<リプレイ>
●桃からの誘い 如何にも人気の無さそうな路地裏への入り口。そこからリビングデッドを尾行する。 「リビングデッドでも、やはり男の人はああいう女性が好きなのかしらね?」 そして尾行相手を見ながら、春日部・朔(中学生青龍拳士・b35977)はふと呟いた。 「どう思う、嘉神先輩?」 「ええと、その……どうでしょうね?」 話を振られた嘉神・織穂(銀旋舞踏・b32856)は微妙に顔を赤く染める。だからと言って止める訳でもないけれど。 「妾は好きじゃぞ。無論、織穂の事も好きじゃがのぅ?」 「ひゃっ!?」 そんな織穂にいきなり後ろから抱き付いたのは八握・楓(速銀津姫・b33943)。和服を纏い、リビングデッドに負けじと色っぽさを振り撒いている。 「その、あんまりそういうのは……」 「安心せい、優しゅうしてやるからの」 「ひゃぁっ!?」 じゃれ合う二人をおいて、朔は路地裏に視線を戻す。 「まあ、二葉先輩は我が世の春って感じよね」 視線の先にいるのは、リビングデッドと共に路地裏に向かう二葉・良(時給弐百伍拾伍円也・b02951)。確かにそんな感じだ。 「小柄な美少女で胸が大きくて大胆で露出……何と言う重武装っ!」 「ンー、俺としてはもうちぃ芯の有りそうな奴の方が好みだねぇ」 もう片方の班から合流した鈴虫・小唄(覚醒エゴイズム・b14532)と篠田・春一(空を見上げるワンコ・b01474)も、リビングデッドを見て感想を述べる。 「そうね、女は中身! 単純な力勝負じゃ負けてるけど、総合的にはっ……」 「……」 強がり120%の小唄を見ながら、同じく合流した緑川・奏真(高校生白燐蟲使い・b38407)は、感想を述べるべきかちょっと迷う。 (まあ、好き好んで火種を投げ込む必要も無いよね) とりあえず無言で微笑んでおいた。 「うー、寒……春になってもこの時間の風は寒いですね」 最後に、上から各班の連携を観察していた向日橋・悠槻(無軌道上等・b38973)が、軽やかに地面へと降り立つ。 「ん、お疲れ」 「はい。……そろそろ人気も無くなってきたし、始めましょうか」 春一が労いの声をかけると頷きを返し。彼女は皆にそう声をかけた。
●宝物は何? 「うふふ、そろそろ良いかしら?」 「お、何か始まるっスか?」 人気の無い路地裏で、少女は良に声をかける。 「良い事よ。とっても……」 妖しく微笑む少女に表面では軽く笑いながら、内心で溜息をつく良。 (うう、死んでると分かってても……勿体無いなぁ) だが、倒さないと食べられてしまう訳で、それは困る。 「ま、仕方ないっスね……じゃ、良い事しましょうかねっ!」 「っ!?」 放たれた符の呪いが、少女の身体を蝕まんとする。それをなんとか払いのけ……それを合図として、尾行していた能力者達が姿を現した。 「オイタしやがるコは何処デショーかァ……ッとォ!」 「少々勿体無いが、激しい方で楽しむとするかのぅ?」 二振りの剣に白燐の輝きを纏わせて春一が、太刀を旋剣に構えて楓が。それぞれ、前線へと躍り出る。 「あら? ……どういう事かしら」 表情を曇らせた少女の周りに、能力者に対抗するように犬の妖獣が姿を現した。 「私を倒しに来た……の?」 「そういう事っ!」 応じて翻るは白衣。小唄は己の魔器たるスラッシュギター『バルバロイ』の弦を、卓絶した技巧でかき鳴らす。 「戦闘BGMはハイテンポが基本だよねっ!」 戦場に響く衝撃のビート。それに合わせて、織穂もまた動く。 「止まりなさい……!」 赤黒い、鉈を思わせる宝剣が振り下ろされれば、その身体から生み出されるは白糸。土蜘蛛の檻が、また曲から逃れた犬の身体をさらに縛り付けていく。