≪陽だまりにゃんこの休憩所≫ボーズウォー


<オープニング>


 黒部・貴也(天魔を滅す闇の刃・b08272)と玉依・美琴(お日様笑顔・b11621)は念仏の響く板張りの床の上で正座させられていた。何故かは分からないが突如地縛霊に二人揃ってアレコレしていたところを連れ去られたらしい。
 二人が周りを見渡すとどうやらこの特殊空間は寺のイメージで設えているらしい。確かに二人がこの空間に捕まる前は朽ちた古寺であった。
 そして彼らをここにに閉じ込めている地縛霊はやはりこの空間に相応しい姿形をしていた。
「(お坊さん、だよね)」
「(ああ、鹿の角が生えているがな)」
 ついでに筋肉隆々でサングラスをかけて袖が引きちぎられた服を着ているが、多分ベースは坊主で間違いないだろう。余計なものが沢山混じっている気がするが気にしない方向で。
 二人の小声に坊主型地縛霊(以下坊主)がその小声に反応したか念仏を唱える音声を大きくする。ただその内容も本当に正しいものなのか疑わしい。それでも黙って座っている限り襲ってこないらしい。それでもずっとここにいるわけにも行かないし、二人だけで戦うのは大変だし、と二人が顔を見合わせた所に後ろから足音がする。
「大丈夫か?」
 振り返ると蘭・蓮(空を亡くした闇色の鷹・b35362)達が武器を手に立っていた。彼らを見つけると坊主は野太い声彼らを一括すると何故か足が勝手に正座をしようとする。どうやらこれがこの坊主の力の一つらしい。運よく全員それを防ぐと改めて武器を構える。
『この罰当たり者が! 往生するがいい!』
 坊主は叫びながら自らの力に従わない能力者に襲い掛かってくる。
「よし、みんなやるぞ!」
 彼らも負けじと迎え撃つ。……あ、座ってた二人は足が痺れて立てないらしい。

 それはともかく、狂った地縛霊との戦いの火蓋はここに切って落とされた!

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参加者
黒部・貴也(天魔を滅す闇の刃・b08272)
斎宮・鞘護(魔剣士・b10064)
玉依・美琴(お日様笑顔・b11621)
シフォン・ブロウニン(うぃずマサさん・b21079)
榊・麗(ショタコン女王様・b23162)
草薙・晶(今日もわんこはうたをうたう・b25067)
蘭・蓮(空を亡くした闇色の鷹・b35362)
サラ・モラトリアス(は今日も龍の夢を見る・b36309)



<リプレイ>


 本来ならこの世に存在しないはずの空間に、その主である異形の存在と対峙する八つの影。その間には何とも言えない緊張感が満ちていた。地縛霊は突如人数の増えた能力者達に、能力者達は実力の程が見えない地縛霊にそれぞれ警戒心をあらわにしている。
「お二人とも大丈夫ですかぁ?」
 サラ・モラトリアス(は今日も龍の夢を見る・b36309)は最初にこの空間に取り込まれた黒部・貴也(天魔を滅す闇の刃・b08272)と玉依・美琴(お日様笑顔・b11621)に心配げな声をかける。それでも視線は相手から外さない、いつ打ち合いになるかのきっかけは互いに持ち合わせては居ないから。それを分かっている二人も痺れる二本の足で体を支えながら頷きで返す。戦の始まる寸前のその緊張感、時間にして数秒にも満たないが濃密な気配が水飴のような重みを持って場を支配している。
「はわ♪ お坊様初めてみましたの♪」
 その空気をぶち壊すかのような黄色い声、榊・麗(ショタコン女王様・b23162)が相手の姿を見てファンシーな小物を見た女の子のノリで声を上げる。瞬間、その場の均衡が一気に崩れ皆それを戦闘の開始と言わんばかりに動き始める。
「……えっとぉ、わたくしのせい?」
 疑問の声を上げながらも皆にならい榊も戦闘準備に入る。かくして偽りの御堂を舞台に本格的な戦いは開始された。


 シフォン・ブロウニン(うぃずマサさん・b21079)が呼び出したカードの中から呼び寄せた相方の蜘蛛童にゴーストガントレットで強化を施す。斎宮・鞘護(魔剣士・b10064)や貴也も武器を大きく振るい同じく攻撃の威力を増す。初手の動きとして彼らは自らの攻撃力を増す方向へと動くがそれは能力者達だけではなく地縛霊も同じである。
「不逞なる者達よ! かぁっつっ!」
 偽りの堂内に地縛霊の怒号が響き渡る、それよりも一拍遅れて体の自由を奪う不可視の力が能力者の自由を奪い、同時に一手を使った強化を無効化する。
「ボクの体……動いてよ……っ」
 草薙・晶(今日もわんこはうたをうたう・b25067)が痺れる体に叱咤する。今は戦わなきゃ行けない時だと思っているのに、思いと裏腹に全身が言う事を聞かない。数秒の間に幾度か身じろぎするがうんともすんとも答えない、だがある瞬間を境に動きを妨げていた痺れが取り払われる。
「レム?」
 振り返ると彼の相棒のモーラットが胸を張っている、様に見えた。どうやら彼が祈りを捧げたお陰で動けるようになったらしい、小さく一言『ありがとう』と伝える。美琴も彼と同じようにモコに礼をいう。
 最初に自己強化ではなく、接近しての戦いを挑んだ者もいる。蘭・蓮(空を亡くした闇色の鷹・b35362)はそもそも力に類する能力を持ち合わせておらず、相手に踏み込む勢いのままに鋭い蹴撃を相手の死角から打ち込む。
「……マントを持って来て正解だったね」
 彼の動きと共に翻るマントはそれはそれで絵になって。少なくとも禿頭グラサン鹿角僧服の組み合わせよりは人気は出るだろう。
「うