届けられた手紙の主は


   



<オープニング>


「皆様に集まっていただいたのは、他でもありません」
 集まった能力者達に、藤崎・志穂(高校生運命予報士・bn0020)は、手にした手紙を指し示した。
「これは、来訪者の組織と目される『人狼』の女性から送られてきた手紙です」
 手紙の宛名には銀誓館学園と記されていたが、内容が意味不明な為、教務部の先生に処分されそうになった所を、運命予報士の一人が見つけて手に入れてきたのだという。

「この手紙の内容をお話しする前に、人狼について簡単に説明させていただきます。人狼は、同じく来訪者の組織『吸血鬼』と敵対しているようです。人狼も吸血鬼も、本拠地はヨーロッパですが、詠唱銀が豊富な日本を目指してやってきたようですね」
 吸血鬼については、先日の舞踏会などでよく知っている人もいると思いますねと、志穂は付け加えつつ話を進めた。
「人狼と銀誓館学園の能力者が直接遭遇したのは、メガリス『黄金の林檎』の争奪戦の時でした。その時の印象は、ヨーロッパの傭兵みたいな人達……というもので、決して友好的な印象では無かったようです」
 人狼についての詳しい情報は、ほとんど無い。あるとしても、敵対している吸血鬼から得た情報が多いため、信頼できるかどうかは定かではない。

「手紙の文面はこうです。『吸血鬼に与しようとする者へ警告する。我らの因縁ある戦いに参加する事なかれ。我らの戦いの真実が知りたければ、12月1日夜11時に鶴岡八幡宮まで来られたし。吸血鬼の滅びが、汝らの滅びとならない事を祈る。人狼騎士 エルザ・マイスタージンガー』。
 この手紙は、人狼の組織について知る手がかりになるでしょう。ただ、扱い方によっては、人狼の組織との争いを招く他、もしかしたら吸血鬼の組織との関係に破綻をきたす可能性もあります」
 志穂の説明に、話を聞いていた能力者達に緊張が走る。これは、銀誓館学園……ひいては日本の平和にとって、重要な意味がある問題なのだ。
「もし、この手紙に従って、人狼の女性に会おうという場合は、各自の判断で行動を行ってください。どのような結果が出るにしても、参加した能力者の皆さんの行動が鍵を握ると思いますから……」
 何を考え、何を行動し、何を得ようとするのか。突然の難題に戸惑いを隠せない者もいるようだ。
 だが、幸いにもまだ我々には時間がある。僅かだが、エルザと会うまでの時間が。

 と、そこで志穂が付け加える。
「ただ、一点だけ。この手紙を出してきた時点で、エルザさんは、ある意味命を捨てていると思います。言葉は悪いですが、殺害することは難しくありません。しかし、殺さずに捕縛するような行動は、成功の見込みはあまり無いと思われます。彼女から話を聞く為には、彼女の命を守る必要があるかもしれません。良く考えた上での行動を、お願いします」
 志穂は心配そうな眼差しで能力者達を見つめていた。
 これからの行く末を案じながら……。

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<リプレイ>

●始まりの夜
 月影が照らし出すのは、鶴岡八幡宮の境内。
 そこには数多くの生徒達が集まり始めていた。
「警護をする方で、相方を探している方はこちらに来てください!」
 張り切って笛を配りながら、唱(b32664)は、希望者を集め、ペアやグループで動けるように支援していた。インカムも用意していたのだが、数が足りず、今は笛のみ手渡している。だが、それだけでも有事に備えられることだろう。
「武家、武士の守り神の膝元を選ぶとは。意図したのか偶然か、どちらにしても似合いだな」
 関心したような言葉を紡ぐのは直宗(b07689)。人狼騎士エルザの話を聞きに、ここまでやってきた。
「そうやな。有意義な会合になる事を祈ろうか。戦争での第三者介入って話ややこしなったりするからな〜」
 その隣で心配そうに本宮を見上げるのは巽(b10193)。
 これからの事を不安に思うのは巽だけではない。
「どうか、此度の会見が無事に済みますように………」
「吸血鬼のお兄ちゃんとも、狼のお姉ちゃんとも、皆仲良くなれますように………」
 幽魅(b33386)と夜魅(b29795)は見回りの途中を見計らって、お参りをしていた。
 この祈りが杞憂に終わるようにと。
「みんな、集まって!」
 遠くで【くノ一症候群】の団長、泉水(b13619)の声が聞こえる。幽魅と夜魅も急いで、声の所へと向かう。
「吸血鬼と人狼の両方の言い分を聞いておかないとフェアじゃないよね。そのためにもしっかりと警戒、がんばろうね!」
「ああ。あたし達が、人狼と話をするのを快く思っていない輩がいるみたいだしねぇ」
「ええ。もしもに備えておかないとね。吸血鬼の襲撃があるかもしれないし、人狼の襲撃もないとは言い切れないし……」
「くノ一はくノ一らしく、その場の安全が守られる様に周囲の警戒にあたりましょう」
 泉水の言葉に忌(b14628)、斑鳩(b14490)、美珠(b23706)そして、合流した幽魅と夜魅も力強く頷いた。彼らはイグニッションして、また周囲の警戒へと戻る。

 本宮の側では、三人の能力者が集まって打ち合わせを行っていた。
「遅くなってすみません。やっと地図ができました」
 幸四郎(b30026)は襲撃に備えて危険と思われる場所をリストアップしていた。更に。
「俺の見つけた場所も間違いないな」
 達也(b04291)が独自で見つけた人が隠れそうな場所を3箇所。
「俺のトコも問題ないぜ」
 学校をサボってまで調査した将(b32601)の箇所も加わり、抜かりない地図が完成していた。これならば、この場所を警備する者に役立つものとなろう。
「それじゃあ、配ってきますね。あ、その地図はお二人に」
「ああ」
「サンキュ」
 幸四郎の声に二人も笑みで返す。
 後1時間が経てば、約束の時間。
 続々と集まる能力者の姿は、エルザの瞳にどう映るのか。

●エルザ到着
 人狼騎士のエルザ・マイスタージンガーは、1時間ほど前に鎌倉駅へと降り立った。あと10分ほど歩けば、鶴岡八幡宮は目の前だ。
「貴様がエルザか?」
 突然、怜(b33469)に声をかけられ、エルザはその銃を怜に向けた。
「何者だ?」
「銀誓館学園の怜だ。貴様を護衛しにきた。鶴岡八幡宮まで送ろう」
「……エルザ・マイスタージンガーだ。もう一度聞く。お前は銀誓館学園の関係者か?」
「ああそうだ。……我々の行動が訝しいか? ……フ、ならばこう考えるが良い。貴様は我々に情報を齎しに来た。我々は情報が欲しい。今のところ、双方の利害は一致している。……利害が一致する限りにおいてあえて傷つけ合わぬは道理……それだけの事だ」
 その怜の言葉にエルザはやっと銃を降ろした。
「変な真似をしたら撃つ。それでもいいのなら」
「ああ、構わない」
 怜と共に、エルザはゆっくりと歩き出す。指定した鶴岡八幡宮までは何も起きなかった。後をつけてくる者もいないようである。その事に怜は内心ほっとしながらも、気を緩めずにその任を勤めた。
「ん……?」
 エルザの視線の先には、何体かのスカルサムライが歩いていた。銃を握りなおすのを怜が止める。
 このスカルサムライはこの周囲を守る為に配置されたものであった。
「あれもお前達の?」
「ああ、そうだ」
 怜がエルザの言葉に頷く。
「あっ! 赤音くん」
「来たか」
 いち早くエルザの姿を見つけたのは、蛍(b04229)と赤音(b22569)。エルザの姿を見つけ、ぺこりと頭を下げた。
「(赤音くん……皆で同じ夜空を見ていたいね……願わくば、だけど)」
「(そうだな……ん、誰かが来たようだ。いくぞ)」
 紛れ込んできた一般人を見つけ、二人はエルザを見送る間もなくその場を後にしていく。
 他の場所でも。
「高峰先輩、ゴースト退治とは違うが……どうかの?」
「……まだ何処か遠くのことのように感じている。だが、この場の邪魔はさせない。どんな事があろうともな」
 【ぴかぴか倶楽部】の団長、美守(b32214)の言葉に勇人(b34890)はそう答えた。一度、境内の中で警備をしている歩(b12691)にも連絡をしよう。そう想い勇人は歩に電話をかけた。
「高峰さん!? 何かあったんですかっ!? 今すぐ……」
「あ、いや……一度、定期連絡をと思って連絡したのだが……」
 電話の先の歩の声に驚きながら勇人は何とか告げた。どうやら、電話は緊急時のみにかけた方がよさそうだ。その様子を美守は笑いながら、見守っていた。
「それじゃ、皆。今度はあっちに行こう。あまり人がいないようだし、万が一の事態に備えなきゃ!」
「そうじゃな」
 懐中電灯を使って、地図を確認した祐羽(b33799)の提案を受けて、彼らもまた移動していく。
 くんくんと自分の鼻を使って、周囲を警戒するのは忠明(b03818)。
「ゴーストはいないが……流石に死人嗅ぎで危険を察知するのは難しいか」
 忠明は警備のやり方を自分の鼻から目へと変えた。その分死角が生まれるが仕方のないこと。地道に自分のできる範囲で警備する事が大事なのだから。
「……流石に、長時間外にいると冷えますね」
 恵之助(b01093)は身震いしながらも、警備を続けている。彼もまた話し合いを平穏に終わらせたいと願う者の一人。
「そうだね。それにしても騎士道に殉じる覚悟で警告し、選択の機会を与えるなんて……肝の据わった人だよね、エルザさんって。こちらとしても相応の礼儀を以って相対しなきゃね」
 霧人(b29777)も恵之助と一緒に体を震わせながら、警備に当たっている。
 一緒に警備を行っている恵之助や霧人、他にも沢山の仲間に囲まれ頼もしさを感じながら琶月(b08493)が呟いた。
「……全てが杞憂で、無事に話し合いが終わりますように……」
 その言葉に聞いていた二人も静かに頷くのであった。
「八方美人は信用されないものなのですよね……。とは言えそれが学園の基本方針なら、今は貫くべきなのでしょうし……あっ!」
 警備中にエルザの姿を見つけた芙美子(b01058)はとっても嬉しそうに、エルザに向かって大きく手を振っていた。
「おいおい、警備中だぞ。少しは落ち着け」
 燈迩(b34454)にたしなめられ、しゅんとする芙美子。その頭をくしゃりと燈迩は撫でてやった。
「……でも、女がたった一人で来るなんてな……気に入ったぜ!」
 遠くにいるエルザの姿を眺めながら、燈迩はそうつぶやいた。

 エルザは静かに鶴岡八幡宮の外での警備している者達を見つめていた。
 流石に大軍には対応しきれない数ではあるが、エルザ一人のためにこれほど多くの者達が八幡宮の外を守っていることを彼女は知った。
「入るか」
 エルザは何もいわずに境内の中に入る。怜もそれに続いた。

●ようこそエルザ
 境内の中に入ると、既に数多くの能力者達が待ち受けていた。
「……なぅ。……こんばんは、エルザ」
 エルザの姿を見つけて、すぐに挨拶と自己紹介をするのは、白(b05900)。一番最初に会えなかったが、この境内の中では一番を取れただろう。白は嬉しそうにエルザの隣についてきている。
 他にも自己紹介しに来る者がいる。
「本日、護衛を勤めさせていただきます、小蓋・裕太と申します……此度の誇りある行動、邪魔はさせません」
 裕太(b30251)も白と同じく、エルザの側の護衛につく。裕太の頭の中では既に幾通りの有効な逃走ルートが描かれている。
「失礼を承知で尋ねる。エルザ、何者かにつけられてはいないな?」
 尚美(b14583)の問いに眉をひそめながらも「つけられてはいない」とエルザは答えた。その言葉に尚美はほっとした表情を浮かべたが、すぐに真剣な表情へと変わった。彼女もまた、有能な護衛なのだ。
「人狼……どんな人なのかな? ちょっと楽しみ♪ ……ん? あれかな?」
 遠くでエルザの姿を見つけ、太一狼(b01112)はわくわくと近寄ってきた。「こんにちは」と挨拶を交わし、エルザの側で話を聞こうとしている。
「何かと危ないから護衛してもいいかな?」
 朝海(b01122)は自己紹介した後、エルザに護衛させて欲しいと願う。その願いは叶えられ、エルザに背を向けながら一生懸命に護衛をし始めた。
「俺も護衛役。交渉って柄じゃないしな。それに一人で来た女の子に襲い掛かるヤツが好きじゃないんでね。一応、守らせてもらう。あとエルザが手を出すのも禁止。話をしに来たんだから、余計な真似をされると俺達の立つ瀬がなくなる」
 そう言って「よろしくな、エルザ♪」と護衛に加わるのは雅(b01224)。
「いきなり攻撃して来なかったことには感謝する」
「あ、ああ」
 その黒刀(b05903)の言葉にエルザは先ほどの怜とのやり取りを思い出した。もう少しで撃つ所だったが、撃たなかったのだからセーフだろう、そう思うことにしたようだ。
「ええと……エルザさんですね? 話は長いのでしょう? 夜は冷えますから、暖かい缶コーヒーを懐に入れてるといいですよ。はい」
 エルザを見つけてすぐさま駆け寄ってくるのは鼎(b03352)。ここに来る前に買ってきた暖かい缶コーヒーを渡し、また戻っていく。受け取った缶を懐に入れ、エルザは満足げな笑みを浮かべた。
「始めまして、秋浜・春哉だ。春哉と呼べ」
「よろしくな……春哉」
 春哉(b03353)の自己紹介にエルザも応える。春哉は嬉しそうに笑みを浮かべ、エルザの近くに陣取っていた。
「はじめまして、と言うべきかな? 一応、戦場ですれ違っていた様だが」
 そう挨拶を交わすのは奏也(b15692)。どうやら、エルザと会うのはここが初めてではないようだ。
「貴女が襲われて立場が悪くなるのは我々ゆえ。自衛の為だ」
 奏也もエルザの護衛に加わる。
「うちは、吸血鬼とも人狼とも争いたくねぇんだ。種族とか関係なく、友達になりてぇと思ってる。吸血鬼も人狼も、うちらだって人間の中じゃマイノリティだ。お互い、助け合えたらって思うぜ? だから、うちと友達になってくれねぇか?」
 連絡先を書いたメモを手渡しながら、伊呂波(b32294)も何も持たずに警備につく。
「悪いな、お前さんの話をゆっくり聞きたいんだ。……少し、傍にいさせてくれないか?」
 そういって、エルザの護衛につくのはジェラール(b21462)。可能な限りエルザの近くに立っている。エルザに危害を加えようとする者の気配があれば、勢力を問わず警告するつもりだ。
「俺は銀誓館に所属する能力者で、風見・勇四郎という。どうかお見知りおきを」
 そう自己紹介するのは、勇四郎(b27751)。彼は人狼と吸血鬼の戦いの真実を知りたくてここに来た。
 有事の際には身を挺してまでも彼女を護るつもりである。
「他の来訪者たる貴女との出会いに感謝を。現代に生きるこの小さな土蜘蛛の娘にも、真実を教えては頂けないでしょうか。ミス・マイスタージンガー」
 そういって話しかけるのは制服ではなく、私服に身を包んだ絢音(b32745)。白いブラウスにオレンジのジャンパースカート。その上にコートを着込んでいる。
「時間が来れば、必ず」
 そう言うエルザの言葉に絢音は約束ですよと声をかけ、エルザの声が届く場所へと移動していった。
「初めまして、騎士エルザ。貴女の知っている事を教えていただきますね」
 礫(b23533)もそう声をかけ、絢音の側へと行く。ふと、エルザを見て懐かしいと思ったのは、気のせいだろうか? 礫は不思議に思いながらも、エルザの話を待つことにした。
「わたしは銀・静蓮。貴女の話を聴きに来たわ」
 そう言って静蓮(b01195)は、エルザに自己紹介する。吸血鬼を滅ぼすために人間にも被害を与えるようであれば、エルザ達と敵対するだろう。その時は容赦しない。だが、争わないで済むなら……それが一番の路。その心積もりで、エルザの話を聞きに来た。

