真冬の試練


<オープニング>


 あと幾日かすれば大晦日を迎える。
 そうなればこの神社も初詣に来る人でごった返すのだろう。
 バイトとして巫女をする事になった巫女は境内を見渡す。
 そこそこの広さがあるこの神社での初詣。さぞ大変な重労働になるだろう。
 想像するだけでも疲れそうで、巫女は本堂の検査をする為歩みを進めた。
 そして、本堂の扉が不自然に開いている事に気づく。
 現在の時刻は夕方。まさか泥棒では? 逸る気持ちを抑え巫女は本堂の扉に手をかけた。
 そして、それ以降彼女の姿を見るものは無かった。件の本堂の入り口に下駄を一つ残して……。

「ミンナ、寒い中本当にありがとうね〜」
 寒さのせいで赤くなった頬をそのままに、雛咲・小羽(小学生運命予報士・bn0037)は能力者達を出迎えた。
「ミンナ、集まったね。それじゃ説明を始めるね。
 この公園の近くの神社の本堂に地縛霊が出るみたいなんだよね。
 つい最近バイトの巫女さんがその地縛霊の手にかかったみたいなの。
 実害が出てる以上。このまま放置する訳には行かなし、放置すれば大晦日にとんでも無い事になっちゃう。そうなる前にミンナの力を借りたいの。
 地縛霊が出るのはさっきも言ったけど、この公園の近くの神社の本堂。
 ある条件を満たすと地縛霊の特殊空間へと連れて行かれるみたい。
 その条件ってのが巫女さんの格好をして本堂に入る事なんだけど……」
 ごにょごにょと小羽は語尾を濁らせた。
「小羽さん、どうかなさいまして?」
 それに今まで説明を聞いていた姫羅が尋ねると、小羽は慌てて首をふって話を続ける。
「そのね……。男の人にはちょっと恥ずかしい思いをしてもらう事になっちゃうんだけど……。
 条件は巫女さんの格好をして本堂に入る事。巫女さんの格好は、長い髪を後ろで一つにまとめ、赤い袴に穿く事。まぁ、男の人は女装して貰う事になっちゃうんだけどさ……」
 小羽がそこまで言って姫羅はあぁ、と頷いた。
 確かにそれでは男性能力者は女装しなくてはいけないのだろう。
 巫女姿が地縛霊の特殊空間へと誘われる条件なら満たさなくてはならない。
「それで、敵なんだけど……。大玉である巫女さんの地縛霊一体と犠牲になった巫女さんの地縛霊が二体。
 こっちの二体は地縛霊になったばかりだから戦闘能力は弱いけど、行動の邪魔をされる可能性があるの。
 大玉の地縛霊は破魔矢のような長距離アビと、和弓による攻撃だけ。
 それでも犠牲となった巫女さんの地縛霊に動きを制限させられた所に攻撃されるときついと思うの。
 地縛霊の特殊空間は神社の境内と同じような作りになってるから思いっきり暴れても大丈夫だよ。
 それと巫女さん衣装とかつらなんだけどね。流石に自前で揃えられないと思うからこっちで準備するね。
 入用だったら言って? 自前で行くって人は勿論自前で構わないよ。
 新年まであと数日だけど、ミンナ気持ちよく新年を迎えるためにも頑張ってね!!」

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参加者
風見・玲樹(プリンスメロン・b00256)
スバル・ヒジリ(宵藍の魔女・b00849)
桜井・姫乃(紅蓮炎姫・b01102)
エレオノーラ・ティルティウム(翼狼・b21026)
葉月・とろん(蘇芳火・b23377)
久遠寺・絢音(がんばれ絢音ちゃん・b32745)
六道・和(涅槃神楽・b33141)
上四元・麻尋(永遠の旅人・b33634)
NPC:桜護・姫羅(平穏の守り手・bn0060)




