夜間授業においでなさい
<オープニング>
電気もつけず、月明かりが差し込む広い部屋に若い女が座り込んでいる。
女の顔は疲れているが満足げだった。
「あー! 気分良かった」
握り締めるは、一人だけ顔の切り抜かれた社員旅行の写真。彼女のもう一方の手には愛用の木槌。
仕事で上司に理不尽に怒られ、ストレスの向かった先はわら人形だった。釘を叩き込んでいる瞬間だけは生きていられる気がした。
さっきまでその上司に呪いを掛けていた。時刻も丑三ツ時。月が煌々と光っていたのだけはいただけないが、充実した夜だった。
上司が死ぬまで何食わぬ顔で出社してやる。そう思えた。
「呪いとはいい着眼点だ! 加点30」
闇の中から声がした。若くはないが張りのあるいい声だ。だが、部屋の中に彼女以外の人間がいるのはおかしい。
「感情的にならず行える報復を実行するその理性も評価できる。加点10」
「誰っ!?」
呼びかけて、部屋の電気をつける。一瞬の蛍光灯のちらつきのあと、明るくなった室内にはあごひげを生やし、白髪を綺麗に整えた紳士がいた。温厚そうな目には片眼鏡が乗っている。
「私か。まあ何とでも呼びたまえ。わが学生たちは『教授』と呼ぶがな」
「どうやって入ったわけ? 出て行って!」
教授と名乗った白髪の男は口をへの字に曲げる。
「欲を言えば、古典的慣習に囚われず独創性を持つべきではあるな。減点10。……しかしまあ、よかろう。合格だ。青年よ」
困惑し続ける彼女に、教授は笑いかける。誠実で真摯で、それゆえにこの場では薄気味の悪い笑み。
「私の学生にならないかね? 私が教えられることには限度があるが、君の可能性に限度はない」
教授の指が女の持っていた写真を差す。
「そこに写っている人間を、痛めつけたいのであろう?」
困惑顔だった女は視線を床に落とし思案する。ここに起こる不可解と毎日の辛い現実を見比べ、果たしてどちらに自分をおくべきか、と。
「何を教えようと教授は教授ですか。敬われる人は何か違うものですね。
奥・弓木(高校生運命予報士・bn0073)です。よろしくお願いします。
アルバートさんたちのお願いはご存知ですか? 見えざる狂気に犯されたヴァンパイアが脱走してしまったので捕まえるのを手伝ってくださいというものです。
事件を起こしているのは『教授』と自称する貴種ヴァンパイアと、それに従う学生たち三人です。こちらは従属種ヴァンパイアですね。本物の教授でも学生でもありませんが、便利なのでそう呼ぶことにしますね。
教授は一般人の方一人を従属種ヴァンパイアに勧誘しています。呪いが趣味の、変わった方ですね。皆さんにはそれを阻止してもらうと共に、教授を含め狂気に犯されたヴァンパイア四人を動けない状態にしてください。
場所は住宅地の中のマンションです。その一般人の方の家ですね。鍵は教授か学生さんが開けたようで、掛かっていません。すぐに駆けつければ教授の学生スカウトの途中に割り込むことができるでしょう。
マンションは広めの部屋が二つ繋がった間取りで、奥の部屋に教授と一般人の方、手前の部屋に三人の学生さんがいます。
三人の学生は手前の部屋で待機はしていますが、特に外からの侵入者を警戒しているようではありません。皆さんが突入すれば教授を守ろうと通せんぼするでしょうが、皆さんの行動より早いことはないでしょう。
教授が一般人を従属種ヴァンパイアにするには多少の時間が必要です。教授も、戦闘中にそれを行うより戦列に加わる事を選ぶでしょう。
教授は長杖を携えた貴種ヴァンパイアで、長射程の吸血攻撃と、こうもりによる周囲全員からの吸血を得意とします。
他の従属種ですが、バットやチェーンソーによる力任せな攻撃と回転体当たり、それに噛み付く吸血攻撃を備えています。
こうもり以外の吸血は思いがけない大きな威力になることがありますから、気をつけてください。
