<リプレイ>
●そう、彼女たちはスレンダー+ 「なんだかおかしな地縛霊なのデス。放っておくと静音ちゃんたちフラットな人たちが危険な予感がするのデス」 生徒たちは既に去り、人気の失せた夕暮れ時の校庭。 シャッター音を響かせて仲間たちをカメラに収めながら、アルテア・マッコイ(商会の看板娘・b25367)がそれはとてもデンジャラスな単語を吐いていた。 フラットな人たちに含まれる門前院・岬(ピンクリボンは勇気の印・b01676)がむっとしているのは気のせいではあるまい。後、同じく含まれる霧山・葉月(安全基準トリプルエー・b01735)の耳に届かなかったのは幸いだろうか。 「う〜ん……」 そんないわゆるスレンダーな彼女たちを、このたび見事白一点と相成った石動・勇生(翠龍拳士・b31616)は唸りながら眺めていている。 「うん、うん……いーんじゃねーか? 似合ってるぜ」 「何が似合ってるって?」 別段視線に嫌らしさなどは無かったと思われるが、検分という行為自体失礼だろう。故にジーヴ・イエロッテ(ホラクル・b33147)は軽く勇生の頭を小突き、その行為を嗜めた。 校庭を大胆に進み体育倉庫を目指す一行。賑やかな様子に何事かと教師が尋ねてきたりはしたものの、OBだのOGだの忘れ物だのと言い訳をして切り抜ける。さすればやがて体育倉庫へと辿り着き、普段着に身を包む九重・茜華(槍従士・b00690)が戦場の下見へと赴いた。 「入り口はここだけ……のようだな」 しばしの後、茜華が肩を落としながら皆に告げる。また、その代わりに用具を多少動かし包囲しやすくしてきたとも……。 ……そうして準備が整うころには、地縛霊が出現する時間が訪れていた。 「……その、色んなことがあると思うけど……頑張ってね」 「……うん、行ってくる」 草凪・緋央(おひさまの申し娘・b24940)に励まされ、体操服姿な陸上少女葉月が一人体育倉庫前に残される。他の者は物陰に隠れ、地縛霊の出現を今か今かと見守る段階へと移っていた。 「……で、葉月先輩は何をやっているのかな?」 その見守る面々の内、春宮・静音(バトルマニアガール・bn0097)と葉月・とろん(蘇芳火・b23377)は共にいた。 とろんは何故だか静音の背中に回り、無いとは決して言えないがあるといえるかも微妙な胸を撫でている。 「ん、いや、胸があるのとないのとだとどう違うのかなって」 「もう、こんな時に何やってるんだよう」 妙に緊張感に欠けるとろんの行動に、緋央が呆れたように呟いていた。……とろんの次なる標的が自分であるなどとは露ほども思わずに。 (「賑やかだなー。ほんと、頼りがいがあるよ」) 総じて賑やかと証することができる仲間たちに口の端を持ち上げつつ、葉月は倉庫へと歩みを進めていく。 すでに夕日は落ちて、茜華が用意してきた電灯と校舎から漏れでる光だけが頼りとなる暗い時分。 「……はぁはぁ……」 不気味な息遣いを響かせながら、Tシャツとジャージを着込んだ男が出現した。 (「こいつが、スレンダーな相手を狙ってるおっさんだね……」) 葉月が地縛霊に抱くのはある種の怒りだろうか、あるいは多大な嫌悪だろうか。 ともあれ考える時間は無く、イグニッションし戦う準備を整える。 後ろでは仲間たちもイグニッションし、地縛霊を包囲するため駆けつけた。 内一人、体操服の詠唱兵器に身を包む弓張・輝夜(月光闘姫・b01487)は脂ぎった地縛霊の姿とその性質に、悪寒を全身に感じていた。 絶対に抱きつかれたくはない。
●寄るな触れるな近づくな! 狭い体育倉庫内と入り口近くで対峙する、地縛霊と十人の能力者たち。内八人は細い肢体の美少女であり、その中でも四人が体操服を着用している。 ――それ即ち、地縛霊が好む少女が四人もいるという甘露な場所! 「ほ、ほあぁー!!」 地縛霊はとろん、輝夜、緋央、静音に視線を彷徨わせ、嫌らしく涎を垂らしながら獲物を定めているようだ。隣を抜け背後に回ろうとしている、水着姿なスレンダー美女茜華など歯牙にもかけずに。 「す、すれんだぁー!」 「ひゃあー!? こっち来たぁぁっ!?」 やがて目標をとろんに定めたらしく、凄まじい勢いで突進してきた。 「おっと、残念だったな、体操着着用のスレンダーな女の子はお預けだぜ。ついでにここは通行止めだ」 「この女の敵! 変態! ピー! ――! 消えされぃ!!」 しかしそんな事は予測済み。道を塞ぐように勇生が龍がごとき拳を、岬が黒き影を纏わせた馬鹿でかくてやたらめったら重い剣を振るい、地縛霊の進行を押し留める。 対する地縛霊は奇声を上げながら、縄をしならせ勇生の肩を打ち据えた。 「……」 体育倉庫の入り口側、地縛霊から一番遠い場所で一部始終を眺めていたアルテア。ついでに刃や炎に襲われている地縛霊をまじまじと見つめてみる。 姿は先に示したように、Tシャツとジャージ。背は高くは無いが低くも無く、体格も並。しかし目は虚ろで脂ぎっていて、何より様々な汁が……。 「……」 そこまで眺めた後、アルテアは頭を振る。地縛霊の姿の詳細を脳内から消去して、先ほど縄に打ち据えられた勇生の後頭部めがけてドリンク剤を投げつけた。 