<リプレイ>

●今年最後の試練?
 冬の風が容赦なく吹きすさぶ中、その神社はひっそりと佇んでいた。
 これが年末年始になれば初詣に来る人でごった返しているだろうが、今は閑散としれいる。
「巫女さんの衣装なんて初めてだねぇ。日本ではこの格好に憧れる男性が多いと聞いたけど、僕が着て嬉しがる人っているのかなあ」
 学校側が用意した巫女服に身を包み、ロングのカツラに化粧。
 そして胸にパットを詰め込むという入念さで、風見・玲樹(プリンスメロン・b00256)は巫女姿にノリノリである。
 そんな彼の横では、お互いに巫女衣装のチェックをしているスバル・ヒジリ(宵藍の魔女・b00849)と葉月・とろん(蘇芳火・b23377)、そして、「桜井・姫乃(紅蓮炎姫・b01102)」。
「私の髪がこれくらい伸びるのにはあと何年かかるんでしょうね〜」
 長髪のカツラをつけた久遠寺・絢音(がんばれ絢音ちゃん・b32745)が手近の髪を弄り。
「着物は着慣れてるつもりでしたが……」
 自分の巫女姿に六道・和(涅槃神楽・b33141)は固い表情をした。
「なんだかんだ男子2人も似合ってるんだよね……」
 自分の巫女姿を見た後で、他の者の姿を見てそんな言葉が上四元・麻尋(永遠の旅人・b33634)の口から零れた。
「これで大丈夫ですよ」
 桜護・姫羅(平穏の守り手・bn0060)に着付けをしてもらっていたエレオノーラ・ティルティウム(翼狼・b21026)の準備が終わり。
 こうして皆の準備が終わり、あとは地縛霊の特殊空間へと向かうだけである。
「さあー、いくわよー!」
 女の子らしい口調にしぐさで先頭に居た玲樹が号令をかけた。
 ところでお前、男のプライドとかその他諸々とツッコミたいのだが……。
 とか言ってはいけない。これは依頼、仕事なのだ。
 こうして彼等は本堂の入り口へと足を進めた。

●境内での戦闘
 本堂の扉をくぐった先には先程まで居た境内と同じ景色だった。
 まるで扉を開けて出て来たような感覚に襲われる。
 しかし不思議と寒さは感じられず、時折吹いていた風すらなかった。
 ただあるのは、空に浮かぶ月と星々だけ……。
 そしてその境内の中央にぽつんと浮かぶ人影が一つ。
 長い黒髪に血のように真っ赤な口紅。透き通る様な肌に、その肌を飾るかのような巫女装束。
 これが運命予報士の言っていた地縛霊で間違いないだろう。
 その地縛霊を囲むようにしているのは犠牲になった巫女の地縛霊達。
 彼らの姿を能力者達が認識した時、その場に緊張が走った。
 ヒジリが地縛霊達へと魔弾の射手で強化した炎の魔弾を放つ。
 その攻撃により巫女の地縛霊を囲むようにしていた二体の地縛霊が攻撃を放ったヒジリの元へと移動し、巫女の地縛霊は和弓を構えた。
 その巫女の地縛霊の動きをファニックスブロウを叩き込んで玲樹が止める。
 玲樹と巫女の地縛霊が睨み合っている間に布陣は完成した。
 
 静かな境内に高い金属音と鈍い打撃音がこだまする。
 月と星に彩られた空には光と炎の軌跡が飛び交い、時折黒い闇が侵食した。
 エレオノーラのフランケンシュタインBがその豪腕を犠牲になった巫女の地縛霊の一体におみまいし、続けて姫羅が斬撃を喰らわせる。
 もう一体の地縛霊にはとろんと和が紅蓮撃を喰らわせる。
 紅蓮撃を使った事により封呪を受けたとろんはそのまま地縛霊から距離を取り、射撃へと攻撃方法をうつす。
 和はそのまま前衛で地縛霊への攻撃を続け、状況に応じてエレオノーラが光の槍で援護する。
 戦闘により彼等が受けた傷は後衛でエレオノーラと共に炎の魔弾で援護していたスバルが状況を見極めて的確に治癒符で回復させていく。
「フランケン、決めろ!!」
 エレオノーラは自身のフランケンシュタインBに指示すると共に、光の槍を放つ。
 姫羅の黒影剣が地縛霊を切り裂き、エレオノーラの指示を受けたフランケンシュタインBの豪腕が地縛霊にきまり、光の槍がその身を貫いた。
 犠牲になった地縛霊の一体が消えたのを横目で確認し、こちらも終わらせようとスバルは炎の魔弾を生み出す。
 地縛霊が和の攻撃によりよろけた所を、スバルの炎の魔弾が襲った。
「可哀想だけど、せめて安らかに眠らせてあげるよッ!!」
 その絶好の機会を見逃すとろんではなく、彼女の攻撃が地縛霊に止めをさした。
 犠牲にった巫女の地縛霊達が倒れたのを確認し、そのまま大玉である巫女の地縛霊の元へと仲間の応援に向かう。
 自分達が戦闘中に巫女の地縛霊の攻撃を受けなかったのは、巫女の地縛霊を担当している仲間達のおかげだ。
 目の前で戦闘を繰り広げる仲間に合流し、彼等も攻撃を開始した。