皆さんにお願いしたいことはヴァンパイアの殺害ではありません。反撃する事が出来ないまでに叩きのめしたら他の事は気にせず帰ってきてください。後のことはヴァンパイアの方にお任せすることになります。
……もちろん、相手は必至の抵抗をするでしょうから、手加減などは要りません。結果死亡させてしまった場合も、望ましくはありませんが仕方ないでしょう。
あ、一般人の方の処置はしていただければ嬉しいです。もしヴァンパイアになってしまえば同じように叩きのめすしかありませんが、そうでないのなら適当な処置をお願いします。
直接の被害が出る事件ではありませんが、狂気に犯された能力者を放っておくことは出来ませんし、無関係の一般人を巻き込むのも問題です。
相手も能力者で困難もあるでしょうが、よろしくお願いします。
では、いってらっしゃい」
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参加者
望叶・タマエ
(空言空箱・b02094)
月影・微
(箱入り巫女は潜入中・b03250)
アンジェリカ・ソアーウィンド
(哭銀の顎・b10646)
百合野・紫陽
(過去亡き宵夢の紫蜥蜴・b20861)
ロゼ・シュタイナー
(黒翼の魔女・b21479)
柳生・十兵衛
(隠密同心・b28758)
小蓋・裕太
(アルバイター魔剣士・b30251)
高峰・勇人
(ヘッドエイク・b34890)
<リプレイ>
●悪夢とともに進軍せよ
マンション。
縦に並んだ廊下の一つに、彼らはいた。ドアの一つにアンジェリカ・ソアーウィンド(哭銀の顎・b10646)が耳をつけている。
「間違いないわ」
4階の一室。ここで今、ヴァンパイアによる儀式が行われようとしている。
「向こう側は駐車場ですね」
小蓋・裕太(アルバイター魔剣士・b30251)が、廊下から地面を見下ろしていた。こちら側は小さな植え込みと、その先はすぐに細い道路だ。
「落ちて無事な高さではありませんが、無理に逃走できない高さでもありませんね」
裕太の危惧はただ、窓にある。窓から逃げ出せるのなら押さえるべき逃走経路は二つになるからだ。
「逃がしはしない」
柳生・十兵衛(隠密同心・b28758)が、ドアの向こうのヴァンパイアを見つめるかのように目を細めた。
「さて、彼らに絶対正義をご教授して差し上げましょう」
望叶・タマエ(空言空箱・b02094)が、静かな笑みを浮かべカードを取り出す。
「ここから無事には帰さない」
イグニッション。
静かな光の粉が舞い、タマエの手には豪奢な装飾のチェーンソーが握られていた。
「こちらも準備完了ですよー」
月影・微(箱入り巫女は潜入中・b03250)が、せっかくの心の準備が台無しになりそうな暢気な声を出す。
「では……」
合図を。そう言い掛けたロゼ・シュタイナー(黒翼の魔女・b21479)は、じっとアンジェリカを見つめたまましばらく静止し、それから頷いた。
アンジェリカは歌っていた。微かな声で。
聞き知らない言葉とどこかで聞き覚えのあるメロディ。
進軍ラッパのヴォーカルアレンジだった。
全員のリズムがぴたり、重なる。歌詞の意味はわからない。けれど、アンジェリカが何を思っているのかが伝わってくる。
突入は、8拍後。
高峰・勇人(ヘッドエイク・b34890)は、肩に手を置かれて振り返った。ロゼだった。
頷き合い、勇人がドアノブに手を掛ける。
4拍前。
百合野・紫陽(過去亡き宵夢の紫蜥蜴・b20861)は、扇を下ろし、前傾する。確保すべき一般人の女性はおそらくいっとう奥だ。
1拍前。
勇人が立ち上がる。
突入。
アンジェリカがドアを開け放つ。
視認できたのは、テーブルに着く3人の男女。奥へ繋がる引き戸は開いている。
ドアが乱暴な音を立てる。3人がそれに気づき視線を玄関に向ける。
勇人が倒れるかのように前傾し、部屋の中に滑り入る。開いた射線。
