色彩モノトーン


<オープニング>


 真っ暗闇の中、真っ直ぐに伸びたステージだけは、強いスポットライトの光で真っ白に光り輝き照らされている。
 静まりかえっている中、客席に向かって花道のように長く張り出したステージには最先端のファッションを着込んだモデルたちが颯爽と歩いていく。
 色彩あでやかな中、ひとりだけ真っ黒な服を着て少し猫背気味に歩くひとりのモデル。
 彼女が出てきたとたん、静かだった客席がざわざわと騒ぎ出し、ステージを歩くキレイなモデルたちは一斉に黒くみすぼらしいモデルに軽蔑を含んだ見下した視線を彼女へと向ける。
 真っ黒でナニがあるのかよくわからない、客席からどうしてだが指を指されて笑われているのが分かってしまう。
 仲間の視線、客からの嘲笑。
 それらを感じるたびに、真っ黒な姿のモデルは大きな身体を小さく小さくちぢこませてどこまで続くとも分からない真っ直ぐに伸びた、真っ白なステージを歩いていくしかなかった。
 
「そんなファッションショーの夢を見ている人がいるの」
  樟高・匡(高校生運命予報士・bn0029)がゆっくりと集まった能力者たちに向かって告げた。それは見ている人にとっては悪夢だと。
「悪夢に囚われているのはひとりの新人モデルの女性を助けて上げて欲しいの」
 彼女を助けるには寝ている彼女の部屋まで行かなければならないが、彼女は一人暮らししかもずっと眠り続けているので忍び込むのも帰ってくるのも大して難しくは無い。
「このまま悪夢に囚われて夢を見続けていたら彼女の精神は参って姉妹って、悪夢に屈してしまうわ。そうなってしまって喜ぶのは悪夢を見せている来訪者のナイトメアだけでしょうね」
 困ったものねなんて呟きながら匡は、詳しい説明を続けていく。
「まず彼女を救うには、真っ黒な客席にいるプレス関係者や客、そうしてキレイなモデルたちとこのステージの上で戦うことになるわね」
 夢の中に入ってきた能力者たちを悪夢の障害と捉え、襲い掛かってくるという。
 花道のようなステージは幅5メートル、長さはどこまでも。戦うには充分すぎる場所だが、そこから落ちてしまえば夢の外に放り出されて、戻ってくることができなくなるから、落ちない様にする注意も多少なりとも必要だろう。
「普通に戦って倒すことももちろんできるけれども、ちょっと数が多いから普通に戦うと少し骨が折れると思うの」
 そこでなのよ。と、なんだか少し愉しそうな匡の声。
「他のモデルに馬鹿にされない。プレス関係にはさすが、客にはとてもステキだと思われる格好でステージに立てば、襲い掛かってくる敵が減ったり、襲い掛かってきてもひるんでいたりするから攻撃がしやすくなるわ」
 ここはみんなのファッションセンスがモノをいうらしい。
 カッコよくステキに決めればその分有利だが、反対に的外れなファッションを披露すれば不利になる。
 参考になるかどうか分からないけれどもと、匡は持ってきていた沢山のファッション雑誌を机の上にどかりと置いた。
 ハイセンスなコレクションものから、ギャル御用達の雑誌、ゴスロリ雑誌、メンズの雑誌も揃っている。
 
「悪夢を打ち払っても、悪夢の原因となったものの恐怖を和らげてあげないと、彼女は目覚めることができないの。彼女の恐怖の原因は自分にイマイチ自信がもてずに、今度出演するコレクションでもうまく格好良くあるけないんじゃないだろうかと思っていることなの」
 新人モデルの彼女は、身長も高く、すらりとしたいかにもモデルと言った感じの風貌なのに、過去に一度起こした失敗から、ショーに出ることが恐怖になっていると匡が告げる。
 だから一番みすぼらしい格好で歩かなければならない悪夢を見ている。
「そこでミンナに彼女の自信を取り戻してきて欲しいの。どうやって彼女に自信を取り戻させるかは、みんなに任せるわね」
 彼女自身はショーも大好きだし、愉しいと思っている。だからそんな気持ちがもう一度芽生えれば、きっと彼女は自信を取り戻してくれるだろう。しかし自信を取り戻さなければ、また同じ悪夢に掴まってしまうという。
 