「そろそろ良いでしょうか」
 頃合を見て、ルシア(b28515)が声をかける。
「改めまして、ルシアと申します。驚かれているかもしれませんが、予定ではここに507名の能力者達が集まります。皆、あなたからの言葉を……真実を知りたくて集まってくるんです。武装している人達は全員、あなたを守る護衛となります。万が一の事があれば、皆であなたを守るつもりです。もちろん私もです」
 ルシアの言葉をエルザは黙って聞いていた。ルシアは柔らかく微笑み、すっと手で指し示した。そこにはテーブルに椅子、マイクが置かれていた。いやそれだけではないようだ。
「おいらの用意した拡声器も使ってもらえると嬉しいっす」
 にかっと笑みを浮かべ、旅人(b11445)はマイクの隣に拡声器を置いていった。これら全てエルザのために用意されたものである。
「あそこがエルザさんの席になります。さあ、どうぞこちらへ」
 と、案内する足が止まった。
「あっと、これを言うのを忘れていました」
 改まってルシアは続ける。
「ようこそ、エルザさん。私達はあなたを歓迎します」
「……ありがとう」
 エルザはすっと、用意された席に座った。
 と、そこへ一人の少女がやってきた。その手には暖かいペットボトルのお茶が抱えられている。
「どうぞ。差し入れだよ」
 ペットボトルを差し出した少女、律(b18293)は、それを渡すもエルザは警戒している様子で、口にしようともしなかった。律は「かして」ともう一度ペットボトルを受け取ると強く容器を振って、エルザの前で一口飲んで見せた。そして、もう一度、そのボトルを差し出す。エルザはそれを受け取り、一気に飲み干した。その様子に律も笑みを見せる。
 ……覚悟を決めて、この場所へ独りで来るのは心細かったのではないか。そう思い、夜(b25555)はコンビニエンスストアで買ってきた肉まんを持ってきていた。
「体が温まりますよ」
 ぱくっと半分に割ってその片方を食べてみせる。その後、口をつけていない半分をエルザに手渡した。湯気の立つ肉まんを受け取り、エルザはそのまま完食した。
「お近づきの印にどうぞ。毒は入ってないですが、口に合うかどうかはわかりません」
 海(b11667)は、そう緑の液体の入ったペットボトルを差し出した。
「これは……何だ?」
「青汁といって、健康に良いんですよ」
 口に合うかどうかわかりませんがと、再度呟く海から、エルザはその青汁を受け取った。飲みはしなかったが、しっかりと受け取ってくれたようだ。
「冷めないうちに飲んでくれると嬉しい。毒は入っていない」
 入れたてのお茶を鞘護(b10064)は、エルザの前に置く。それでも飲む気配がないのを見て、鞘護も失礼とエルザのカップに口をつける。そして渡すと、ようやくエルザはそのお茶を口にした。
「お招きありがとう差し入れどうぞダヨッ♪」
 嬉しそうに紅茶とあんぱんを差し出すのは、ミライ(b01734)。なかなか手をつけぬエルザに。
「ユー、コレが毒入りだとシテモ、簡単に解毒されておしまいデショ? ボクもエルザさんの腰についた銃で頭を吹き飛ばされるのはイヤダモン。ウン。カタイ事は抜きにシテ、こんな寒い冬の夜ダカラ、騎士が愉しむにふさわしい暖かいお紅茶ト、お紅茶に合う糖分が必要ダヨゥ♪」
 笑顔でもう一度差し出した。
「そうだな」
 エルザは受け取り、香りを楽しんだ後、一口飲んだ。
「京菓子もいかがですか? 最近寒さも増してきましたし、どうぞ召し上がってください」
 陸(b28712)も美味しそうな京菓子をエルザの側に置く。
「あ、その前に毒見を、でしたね」
 エルザの前に置いた京菓子を一つ摘み、食べてみせる。笑顔でどうぞともう一度、陸が勧めると。
「いただこう」
 エルザも一つ口に含み、笑みを浮かべた。
「よう、皆は話聞いてお終いの積りは無いみたいだぜ。今のうちにしっかり喉潤しときな〜」
 一人、冷たいミネラルウォーターを差し入れしようとするのは、英二(b03622)。
「……あ、怪しいか」
 渡そうと思ったペットボトルを開けて、一口飲んで毒が入っていない事をアピールしてから、エルザへと手渡した。
「ではもらおう」
 エルザも一口飲んで、腕で口を拭った。英二と同じように。
 他にもたくさんの差し入れがエルザの前に置かれる。その内容は様々で、主に暖かい食べ物やホットドリンクが多いようである。
 その様子を見ている者がいる。
「僕達の差し入れ、喜んでもらえてるみたいだね」
 丁度、境内を警備していた友梨(b00504)がエルザの様子を見て微笑んだ。
「うん、がんばって持ってきて正解だったよ。……しかし、アレだね。こんだけの人数集まっちゃうと大変だよね、色々」
 額に汗を浮かべながら、蘭人(b32761)は境内の中を見回した。護衛役といえども、かなりの数の学生達が集まってきている。時間になったら、何人になるのだろうか。
「蘭人様〜友梨様〜お待たせしました〜」
 アーバイン(b00437)が警備の者達と打ち合わせをして、戻ってきた。その手には幸四郎の用意した地図が握られている。
「どうやら、外の方が人数が少ないようです。そちらに行きましょう」
 エルザ様と離れるのは、ちょっと寂しいですがと告げて、アーバインが提案する。
「それじゃ、いきますか」
 三人は連れ立って、その場を後にした。

 ドンドン!
 法眼(b14040)は、愛用している地獄の爪と覇者の剣をエルザの目の前に置いた。
「これは?」
 法眼はにっと笑みを浮かべる。
「ワシの武器じゃ。エルザ嬢の見える所に置いておこうと思ってな」
 そして、立ち上がる。
「ワシはワシの味方じゃよ。同時に麗しき人の味方でもある。そして……礼を尽くす武人には礼を以って応える武人でありたい。エルザ嬢が騎士であるとか、人狼であると言う事は些細な事じゃ。故にワシは護らせてもらおう……」
 もう一度、エルザを見て、法眼はエルザの近くで警備を開始する。
 武器を外してエルザに持ってくるのは、法眼だけではない。
「今日だけはこいつをアンタに預ける。なにがあっても俺が護ろう」
 円(b18215)も無銘・拳鈴とリボルバーガントレットをエルザに預けた。
「彼女は銀誓館の客だ。手を出すというなら相手になろう」
 ぱんと拳を打ち、円は声を張り上げた。ここにいる学生ではなく、これから現れるかもしれない敵に向かって。
 ざっと、5人の学生達がエルザを取り囲む。
 突然の事にエルザも思わず銃を手に取ったが、どうやら、違うようだ。
 彼らは全員、背を向けているのだから。エルザはそっと、銃を下ろした。
「俺たちってさ……色んな奴がいるんだよ。だから、もし何かあっても悪く思わないでよ。そのかわり……お前をこうして守ってやるから、さ」
 【GOD】のリーダー、阿修羅(b09259)が背を向けたままそう声をかける。
「おぅ、エルザの男前なやり方にぁ惚れたぜ。そーまで見せられちゃぁ、手ぇ貸さねーわけにゃいかねーよな。まぁ安心しとけや、俺らがガッチリ護ってやるぜ!」
 阿修羅の隣で、饅頭太(b02868)が背を向けたまま、力強くそう告げる。
「……俺もだ、ヒューマン」
 静かに告げるのは温羅(b32657)。彼もまた背を向け、しっかりと警備を行っている。
「エルザ……少なくとも私には、お前の心は伝わっている。共に在りたい……私はそれを望むぞ」
 真由美(b21786)も背を向けたまま警備をしている。その声は揺るぎない意思も込められていた。
「我々の有り様……つまり方針も理解してくれると有り難い。さしあたっては、一般人や我らに危害を加えなければ貴殿らの戦いに関与はしない。つまり吸血鬼たちに協力する事も無いというわけだ」
 なかなかの女傑っぷりに、雪ノ介(b29911)も感銘を受けたようだ。
 彼ら阿修羅、饅頭太、温羅、真由美、雪ノ介の5人のチーム【GOD】が、エルザの護衛に着いた。
 エルザは軽く頷き、彼らを認める。
 エルザに背を向け、護衛するのは、【GOD】の面々だけではない。
「申し訳ないが、貴女を護衛させて頂きますね。もしも何か起きた後では遅いので……」
 【ミフネ】の陣(b00080)も背を向け、護衛に回る。
「勝手だが護衛をする。そっちの実力を信用してない訳ではないが……万が一の為、と思ってくれ」
 自己紹介をした後、そう告げるのは直貴(b07386)。
「俺達の組織は一枚岩じゃはない。一人の行動が全体の意志では無い事、それだけは理解してくれ」
 アシュトン(b18456)も共に護衛に着いた。彼らは背を向けるだけでなく、互いに死角を減らすように配置し、護衛を行っている。
 【GOD】が強固な盾なら、【ミフネ】はどんなものも見逃さない鷹の目。他にも護衛につく者は多い。
「吸血鬼に与しようとしてる訳じゃないのだけどねぇ。とにかく情報が少な過ぎるのが問題。だからあなたの言う真実を聞きに来たわ」
 紫弦(b01189)も彼らと同じくエルザの護衛に着く。その身を立てにして守る覚悟も決めて。
「あなたの騎士道には敬意と好意を抱きました。だから命に代えてもあなたには無事に帰って頂きます。それが私の騎士道です……あなたの側に居させてくれませんか?」
 武蔵(b01457)も護衛を希望する。
「いいだろう。よろしく頼むな」
 エルザから許可を貰え、武蔵は喜びつつ、配置に着いた。
「貴女の誠意と勇気に応えるため、この会談は必ず成功させるように努めようと思う。宜しく頼む」
 蒼玄(b25041)もまた、護衛に着く。
「イグ……いや、武装しても良いだろうか?」
「かまわん。私も持っているのだからな」
 許可を得て、蒼玄はエルザの見えない場所でイグニッションしてから、警備に着いた。
「いつの時代も、いつの種族も……争いを好む人たちっているもんだよね……」
 変身ベルトにつけられたイグニッションカードを触りながら、清和(b00587)も警備を行う。いつでも変身して駆けつけられるようにエルザの側に。
 人込みをすり抜け、紫の瞳に灰色の毛の猫はエルザの元にたどり着く。
 この猫は野良猫ではない。この猫もまた銀誓館学園の学生の一人、晶(b05466)が猫変身した姿である。
 彼女もまたエルザに背を向け、他のものとは違った視点で護衛を行っているのだ。

 真面目にエルザを守ろうとする者達も多いのだが……。
「あんな素晴らしいボディの女性を守らずして何が男だ!」
 女性が聴いていたら、殴られたかもしれない事を叫ぶのは、明日太(b01872)。
「近くで拝めるなんて……しかも、噂以上の凛々しさなんて」
 うっとりとファブニール(b03149)はエルザを眺めている。その分、やる気が一気に上昇したらしく、その後の警備がかなり念の入ったものに……なったとかならなかったとか。
「犬耳美女……萌えるね!」
 これもまた、いろいろありそうな発言を、夜火(b02317)は呟いた。
 彼は遠い場所なので、夜火の声はエルザには届いていないだろう。
 このちょっと不真面目(?)な彼らのその心意気、守りたいという気持ちは他の者と変わらない。
 エルザの周りには多くの者達が集まり始めていた。
 そう、もうすぐ約束の時間だ。

 ワープロを持ってきた純(b02986)がエルザの隣に座る。エルザの言葉、エルザの返答など、今回の会談の内容を書き留めるためだ。
「セクハラ発言をしたものは、斬っても大丈夫です……」
 そう、眼鏡を光らせながら言う純の言葉に。
「斬る事はできんが、かわりに撃っておこう」
 その返答に思わず笑みを浮かべる二人。
 エルザの隣にもう一人、卯月(b03808)が座る。
「これだけの人が集まりましたか。これはここの学生の長所なのか短所なのか……」
 思わず呟いてしまう。話によると500人以上来ているという話もある。
(「エルザさんが悪く思わないでいただけるといいのですが……」)
 隣にいるエルザの様子を見ながら、卯月はノートを広げた。彼もまた純と同じく、この会談を記録するために来ている。
 記録するのは、ワープロとノートだけではない。
 少し離れた木の上でチャールズ(b26898)は、ボイスレコーダーで会談の内容を録音していた。
 エルザの周りの雑音が少ないが、遠いため、エルザの声が小さく聞こえる。会談が始まればマイクも使うことだろうし、録音には問題ないだろうが……少し心配だ。
「エルザの声が上手く拾えたらいいんだけど」
 ちゃんと録音できていることを祈って、チャールズはレコーダーを回し始めた。