「ふふふ……みんな吹き飛ぶのです」
勇人の後ろでは、シスターが悪魔の微笑を浮かべていた。
戦闘態勢を取る隙すらなく、テーブルのど真ん中で炸裂した黒い霧は、まさしく悪夢となって3人の従属種ヴァンパイアを眠りに取り込みに掛かった。
●敵中突破か無力化か
度を越す驚きは、時に人を忘我に陥れる。
手前の部屋にいた3人は一瞬で意識を失いかけた。
眼鏡をかけた芯の弱そうな青年。眼つきの悪いミリタリーベストの男。それに、もう一人は七分丈のシャツとパンツの活発そうな女。学生に統一感はなかった。
「はっ! 催眠攻撃!?」
七分袖の学生が悪夢に耐え切る。頭を振り、鋭い目でロゼを睨みつけた。
「教授の長話に鍛えられた私の眠気ばらい能力を舐めるなあ!」
……新情報。どうやら教授の話は相当眠いらしい。
彼女が取り出すはおおよそ似つかわしくない禍々しいチェーンソー。
「うりゃっ!」
立ち上がった彼女に勇人が、突進の威力を殺すことなく、それに噴射の威力まで加算した頭突きを食らわす。
勇人はヘルメットをかぶっていた。
「さすがに飛ばないか」
頭突きは彼女のあごを捉える。頭が吹き飛んでもおかしくないその攻撃だが、彼女は痛そうに顔をしかめるものの後ろに飛ばされずその場を守った。
彼女の脇を紫の影が掠める。一直線に奥を目指す紫陽だった。
「アンタらに用はないわ」
テーブルがステップに使われ、たん。と小気味良い音を立てる。
「アポなしですみませんねー」
同じ軌跡を微が、にっこり笑って通って行く。奥の部屋にいる恩師を守ろうとしたのだろう。彼女が微を捕まえようと手を伸ばしたが、届かなかった。
「縫い留めさせていただきます!」
裕太が手前の部屋全体に蜘蛛の糸を張る。
獲物をマヒさせる糸は、一番縫い留めたかった彼女には避けられてしまった。
作戦は、不意打った敵中突破の後の挟撃。学生3人の無力化は後回しにすべきだっただろうか。一瞬の思考が次の一手を遅らせる。
事実、勇人は手前の部屋の中心に残り、檻を展開した裕太はマンションの廊下から一歩も動けていない。
最善とは言い難い状況だった。
●授業は実戦形式で
奥の部屋へ最速で飛び込んだ紫陽は、二人の存在を認めた。
向かって右奥、完全に怯え惑う女性。部屋のほぼ中央には銀髪の初老の男性。片眼鏡。これが『教授』だろう。
「味方よ。動かないで」
強い調子で女性に言って、背中を向ける。ちょうど教授からかばう形になった。
少し遅れて微が飛び込み、窓を背にして構える。
「誰? 誰なの!?」
女性は困惑ここに極まれりといった様相だが、動かないでという紫陽の指示には従っていた。
彼女にとって紫陽の言葉は、『動くと殺す』と同義なのだろう。
ぱちん。教授が指を鳴らした。
「不意を打っての突破。見事だ。我々の敵なのだろうな。加点30」
彼の手には黒い杖。持ち手と床を打つ部分には金の装飾が入っている。
「だが、その行動は評価できない。不意を打っておきながら『私たちはこの人を守るために来ました』と白状しているようなものだ。減点20」
紫陽が、ふっ、と冷笑する。
「おあいにくさま。あんたの付ける点に一喜一憂するほどあんたを慕ってないの」
言いながら内心、紫陽は焦りを感じていた。確かにこちらに女性を確保するつもりがなければ、彼にはこの女性を殺すだけの意味がない。
教授というだけはある。不意を打たれたにもかかわらず短時間の判断で今の言葉を吐いたのだとすれば、このヴァンパイア、考えている。
紫陽の祖霊降臨を受けて、微が教授に飛び掛る。それを杖で受け、返しとばかりに微の丹田へ向け突き出すが、突ききったところに微はすでにいなかった。
「っと。杖はそう使うものじゃありませんよー」
バックステップで常に教授と一定の距離を取り微が言う。
「なるほど、力だけはなかなかのものだ」
言って、教授は手前の部屋を視界に入れた。