そして、そこへ駆け寄るは一陣の旋風。 「危険は……排除させてもらうわね!」 独楽の如く暴れ、敵をなぎ払う旋風は、朔。痺れた犬達を篭手で打ち据え、薙ぎ倒さんとする。 「鬱陶しいわね……」 そんな能力者達を、少女は不快げに睨みつけ溜め息をついた。 「可愛い子達が多いけれど、もう……要らないわねっ」 「っとぉっ!」 鋭い蹴りは、最も近くにいる良を狙って繰り出された。良は身体を仰け反らせてそれを回避しようとするが。 「く、黒ぉーーーっ!」 視界に一瞬映ったそれに気を取られた瞬間に、回避できずに蹴り抜かれた。 「どうせなら脱いでおけば良いのにのぅ」 「……それはどうかと思います」 感想を述べる楓に、奏真はポツリと返して。 「まあ、ともかく……みんな、私の仲間に力を貸してください」 良が蹴りで受けたダメージを、輝く奏甲で塞いでいく。 「あったれーっ!」 そして仲間達の間を縫って、悠槻の影が伸びる。旋剣の構えから繰り出されたそれは、皆の影の間を縫って確実に少女の身体を捕らえ、引き裂いていく。 「ああ、もう、何なのよっ……」 劣勢を感じ、少女は苛立たしげに顔を歪めた。
●少女と犬を退治せよ 「おっと、イライラしてる場合じゃないぜ?」 シャラン、とジャケットに巻かれた銀鎖が鳴り。蔦のような装飾の剣が振るわれれば、伸びる影が少女を捕らえ、傷つける。 「っ……邪魔よ?」 それを為した春一を睨むと、少女は腕を開いて抱擁する。 「ぐっ……」 「む、胸が当たってる……羨まし、じゃなくて、羨ましい!」 「なんて露骨なっ! おのれリビングデッド!」 何故か、喰らった春一よりも良や小唄の方が反応が大きいが。 「あら、そんなに羨ましいなら、あなたにもしてあげる」 その反応に薄く笑みを浮かべた少女は、春一から離れる勢いのままに、良に背中から突っ込んでヒップアタックを叩き込む。 「おお、や、やーらかいっ……ああ、身体が勝手に……」 あっさりと魅了に堕ち、赤い宝玉の埋め込まれたアームブレードを振り上げる。 「はいはい、シビレろやぁーっ!」 「動かないでくださいっ!」 「うぉっ!」 曲と蜘蛛糸にあっさり縛られた。マヒから回復する頃には、魅了も一緒に解けているだろう。 「……役に立たないわね」 「面目無いっス」 とりあえず謝っておく。 「まあ……役に立たれても困るのだけど」 一緒に痺れた犬を薙ぎ払いながら、朔が突っ込みを入れ……そして犬のうち2体を、同時に叩き伏せる。 『バウッ!』 「っとっ……!」 だが、残る1匹の牙が深々と、彼女の身体に食い込んだ。振り払うも、ダメージは小さくない。 「大丈夫ですかっ? みんな、よろしく頼みますね」 そこへ駆け寄るのは奏真だ。己の白燐蟲に呼びかければ、奏甲は傷を癒す。回復量を上げる為に自身も奏甲を纏った彼の癒しは強力だ。 「ありがと……さあ、お返しよっ!」 その癒しを受けて、輝く篭手を朔は真っ直ぐに犬に突き出した。龍の顎を思わせる拳は、強化された事も有って残る犬を打ち砕いた。 「くっ……」 妖獣が全て倒され、少女は再び苛立ちに呻く。だが、その苛立ちを逃さず……楓が身に纏うミニの和服を翻した。 「ほれ、余所見している場合かぇ?」 「っ!」 白地のその服の背中からが、少女へと蜘蛛足が伸びる。八本の足は、避けようとしていた少女を逃さずに、その身体に突き刺さった。 「ん、あああぁぁぁっ……」 「ほれ、もっと良い声で鳴くのじゃぞ?」 妖艶な笑みを浮かべ、少女の生気を吸収していく楓。蜘蛛足から逃れようと、少女は身を捩る。 「逃がさないですよっ!」 さらに、追い討ちとばかりに悠槻の影が少女の身体を再度掴んだ。その影の毒と蜘蛛の侵食に蝕まれ、見る間に少女の顔は赤く染まっていく。 「もう、逃げられませんよ?」 退路を塞ぐように、織穂が少女の後ろに回る。犬を失い能力者全員に囲まれた少女は、完全に逃げ場を失うと縋るような目つきを能力者に向ける。 「お、お願い……助けて。ねぇ、私が良い事してあげるから……」 「良い事ったってなァ? 可愛いし巨乳はポイント高ェケド、俺は好きな奴居やがンからな」 「まあ、リビングデッドを逃がしたくなる程じゃないですよね」 だが、春一は肩を竦め、奏真もまた首を振る。 「若い身空で死んじゃったのは同情するけど……リビングデッドに負ける訳には行かないのっ!」 小唄のそれは、戦闘の勝敗とは別の意味も含んでいそうでちょっと八つ当たりっぽい。 「私は女同士って言う趣味は無いですし……」 「わ、私も、そういうのは、ちょっと……」 無論、悠槻や織穂も、その命乞いを受けるつもりは無く。 「と言う訳で、ほぼ全員一致ね」 最後に、朔が纏め、少女を見つめて言い放つ。もう1人いるがまだ縛られているので発言権は無い。 「ここはあなたが居るべき場所じゃないわ」 「っ……」 己が助からない事を悟り、だが潔く諦めるなど出来る訳も無く。 「」ねぇ、助けて! 貴女、そういうの好きそうだし……何でもするから……」 目の前の楓に、潤んだ瞳を向ける少女。それに楓は思案するような仕草をして。 「そうじゃな、何でもすると言うのなら……妾は、もっと激しいのが好みじゃの」 「か……はっ……」 緋焔を放つ腕が、少女の柔腹に突き立てられた。 「生きておれば優しゅうしてやったのじゃがの。……勿体無い事じゃ」 溜息をついて、グッと力を篭めると。 少女の身体が小さく痙攣し、そして瞳から光を失って崩れ落ちた。
●めでたしめでたし? 「終わったわね……」 朔は、リビングデッドが元の屍に戻った事を確認すると、合掌して黙祷を捧げる。 「こんなとこ彷徨ってないで。しっかり往生しなよっ」 小唄もまた、弔いの言葉を紡いだ。せっかくの美少女なのに、可哀想だとは思うが……倒さなければいけなかったのだ、仕方は無い。 「くっそー、生きてる内に会えたら絶対ナンパしてたのにっ! 畜生ーっ!」 「それで成功しやがったとは限らないけどな」 良の悔しげな叫びに、春一が突っ込みを入れる。 「いや、それは言わない約束って言うか、試みる事に意義が有るって奴っス。それに、俺を誘って来たし、きっと脈有りだったっスよ!」 「……」 それはきっと、良が一番引っかかりそうに見えたからじゃないか、と奏真は思ったが、やっぱり突っ込むのはやめておいた。 「晩御飯のメニューを考えてた方が有意義そうですし」 それに、なるべく少女の事は考えたくないし、と口に出さずに思い、彼は思考を切り替える。 「ほれ、終わった事じゃし、妾と気持ちの良い事でもするかえ?」 「えっ……ちょっ、それは、遠慮したいかなとっ……!」 楓は近くにいた悠槻に迫り、悠槻はビクンと身体を震わせて。 「何、遠慮するでないぞ……」 「いや、そのっ……」 「……」 そんな光景の繰り広げられる横で、織穂が顔を真っ赤に染めていたりして。 「ひょっとしたら、能力者の方がリビングデッドより厄介かもね……」 それを見ながら朔は、ふと、そう思った。
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参加者:8人
作成日:2008/04/16
得票数:楽しい8
せつない1
えっち8
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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