 準備が整ったこと。そして、時間になったことを受けて、アウレリア(b00104)がエルザの前に立つ。
「司会進行役のアウレリアですの」
 よろしくお願いしますのと告げるアウレリアにエルザは軽く会釈した。
「そろそろ始めてもよろしいですか?」
「ああ」
 今まで多くの者達と出会った。そして、今、目の前には続々とエルザの話を聞こうと集まって来ている者達がいる。僅かながら疲れも見える様子。そして、予想以上の人数にも圧倒されかけてはいるが。
 エルザは姿勢を正すと、すっと席を立った。
 ぐるりと来ていた者達の顔を見渡す。
 学生達が全員、エルザに注目しているようだ。
「わぁ……すごい人だねぇ、八幡さんに底があったら抜けてるよね! あっ!」
 話が始まる事に気づき、すぐさま静かになるのは海里(b30229)。思わずエルザの胸を見て赤くなったり青くなったり、最後にはぶるぶると震えだす。いったい海里は何を想像しているのやら。
 エルザとエルザに接触する者達を遠巻きに観察しているのは、直衛(b35231)。彼の今回の目的は、エルザの情報よりも人狼との友好的なパイプを作る事を重視している。もちろん、情報収集も怠り無く。
「相手の情報を鵜呑みにするつもりはありませんよ……」
 直衛は静かにエルザ達の様子を静観するのであった。
 直衛の隣で幸宏(b05045)はじっとエルザを見つめている。その表情はやや険しいらしく。
「それでは聞かせて貰いましょうかね。こちらの得たそちらの陣営の情報はまず偏ったものでしょうし、そちら側からの話も聞きたい所でしたから」
 以前出会ったときは問答無用であった。でも今回は違う。しっかり相手の言い分を聞きたいところである。
「争い事は避けたいが、警戒は怠らない方がよさそうだな」
 辺りを見渡す涯(b16006)もまた、エルザの話を聞きにここまで来た。話を聞くことをメインとしている為、ある程度、エルザとの距離をあけて見定めるつもりだ。
「一人で来る、かぁ……やばいなぁ。私が好きなタイプの人だ……」
 そう呟くのは悠衣(b00005)。今日はエルザの話をしっかり聞くつもりで臨んでいる。願わくばエルザとの握手もできればいいのだが……この人数で果たして叶えられるものだろうか? それよりもまずは話を聞くことに専念しなくては。
「何も知らない私達に、彼らの方から話をしに来てくれたのですから、失礼の無いように……」
 真摯な態度で臨むのは柊(b00136)。彼もまたエルザを傷つけようとする者が居たなら阻止する所存である。
「何事も起こらなければいいんですけどね」
 エルザに敬意を払いつつ、真司(b05491)は彼女の声がよく聞こえる場所に立っていた。しっかりエルザの話を聞くつもりだ。もっとも話が終わった後は移動して不審者がいないか警戒するつもりである。
「よかった、180cm以下で」
 そうホッとした表情を浮かべるのは勢(b15345)。彼はエルザがどういう話でどんな感情を込めて話すのかを注意して聞くつもりであった。人狼騎士の1人として、どんな相手なのかを少しでも知る為に。何かあれば、すぐにスカルサムライのノリトを呼ぶつもりである。しっかりエルザを見つめながら、そのときを静かに待っていた。
 待っているのは勢だけではない。又兵衛(b07213)もまた、その一人であった。
(「双方の情報を信用していいか判断するにはまだ早い。だから、今の所は中立を保って暫く様子をみたいんだね」)
 静かにエルザの方を見つめながら、これから始まる話に集中している。
「六甲ではアル君たちの意見とかをある程度聞けたわけだけど……少なくとも今回は人狼側の話を聞けるチャンスなんだよね。……出来れば後味の悪いことにはしたくないな……」
 そう呟きながら、エルザを見つめているのはセツナ(b02222)。最初の接触が物騒な出会いだった為、少し微妙な気持ちではあるが、しっかり最後まで話を聞きたいと思っている。
 中立の立場でこの場に臨むのは、紗子(b11183)。
(「手紙にしたがって、人狼のエルザさんの所に会ってみる価値はあると思います。けど……」)
 エルザの命を奪う戦いは避けたい。だからこそ、不安になるのだ。少しでも長くエルザの話を聞けるようにと。
「塚原大原則一つ! 解らない事は遠慮しないで、解ってそうな人に聞いてみよう!」
 ということで、今、零那(b01912)はここにいる。話を聞くことが一番だが、尋ねたいこと、知りたい事もいっぱいある。この人数で自分で尋ねられるか心配だが……まずは聞くことに専念することにしたようだ。
 ぎゅっと拳を握り、真剣な眼差しで零那はエルザを見つめていた。
 それぞれの声は小さくても、これだけの人数。こそこそ話でも会談を中断させる勢いがある。
「皆さん、お静かに! 聞き逃したら元も子もありませんよ」
 ミリアム(b17448)の一喝により、シンと静まり返る。その後ろではジョフロア(b15471)も見守っていた。
 やっとこれで会談が始まる。
 エルザが話そうとした所で、アウレリアがマイクを手渡した。これを使うのかとエルザが尋ねると。
「ええ、こうやって使いますの」
 使い方を実演しながら説明する。
「わかった、ありがとう」
 エルザはもう一度、学生達の方を向き、マイクを握りなおした。
「さて、どうなるかね」
 エルザから少し離れた場所で、アルベール(b25081)はエルザの次の言葉を待つのであった。

●護りは堅く
 八幡を荒らされたくないと、友が……明(b14416)がそう言っていた。
 ショーン(b12745)は、明と共に見晴らしの良い場所で八幡宮を見守る。
 彼らの守るのは八幡宮の平穏。それ以上でも以下でもない。もちろん、銀誓館学園の学生が傷つく事があれば、すぐに駆けつけるつもりでいる。それよりもなによりも、聖地の平穏を願う友の声にショーンは賛同した。
「何事もなければよいのだが……」
「そうだな」
 二人は遠くを見据えている。平穏を願いながら……。

「エルザちゃンに手を出すコはット……」
 どうやら、いない様だ。ティルトリット(b00369)は、特に人の多い場所を重点的に見ていく。
「マ、ボクとしてハどう転ンでモ構わないンだケド。誤解や理解不足の無いようにハ計らわナイと、ネ」
 時間経過によっても現れないとも限らない。その護りは揺るぎなく。
 その隣でわくわくと警護している者がいる。
「格好良い人大好きーっ♪」
 遠くに見えるエルザの姿を見て、蛍(b01342)は明らかに喜んでいた。悪いことをする人が居ないように目を配っている。その手には自分のイグニッションカードを持って。
 誰かが攻撃されたら、その人を全力で守る。来訪者の部隊は別だが……。
 理由はある。
「今回はあくまで交渉であり、ここで殺すと銀誓館の最優先事項から離れる可能性が高い……か」
 難しい表情をしながら、崎(b02249)は唸る。
 以前、崎は交渉役が敵地に交渉へ向かい、彼の味方が『敵に倒された』と見せかけて殺して、他の多勢の味方に『敵が攻勢に入った』といい、偽りの弔い合戦となる話を聞いていた。それがここで起こらない様に願う。
「そうだな。変な輩がいなければ良いのだが……」
 るう(b07527)も心配しながら、辺りを見渡す。動きはない。だからこそ、警戒は怠ることなく。
「聞きたい事は沢山あるのだが……」
 結局こうして、警護に当たっている。真矢(b14665)は隣に居る者に声をかけた。
「お前はどうして来たんだ?」
 それはたくさんある時間を潰すための一つの行動だったのかもしれない。
「人狼の面を拝みに来ただけだ。別にどうこうしようってわけじゃない」
 命(b14911)はそう答える。護る者達もそれぞれの思いで来ているのだ。
「そうか……」
「とにかく、この時間が無事にすぎれば、それでいい」
 命の言葉に真矢は深く頷いた。
 イリス(b29408)はそわそわしながら警備を行っている。
 何かを狙っているわけではない。ただ、こういう事に参加するのは慣れていないだけ。
「緊張しますよぅ、特にこんな日は……」
 そんな彼女に、【天】の仲間達と警備を行っていた蓮華(b25008)が暖かいココアを差し出した。側には共に警備を行っている緋呂(b00733)、瑞鳳(b00860)、楼心(b01574)、ジウ(b03146)、留実(b06345)らの姿も見える。
「寒いでしょー? はいっ♪」
 お勤めご苦労様という気持ちを込めて。
「ありがとうございます」
 たった一つの何気ない事が、イリスの緊張を解きほぐした。
 エルザから少し離れた場所で、武器を隠しながら警備をしているのは、夏海(b27871)。
(「今回のエルザの行動は個人的な騎士道精神から来ているようだし、下手に殺してしまったら話も聞けなくなる訳だから、なるだけ手出しせずにおきたいわね……」)
 と心の中で呟いていると。
「どうだ? そっちの様子は」
 雷(b22355)が自分と同じく護衛をしている夏海に声をかけたのだ。
「異常無しよ。そっちは」
「こっちも異常なし。まぁ、エルザに怪我させるよなマネだけは阻止させて貰うぜ。わざわざ敵地になる可能性のある場所まで、出向いてくれたヤツを傷付けちまったりしたら、寝覚めも悪ぃってモンだからな」
 雷の言葉に夏海も頷いた。
 ゆかり(b13643)は双眼鏡で建物の上をチェックする。いるのは警備のためにいる者ばかり。
 ふうっとため息をついて、双眼鏡を外した。
 真実を知る為にここに来たゆかり。きちんと会話できるようにこうして警備をしている。
「……どうにかして良い方向に、良い関係に変えられないものか……。土蜘蛛戦争のような戦いは、もう沢山だ」
 ゆかりと共に警備を行っていた亮(b33884)が呟く。亮は鋏角衆だ。色々な想いがあるに違いない。
「……そうね。私もそう願うわ」
 もう一度、ゆかりは亮と共に辺りを見渡した。
 鶴岡八幡宮の周りをスカルサムライと手分けして、終夜(b12019)は警戒に当たる。
「エルザさんが人狼の組織の許可を得て、銀誓館との交渉に来ている保証も無い……か」
 思わず呟き考える。彼女の独断による交渉……ならば、人狼組織の交渉反対派の存在もいるのではないかと。不安に駆られながらも、終夜は警備を止める事はなかった。この会談が終わるまでは。
(「学園も一枚岩ではないから、ソコが心配なんだけどね……」)
 エルザと距離を取りつつ、忍(b00089)は警備を続けていた。学生が攻撃してこないようにと願いながら。
「さむっ! やっぱこの時期アイスは寒いかっ……!」
 アイスを食べながら辺りを見渡すのはきとり(b22758)。その隣にはロイト(b17978)の姿もある。
「風邪引いてもしらないからな」
 ロイトに言われてきとりは苦笑を浮かべた。
「だいじょーぶ。それよりもさ、私達自身を嫌ってるんじゃないんだよね? エルザ達は。なら好意的にした方がいいかな」
「……っつーか、中立で良くないか? それより俺は吸血鬼が殴りこみにこないかが心配だ」
 そうだねと、きとりが頷く。そう、まだ会談は終わっていない。むしろ始まったばかりと言えよう。
「あのお胸はアーマーか何かなのかしら〜?」
「言っておきますが、それ、違うと思いますよ」
 オフェリア(b26251)の言葉に修哉(b20368)がすかさず突っ込む。ネタな方々のために突っ込む準備をしていた……というのはここだけの秘密である。それは残念ですわ〜と呟き。
「でも、騎士様とお友達になれたら嬉しいですわ〜」
「そうですね、なれることを祈りましょうか。一緒に」
 そういう修哉にオフェリアは嬉しそうに微笑んだ。
 警戒はなおも続く。
 吸血鬼の介入を恐れ、警戒しているのは、ルシェイメア(b31269)。
 もっとも危惧する事態は、エルザの死ではなく、エルザの死は能力者の仕業、責任だという風説を流されることによって、能力者対人狼という図式が成り立つ事であった。その事を共に警備に当たる洋子(b16444)に告げると。
「正直、吸血鬼と殺しあうなら好きにやれと思うけど。下手にこそこそやられて、うっかり踏んでキレられても鬱陶しいし」
「そうですね。それに……誰かの思い通りに動かされるのは好みではありませんので……んふふ♪」
 互いに顔を見合わせ、笑い出す2人。何故か妙に黒いオーラを感じるのは気のせいだろうか?
「んー、個人的にはじっくり話聞きたいけど、かなりの人数行くから警戒に回るか……」
 流刃(b00137)は敵意、殺意を持つものを警戒して辺りを見回っていた。
「話を聞くのは後でも出来る。今は安全だけでも……ね」
 刹緋(b31823)の言葉に流刃はなるほどと呟く。
「それとね、何が起きても何を聞いても、証拠無く誰かを疑っちゃダメ! 客観的事実を見定めないと」
 小さな玲(b12086)の言葉に妙に説得力があるのは気のせいだろうか。話を聞いていた流刃と刹緋は、玲に圧倒されながら頷くのであった。
 物陰や目線よりも高い位置を重点的に見ているのは騰蛇(b08282)。その隣に居るさなえは、怪しい動きをしている人物がいないか警戒していた。
「へびちゃん……争いではなく話し合いで解決出来れば良いですよね。願わくば、どちらの種族も争うことが無くなります様に……」
「そうですね。今回の結果で人狼達と交戦することになったとしても、彼女を討つのは今ではありません。攻撃的で口は悪いですが、折角の話し合いの機会ですしね」
 2人は願う。この話し合いで何かが変わることを……。
 吸血鬼と人狼。その関係は彼らだけでなく、確実に銀誓館学園の学生にも影響を与えていた。
「話しに聞く限りじゃ、アルってのも……俺らの知る吸血鬼とは違う感じだしな。事実なら」
 うーむと唸りながら、葵(b26133)は辺りを警備している。解らない事が多いが。
「敵味方ってのは、無しで接したい」
 これだけは譲れない想い。
 イグニッションした状態で、アリスティア(b30546)は、エルザからつかず離れずの位置を維持している。
「今のところ問題ないようですわね」
 アリスティアは共に警備していた悠(b20132)に声をかける。
「うん。このまま大事な会合が終わればいいんだけど……杞憂に終わるのが一番なんだけどね」
「そうですわね」
 アリスティアはそっと、エルザの方を見た。このまま何事も無く終わる事。
 それがどんなに大事で重要な事か。2人もまた、無事を祈った。
「本当に騎士を名乗る人物が、単独で乗り込んでくるなんて。でも、これはとても信頼できる事だよね」
 いつでも有事に対応できるようにと、イグニッションしていたみか(b34308)は、少し離れた場所でエルザの護衛に当たる。できれば友好的に接したいと思いながら、外敵だけでなく身内の動きにも注意する。
「人狼の方は恫喝でござンすかぇ? 来訪者共も必死でやンすねぇ♪ 何れにしてもこの日ノ本を人外の好き勝手にはさせねぇでござンすよぅ♪」
 高所から周囲を警戒するのはキャロル(b13877)。敵が現れ攻撃してきたのなら、相手を始末するつもりでここにいる。銀誓館学園の学生の安全を第一に考えながら、視線はエルザ、そして周りから来る敵へと向けられていた。
「噂の人狼とやらは素晴らしい戦士のようだ。本物の戦士には、相応の義で答えなくちゃな」
 恭介(b23336)は丸腰で警備に当たっていた。もちろん、いつでもイグニッションできるよう備えている。
「うむ、拙者も同じ意見でござるよ。拙者は武士道を重んじてるゆえ、そういう道の話をゆっくりしたいでござるな」
 巴(b05834)は恭介の言葉に同意しながら、自分の気持ちも言葉に表す。
「お、それいいねっ! そのときはぜひ、俺も呼んでくれよ」
 恭介の言葉に巴も嬉しそうに頷いた。
「何を話しているんだ?」
 そう声をかけるのは、共に護衛を行っていた煌馬(b18550)。
「武士道の話をしていたのでござる。煌馬殿はどう思っているのでござるか? 人狼騎士の事」
 巴に尋ねられ、煌馬はすぐに答えた。
「人狼騎士か……。人狼とは言え、狼で騎士なんだ。信用するにはある意味十分過ぎるだろう。話しかける機会がなかったのは残念だが、後で質問した奴からその答えを聞くつもりだ」
 その答えに二人も頷いた。
 イグニッションしながら、忠勝(b14141)もまた、警備を行っている。
「誘い出されてしまったような気もするがの。まあ、餅は餅屋。エルザとか言う人狼の騎士から話を聞くのは、それを得意としている者たちに任せておけばよかろう。それがしは、自分が得意とすることをするまでだ」
 吸血鬼が介入しないように気を配りながら。
「さてさて、集まりも集まったねぇ……何事もなく終われば良いのだけれど」
 集まった学生達を見て、由那(b07250)は思わずつぶやいた。
「ああ、折角の対話のチャンスなんだ……詰まらねぇ事で潰してたまるかよ」
 一視(b33199)は真剣な眼差しでありえないと思いながらも、学生達の動きにも注意して見ている。
「せめて面倒事だけ起きないように注意しないとね。私が知りたいことは他の子が聞くだろうし」
 吸血鬼と人狼、どちらの味方でもない。けれど危険と分かりながら、ここまできたエルザに敬意を払いつつ、クロエ(b34353)もまた、早まった行動を取る生徒が居ないか警戒していた。
「ええ。エルザ嬢に話したいことを話したいだけ、全て話して頂けるように、俺達が守らないといけませんね」
 彼女が最後まで余す所なく話せるよう、武器を隠し持ちながら、悠仁(b13821)も辺りに注意するのであった。

