、それは無理な話だ! 今からお前等は、この「ブルードリーム1号」によって抹殺されるのだからな!』
「……ダサッ!」
「格好悪いでありんす〜」
『えぇい黙れ黙れ黙れぇい! 吾輩のネーミングセンスを愚弄するとは、益々もって赦せん奴らめ……!』
 ナイトメアは額に血管を浮き上がらせ、ロボットのゼンマイを止めていた安全ピンを噛み砕いた。
 ロボの目がビガーンと光り、両腕が軋みをあげて振り上げられる。
『行けぇいブルードリーム1号! 奴らを倒し、このガキに絶望を味わわせてやれ!』

 ギーガッシャンギーガッシャン。
 耳障りな音を立てながら、ロボが清士郎をどつき飛ばす。積み木の壁に叩き付けられた清士郎は、頭を振って立ち上がると、頭上に魔法陣を描き出してその傷を即座に癒した。
 ベルゼブブにロケット噴射の勢いを乗せ、生摩がロボに斬りかかる。
 ギャッギャッギャーッと凄まじい擦過音が響き、ロボの青い塗装が一部剥がれる。
 メジロは祖霊を呼び出し、まだ少し苦しげな清士郎に癒しと戦う力を与え、結奈の生み出した光る槍が、ロボの関節に突き刺さる。
「もう少しだけ待っててくださいね。今こいつを倒しますから!!」
 仲間の援護を信じ、優姫は妖気を凝縮させると、それを炎に変えてロボの胸元に力一杯叩き込んだ。
 炎に包まれたロボの塗装が、ぶちぶちと泡立って剥げてゆく。
『ああっ! 折角吾輩が精魂込めて塗装したというのに!』
「そんなこと、私達には関係ありません」
 ナイトメアに冷たい視線を向けつつ、心和が背中から生やした蜘蛛の足でロボを貫く。
 ロボは腕を振り上げて炎を消し、蜘蛛の足を抜きさると、そのまま両腕を物凄い勢いで振り回した。
「ぐっ……!」
 ロボの至近に立っていた生摩、心和、ハクヤの3人が、その腕をまともに喰らう。けれど、体力の劣る心和は律がすぐさま符で癒し、更にメジロが皆を癒す舞を踊ったことで、被害はそう大きくならずに済んだ。
「こいつがどういう奴だとかぁ関係ねぇ……オレたちが悪夢(ゆめ)ぇ終わらせて、帰してやるって約束したんだ。約束ってのぁ、守るためにあんだよ!」
 渾身の力で撃たれた清士郎の魔弾が、ロボをふたたび炎に染めた。

 ロボは強かった。
 しかし、所詮はオモチャだった。
 糸が右から手裏剣を、律が左から龍撃砲を仕掛け、背後に立った優姫が、会心の紅蓮撃を叩き込む。
 ロボは堪らず、ペンチのような手でガシャガシャと自己の修復を始めた。
 しかし、そうはさせじと結奈が光の槍を飛ばし、ハクヤも蒼炎魔狼ケルベロスを力の限り叩き付ける。
「わたしだって、みんなを守る事ができるんだから!」
 癒しの手に余裕が出来た沙紀は、心和に祖霊の力を分け与え、力を得た心和は、パワーアップした蜘蛛の足をロボの腹に突き刺し、蜘蛛童もロボの足に齧りつく。
 メジロは優姫と心和の疲れを癒すように健気に舞い、清士郎の炎がロボの塗装をボロボロにする。
「玩具は大人しく玩具箱に戻りやがれ!」
 ギャギャーーーッ!!
 振り下ろされたチェーンソー剣は、ロボの頭を真っ二つに切り裂いた。
『……なっ!?』
 ガシャ、ガガガ……。
 ロボの目が2度、3度、点滅し、消えた。
「やったぁ!」
「私達の勝利です!」
 積み木の塔の最上階に、少年と能力者達の歓声が響き渡った。

●指先
『ぐ、ぐぬ……貴様ら……!』
 天井の籠の上からガラクタになってしまったロボを見下ろし、ナイトメアがふたたびギリリと歯軋りをする。
「あたし達の勝ちなのです♪」
「うん! みんなやっぱり強いや!」
 ニコニコと手を振るメジロに、少年も笑顔で手を振り返す。
「お待たせしました。もう大丈夫ですからね」
「前回は不覚をとりましたが、今回はそうはいきません」
 優姫らも、ナイトメアの動向を注視しながら、籠の周りを取り囲むように下に立つ。
『フフハハハハ! 貴様ら、これで本当に勝った気でいるのか?』
 ナイトメアは尚も鳥籠の上に陣取ったまま、不敵な笑みで能力者達を見下ろした。
「ケッ、この状態で何が出来るっていうんだ? きやがれよ、返り討ちにしてやるぜ!」
 ベルゼブブを突き上げ、生摩が叫ぶ。そして、結奈の降伏勧告。
「さあっ、観念して籠を降ろすでありんすよ☆」
『フ、フハハ、そこまで言うのなら降ろしてやろう。今すぐに、何もかも纏めてな!』
「それ、どういう意味……?」
 発せられた意味ありげな言葉に、律がキッと身構える。
『それはな……こういう意味だッ!!』
 ナイトメアはそう言うと、鳥籠のぶら下げられている天井を蹴飛ばした。
「きゃっ……!」
「うわぁっ!」
「なっ、何ィ!?」
 途端、積み木の塔がガラガラと音を立てて崩れ始めた。
 壁が崩れ、床が崩れ……少年と鳥籠も、能力者達も、そこにある全てのものが、下へ下へと落ちていく。
「みんな………!」
 少年は、籠の隙間から必死で手を伸ばした。
 誰もが反射的に、その方向へと手を伸ばした。
 糸の手が、少年の指先に触れた。
「───ッ!」
 触れて、離れた。
 離れ、徐々に遠のいてゆく。
『フハハハハハ! さらばだ!』
 ナイトメアは鳥籠の金具をくわえると、そのまま闇夜に溶けるように消え去ってしまった。
「ナイトメア!」
 追いすがろうにも、自由が利かない。
 世界が揺らぎ、この夢の終わりが近付いてくる。
「くそぉぉぉーーーー!」
 夢と現実の狭間に、ハクヤの叫びがこだまする。
 声も、指も、もう何も届かない。

 けれど、確かに触れたその指先。
「今度は必ず、握ってみせる……!」
 僅かに残るその感触を逃さぬようにするかのように、糸がギュッと手を握り締める。
 沙紀は零れそうになる涙を堪え、その言葉に力強く頷いた。


 今度こそ、必ず──!


マスター:大神鷹緒 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2007/11/23
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