「夢の中では普通に考えられないことが簡単に起きてしまうわ。夢の中で深い傷を負ってしまったり、命を落としたりしてしまったら、現実の世界でもそれ同様のことが起こるから充分に気をつけて頂戴」
 そう言いながら、匡はティンカーベルの不思議な粉を渡しながら能力者たちに注意するべきことを告げながら、もう一度彼女の自信を取り戻してあげてね。と付け加え、頭を下げて能力者たちを見送った。 

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参加者
皇塚・霧芽(高校生青龍拳士・b00566)
外邑・ひかる(シチュティ・b02060)
クレール・アンリ(ディアマンノワール・b15435)
允雪・守元(剣術見習い・b16983)
藍川・珠洲(蒼弧光・b17665)
伊波・琴音(陽なたぼっこの狐巫女・b26789)
紫苑・涙(乙女ハートの底力・b30086)
天鳴・伊勢乃(天の揺り籠・b30178)



<リプレイ>

●白と黒の世界を飾るのは色の洪水
 そこは真っ白な花道。
 周りの景色は真っ黒。
 なのになぜだか、真っ黒な中に誰かがいて、こっちを凝視している視線を感じることができる。
 どこまでも続く白い道に、格好良い服に身を包んだモデルたちが颯爽と歩いていく。
 スポットライトが歩いていくモデルたちを照らす。
 照らされたモデルたちは、自信に溢れ颯爽と長い足で真っ白な道を歩いていく。
 一段とスポットライトが輝き、ひとりのモデルを照らす。
 決して縫製が良いとはいえない黒い格好をした女性のモデル。
 何処までも続く、真っ白な道を歩いていかなければならない。

 この道に終わりはあるのだろうか。

 白い花道の上に、8人の能力者たち。
 モデル達とは違った雰囲気。
 こちらに向かって歩いてくるモデルたちを見据える視線。
 能力者たちの装いはこれからの始まるショーのクライマックスを予兆しているようでもある。
「この姿で大丈夫か心配ですが、胸を張って参ります」
 皇塚・霧芽(高校生青龍拳士・b00566)の選んだパーティドレスはワンショルダータイプ。少しマスキュリンな印象を与えるものの、淡いブルーはその尖ったイメージを柔らかくしてくれている。霧芽はパーティドレスには不釣合いなガトリングガンを構える。
「…動きやすくて丁度良いわ」
 黒のビスチェドレス、大胆なスリットからピンヒールを履いた女性らしい足を一歩出すクレール・アンリ(ディアマンノワール・b15435)。武器とは思えない、真紅の羽付き術扇が彼女の女性らしさを寄り一層引き立てる。
「ショータイム、ってやつかしら?」
 クレールと似た感じのドレスだが、藍川・珠洲(蒼弧光・b17665)が着たベアトップは碧ということでまた違った印象を与える。爽やかな色合いに、高貴な光沢のベロアが贅沢。彼女の願いや祈りが詰まった声楽杖を取り出す。
「素敵ぃ…思った通りに出来上がっているわねぇん♪」
 自分のシャンパンゴールドのマメーメイドラインが美しいウエディングドレスの装いに満足気な紫苑・涙(乙女ハートの底力・b30086)。
「意地悪なナイトメアなんてやっつけちゃうのですっ!」
 ボリュームはある膝丈の紫色ドレスを着た天鳴・伊勢乃(天の揺り籠・b30178)。クラシックなデザインなのにキュートな感じを与えるのは、きっと伊勢乃の柔らかい雰囲気がそうさせるのだろう。
「…それじゃ琴音、行こうか。……似合ってるよ」
「守元も…かっこ……いい…ぞー……」
 紺のタキシード姿の允雪・守元(剣術見習い・b16983)と淡い碧色のオーソドックスなデザインのウエディング姿の伊波・琴音(陽なたぼっこの狐巫女・b26789)が並んで立つ。さりげなくあわせた衣装は、もうここで結婚式が挙げられそうな雰囲気がある。
 守元の最後の小さな言葉に、頬を赤く染める。
「ま、さっさと片付けて、ショーの続きを楽しもうぜ」
 濃紫のイタリアンジャケットに濃灰のストレートコットンパンツ。中のクレリックシャツは身頃が薄灰しかもウィングカラーとカジュアルな雰囲気なのに、厳しいドレスコードがあっても引っかかる事はなさそうな外邑・ひかる(シチュティ・b02060)は、こちらに向かって歩いてくるモデルたちを見据えた。