●その真意は
 約束の時間だ。
 エルザはしっかりとマイクを握り、学生達を見る。
「まずは……この場に集まってくれた者達に感謝を述べたい。正直、これほどの人数の者達が私の話を聞いてくれるとは思っていなかった。……来てくれて本当に嬉しく思う」
 そう告げると、エルザはいつになく厳しい表情を見せる。
「来てくれた者達に真実を告げたい。我々の決戦の日は近い。既に吸血鬼にも伝えているが、我々人狼騎士が吸血鬼の城を攻撃する日は『12月16日の日曜』となっている」
 その思いがけないエルザの言葉に、その場にいる者達は衝撃を隠せずにはいられなかった。
 そう、人狼騎士と吸血鬼との戦いは目前に迫っているのだから。

「……話は分かった。では、こちらからも質問があるが、伺って構わないか?」
 周(b04242)が気を取り直して、エルザに伺う。
「ああ。私で答えられる範囲でだが」
 了承を得て、いよいよエルザへの質問が始まった。
「始めに一つええかな。これは其方からの単純な情報公開か、交渉のどちらやろか?」
 確認の意味を込めて、神鉄(b02177)が最初に尋ねる。
「交渉ではない。我々の行動は決まっているし、お前たちが自分の意思で行動を決めたのならば、それに介入するつもりもないし、権利も無い」
 エルザははっきりとそう告げた。
「銀誓館に来た理由を教えて欲しい」
 それは、なぜエルザがここに来たかという質問と同意。虎次郎(b22423)の発した質問は誰もが気になる内容であろう。エルザは答える。
「騙されて戦いに加わる者が出ないように警告に来た。また、戦いを避けるものでは無い。お前達が正しい情報を得て、なお戦いに挑むのならば、我々は正々堂々と受けて立ち、蹂躙するだろう」
「なぜ、1人でこちらに?」
 続けて、雹(b06055)が尋ねる。
「1人が100人でも、敵の本拠地に乗り込んでの戦いになれば、命は無いだろう。ならば、1人でも100人でも同じことだ」
 エルザははっきりとそう告げた。
 おずおずと、ロマン(b28084)が質問する。
「俺達と話すのって、そこまで覚悟に値する様な、重要な意味があるのかな?」
「自分の意思で戦場に立っていない者と戦う事は、名誉ある戦いにはならない。我々の戦いを名誉あるものにする為ならば、命など惜しくはない」
 よどみなくエルザは答える。
「命を捨てる覚悟で来たようですが……自分の命を考えていらっしゃいますか? ……そうですね、吸血鬼の滅び、人狼の繁栄、自分の命、あなたにとって大事ではないのはどれですか?」
 少し考えながら、雪智(b16543)も尋ねた。
「自分の命は大切なものだ。命が無ければ騎士の誇りを積み重ねる事はできない。だが、騎士の誇りを失った命には価値が無いゆえ、私はここに来た。……吸血鬼の滅びに人狼の繁栄、自分の命、か。人狼の繁栄には興味はないな。必要を感じない」
 質問は続く。
「人狼騎士か……かっこいいね。騎士って名乗るからには、何かしら譲れないものがあるんだと思うけど、どんなのか教えてもらえないかな?」
 翔太(b21769)は羨望の眼差しでエルザを眺めながら、そう尋ねた。
「私の誇りが許さないものは譲れないものだ。それは心のありようであり、言葉で説明できるものではない」
 銀の髪を揺らしながら、すっと立ち上がるは雪姫(b00301)。
「此度の情報の開示は、人狼全体の意思なのかしら?」
「人狼騎士全体の意思ではない。私は誇り高く戦うために、ここに来た。ただそれだけだ」
 クラシャ(b09664)は、まず手紙の礼を述べた。その後、エルザに質問する。
「今回こういう機会を設けるのには相当の覚悟が必要だったろうと思う。俺たちに、命を懸けるに値する何かを望んだのか?」
「騎士の誇りだ。真実を知らずに巻き込まれ、命を落とす者がでるのは、我々の本意ではない」
 エルザの問いに頷き、クラシャは席に戻る。
 質問は人狼騎士の目的へと移る。
「んで、お前さん達はいったい何が目的なんだ?」
 龍之介(b02920)の言葉に、雷(b03138)や蒼魔(b02671)、零時(b24419)らも注目している。
「目的は吸血鬼を滅ぼすことだ」
「吸血鬼を倒す以外の目的はあるの?」
 続けて、菊璃(b33628)が尋ねる。
「吸血鬼を倒す以外の目的は無い。吸血鬼を滅ぼすのみだ」
 エルザの言葉に菊璃は眉をひそめた。
「吸血鬼達となんで戦ってるんやぁ?」
 エルザのすぐ側で陣取っていた【菖蒲庵】所属の天王(b06205)が尋ねた。同じく【菖蒲庵】に所属する正和(b00969)と衛(b02556)が警備を行いながら、それを見守っている。
「吸血鬼と戦っている理由は『父祖の昔よりの敵』だからだ」
 そうエルザは言い切った。
「なぜ、エルザさんは戦うのですか?」
「それが必要だと思われるからだ。そうでなければ戦いはしない。仲間と訓練はするがな」
 レン(b22977)は少し悲しげな顔をしつつ、もう一つ質問する。
「そういえば……満月を見ると狼さんになってしまうのでしょうか?」
「そんな事はしない」
 レンの言葉にエルザはきっぱりと答えた。
「気を悪くするかもしれないけど……」
 そう前置きして、夜魅子(b30835)は今回の事だけで、人狼を全面的に信用する事はできない事や、彼女の語る事が真実かどうか確かめる為に、今後吸血鬼と接触する可能性が高い事、更に場合によっては今回の話の内容を吸血鬼側に話す場合もある事などを伝える。特に吸血鬼に今回の事を話していいかどうかは確認する。
「それはお前達次第だ。お前達の意思で吸血鬼を信頼するのならば、それはそれで構わない」
 続けて夜魅子は気になった事を尋ねる。
「人狼には、反対派や和平派などはいないのですか?」
「存在しないだろう」
 人狼側には、吸血鬼を倒すべきではないという者はいないようだ。
「お嬢さん、貴女は僕らと争う事を避けたいのかい? その命を危険にさらしてまで」
 聖(b34848)は一番聞きたいことを選んで尋ねた。
「戦いを避けるのが目的ではない、戦うのならば、覚悟を持って戦場に立ってもらいたいだけだ。利用されているだけの者と戦うのは、誇り高い戦いではないのだ」
 エルザはそう答える。
「日本に来た理由は、吸血鬼を殲滅する為だけなの?」
 隼人(b28537)は首を傾げて尋ねた。
「ああ、それだけだ」
「じゃあ……異国に来て、土地の者に説明もなく争いを起こす事は、人狼騎士にとって、礼節を欠く事じゃないの?」
「自らの行動を他者の都合で変えるような事は、誇りある行動とはいえない。判断するのは常に、我らではなく、他者であるのだから。お前達が自分の意思で我々を排除しようとしてくるのならば、ただの戦いであり、それを避けるつもりは無い。今回の戦いも、お前達がお前達の意思で介入するのならば、別に構わなかった」
 隼人の質問にエルザはそう答えた。
「もしもの話だけどさ。アンタら人狼と吸血鬼の『諍いの理由』が消えるなり、互いの妥協点が見つかったとしたら……争いを止めて、矛を収めることは可能か?」
 恭平(b05548)のその想いをこめた質問は、真輔(b30625)、紫郎(b22753)らの聞きたかった内容でもある。
 それに、エルザは真剣な眼差しで答えた。
「吸血鬼が滅べば、戦う理由はなくなるだろう。あるいは人狼が滅びるかだ」
 相容れない関係、それを裏付けるかのように。
「初対面の人にこんな事を聞くのも変だと思うけど、これからの事って、考えた事ある? 吸血鬼とどう戦うかとか、そういう意味じゃなくて……そうね。戦いが終わってから、エルザさんがしたい事って言えば良いかしら? あ、祝杯を挙げるってのは無しね」
 そう、これからの事を尋ねるのは、玲(b00462)。玲だけでなく、水音(b04490)、紗深(b30645)、夏月(b09502)、つぐみ(b24778)、すいひ(b27716)らも知りたいところだ。
「吸血鬼を滅ぼしたならば、森に帰る。自由と誇りと共に一生を森で過ごせるのならば、それは素晴らしい生き方だ」
 雅輝(b00259)は、続けてエルザに質問する。
「吸血鬼を滅ぼすため以外の、来日目的はないんだな? それと人狼から見た吸血鬼の本質を教えて欲しい」
「ああ、吸血鬼を滅ぼす以外に特に理由は無い。本質か……嫌な奴だが、それくらいだな」
「それなのに、滅ぼすのか?」
 思わず雅輝が尋ねた。しばしの沈黙の後、エルザは口を開く。
「……それが我々の役割なのだ」
 話は人狼についての内容へと移る。
「人狼騎士とは何ですの?」
 雛(b00112)がちょこんと尋ねた。狼貴(b10233)、嗚唖(b00013)、柊輔(b02565)、鏡夜(b15448)らも興味のある内容だったらしく、エルザの答えに注目している。
「人狼騎士は人狼騎士だ。吸血鬼が吸血鬼、魔剣士が魔剣士であるようなものだ」
 どうやら人狼騎士というのは、中世のいわゆる騎士とは別物であるらしい。
 と、二人で質問しに来る者達がいる。悟(b03663)と八重(b18967)が話しかけた。
「騎士というからには仕える主がいるはず。吸血鬼との争いのきっかけは、その人物と何か関係があるの?」
「そうそう、俺も騎士を名乗るなら、何を守り、誰に仕える騎士なのかを聞いてみたいぜ」
 リク(b08794)も続けて尋ねた。どうやら、同じ考えを持っている者達も多いようだ。イシュタル(b16960)に綾乃(b19717)、東(b32872)、キラ(b01865)も固唾を呑んで見守っている。
「守るべきは騎士の誇り。その誇りをいかに守るかは、騎士団が決定するが、それは役割の違いだ。騎士とは自分の誇りのために行動するもの。弱きものを守るものでは無い」
 どうやら彼らに主は無く、自分の誇りと意思とで戦っているようだ。
「あなた方は自らを騎士と名乗る。ならば、その騎士道とは何かを教えていただきたい」
 そう問うのは、キリト(b30248)。手紙の主は自らを騎士と名乗る。それを身分制度と捉えるならば、彼らの組織は『騎士団』的封建組織と考えてよいだろう。ヨーロッパを拠点としているならば、騎士の十戒を初めとする中世騎士の思想を汲んでいる可能性が高い。そう考えての問いであった。
「人狼の騎士は、己の誇りのみに律される。明文化された誓約を持つものではない」
 その言葉にキリトは、なるほどと呟いた。
 そこで、悟(b30323)は、人狼のことをよく知るために、ある提案を持ちかけた。
「短期間で構わないので、銀誓館に傭兵として雇われてみる気はないですか?」
 その思いがけないだろう提案にエルザは。
「我々は騎士であり、主命に従うもの。傭兵になる事はできない」
 はっきりとそう断わってきた。
「主命? 主がいるのですか?」
 思わず悟が尋ねた。
「我々の主は……」
 エルザは何かを言おうとして、黙ってしまった。けれどすぐに口を開き。
「騎士の主は、自らの志でしかないだろう。理不尽な命令に従う事は騎士として……」
 また途切れる。
「……いや、違う。我々は主命に従う騎士、それ以上でも以下でもないのだ」
 そう言い切った。
「貴方達のメガリス破壊効果について、教えてもらっていいかしら? 人狼の破壊効果は『破壊を呼ぶ力』と聞いているのだけれど、その力は世界結界や周辺の住民にも被害を齎すものなの?」
 話は人狼の持つメガリスの話題へと移る。氷璃(b18049)の質問は、丁(b00276)も含む大勢が気になっているものである。
「全てを噛み砕く牙だ。その大きな力は、その周辺にも被害を及ぼすだろう。この力を使わずに済むならば、使いたくなかったのだが……吸血鬼が城を作った今、止むを得ない事だ」
 よくはわからないが、かなりの威力を秘めているものらしい。
 続けて、暈人(b00168)と亮(b21102)の2人と共に護衛を続けていた鑑三郎(b21872)が尋ねる。
「人狼はメガリスをいくつ所有しているんだ?」
「メガリスの数は教える事はできない」
 流石に所有数までは教えてはくれないらしい。鑑三郎はまた、先輩達との警備に戻った。
「吸血鬼と人狼のことについて教えていただけませんか? それとエルザさんの現時点のことを……誰かに狙われているとかはありませんの?」
 そう尋ねるのは涙(b30086)。
「吸血鬼は敵だ。それと、私のことか? 特にそのようなことはないな」
 次に尋ねるのは、沙紀(b21488)と共に来ていた悠(b01115)だ。
「何故、吸血鬼と人狼は争い続けるか……場所を移してまで戦う意味とは?」
 その静かな問いにエルザは答えた。
「我らが望んだわけではない。吸血鬼がここに拠点を移そうと画策しているのだ」
 続いて、ゼイム(b05718)と桜(b12713)が共に前に進み出る。
「私たちの仲間と遭遇して、日本を本拠とする能力者組織と知りつつ、なぜ、接触を図ろうとはしなかったのデス? どのような事情があっても、その国の組織に話を通すのが筋なのではないでしょうカネ?」
 この会談に参加する前に、イタリアに住む知人から人狼について聞いたのだが、何も得るものがなかった。それを挽回するかのように、ゼイムはじっとエルザの答えを待っていた。
「話し合いが戦いよりも上位であるということはありえない。口は嘘をつくが、剣は嘘をつかないのだからな。お前達が騙されたのではなく、自分の意思で戦いを行うのならば、それはそれで全く問題は無い」
 続いて桜もエルザに話しかける。
「知っていて避けられる争いなら、私は避けたいと思っているんです」
 それは人狼も吸血鬼も同じこと。
「避けられる戦いは避けても良いだろう。だが、我々の戦いは避けられない戦い故に、避けることは出来ない」
 その言葉に桜は少し寂しげな表情を浮かべるのであった。
「人狼はどれだけの戦力を保持しているんだ?」
 友亮(b00430)は単刀直入に尋ねる。
「お前達と吸血鬼とを倒すに充分な力だ」
 人狼はどうやら、銀誓館学園と吸血鬼、二つの組織を相手に出来るほどの戦力を所持しているようだ。
「ところで、貴女達は何処を根城にしているの?」
 そうエルザ達の根城を尋ねるのは、ハルミ(b09344)。
「現在は散開し、個別に森の中に潜伏している。次に集結するのは、攻撃開始直前だろう」
 どうやら、エルザ達の拠点は森であるらしい。
「人狼には協力者、友好的な組織はいるのか?」
 状況を観察しながらも、雄介(b31378)もまた、エルザに質問する。
「我々の感知する所ではない。我々をどう思うかは、受け取り手の問題だからだ」
「人狼の方々にも、忠誠を誓って協力する『人間の』能力者はいますか?」
 優美奈(b02996)の問いにエルザは首を横に振る。
「人間の能力者に仲間はいない」
 その答えは瑞穂(b06580)の知りたかった事でもあった。
「あの、聞いてもらいたい事があるんです」
 萩(b32665)がそう前置き、話し始める。銀誓館学園の能力者は、一般人と世界結界を弱める行動をとれば、来訪者の掟やルールと関係なく、敵になる可能性が高い集団である事。能力者の集団として若く、来訪者のルールに疎いことや、明確な学園全体の意思決定者がいないが、戦争になれば敵を倒すため一致団結しすること。日本の来訪者である一族、土蜘蛛を滅ぼしていること。自分のように土蜘蛛の生き残りは学園に加わった事をエルザに語った。
「銀誓館学園の能力者のその行動は、理解できる。自由な意思は尊ばれるものだし、戦いの場では、他の事を考えないというのも普通のことだからな」
 次に萩と共に来た澪(b22537)が尋ねる。
「この日本で行動する人狼のリーダーはどのような方なんでしょう? よければその方の性格などを教えていただきたいのですが」
「騎士は自分自身の誇りに従って行動するものだ。指揮官と呼べるものはいないが、戦闘になれば現れるだろう」
 話は吸血鬼の因縁にまつわるものへと移っていった。
「一つ……私からいいかしら?」
 静音(b33068)はそう断わってから質問を始めた。
「吸血鬼の連中と争っているのは知っているけど……何故、そこまで目の敵にしているのかしら? そこの所を教えて欲しいのだけれど……」
 この質問には、本当の事を知りたいと思っているエチュード(b24630)やルーマ(b31103)、散春(b32888)、禍月(b01216)、未生(b00063)らも注目している。
「父祖の昔よりの戦いだ。それを終わらせる事が人狼騎士の生きる理由になる」
「それは理由ではないんじゃない? あなたの意思は?」
 その静音の質問にエルザは、しばらくの間、沈黙してしまう。
「人狼は、吸血鬼を狩るものと決まっているのだ。……それ以上は考えられない」
 静音は思う。このエルザの返答は不自然さを感じると。だが、その理由がわからない。どうして、不自然な答えになったのだろうか?
「未だ吸血鬼の組織は本体を欧州に置いていると聞く。貴公等が今から攻勢に出るとしても、欧州は如何するおつもりか?」
 丁(b18671)は静かに尋ねた。
「吸血鬼が本拠を日本に移そうとしているので、それを阻止しようとしているのだ」
 エルザは答えた。
「私たちの目的は、誤った判断による大きな抗争を避けること。その為に、両方の言い分を吟味する時間を皆で分け合うことはできますか?」
 了(b26806)と共に話を聞いていた踊壺(b32648)がエルザに尋ねる。
「我々の戦いに疑問の余地は無い。お前達が戦いの場に立つか否かの判断は、お前達に任せる」
 次に棘(b03496)が不安そうに尋ねた。
「もう、吸血鬼はん達との戦争は、揺らぐことはありまへんのやろか……?」
「絶対に揺らぎはしない」
 そう断言される。
「滅びるとか滅ぼすってのは、とても悲しい事だよ、騎士エルザ・マイスタージンガー……大切な人達に二度と会えなくなっちゃうんだよ」
 そう語りかけるのは、芽亜(b23540)。彼女の悲痛な気持ちは、エルザに伝わっているだろうか。
「戦いで命を落とすのを恐れる事はない。恐れるのは誇りをなくす事だ」
 【迷宮倶楽部】に所属する優陽(b26505)が、すっと立ち上がり口を開いた。周りにいる同結社に所属する遠夜(b16338)、蒼雅(b06567)も優陽の発言を見守っている。
「人狼側からの歴史の『真実』を教えて欲しい。因縁がどこから生まれ、今に続いているのかを……」
「人狼と吸血鬼の戦いは、遥か祖先の時代より続いている。理由は……特に無いのか……」
 しばし沈黙し、またエルザは話し出した。
「いや、違う。吸血鬼を倒す事は我らの目的なのだから、疑問を持ってはならないのだ」
 そう言うエルザの様子に、優陽は眉をひそめた。人狼の理屈はわかりやすい。だが、吸血鬼に関してのみ、不自然を感じる。
(「彼らの行動原理と、合わない」)
 優陽はなおも思考を巡らす。彼らは、人狼達は自分の誇りを基準に行動している。だというのに、父祖の代から続いているからという理由で戦いを続けているのは、何かがおかしい。
 と、エルザの近くに来て、凪(b06414)が尋ねた。
「エルザさんは、何でメガリスを欲しがっているの?」
「メガリスを欲したのはではない。吸血鬼の城の建設を阻止したかったのだ」
 人狼が黄金の林檎を欲したのは、あくまでも吸血鬼に渡さないよう阻止していただけに過ぎないとエルザは答えた。
「黄金の林檎の時の事であるが、人狼の者が銀誓館の者に銃口を向けたと聞いたのであるが、浅慮であったとはお思いになられぬか?」
 アーミーナ(b23842)が続けて質問する。
「自らの意思で戦場に立っていたのだから、当然の事だろう。戦う覚悟が無いのならば戦場に立つべきではない」
 宗慈(b03084)と蜂蜜(b10907)が前に立つ。
「何を敵と思い、何に銃口を向けるか。それは自由です。ボクは貴女方の何をも否定しません。ただ、善意には善意を、悪意には悪意を……真正面からぶつけるだけです」
 宗慈は言う。それは、吸血鬼にも言えることだと言わんばかりに。続けて蜂蜜がエルザに問うた。
「黄金の林檎を奪われたことは、そちらにどのぐらい重い問題になりますか?」
「黄金の林檎を吸血鬼が得た事で、城が完成してしまった。それを阻止できていれば、無関係な者を巻き込む戦いをする必要はなかったのだから、とても悔しく思う」
 それはエルザの正直な答えであった。
「以前、我々を一方的に攻撃した事……これと同じような事をされた場合、エルザさんはその相手に対して寛容になれるのでしょうか?」
 静香(b04231)は、エルザがここに来た事が自分達に対して侘びも示しているのではないか、そう思い、問いかけた。
「戦場で攻撃を行う事も、攻撃を受ける事も、至極当然な事だ。それに対して何も思う所は無い」
「あなた方の抗争そのものが、我々にとって都合が悪いわけですが、その辺りどう思われます?」
 雅樹(b16164)は続けて質問を行う。
「それはすまなく思っている。吸血鬼のメガリスを奪うことに成功していれば、このような事態にはならなかったのだからな」
 エルザは静かにそう述べた。