「神様の住処で暴れるなんていけない事さ。さあ、僕が今すぐにその呪縛から解き放ってあげるよ!!」
 犠牲になった巫女の地縛霊達と巫女の地縛霊が切り離された事を確認し、玲樹は再度フェニックスブロウを叩きむ。
 しかし不死鳥のオーラを象ったそれを、地縛霊は避けた。
 その顔には表情というものは無く。それはまるで綺麗な人形にも似ていた。
 攻撃を受けたというのに焦りや怒りは無く。ただ無表情で対峙する者を見つめる。
 何処か薄ら寒く、不気味だった。
「強そう……だけど、これ以上の犠牲者は出させない」
 玲樹の攻撃を避けた地縛霊に息を呑むが、負けられないとばかりに麻尋はリフレクトコアを展開する。
 動じない地縛霊に姫乃が鎖剣で切りかかるが、和弓によって防がれる。
 しかし姫乃はそのまま地縛霊へと剣技を繰り出し、玲樹も前に出て剣を振る。
 相手の攻撃は全て和弓を使わなくてはいけない。ならば弓を使わせる機会を与えなければ相手は技を使う所か満足な攻撃さえできないのだ。
 巫女の地縛霊を守るようにしていた二体の地縛霊達は別の班が引き受けている。
 何としてもこちらで巫女の地縛霊を押さえておきたい。
 しかし、相手の地縛霊も中々に侮りがたかった。
 姫乃と玲樹の剣を時には避け、時には和弓で防ぎ。隙あらば避けるついでに和弓の先で攻撃してきたりと中々油断なら無い。
 傷ついた体は麻尋が癒し、絢音は攻撃しやすいように、また相手の攻撃を封じるようにサポートしてくれる。
 けれど崩れる事の無い地縛霊に焦りを感じた瞬間、フランケンシュタインBの豪腕が地縛霊に炸裂する。
 犠牲になった巫女の地縛霊を倒した仲間が合流したのだ。これで一気に前衛と後衛が増え、地縛霊へ攻撃しやすくなる。
 地縛霊を囲む様に展開し攻撃をしかける。先程までは攻撃を避ける合間に攻撃を仕掛けてきた地縛霊も人数が増えた今、攻撃を避けるのに精一杯で攻撃をしかける暇など無い。
 攻撃を防いだかと思えば別の方向からまた攻撃が、その攻撃を避けたかと思えばまた別の方向から……。
 更に後衛に居る者による攻撃もまたすざましいもので、前衛の攻撃を避けるので精一杯な地縛霊はそれを避ける余裕など無く、その身に受ける。
 後衛のそのサポートにより、前衛も攻めやすくなった。
「さー!! 残り一気にしとめちゃうよっ!!」
 地縛霊に余裕が無いのを見て取り、とろんはフレイムキャノンを放ち、和はサタニックビートを奏でる。
「手加減抜きで行きますよっ!! 蹂躙です!!」
 続くように絢音は魔弾の射手で強化した雷の魔弾を放つ。
 彩乃、姫羅、フランケンシュタインBの攻撃を続けざまに受けた地縛霊にそれを避ける余裕など無く、全てその身に受けてよろめく。
「これで最後よ!!」
 麻尋の白燐奏甲で強化された光の槍がその胸を貫いた。

●一年の終わり
 地縛霊を倒した事により特殊空間は消え、元の場所へと戻った。
「かける言葉が見つかりませんが……どうぞ安らかに」
 元に戻った場所は本堂の中だったが、間違いなく先程存在していた地縛霊の特殊空間があった場所でもある。
 和が持っていたギターで短い鎮魂歌を奏でた。
 その短くも切ない旋律は静かな本堂内に響いては消えていく。 
 どこか切ない思いになりながらも、巫女の地縛霊。犠牲になった人々へと黙祷を捧げた。
 黙祷を捧げたあと、そのまま私服に着替える人、巫女姿のままで居る人と別れたが、それぞれ本堂を出て境内に移動する。
「巫女玲樹に萌える人!!」
 さて、どうしようかと考えていると玲樹が手を上げてそんな事をのたまった。
 瞬間、その場の空気が凍る。ここは地縛霊の特殊空間の中では無いので勿論寒いし、風も吹いている。
 その上、場の空気まで凍っていては体に良くない。
 寒々しい視線が玲樹を貫く。それでもめげる玲樹ではない。
「あっ、数日後には凄い人になるだろうし、皆でお参りに行かない?」
 玲樹が何か言う前に麻尋が提案し、それに断る理由等無く、皆で移動する。
 ちょっぴり何か寂しい玲樹だった。
「もうすぐ新年だね。新年に昇る明るい太陽のように、彼女達には新しく輝ける人へと生まれ変わってほしいなあ」
「そうですわね。彼女達にはきっと輝ける来世が待ってるはずです」
 お参りを済ませ、帰途へと向かう途中で玲樹が声をあげ、姫羅が答える。
 もう直ぐ新年を迎える。彼女達が迎える事の無い新年を……。
 新しい年の始まりと共に、彼女達にも新しい人生の始まりであれば良いと思った。


マスター:桜花 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2008/01/04
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