 8人の新人モデルたちのデビューを飾るショーが始まる。

●彩色絢爛
 歩いていたモデルたちの視線が一斉に、ステージに立つ能力者たちに向けられる。
 それまで真っ黒だった客席から、聞こえ出すざわめき。
 暗闇の中から飛び出してくる黒い影。
 勢い良く飛び上がった黒い影はステージの上に飛び乗ると、真っ黒だった影はスタイリッシュな黒のスーツを着込んだプレス風の女性の姿に変わっていた。
「それでは皆様、華麗に決めて悪夢からエリカ様を助け出しましょう」
「ショータイム、ってやつかしら?」
 霧芽の言葉に頷くように言葉を返す珠洲。
 二人の視線は次から次へとステージに上がってくる、プレス関係者や、一般客な敵に向けられている。
「…! あれか。よし、ショーの始まりだ]
「がんば…って……!守元…」
 守元もその姿を確認すれば、ステージの幅を気にしながら敵に向き合うと、琴音が彼に祖霊降臨をかける。
 煌びやかなステージの上、行き交うモデルたちの中に黒い姿をした一人の女性が、顔を伏せ背を丸めて……それでも彼女は真っ直ぐに真っ白なステージに歩いてくる。
 それがエリカだと分かったクレールが、自分たちに向かって威風堂々と歩いてい来るモデルたちの中を逆送していく。闇色のドレスが靡き長くスレンダーな足を大胆に見せ、エリカに近づくと彼女の腕をとり、自分の身の陰にエリカを囲う。
「Excusez-moi 少しの間、私たちから離れないで」
 最後列にいるひかるが向かってくるモデルのひとりに炎の魔弾を放つ。淡い炎に一人のモデルが燃え上がってしまう。
 ふと後ろを振り返れば、後ろからも歩いてくるモデルたちが自分たちに襲い掛かろうとしていた。
「後ろからもやってくっぜーっ!」
 後方からの敵の攻撃を仲間に伝えるひかる。
「ここで、待っていてね、後で貴方を変えてみせるわ」
 前衛に赴くクレール、それに涙がエリカに近寄り声をかけた。エリカは少し戸惑ったような表情で静かに頷いた。
 客席から勢い良く飛び上がってきた人物に気がつくと、フレイムキャノンを放つ。放たれた炎は弾は客らしき人物に真っ直ぐに飛んでいき命中する。淡い炎に包まれる客の向こう側、攻撃の余韻で涙の人魚姫の様なシャンパンゴールドのドレスの裾が翻った。
 花束のような、長柄の箒のようなスラッシュギターを掻き鳴らす伊勢乃。自分の歌声で悪夢が吹っ飛んで、今、自分の前にいる小さく丸くなっているエリカに少しでも自信を取り戻して欲しいから。
「これで痺れちゃうといいのですよっ!」
 伊勢乃のショッキングビートが、ショー会場に流れる音楽のように響き渡る。能力者たちに飛び掛ってこようとする、敵たちの動きが鈍くなる。