手前の部屋では、混戦が生じていた。
部屋を突破しようとする勇人と裕太を、七分袖の学生が一人で押さえ、反撃していた。
攻撃は、吸血。
予測していなかった敵の前進に勇人が構える。
その目の前に、裕太が飛び出した。
「させない」
相当の勢いを持って飛び掛ってくる相手を脇から止めることはできない。攻撃を妨害するには、自分が受けなければならない。
「引き受けます。奥へ」
彼女の牙は裕太の肩に突き立てられる。裕太の致命傷を想起させる呻きに、勇人が舌打ちした。
「……っそぅ」
テーブルの脇で眠っていたミリタリーベストの男も起き上がる。
「もうひとついきますよ」
ロゼが、二度寝推奨とばかりに起きた二人を巻き込んで悪夢を投下する。
「……く」
それはどちらも耐えた。一方は霧を払うかのように手を振って、もう一方は自分の頬を平手で叩いて。
「味方同士の距離を離しなさい」
その声は奥の部屋から。教授が杖を向けて学生たちに指示を出していた。この乱戦にあって、その声だけが秩序を持っている。
「彼女の誘眠能力は厄介だが、範囲には限界があっただろう。相手を見ながら戦いなさい。いつでも冷静に」
「「はいっ!」」
ミリタリーベストの男がロゼに接近しようとする。
「戦いすら授業のつもりか。いいだろう」
十兵衛が構えた刀が黒く染まる。
「ここを通しはしない。柳生の剣、受けてみろ」
バットを持ったまま飛び上がり、空中で回転する従属種の男に、容赦ない一太刀を浴びせる。
教授は七分袖の女性に別の指示を出していた。
「彼は被害の調整役を買って出ている。先に落とそう。攻撃を集中したまえ」
言うが早いか裕太に指先を向け、まるで糸でも付いているかのように正確に裕太から力を抜き取る。
「ぐっ……」
続けざまの攻撃に裕太が防戦的な構えになる。
苦しんでいるとも取れる態勢。
「ピンチやね……」
戸口を隔てて奥の部屋から紫陽が裕太を回復するが、裕太の表情は和らがない。
同様にロゼがサイコフィールドを張るが、こちらも裕太を完治させるには大分時間が掛かりそうだ。
「私たちのことは良いですから、前に出てください」
「承知!」
十兵衛がロゼの言葉を受けて前に出る。
「敵中突破に失敗すれば完全包囲される。そこの彼も覚悟の上だ。片付けなさい」
「はい」
教授の言葉に女性の学生が、もはやほとんど力も残されていないはずの彼女が、渾身の吸血攻撃を放つ。
「っ!」
彼女がやはり満身創痍の裕太の二の腕に噛み付かんとした瞬間、彼女の身体をアンジェリカの光の槍が貫いた。
「やらせない!」
まるで伝説をなぞるように、光輝く杭を心臓に打つ。
接敵した十兵衛が、その隙を逃さず脇腹にぴたりと刀を当て、撫で斬った。
どさり、従属種ヴァンパイアが一人、崩れ落ちる。どことなく満足げな表情で。
「まさか!」
十兵衛が振り返ると、裕太もまた、崩れ落ちるように倒れていた。吸血は既に終わっていた。
「間に合わなかった……」
音がするほど奥歯を噛み締め、十兵衛が悔しそうに言った。
勇人にロケットスマッシュを受けたミリタリーベストの男がよろける。
「授業で教わったこと、使ってごらんなさいよ」
タマエが意地悪い笑みを浮かべながらやはりロケットスマッシュを放つ。
もう一人の学生は、いまだに寝ている。
「ちっくしょお、多すぎるんだよ手前等ぁ!」
叫ぶ吸血鬼。その頭にスパナの一撃が降った。
「おお、こいつは狂気っぽいな。わかりやすくていい」
勇人が言えば、
「いつでも冷静に、ですよ」
いきり立たせている本人が諭すような口調でチェーンソーエッジの付いた長剣を振る。
彼が倒れるまでに時間はかからなかった。
●冷静が勝つ
教授はそこまで来て、ようやく苦い顔を見せた。アンジェリカの光の槍を受け止め、微の黒影剣をも止める。微の側も相当の消耗を強いられていた。
「なるほど、学生たちでは歯が立たないか。なら私が手本を見せる他あるまい」