●騎士を守る者
 会談が始まっても、その警備が緩む事はなかった。
 いや、一層厳しくなったといっても過言ではないだろう。
「人狼、か。彼らがいかなる存在なのか、非常に興味があるな」
 周防(b26484)はエルザの周辺で敵と思われる存在が居ないかを見ている。できれば相手を傷つけないように拘束して捕まえたいところだ。
「吸血鬼の刺客は来ていない様だな」
 人狼についてはたとえ身内の中でも、全員が良い感情を持っているとは限らない。是清(b16701)は、どんな相手だろうとも、自らが持つショッキングビート改で拘束するつもりだ。周防と同じく。
「彼女を護ると決めたからには、最後まで守り通すわ」
 その誇り高い志を胸に、麗那(b19022)はしっかりエルザを守る。質問などは他の者に任せて。
「この場を設けてくれた事を感謝したかったのだが……」
 エルザに声をかけるのにはかなり苦労することだろう。数多くの者達が警備に当たっている上、今は会談中。霜司(b01033)はため息をついていたが、自分の役目を思い出し、辺りを見回した。
「これが終わった後に言えばいい。今は警備に集中しよう」
 コートを羽織った龍麻(b04047)がそう告げる。龍麻がコートを着ているのは、持っている武器をカモフラージュするためのもの。
「わたしは、ひと目、女の顔を見れればそれでいい」
 根室(b05331)のその言葉に霜司と龍麻は笑みを浮かべ、また警備に戻るのであった。
 単独で警備に当たる者がいれば、チームで警備に当たる者も多い。
「源夜、そっちはどうだ?」
 【待雪】に所属するカズマ(b31224)が、屋根の上で全体を見ている源夜(b21774)に声をかける。
「こちらは異常ありません。何かあればすぐに知らせますので」
 ご心配なくと源夜はカズマに告げる。と、そこで携帯電話が鳴った。小雪(b27572)からだ。
「カズマさん、こちらは異常なしです。そちらはいかがですか?」
「こちらも異常なしだ。引き続きよろしく頼むな」
「はい、任せてください」
 電話を切り、遠目でエルザを見る。源夜は屋根の上で全体を見回し、カズマ、小雪がエルザの死角を見回るという連携で護衛を行っていた。
「無事帰すことが、俺らのあんたに対する誠意だ」
 警戒を緩めずにしっかりと。
(「敵地かも知れねえ所に一人で乗り込んでくるテメェは信じるぜ? でも人狼を信じたワケじゃねえ……。だけどよ、人の話を邪魔するヤツァ嫌いでな……今だけは守ってやるつもりだぜっ!!」)
 その言葉を口に出来ないのが少々辛いが、智延(b29725)の胸の内には熱い闘志が渦巻いている。エルザを背に庇うように警備を続ける。
「吸血鬼の次は人狼からの呼び出しか。銀誓館も有名になったものだ」
 感心したような口ぶりでベルナデッド(b15237)が言う。
「それは違うと思うぞ」
「なに、違う?」
 宗司(b25663)の突っ込みにベルナデッドはそうなのかと呟いている。
「そういう軽い話ならよかったんだけど……それよりも使者は無事に帰さなくてはね」
 それが義務なのだと自分に言い聞かせるように告げるのはリヴァル(b18553)。現在、エルザの側で護衛しているが、しばらくしたら、今度は外の護衛へと向かうつもりだ。
「まぁ……何も無ければ、それが一番いいけどな」
「愚か者が出ない事を祈ろう」
 宗司とベルナデッドが頷く。万が一に備える事が杞憂に終わるようにと。
「人狼さんとも、できれば仲良くしたいですね〜。あなたはどうですか?」
 ケイ(b00776)の質問に、共に護衛していた夜刀(b04904)は。
「彼女の行動は気に入っている」
 そう告げた。豪快な女性はわりと好み……ということは流石に言わなかったが。
 その夜刀の答えにケイも頷きながら。
「エルザさんが不快に思わないように、しっかり警備しましょう」
「ああ」
 ケイの言葉に頷きながら、彼女の誇りに応えるためにもと夜刀は思う。二人は揃って警戒を続けた。
「えっと……この辺りにいるって聞いたんだけど……」
 【Ascalon】に所属する麗美(b05926)はきょろきょろと辺りを見渡す。静音(b02758)がこの近くにいるはずなのだが。
「よかったー、来てくれたのね!」
 少しぐったりしながら、静音は麗美を歓迎する。護衛と話を聞く者達とに分けて案内していたのだが……何しろ数が多い。
「遙はエルザさん周辺の警護をするのだ!」
 元気よく静音にそう告げるのは遙(b26950)。万が一のときはヒュプノヴォイスやヒーリングウェーブで補佐するつもりだ。
「俺も護衛……と言うと大袈裟かも知れないけど、彼女に危害が及ばない様、周辺の警戒に当たりたいんだけどいいかな? 場所は皆に任せるよ」
 学(b23834)もエルザの護衛のために来たようだ。他にもいる。
「俺も護衛。できれば、エルザの話が聞ける所を頼む」
 後からやってきた雪彦(b03544)もどうやらエルザ護衛組のようだ。雰囲気が悪くなったらフォローするつもりらしい。
「エルザの話を聞きに来た。もう向こうに行ってもいいのか?」
 次はエルザの話を聞きに来た明来(b23790)が並ぶ。話を聞く事がメインだが、有事のときはイグニッションして対応するつもりだ。
「今後どうなるかは分からないが……ともかく、こうして会って話せる機会があって良かった」
 そう呟きながら、静音の案内する場所へと向かう明来。
 遙と学、雪彦の3人はそのまま護衛の組にして、エルザの側に向かってもらった。
「……ボクも手伝おうか?」
 本当ならば麗美もエルザの護衛に回るつもりだったのだが、流石にこれは辛そうだ。
「ありがとう。とっても助かるわ」
 静音は嬉しそうに微笑んだ。
 エルザの側で護衛しているアキ(b16871)は、彼女に害をなそうとしている者達に備えている。
 できれば、そんな人間はいないと思いたいのだが……。
「貴方が騎士の名を以て、嘘偽りなく話すなら、僕は貴方を守る盾になる」
 エルザに直接伝える事はできなかったが、その気持ちは伝わるようにと、アキは呟いた。
「長旅ご苦労様です」
 流石に3サイズを直接訊く事はできなかったが、それを伝えられただけでも、雄介(b04942)は充分であった。今はただ、平和裏に終わることを祈るばかり。
「人狼側と接触する機会か。話が出来れば大きく変わってくるかもしれんから、無駄にはしたくないな」
 そういう恭哉(b00274)の言葉に同意するのは、共にエルザの周辺を警備している初雪(b02901)。
「ええ。それに……誰も傷つかずに、そして……因縁の争いを止められたらいいのですけど……」
 戦いを止められるかはわからない。でも平和を願う気持ちは誰にも負けないだろう。初雪はじっとエルザの方を見つめながら、護衛を続ける。
「そうだな……初雪の願い、叶うと良いな」
 その恭哉の言葉に初雪は静かに微笑んだ。
 重い表情を浮かべるミキ(b06168)を気遣うように、湊人(b03879)が声をかける。
 二人とも【Ghv】に所属している。
「大丈夫か?」
「あ、ごめん。大丈夫だから」
「だったらもっと、シャンとしたらどうだ? ……あ、いや、そうではなくて」
 ミキが重い表情を浮かべるのは、銀誓館学園の学生を疑わなくてはならないこの状況のため。これだけ人が多ければ、他の吸血鬼や人狼達も襲っては来ないだろうと思う。けれど……。
「あまり思いつめるなよ……ほら、これ持っていけ」
 湊人がミキに投げたのは500円のコイン。
「ホントはエルザに渡すつもりだったが、お前にやるよ。だから、一緒に最後までやろう」
「ありがとう……」
 暖かくなっている500円玉を受け取りながら、ミキは警備に戻る。もう迷わない。何があっても、エルザを守る為に。
「あのね、思うんだけど」
 そう前置きして、海琴(b05366)は一緒に護衛している景之(b16829)に話しかけた。
「命を捨ててる〜とか、殺すのは難しくない〜とか、彼女を守らないと〜とか……暗に介入者の存在を仄めかしてる様に感じるんだよ」
 そう、自分達と人狼を争わせればいい、両者を戦わせて疲弊したところを叩けば良いという、嫌な予感を感じるのだ。
「それなら……単に外道なだけの集団なら、命を捨てる覚悟で言葉を伝えに来るだろうか? 相手はいきなり自分達の仲間に、銃撃を浴びせるような集団と聞いているが……」
 景之は続ける。
「自分の目で見て、確かめれば、何か分かるかもしれない」
「そうかもしれないね……」
 景之の言葉にうんと頷き、海琴は自分達が護衛しているエルザの話に耳を傾けるのであった。
 自らの命を断つ事がないようにと、世緒(b04861)は、じっとエルザの動きを見ている。
「彼女が話をしている最中は遮らせない様にしないと……」
「そうね。鶴岡八幡宮で大騒ぎなんて事、したくないし」
 こうして話し合いのできる人が人狼の組織に残っていて欲しいと、世緒の話を聞きながら、燈子(b01893)はそう思う。
「それに……ここで戦争をするのであれば、どちらに付く付かないじゃなしに、見過ごす訳にいかないよね」
「私は喧嘩両成敗で止めるつもりよ」
 その燈子の言葉に頼もしさを感じながら、世緒も頷くのであった。
「えと。私は万が一の時のきゅーきゅーばこなんです」
 だから、最初からイグニッションして、はねず(b24706)は、もしものテロに備えていた。
 話をしに行く者達と混ざる事で、エルザに近い位置を確保している。が、背の低さで遮られる視界を確保する事に苦労している様子。
「で、でも……がんばりますっ」
 首をひねりながら、はねずも警護を続けるのであった。