 伊勢乃のショッキングビートのマヒによって、攻撃を仕掛けられない数人の敵。
 そうなると断然能力者たちが有利になる。
「部外者の方は花道に乗らないでください。わたくしめも部外者ですが、消えて無くなれ!!」
 霧芽の淡いブルーのドレスの周りがぼんやりと柔らかく光ったのは一瞬。放たれた白燐拡散弾が黒いスーツ姿の敵に向かっていく。黒かった人影が淡い輝きと共に、空に溶けるように消えていく。
 失敗してしまった事がトラウマにってなってしまい、そこにつけ込むのは許せないとばかりに珠洲は一体一体、襲い掛かってくる敵を確実にしとめていく。
「数ばっかり…、邪魔よ」
 本当に鬱陶しそうに呟く珠洲。吐息を吐き出し周りを見ると、華やかな衣装に身を包んだ仲間が戦う姿がすぐそこにある。
「…まさに、綺麗なバラには棘があるってヤツよね」
 くすりと小さな笑みを浮かべるとまた、敵に向かっていく。
「それ、ありえなーい」
「これはエリカさんのショーなんでね。関係者以外の人は上がっちゃ困るな…っと!」
 タキシード姿につけ耳と尻尾が残る守元を指差し、大笑いする客の姿をした敵。そんな敵を一瞥しただけで、手に握る日本刀に炎を宿す。大きく振りかぶり迷い無く、目の前で自分の事を罵る敵に向かって叩きつける。
 自分自身が封術となってアビリティが使えなくなったが、紅蓮撃で見事に敵を消し去る。
「くる…くる……♪」
 守元の後ろに居る琴音がドレスに似合った舞を舞うと、傷ついた仲間の傷が癒される。
 向かってくる敵、ステージの幅を気をつけながら、琴音が仲間のために舞う。
 エリカの方をちらりと振り返ったクレール。
 モデルはメゾンの看板を背負って立つことはもちろん、その他の裏方の努力も一緒に背負って華やかな舞台に上がっていと思う。エリカはそれを良く知っているからこそ、自分の失敗を許せないのではないだろうか。みすぼらしい服でステージを歩かされる悪夢は、皆の努力の結晶の服を身に纏う資格がないと考えている表れのように思う。
 それに彼女には次のオファーきている。それは彼女を必要とする人たちがいるということ。
 それを思い出して欲しいから。
 思い出してもらうために……。
 クレールの真紅の扇が舞うと、またひとり敵をなぎ倒した。
 予想していたよりか数は少ない敵。
 それでも数が多いことには変わりない、15人程度だった敵はあと数人程度までになっていた。
「一張羅なんだぜっ!」
 ひかるがスライディングで敵に詰め寄り、低い体勢から一気にアッパーをモデルの一人に叩きつける。その素早さにモデルはひかるからの攻撃をかわすことができず、正面からその攻撃を受け、大きく吹き飛ばされ闇の中へと消えていった。
「少し私が魅力的だからって、そんな意地悪はしないでねっ」
 優雅に舞うようにフレイムキャノンで敵をしとめていく涙。彼女が舞うたびに、人魚姫の尾びれも華麗に舞った。
「Flamme verbrennt!」
 涙のフレイムキャノンの後は、間髪入れずに伊勢乃の炎の魔弾。紫色ドレスがふわりと可憐に余韻を楽しむように翻ったとき、ステージの上にはエリカと能力者だけになっていた。

●再生、そして誕生
「モデルになる前、ショーを観に行った時あんだろ?」
 座り込んだままのエリカに声をかけるひかる。ひかるの言うとおり彼女は目を閉じて彼の言葉を聞く。
 眩いステージ。
 颯爽と歩くモデルたち。
 いつか自分もこの舞台の上にたちたいと願った日々。
 あの中に……。
「…思い出せるよな?」
 ひかるの言葉に誘われてエリカが目を開けた。
 眩いステージの上、自分の前を楽しげにウォーキングをしていくひかるの後ろ姿が見えた。
 エリカに気がついたのかたまたまなのか、ひかるは口元に笑みを浮かべると片手をエリカの方に差し出した。
 おもむろに立ち上がったエリカに、駆け寄る涙が真っ白なドレスを彼女に纏わせる。
 デコルテのハートのデザインが女性らしい、女性なら一度は憧れるウェディングドレス。
「フェミニンな花嫁姿のエリカさんの完成ですわ」
 にこりとエリカに笑って見せる涙。
 長いトレーンのどんな女性もが可愛らしいと思えるデザインの純白のウェディングドレス。
 まだ状況が飲み込めないというような表情のエリカに今度はクレールが彼女のぼさぼさな髪の毛を整える。
「これはあなたのためのステージで他のモデルたちは皆まやかし…私たちは、このショーを最高の形で終える手助けにやってきたの。最高のドレス、最高の美しさをあなたのために用意するわ」
 穏やかな口調でエリカに語りかけながら、手際よく彼女の髪の毛を美しいアップスタイルに整える。
「凄い綺麗よ、自信を持って」
 更にエリカを励ます優しい言葉。
 キレイな色が沢山並ぶ、メイクパレット片手の珠洲。
 落ち込んだままの自信がなさそうなエリカの表情をより健康的に、より素敵に見せるために、ピンクをベースにした彼女を良さを引き立てるメイクが出来上がる。
「大丈夫、貴女がこのステージで一番輝いてるですよ!」
 エリカの爪をキレイに彩っているのは伊勢乃。パールホワイトベースのフレンチネイルのチップ。爪先はパープルのグラデーションに塗りわけ境界にラインストーン。しかも左薬指に白薔薇の3Dアートとなんとも贅沢なつくり。
 出来上がれば満面の笑みをエリカに向ける伊勢乃。
「とっても……すてき…だ」
 琴音が一生懸命に編んだ可憐なヴェールがエリカの頭を飾れば、そこにはもうさっきまでの黒い彼女はおらず、ひとりの美しいモデルとしてのエリカが立っていた。
「大丈夫、周りは笑っていようとも、皆様方は貴方を支えるためにここにいます。だからまた前を向いて歩いてください」
 ひかるの紫のアイリス。
 伊勢乃の薄紫の薔薇。
 守元のかすみ草。
 珠洲の花を琴音の花を、クレールの花を、涙の花を……。
 今自分の髪を飾っていた白いリボンで即席のブーケを作って、エリカに渡す霧芽。
 ブーケを受け取るエリカ。その可愛らしいブーケに顔を寄せ、目を細めた。