弾けるビン、降り注ぐドリンク。 その加護を受けながら速攻目指すと拳を叩きつけ、仲間たちもそれに続いていく。 けれども地縛霊は雄叫びをあげて、傷のほとんどを癒してる。ついでに何だか白いオーラ……決して湯気ではない……を纏っていた。 その力を利用して、今度は静音の方に突進して来る。 「すれんだー……」 邪魔せんと立ち塞がった葉月の事を、力いっぱい抱きしめた。 「か、加齢臭が! ギブギブ……」 精神的にも実質的にもヤバイ臭いのする地縛霊の抱きつき攻撃。堪能され離されるころには十二分にマヒを受け、ゆっくりとその場に崩れ落ちる。 「だ、大丈夫……?」 どことなく虚ろな瞳をしているような気がする葉月に、緋央は気遣いの言葉をかけながら炎の力を解放した。 ――しかし、気遣っている暇はあったのだろうか? 今回はダメージ以外を拭える者が存在しない。包囲網の穴は、突破の足がかりへと繋がるというのに……。 「ほああああー!」 更なる傷を受けたものの、地縛霊が気にする様子は微塵も無い。そればかりか勢いを更に増して、包囲網の穴をついて突破した! 「……えーと、デッドオアアライブって奴?」 「こっちに……来ないで下さい!」 最も近い場所にいた静音と輝夜は、体操服の裾を翻しちょこっとお腹を見せながら蜘蛛の子を散らすように退いていく。 代わりに最前線に立たされた緋央が、不意を突かれ抱きつきの被害にあった。 「ぐふふ……」 「――――!!」 豊かな胸から伝わる感触に、声にならない悲鳴を上げる緋央。 (「……それにしても、色々といやらしいですねじつにけしからん」) 全力で観察し何だか表には出せないような感想をとろんは抱く。 「緋央がんばってー」 もちろんそんな想いはおくびにも出さずに、労いの言葉を投げかけた。 やがて緋央は解放され、その場に崩れ落ちていく。恐らく続く標的も動けない緋央になるだろう。 「変態! お楽しみはお預けだ、ずっとな!」 光景に怒りに似た感情を抱いたジーヴ。彼女は地縛霊の気を引くために背後から不死鳥のオーラを纏わせた斧を振るう。 地縛霊が炎に包まれる頃には、茜華が淡々と緋央との間に割って入り鋭き蹴撃を叩きつけた。 「取り乱すな、今は防御に徹しろ。俺たちがおっさんを黙らせるまで持ちこたえるんだ!」 対象は主に、体操服姿の少女たち。 そんなある意味無茶な提案を勇生がするさなか、復活した葉月を含め再び包囲の陣を整えていく。 整えば再び戦いののろしを上げる! と行きたいところだが……相手はタフ。ある程度長く戦えば、同様の状況は十分起こりうるわけで。 「や、やめ……」 岬が抱きつかれマヒしてしまい、再び包囲網を突破される。 地縛霊の矛先はとろんへと向かい、彼女を撫で回すように抱きついた。 「ぐふふ……」 「ちょ、やだ……どこ触って……!?」 体操服が歪んだりとかした気がするが、詳しくは記さない。記せない。 「符よ……彼の者に癒しを……」 一歩間違えば自分もああなってしまうのか。恐怖に心臓をばくばく鳴らしながら、輝夜が治癒の符をとろんへと投げつける。 その後ジーヴがとろんとの間に入り、再び地縛霊の動きを制した。 ――紆余曲折があった後やっと安定してきた戦況。たびたび癒しの雄叫びが上げられるものの、それ以上の勢いを持って地縛霊を制している。 「……ひんにゅう……」 そうして時が流れた後、ジーヴを含める多数の女性陣の胸を眺めた地縛霊。 「ひんにゅう……」 外から見ると、微かにあるように思える場所。あると公言するのははばかられるものの、ないと言い切るわけにもいかない箇所。 それを示す言葉、すなわち貧乳。 「ぬ……」 それが心の何かに触れたのか、葉月が切れた。 「ぬがあああああああああ!」 陣も今は何のその、消すぞ殺すぞ滅するぞの勢いで鋭き影を差し向け切り裂けば、岬の剣がそれに続く。 何かに触れられた彼女の……あるいは彼女たちの勢いは激しく強い。 更なる力が重なり行くうちに、不気味な息遣いが辛いものへと変わっていた……ような気がした。 「知ってるか? 変態に人権はねーんだよ」 倒れる予兆だと読んだジーヴはアームブレードを鋭く振るい、再び地縛霊を燃え上がらせる。 更なる炎を注ぎ足さんというのか、とろんが熱き炎を解き放った。 「静音ちゃん、行くデス!」 「……了解!」 アルテアと静音は声を掛け合って、吹き荒ぶ風に身を任せつつ三日月描く蹴りをブチ当てる。その背後から飛来した緋央の逆鱗は、地縛霊の体に深く深く突き刺さった。 茜華の蹴撃もまた身体を捉え、反対側から勇生がフライングニールキックによって顔を強く打ち据える。 すでにふらふらと焦点の定まっていない瞳。すでに聞こえなくなった奇声。 「……その存在を赦すわけには行かないです!」 その体躯に、傷つけられた仲間を見てきた。 決して赦すわけにはいかないと、輝夜が獣のような姿勢から見えない波動を強き想いの下に放つ。 打ち据えられた地縛霊。最後に悲鳴を上げる事も無く、その場にゆっくりと崩れ落ちた。 無論そのまま動くはずも無く……変態は滅びを迎える……!