●聞きたい事は沢山あるけど
 空(b06761)は今までのエルザとの会話をまとめながら、近くに居た者に声をかけた。
「どうだ? 何か問題とかはないか?」
 これまでの会話を記録していた翠鈴(b24086)と七生(b35184)は手を止め、顔をあげる。
「今のところは大丈夫です。今までの記録はきちんとできていますし」
 翠鈴は、時折エルザの様子を見ながら、今までの会話をメモしていた。
「ボクの方も大丈夫ー。まあ、再生機器がダメになった場合の予備みたいなものだし」
 ぱたぱたとメモを振りながら、七生は答える。心配してくれてありがとうと告げて、またメモを始める。空も二人の返答にほっとした表情を浮かべ、エルザの話に耳を傾けた。これならきっと、この場に来れなかったもの達にも伝える事ができるだろう。
「……さ、寒くて手が……」
 メモしていた弥琴(b01665)の手が震える。と、ふわりと弥琴の肩に暖かいコートがかけられる。
「あ……」
「それにしても、やっぱりすげー人数だな」
 コートをかけてやった玲紋(b03595)は辺りを見渡し、感嘆の声をあげている。
「(ありがとう、玲……)」
 弥琴は小さく呟いて。
 大き目の携帯型魔法瓶から暖かいお茶がコポコポと注がれる。
「エルザさんもどうぞ〜」
 一度、毒見をしてみせてから、頼人(b03904)は暖かいお茶をエルザに手渡した。
 エルザは礼を述べて、その茶を受け取る。少し疲れているようにも見えるが、頼人のお茶で一息つけたお陰かまた背筋を伸ばし、会談に臨もうとしている。
「では、次にいきましょうか」
「ああ」
 朱砂(b11332)の言葉にエルザは頷いた。
 そこにやってきたのは、愛用のギターを抱えたキョウ(b28632)だ。
「お願いがあるんだぜ! どうか素直な気持ちで一曲歌って欲しいんだぜ! 失礼は承知なんだぜ! でも歌ってくれたらオレにはエルザサンの本当の気持ちが確かに伝わるんだぜ!」
「歌えばいいのか?」
 エルザの問いに力強くキョウが頷き、演奏を始めた。エルザの知っているような歌の伴奏を。
 それに乗せて、エルザが高らかに歌い始める。
「♪ボエーーーーー」
「「!!!」」
 それを聞いた生徒達は、一斉に耳を押さえた。
 へ、下手すぎる!!
 だが、エルザ本人は実に楽しく歌っているらしく、その声はどんどんヒートアップ。更に強まっていく歌声を前に、キョウは大慌てで演奏を止めた。
「さ、サンキュー、エルザ! お前の気持ち、よっく分かったぜ!」
 とりあえず、このセッションでエルザの主張や気持ちには裏表が無さそうな事は把握できたからと、そうキョウがお礼を言うと、エルザは少し残念そうに歌うのを止めた。
 とにかく、今後エルザに歌は歌わせないようにしよう。……彼女の様子にそう思った者は、きっと多かったに違いない。
 そんな中、続いてカメラを持って現れたのは真輝(b03391)だ。結社の皆の為に……少しだけ、邪な気持ちも含んでいるのかもしれないが、その目的はただ一つ。
「写真おーけー? あ、できればえがおでー♪」
「ああ、構わない」
 ぱしゃり。エルザの写真を見事、その手に収めた。少し残念な事は、エルザが笑顔ではなかった事だろうか。
 入れ替わるようにエルザへ近付いたのは桜花(b00036)。
「黄金竜の一件以来ね〜。壮健そうでなによりよ、人狼の騎士。今夜はお誘いありがとう。で、とりあえず私からの質問……」
 彼女が投げかけた質問は周囲に衝撃を与えた。何故なら、そのような質問をする勇者がいるとは、誰も予想していなかったからだ。
「……エルザ、あなたのスリーサイズ、お・し・え・て♪」
 さらりと言ってのけた桜花がもし男性だったら、他の女性にぶっ飛ばされていた……かもしれない。
「計ったことは無い。人並みだとは思うが」
 だが、エルザは全く気にもしていない様子で、そう律儀に応じた。その返事に、ちっともそうは思わないけどと呟きながら、桜花は少し残念そうに戻っていった。
 この質問に、勇気を得たのだろうか。それに続けられた質問は、
「重量税は納めてる?」
 という、胸を凝視しながらの夜(b05475)の物だった。
「日本では間接税以外は払っていない」
 生真面目に答えるエルザに、更にマスクド(b27845)が興奮気味に尋ねる。
「どんなもん食ったら、そんなに大きくなるよ?」
「この背か? 気付いた時にはこうだったからな……。毎日3食しっかり食べ、よく体を動かし、鍛えていたからだろうか」
 エルザはよく分からないといった顔をしつつも、思い当たるのはその位だろうかと告げた。
「それじゃ、エルザの好きな事を教えてくれるかな?」
 そう尋ねるのは太一郎(b00234)。
「森で昼寝をすることだな……あっと、これは失敬」
 エルザに近寄りすぎたのか、太一郎はエルザに踏まれてしまった。けれど、妙に……いや、かなり喜んでいるように見えたのは、きっと気のせいだろう。……たぶん。
「失礼する。少々聞きたい事があるのだが」
 見下しもせず、へり下りもせず、武士道を貫く形で堂々と発言するのは、宗(b31032)。
「人狼は玉ねぎを食べないと、吸血鬼との親善パーティーで聞いたのだが、本当だろうか?」
「いや、玉ねぎなら食べるぞ」
 その答えに、宗はきちんと礼をして立ち去った。
「……牛乳、好きか?」
 光太郎(b03557)が尋ねる。
「牛乳は嫌いではない」
 質問は続く。
「はーいはーいデスの♪」
 背伸びして、精一杯手をふりふりするのはレディ(b02188)。エルザを見上げ、目をきらきら輝かせて問いかけた。
「あのねあのね……『わんわん変身』できますデスの?」
「お前の言う『わんわん』が狼を指すのならば、そうだ。狼に似た姿に変身できる」
 返事にレディが喜ぶ隣で、奏(b17984)は、きゅぴーんと目を光らせ、ずずいっとエルザに迫る。
「毛皮はもふもふ?」
 ………。
「てゆーか、もふもふだったらどうするつもりなのー!?」
 すっぱーんと隣に居た灯(b29201)が突っ込みを入れる。他にも奇跡的に合流を果たした護(b24524)、雪(b24548)らは、なんて事を聞くんだとあわあわしている。
 エルザは、彼らの様子に思わず笑みを浮かべた。
「安心しろ、毛皮はもふもふだ」
 そう答えるエルザに奏は満足げな表情で席に戻る。ちょっと痛がっているようだが、気にしなくても大丈夫だろう。
「エルザ達はどんな力を使うん? それと、吸血鬼と耳の形が同じやし、元は同じ仲間っちゅう事ないん?」
 小鉄(b02125)が続いて尋ねた。
「どんな力か? お前達と大差ないだろう。耳は……どこか変な所があるか? 私達もお前達も吸血鬼も、皆同じような耳をしていると思うが」
 どうやら、耳の形は小鉄の考えすぎのようだ。
「ああそうや。ついでに吸血鬼との戦いの発端も教えてや」
「私が生まれる数百年前のことだ。よくわからないな」
 次に日景(b02263)が前に立つ。
「エルザさん、ファミリーネームの由来、教えてくれへん?」
「父のファミリーネームだ」
 エルザは答える。
 そっとエルザの側に行き、淳(b02155)が尋ねた。
「あんたたちは、悲しい時に泣くの?」
「いつ涙を流すかは、当人の心の問題だろう。悲しいときに涙を流す者もいれば、それを堪えて涙を隠す者もいる」
 エルザは答えた。
 話は、真面目な話題へと戻っていく。
「ヨーロッパでの来訪者たちの勢力を教えてくれないかな?」
 伊織(b01637)が尋ねる。
「私は知らない。生き残っている者は、どのくらいいるのだろうな」
「来訪者って、故郷に帰るわけには行かないのか?」
 利也(b02831)が続けて尋ねる。
「吸血鬼を倒すまでは帰れない」
 次に【P.I.G−臨める兵−】に所属する漣弥(b03209)が立ち上がる。周りには同じチームに所属している纏(b19765)、セーライト(b21470)の姿も見える。
 と、そこで護衛を行っていたマックベーグル(b33602)が反応する。漣弥はマックベーグルが事前に警戒していた者だ。何か問題があればすぐに自分が出るつもりで漣弥を見ている。
「追跡中の吸血鬼を攻撃する際に、間に能力を持たない一般人がいます。貴女方ならどうしますか?」
 どうやら彼は普通に質問をしただけのようだ。
「吸血鬼を追うのに不利益にならない限りは、他者に影響を与えるべきではないだろう」
 漣弥はそれを聞いて、席に戻る。それと同時にマックベーグルも漣弥に対する警戒を解いた。
「何故、問答無用で先制攻撃してきたんだ?」
 聞きたいことだけ、小次郎(b00188)は尋ねる。
「戦場で遭遇して戦う理由を知りたいでは、話にならない。メガリス争奪をしているのならば、相応の覚悟は常にするべきだ。戦場で死ぬ覚悟がないのならば、戦場に立つべきではないのだからな。まぁ、威嚇射撃と殺すつもりの弾丸の見分けもつかないのならば、しょうがないかもしれないが」
 レイヴンロア(b26609)は尋ねる。
「メガリスは種族の威信として利用していたか?」
「メガリスはそのような物ではない」
 次に玲(b03516)が尋ねた。
「組織におけるエルザ自身の立場を教えてください。そして『戦いの真実』についても……」
「人狼騎士に身分の上下はない」
 そう告げてから、戦いの真実を告げる。
「人狼の敵である吸血鬼が日本に侵攻し、その土地の力を奪って、戦力を整えようとしている。それを阻止するための戦いだ。戦いの場をこの地に移したのは、吸血鬼たちだ」
 続いて、流惟(b22551)がエルザの元へとやってくる。
「お姉サン達が敵にならないって信じたいから、銀誓館のメガリス破壊効果を少しだけ教えてあげる。一定条件の下、何があっても絶対に死なない。それが『生命賛歌』の効果の一つだよ」
「ならば、お前達と戦うときは遠慮は無用ということだな。存分にやらせてもらおう」
 流惟から銀誓館学園のメガリス破壊効果を聞いたエルザは、そう生真面目な顔で頷いた。
 話は、吸血鬼の話題へと移る。
「其方の答えられる範囲でいいのだが、吸血鬼共について聞きたい事がある。吸血鬼の能力を教えてくれ」
 昴(b21622)は尋ねる。
「城を作る能力以外は、ごく普通の来訪者だろう。世界結界の禍も、城の中で棺で眠ることでやり過ごしたようだ」
「吸血の意味とその効果。それと、ローゼスが合流しようとしている古き仲間とは、同じ吸血鬼の事を指すのかどうか教えて欲しい」
 次に十六夜(b21674)が尋ねた。その周りには共にきていたひなた(b17388)、戒(b20174)の姿もある。
「吸血か。従属種ヴァンパイアになる事ができるくらいで、大した意味はない。おおかた、奴らが勿体ぶって話しているだけだろうさ。……それと、お前が言う古き仲間のことだが、文脈からして、吸血鬼に間違いないだろう」
 さらに隼人(b21588)が尋ねる。
「従属型ヴァンパイアについて、知ってる限り教えてもらいたい」
「吸血鬼を助ける能力を持つ能力者だ。それ以上でもそれ以下でもない」
 その答えはセイジロウ(b04498)も聞きたかった内容でもあった。
「単刀直入に聞く。吸血鬼の本当の目的が知りたい。奴らが此処に来て、城まで構えて、なんの目的もありません……なわけがない。あんたらなら、少しは見当がついてるんじゃないのか?」
 克己(b22518)も尋ねる。