 守元とお揃いの装いに少し嬉しそうな琴音。
 そんな琴音の胸元を飾る真珠ブローチ。
 それは彼から誕生日の贈り物。その存在に気がついているのかいないのか、守元は微笑み、琴音に腕を差し出す。
 琴音が守元の腕に自分の腕を絡ませると、楽しげにダンスを交えて歩いていくひかるに続いて歩いていく。
「このショーのフィナーレを飾れるのは、あなただけ、私たちはそう信じている…あなたもどうか、あなた自身を信じて欲しいの」
 クレールがエリカに微笑みかける。
 あなたはまだ色んな人に必要とされている。
 それにこの大きな舞台は、あなたのために用意されたものだと。
 もう一度にこりと笑うと、クレールも白いステージの上を歩き出す。
「フフフッ…すごく見られいるって、気持ちがいいのですわ」
 かわいらしくくるっとターンを決めて歩く涙。
 みんなのそんな楽しげな様子を見ていれば、いつの間にか丸まっていた背中がしゃんと伸びきているウェディングドレスに引けをとらないエリカの姿。
 みんなの優しさ。
 暖かい言葉。
 その心遣い全てがかたくなだった心を溶かしていくのがわかる。
 いつまでも後ろばかりは向いていられない、前に道があるのならまた進めばいいだけのこと。
 
 一歩踏み出した。
 あぁ、そうだこの感触だ。
 緊張感の中、それでも楽しいと思えるこの空間が大好きなのだ。
 こんなにも自分がこの仕事が好きな事さえ忘れてしまっていた。

「いつかはあのような衣装を着て歩きたいですね」
 エリカの姿を見て少しうっとりとしたようなため息をつく霧芽。
「本当に綺麗なのです、いつか私もなんて考えちゃうですね!」
 霧芽の言葉に、同じようにため息をつく伊勢乃。
 二人の少女たちは自然を顔を見合わせて笑いあう。
「いこっか」
 自分たちもあの楽しげな輪の中へ。
 霧芽と伊勢乃は手を取り合い、駆け出す。
 ちょうどエリカを追い越す時、二人はエリカに向かって大きく微笑みながらブイサインをした。
 それにエリカも小さく笑い返し、ブーケの下で手をブイサインにして答えた。
 そんなエリカがこのショーのフィナーレを飾るのを、見守る珠洲。
 ステージにはさっきよりも沢山のスポットライト。
 暗闇はなくなっていた。
 音楽が大きく鳴り響きその場を盛り上げていく。

「みんな、ありがとーっ!!」
 
 エリカの大きな声に、先に行っていた能力者たちはエリカの方を振り返る。
 満面の笑みのエリカは、彼らの手作りのブーケを投げた。
 今日であった、とても素敵なモデルたちへ。
 上から降り注ぐ、たくさんの花びら。
 豪華なフィナーレ。

 ここで彼女の悪夢は終わりを告げ、素敵な目覚めと未来がすぐそこに待っているのだろう。


マスター:櫻正宗 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2007/12/13
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重傷者:なし
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