●死者に罪はなし。……多分 冷たい風が細かな砂を運んでいる。 暖かな電灯に照らされた体育倉庫にて、多くの能力者は疲弊した様子を見せていた。 「えっと……みんなの分のタオルを用意してきたよ。……その……身体を拭いて少しでも早く感触とか忘れようよ……ね」 自分にも言い聞かせるように語りかけながら、緋央が仲間たちにタオルを渡していく。イグニッションを解けば汚れは消えるが、一度覚えた感触は中々消えない。その感触を消す助けに少しでもなればと……。 とろんは礼を良いながらタオルを受け取り、ふと思いついた言葉を口にした。 「……結局このゴーストは何だったんだろうね……?」 「……なんであったにせよ、色々な意味で凶悪な敵でした……。もう、同じ様なの……出て来て欲しくないですね」 言葉を拾ったのは輝夜。 彼女自身幸運にも被害にはあわなかったのだが……抱きつきの被害に合ったのはその他の体操服組と、葉月、岬の五人であった……見ているだけで精神的に来るものがあったのだろう。一緒になって、汗などを拭っていた。 そうして皆で身体を拭いた後、しばし休息の時が訪れる。 やや明るい光の漏れる体育倉庫の中で、茜華は同じ左利きエアライダーであるが故に親近感を抱いている静音に話しかけていた。 「どうやったらそんなに伸びるのか教えてもらいたいところだな……打撃のリーチは身長に比例する故、羨ましいよ」 「んー、よく聞かれるんだけど……特殊な事はしてないのよね。思いつくところで、お母様の栄養やカロリー計算が厳しかったとか、お父様の背が高いとかはあるんだけど……」 話題は静音の背丈に関する事。時に楽しげに笑いあい、和やかな時を過ごしている。 そんな様子に、勇生は静音の体操服姿を褒める機会を失っていたが……美しい光景でもあるため、やはり笑っていた。それに、褒める言葉は後で言えば良いことでもあるし。 「……?」 そんな折、この度の条件を唯一満たしえない女性アルテアに対し、真の敵だと嫉妬? の炎を燃やしていた岬が首を傾げた。 「おい、何してるんだ?」 「?」 アルテアは振り向いて、手に持つメモリーカードを岬に示す。 「供養しているデスよ。写真のデータが入ったメモリカードを埋めておいてあげるのデス」 写真で我慢してもらうのデスと、あっけらかんと言い放つアルテア。 その様子が余りに自然だったからか、再び岬は胸に宿る炎を再燃させる。俺だって何時かは……? ……いやまて、何かがおかしくないか? 「ちょっと待ったぁぁ!」 始めに気づいたのは葉月。 言うが早いかアルテアからメモリーカードを取り上げて、大声挙げて皆を集わせた。 アルテアのメモリーカードに収められた内容。それは戦う前と戦う後の女性陣を撮った姿であり……天に還った地縛霊のナニに使われるのか、想像に難くない。……あまり理解していない者も居たようには思えるが。 「……まあ、消去してから埋めるぞ」 ともあれその行動には制止が入り、ジーヴの手により有志のデータ以外は消去する運びとなった。……いや、その有志が存在したのかは知る由も無いのだが。 ……何はともあれさておいて、メモリーカードが埋められた事によりこの事件は終幕を迎えた。 願わくば先に輝夜が願ったように……このような変態なゴーストが二度と現れない事を。もっとも、無理な予感はひしひしとするのだけれども……。
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参加者:9人
作成日:2008/05/14
得票数:楽しい5
笑える16
怖すぎ1
ハートフル1
えっち3
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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