「本拠地を日本に移そうとしているようだな。あとは、この地に降り注ぐシルバーレインが理由だろう」
「世界結界についてはどう思うの?」
 紫織(b05154)はエルザに尋ねた。
「世界結界は面倒なものだが、無くなれば無くなったで面倒ごとが増えるだろうし、特にどうしようとも思わない」
 エルザはそう答えた。
 次に進み出たのは和真(b01501)だ。
「吸血鬼が君達の国で実際に行った、悪行を教えてくれ。それと、吸血鬼のメガリス、影の城の存在そのものが世界結界に悪影響があるのか……世界結界を破壊するような能力があるのか、わかるなら教えてくれ」
「悪行については特に覚えが無い。城の影響だが、もちろん無いわけが無いだろう。なにせ、吸血鬼の本拠地になるのだからな」
 次に四衛(b04397)が尋ねる。
「吸血鬼に伝承どおりの、魅了の魔力じみたもので、人間の意思を洗脳する力があるかどうか教えてくれ」
「吸血鬼に魅了の魔力はない」
「それじゃあ、従属種ヴァンパイアってのは、本家のヴァンパイアから何か支配受けてたりするのかね?」
 静馬(b00535)が問いかければ、エルザは即答した。
「支配は受けていないはずだ」
「銀誓館と吸血鬼の関係を、どう思っているのかしら?」
 モモ(b08106)が首をかしげる。
「吸血鬼がお前達を利用しているのだろう? 協力するのならば構わん、諸共に押しつぶせ……というのが、大勢の意見だ」
 次に進み出たのは響(b01408)だ。
「吸血鬼と闘争を起こす場合、一般人を巻き込む……もしくは、盾として利用することもあるのか?」
「他者を盾にするのは、吸血鬼の戦い方だ。我々の戦い方では無い。だが、吸血鬼が盾にするのならば、その盾を砕くのを躊躇うことは無い。それが戦いだ」
 今までの話を聞いて、宗吾(b25426)は確信する。戦いを止める事はできないだろう事を。
「吸血鬼の協力者が、命懸けの争いを知らぬ子供たちだとしてもか?」
 宗吾の問いにエルザは淀みなく答えた。
「自分の意思で戦いに赴く者以外は、戦場にいてほしくない。だが、戦場に立ったのならば、それは覚悟があるものとみなさねばならない。後はお前達が判断すべきことだ」
「吸血鬼が城を構えてその場所で生活し始めると、他の無関係な人間、一般人になにか悪影響があるのでしょうか? 吸血鬼に協力してる他の来訪者とか、ゴーストとかは居るのでしょうか?」
 七彩(b07126)はエルザに尋ねた。
「その地は、吸血鬼の支配下に入る。彼らは好きな時に好きなように城下の民を扱う事ができるだろう。お前達が健在な間は大人しくしているかもしれないが、それが未来永劫に続く保障はあるまい」
「では、吸血鬼に協力している他の来訪者や、ゴーストはいるのでしょうか?」
「我々以外の来訪者は……残っていたとしても、運命の糸は繋がっていない」
 タイミングを見計らい、護(b31704)が気になっていた事を尋ねた。
「あらゆる来訪者を知る、賢者のような存在がいるなら教えてくれ」
「少なくとも、私は知らない」
 護はエルザの返答を反芻しながら、席へ戻る。
「人狼にとって、ゴーストは敵?」
 入れ替わりに鉄平(b21031)が問う。
「お前達にとって、熊が敵かどうかという質問だな。襲われれば倒すが、敵であるとは思っていない」
 と、ここでまた話題が移る。
「この狭い島国の何処で、吸血鬼らと闘り合うつもりだ?」
 透馬(b18377)は、一般人を巻き込む事も辞さないならば、彼ら双方の戦いこそが、害そのものだと考えていた。
「吸血鬼の城を落とす為の最低限の作戦領域を考えている。お前達が敵に回るのならば、作戦領域が広がってしまうだろう」
 その答えを聞いた上で、ヴォルハルト(b10089)が語り始めた。
「おたく等にとっての吸血鬼の因縁や騎士道の様に、俺等銀誓館にも『世界結界の維持と一般人の保護』という、揺るがす訳にいかねぇ行動理念がある」
 そう前置き、尋ねる。
「おたく等の戦いは、一般人を巻き込む事はあるのか? もしそうなら、その被害を抑える方法はあるのか?」
 そのヴォルハルトの質問は、緋雨(b06273)や頼人(b01073)も聞きたいと思っていた内容であった。
 エルザはそれを真正面から受け止め、答える。
「吸血鬼が城を作ってしまった以上、作戦は大規模にならざるを得ない。こうなってしまったのは我らの失態だが、ここで城を見逃せば、将来に禍根を残す事になる。被害を減らす為に、お前達の手で戦場の人間を避難させてもらえればありがたい。世界結界がある以上、我々の言葉や行動は、多くの一般人を動かすことはできないからな」
 エルザの胸が少し気になるが、鷹人(b03000)はそれを踏まえて、更に踏み込んだ質問を行った。
「えーと、アンタんトコと血吸い蟲共がカチ合った場合、被害はどんぐらい出ると思う?」
「あの島に住む者程度で済ませたいと思っている。あの島から人を避難させる事ができれば、被害を減らせるのだが……」
 と、ジングル(b06651)がそっとエルザにマフラーを手渡す。
「お話している間……寒くないように」
「さっそく使わせてもらう」
 そう首に巻くエルザの姿に、ジングルはそっと笑む。それを見ながら、直人(b03547)が口を開いた。
「能力者じゃねぇ『普通』の人間たちを、どう思ってる?」
 それは直人が一番聞きたかった事でもある。それを、思いきりエルザにぶつけたのだ。
「人間は、全て能力者たりえる存在だ。世界結界を作り出している人間は、その存在そのものによってゴーストと来訪者を苦しめている。それについては、どう思っている?」
 逆にエルザに尋ねられ、直人も口ごもるしかない。
「……今は、答えられねぇよ……」
 と、智也(b15118)が前に出てきた。
「吸血鬼との戦いで、弱者である一般人を巻き込む事は、騎士道に反しないのか?」
「先ほども言ったが、お前の言っている一般人とは、強力な世界結界によってゴーストと来訪者を壊滅させた者達であり、決して力無きものでは無い。お前達が直接戦闘力を持たない『強力な術者』を護ろうとするのは理解できるが、我々の騎士道とは関係の無い話だ。我らは我らの誇りにより、無関係な者を可能な限り巻き込まないように作戦を行うだろう」
 そうエルザは告げる。その言葉は環奈(b09675)と由衣(b10659)……それに瞳(b02156)の隣にいた如路(b00546)らまた、知りたいと思っていた内容だった。
「オゥイェ。もし仮に、俺ら銀警館が吸血鬼と手を切ったら、人狼は一般人及び銀警館に危害を加えないのか? 吸血鬼と手を切る以上のメリット……君ら、用意できるんスか?」
 ずいっと前に出てきたのは、十夜(b02524)だ。おどけた物言いだが、その質問は鋭い。
「お前達が戦場に現れないのならば、戦う理由は無い。ただ、吸血鬼の城を攻撃するのだから、多少の被害はやむをえないだろう。……メリットか? 特に無い。打算ではなく、自分達の意思で判断して欲しい」
「あの……」
 小さく手をあげ立ち上がるのは、アイリス(b16437)。
「世界結界を壊す……傷つける意思はあるのでしょうか?」
「我々には無い。無関係な者を巻き込むのは、必要最小限としたい」
 その言葉にアイリスは顔を綻ばせた。
「能力を持たない一般人を殺めたことがあるです?」
 うーんと考えて、質問したいことをかがみ(b02803)は一生懸命尋ねた。
「私はまだ無い。する必要が無かったからな。それを恐れているわけではない」
 必要があれば、それも辞さないとエルザは言い切る。
 できるなら、避けたいことではあるのだが。
「エルザさん、あなたの行動と考えが人狼の総意とは思えないのだけど?」
 今までじっと聞いていたレナ(b26675)がそう尋ねた。
「誤解しないで欲しい。私がここにいるのは人狼騎士の総意ではない。私個人の意思で来ている。だが、吸血鬼の城へ攻撃を行う事は人狼騎士の決定であり、その決定に異論は全く無い」
 話題はいつしか銀誓館学園……いや、学生達に対する質問へと変わっていく。
「あのさ、因縁ある戦いに参加するなって言ってるけど、じゃあ、お前等は自分達の世界で赤の他人が勝手に戦ってて『これは俺達の問題だから手ぇ出すな』って言われたら納得出来るのか?」
 銀(b12558)が尋ねる。
「我々ならば、侵略者が拠点を作るのを指をくわえてみている事は無い。その侵略者の敵がでしゃばってくるよりも前に、その敵を打ち払うだろう。だが、そうだな……お前達がお前達の仇敵を追っている時、別の組織が現れて『ここから先は俺の領地だから戦ってはならん』と言われたと考えてみて欲しい。お前達の仇敵が、その地で力を蓄えようとしていても、お前達は納得できるのか?」
 エルザの問いに答える事はなかったが、考えさせられる内容だ。
「ちょっといいかしら?」
 冷羅(b22689)が声をかける。
「私達銀誓館は民主主義で、組織の舵を取るリーダーはいないの。……私達の意思を決定しなければならないし、吸血鬼達に問い質す必要もあるかもしれない。……時間が欲しいわ」
 何らかの決断を迫られることを想定して、冷羅は提案する。
「戦場に立つか立たないかは、お前達の自由だ。戦場に立てば戦うし、立たないのならば戦わない。それは、個人でも判断できる事だろう」
 エルザからの返答は、個人で判断できるものだろうという事であった。思えば今までも個人個人の意思で戦ってきたことを冷羅は思い返す。
「俺達銀誓館に、どのような立場を望むんだ?」
 静かに、けれど重い響きのある声で、静史(b23089)は次の質問を問う。
 どのような立場を望むのか……。それはジーヴ(b33147)や楓(b01790)、恋月(b10866)らが思っていた事と同じ。ニュアンスは異なるだろうが、興味のある話に狂華(b01006)も耳を傾けている。
「自分達の意思で戦場に立つか立たざるかを決めて欲しい。自らの意思と覚悟の無い者は、戦場には必要ない」
「人狼さん達は、あたし達の事をどのように思っていますか?」
 今の人狼側が自分達にどのような感情を抱いてるのか、それを確認するために【鎮守】所属のミリア(b05814)が尋ねる。ミリアの周りでは、美津穂(b02473)、仁(b05254)、空弥(b33504)、史恵(b15785)ら【鎮守】の仲間達や、史恵と共に来た久狼(b12981)がエルザの返事を待っていた。
「お前達の行動に不快感は無い。理解できるし、人狼騎士の考え方に近いものを感じる」
 エルザは口元に笑みを浮かべながら、そう答えた。
「銀誓館と協力するつもりはありますか?」
 人狼側の主張を聞くために来た統治(b02414)がそう尋ねる。
「必要は感じていない」
 その答えに、慌てて夕月(b12449)が声を上げた。
「じ、人狼さんたちは私たちと仲良くできますか?」
 彼女の言葉にエルザは瞳を細める。夕月の質問は、人狼と友好関係を結びたい澪音(b29563)も知りたい内容であった。
「我々の敵は吸血鬼のみだ。望んで敵を作るつもりは無い。ただ、必要以上に馴れ合う事も無いだろう」
 そのエルザの答えに夕月は安堵する。仲良くなれる可能性が見出せたのだから。
「でも……どうしたって貴女は戦うのね?」
 リュン(b33575)の言葉にエルザは答える。
「ああ、そうだ。戦いは既に決まっている。お前達が決めるべきは、その戦いにどう関わるかだけだ」

●エルザの決意と共に
 すっと勁(b07512)は立ちあがり、エルザをそして、学生達を見た。
「今は変化の時代です。世界結界は普遍のものではなく、方針が変化する可能性もなくはありません。とは言いましたが、当座の方針は、明確に世界結界維持です。世界結界の破壊を目的あるいは結果とするような行為は容認し難い。そして我々のもう一つの原則は隣人の生命を守ることです……皆さんはどう思いますか、我々の守るべき隣人に、『吸血鬼側の人間』は含まれるでしょうか」
 そう皆に訴えかける。果たして、皆の答えはどうなのか……それは彼らの胸の内に。
 勁がアピールしている間に、優(b30373)はエルザに手紙を渡した。土蜘蛛との戦いから始まり、吸血鬼との関わりの経緯そしてなにより、戦うよりも仲良くしたいと告げた内容であった。
 エルザは全てに目を通して、優に告げる。
「全ての来訪者が戦いを好むわけではない。敵の敵と友好を結ぶのは良い事だし、むやみに戦力を磨り減らすのは頭の良い事とはいえないだろう。しかし『防衛拠点』を得た吸血鬼は、いずれ発病する病のようなもの。いつかお前達の力が衰えた時、吸血鬼どもがそのまま友好を保ってくれるとは思わない方がいい。友好は互いに結ぶ意思が必要であり、片方の意思だけで結べるものではないのだからな」
 優は嬉しそうに礼を述べ、席へと下がる。
「この人狼と吸血鬼と。どちらとも和解する道はないのかな?」
 ここに来たことで、吸血鬼達に敵とは思われないだろうか? そして、エルザが誰かに教われないか、いろいろな気持ちが馨(b08122)を不安にさせる。また、その内容は双鵺(b21635)、千歳(b03239)もしたい質問でもあった。
「吸血鬼が城を明け渡し降伏すれば……」
 エルザはそこで言葉を止めた。しばしの沈黙の後。
「いや、和解の道はない」
「それは私達が間に立っても、ですか?」
 万里(b17247)が不安そうに尋ねる。
「ああ、それは出来ない」
 エルザの淀みない答えは、学生達にとってあまり聞きたくない内容であっただろう。
 それでも、誠(b00744)は希望を持ってエルザに問うた。きちんと名乗ってから。
「エルザ・マイスタージンガー、君の私見で構わないから率直に尋ねたい。君の手紙を受け取り、今こうやって話を聞きにきた俺達と、共に歩めるか?」
 エルザの視線が、少し優しげに見えたのは気のせいだろうか?
「お前達とともに歩む事は楽しそうだ。だが、これも吸血鬼を滅ぼしてからだな」
 奈月(b01996)が続けて尋ねる。
「吸血鬼にも、人狼騎士にも与しない立場を学園が取った場合、学園は人狼騎士団にとって敵になるのかな?」
「戦いに参加しないのならば、敵ではない。我々は敵では無い者を攻撃しない。それをお前達が味方と呼ぶかどうかは、お前達の自由だ」
 仮定の話だけれどと、砕(b31755)が口を開く。
「種族として吸血鬼が滅んだ後、学園がその個々の力を取り込むとしたら、それは容認できるカ?」
 その思いがけない言葉にエルザは目を見張る。
「それは……今すぐには判断できない。考えた事もなかったな」
 今までの話をメモしながら、月吉(b05892)が頃合を見て尋ねる。
「過去の吸血鬼との戦いによる、世界結界や近隣の人々への被害は? それと、組織に属する人狼ではなく、ただのエルザとして、この吸血鬼との戦いをどう思うかも聞かせて欲しい」
 うむと頷いてエルザは答える。
「過去の被害はあったかもしれない。それから、私の思い……か。個人の思いの集まりが我々の組織だ。そして、吸血鬼を滅ぼすのも全員の意思。……これでは答えにならないか?」
 その答えに月吉はいいや、充分役立ったと告げた。
「人狼と交流を取りたいと言ったら実現するだろうか?」
 薫(b19728)も尋ねる。
「吸血鬼の件に片がつけば、我々は森に帰るが……その前に話をするくらいの時間はあるだろう」
 すっと、真理愛(b02313)がエルザの元へやってくる。僅かにその手が震えているのは、気のせいだろうか?
「世界結界を守る立場としては、人狼と吸血鬼の戦いは賛成できませんの。戦いは即、異常現象に繋がりますもの。吸血鬼側は世界結界を強大な敵を封じる物として受け入れていますわ。私達との共存も望んでおります。共存は結界を維持しつつ戦力を得られる有効な道と私は考えてますわ。その関係を人狼の皆様とも築きたいですわね。あなた方の和解が叶うなら……命も差し上げますわ」
 そう言って、自らの胸にナイフを突き立てた。
 エルザは驚き、駆け寄るも間に合わない。真理愛の胸からは血があふれ出す。
 幸いにも、彼らの周りには治癒能力を持つ者が多く、すぐにアビリティが使われ、大事には至らなかった。エルザは、真理愛を自分の席に座らせると、自らもしゃがみ、同じ目線で話し出した。
「無茶な事をするものだ。だが……お前の世界結界を守ろうとする意思は了解した。それを守りたいのならば、我々が吸血鬼の城を破壊するのを黙って見ていて欲しい。もし、お前達が世界結界を本当に守ろうと思っているのならば、『吸血鬼の城を今すぐ破壊する』ように動くべきだろう。お前達がお前達のやり方で吸血鬼の城を破壊したのならば、我々は新たな指示が下るまで戦端を開くことはあるまい。ただし、猶予は決戦の日までだ。それまでにお前達がお前達の手で吸血鬼の城を破壊できなければ、我々は我々の戦いを始めねばならない」
「……それでも、私は和解を望みますわ……」
 真理愛はそっとエルザを見る。エルザはふうっとため息を零した。
「吸血鬼と人狼は和解する事ができないのだ。何故か? 遥か祖先の時代より、この戦いは続けられてきたのだ。そう、我々はその為に、ここに送り……」
 また言葉が途切れる。
「とにかく、和解は不可能な事なのだ」
 どうしても……エルザはそう真理愛に、ここにいる全員に告げた。
 エルザの隣に立ち、エルザと同じ目線で、薫(b06847)は話しかける。
「俺達の目も節穴じゃない。組織ではなく個人でも動けるなら、『城』を壊して吸血鬼を日本から追い出すのに協力したいくらいだぜ。まぁ、友達を増やす事に誰にも文句は言わせねェ。俺達を信じて対等に扱ってくれた、命を張って筋を通した覚悟……あんたは好きになれそーだしな」
 吸血鬼の、世界結界と人間を省みない利己的な行動を危惧して、吸血鬼を警戒している能力者達もいる。
 同じく、人狼の行動次第で吸血鬼に関係なく、世界結界を守る為に衝突する事があるかも知れない。
 それを防ぐ為に、双方の因縁と敵味方とは別に、優れた騎士と友人になりたいと、薫は告げた。
「私もだ」
 エルザは薫に笑みを浮かべて応える。
「お前達の中にそう思う者がいるとは、考えてもみなかった。我々の因縁や敵味方とは別に、お前達の友になれるのなら……私は嬉しく思う。異国の地の騎士よ」
 その答えに喜びながら薫は誘う。
「だったらさ、学園へ来ないか?」
 今からじゃあ無理だろうから、日を改めて……と、そう言うつもりだったのだが。
「かまわないぞ」
 あっさりと、エルザは頷き返した。
「今日は、お前達に全てを話すために来た。そして、お前達に選択の機会を授けたつもりだった。だが……お前達はそれ以上のものを……私がここに来るため、様々な事を配慮し、そして尽くしてくれた。私は、その素晴らしき行為に感謝を述べたい。私はここに来て、本当に良かった。お前達を……決して全てでは無いだろうが、知る事が、理解する事ができた。だから……」
 ゆっくりと生徒達の顔を、一人ずつ全員見るようにして、エルザはぐるりと周囲を見渡した。
「今度は、私の番だ。お前達が私にしてくれた事を、私もしたい。今日こうやって話をして、私はお前達とは戦いたくないと思う。吸血鬼との戦いは止められないが、私の同胞が、お前達銀誓館学園の者に危害を加えないよう、その手助けをしたいと思う。どこまでできるかは分からないが……私は全力を尽くす事を誓おう。お前達と共に、学園に赴いて、な」
 エルザの言葉に、生徒達は驚きを隠せなかった。
 思いがけない提案が、誰もが予期していなかったような結果を……まるで奇跡のような出来事を呼んだ。
 いや、それは決して唐突なものではない。ここまで彼らが行ってきたこと……それが積み重ねられた結果、今この奇跡が起こったのだ。
 今なら、聞けるかもしれない。そう思い、孝宏(b32010)は尋ねた。
「今回の交流を通じて、銀誓館に、そして自分達能力者に対して、エルザさん自身が率直にどういう印象をもったのか……よければ聞かせてくれないかな?」
「誠実で、理知的であると感じた」
 そう真摯に応じ、エルザは続ける。
「……もし、不幸にも次の戦いで戦闘になったとしても、それを理由に戦いが続かないよう、私は全力を尽くしたいと思う」
 先程と重なる部分も多いが、それは銀誓館学園の生徒達にとって、とても嬉しい答えだ。
「そろそろ終わりね」
 羽織(b09590)は、今までの話を録音していたICレコーダーをエルザに向けた。
「今晩あなたは『嘘を吐かず真実のみを語った』という旨を宣言してもらえないかな」
 記録をより正しいものにするために。
 失礼なことかもしれないと詫びる羽織に、いいやとエルザは首を振った。
「人狼騎士の誇りにかけて誓おう。私は、嘘を吐かず、真実のみを語ったと」
 話は終わった。あとは……エルザと共に、学園へと戻るのみ。
 だけど、その前に。
「これまでの状況を知る為の参考になると思いますから」
 論子(b03752)は、参考になりそうな報告書を幾つか記録した、CD−ROMをエルザに渡した。
「仲間の元に戻る時にでも、って思ってたんだけど……学校についた後にでも食べてもらえると嬉しい」
 いちる(b17349)は、もしかしたら食べられないかもしれないと思いつつも、小さなサンドイッチの包みを渡す。
「もし、この先『能力者集団としての銀誓館』に接触したい時は、こっちの連絡先を使ってくれるかな?」
 そう言って、葬(b29619)は自分が所属する結社の連絡先を書いたメモを手渡した。
「これは鎌倉の銘菓です。お土産にどうぞ」
 哩進(b30308)は、そっとエルザに鳩クッキーの箱を渡す。
「あの、よかったらこれ、受け取ってもらえますか?」
 とてとてと自分の持っていた、栗の詰め合わせを手渡すのは白庵(b30530)。
「オススメのお蕎麦屋の場所を書いたメモと、お蕎麦ですの」
 受け取ってくださいませねと、阿須波(b32784)もエルザに手渡した。
「おいおいお前達、こんなに持てないぞ」
 そう言うエルザはとても嬉しそうで、彼女はお土産をくれた全ての者ひとりひとりに礼を告げた。
 ……ここでの用は、全て終わった。
 あとは皆で銀誓館学園へ帰るだけ。
 エルザの側には「ついていく」と、夜(b31660)が護衛についていた。

 一方、銀誓館学園では、今回の件で学園が襲撃されないようにと、光(b16218)が警備を行っていた。
 万が一、このタイミングで何者かにメガリスを奪われたら、大変な事になる。
 そう思っての行動だったが、それも杞憂に終わったようだ。
「……どうやら、戻ってきたようだな」
 外が騒がしい。どうやら、鶴岡八幡宮に向かった仲間が戻ったようだ。その雰囲気からすると、良い結果を出せたようである。
「ん……?」
 光は、思わず目を擦った。
 そこには、大勢の生徒達に囲まれながら、銀誓館学園の中に入ろうとするエルザの姿があった。


マスター:相原きさ 紹介ページ
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いまいち
参加者:507人
作成日:2007/12/05
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