こうもりが、散った。
「あかん!」
紫陽が咄嗟に背後の女性をかばう。が、そもそも彼女は狙いに入っていなかった。
教授に彼女を殺す気はない。のだろうか。
「なるほど。その方法がある、か」
あごを撫で、そのまま紫陽の後ろの女性を指差す。
「一人では守りきれまい。君もそちらを守った方がいいのではないかね?」
窓を守る微に教授が笑いかける。
微が動かなければ、女性は一瞬ですべての生命力を失い、死ぬのだろう。彼女の震えはかばう紫陽の腕にも伝わってきた。
「生徒殺して授業放棄か? それでも先生かよ」
紫陽と教授の間に勇人が滑り込む。
「なるほど。いい切り口だ。加点してもいい」
「ちくしょうっ」
教授の吸血は勇人に向かう。
「だが、放棄するつもりはない。君たちだとて学生になり得るのだ」
杖を取り、飛んでくる十兵衛の水刃を叩き落す。
流れるように、隙なく。
「あぁそう。逃げるつもりはないのね? ならばここでおしまいよ」
声は、タマエ。その水刃を援護に全力で教授に向かい突き進む。
「何故ならば、わたしの方があなたより冷静だからよッ!!」
力任せなロケットスマッシュ。どう考えても冷静な攻撃ではない。
教授はそれを杖で受け止め、タマエを睨み返した。
「私より冷静?」
表情が変化する。禍々しい笑みへと。
「思い上がりも甚だしい。君が冷静なものかね」
そして、力任せな杖による殴り返しがタマエへ飛んだ。
「私より冷静な者などいないッ!」
……感情的だった。
勢いは殺し切れなかった。タマエは攻撃をまともに受け、教授を睨みつける。
教授は、弛緩し切った顔で前のめりに倒れた。
「やっと冷静じゃなくなってくれましたー。隙がなくて困ってたんですよ」
教授の背後、紅蓮撃を放ったまま黒い赤手を突き出したままで微がたたずんでいた。
この一瞬をずっと狙っていたらしい。
「一番冷静なのは案外ああいったタイプの人かも知れませんね」
ロゼがくすりと笑った。
●取り残された人たち
さて、マンションには銀誓館の生徒たち以外に、二人の人間がいた。
一人は怯えきっていて先ほどロゼの悪夢爆弾で眠らされた一般人の女性。
もう一人は、不運にもいまだに悪夢の中にいる男子学生。
「これ、どうしよ」
起きる気配のない彼をそのまま放っておくわけにはいくまい。
「寝てませんよ。寝てませんってば! お仕置きは勘弁してくださいーっ!」
さっきからうなされてうわ言ばかりつぶやいている。
「かわいそうだけどさくっと片付けてしまおうか」
アンジェリカが言って構えると、十兵衛とタマエもそれに倣った。
「ごめんよ」
3Combination! JA!JA!クリティカル!
「うーん……」
気の弱そうな学生は、寝ている時と同じ姿勢でテーブルに突っ伏してダウンした。
「あとは任せちゃっていいんですよね?」
「そのはずよ」
微の問いにタマエが答える。撤収だ。
「呪いなんかで気分をはらしたところで、本当の解決にはならないわよ?」
眠る女性に紫陽が言う。女性は苦しそうに眠るばかりだが、全部が悪夢だったと思えば不思議がることもないだろう。
紫陽は笑って立ち上がった。
怪我人も出たが、一人も逃がすことなく依頼を遂行できた。
「……呪いって」
ぽつり、一般人の女性がつぶやく。寝言、だろうか。
「呪いって、すごいわ」
だめだこりゃ。
全員が脱力感と疲労感に肩を落とした。
マスター:
寺田海月
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作成日:2008/04/24
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(アルバイター魔剣士・b30251)
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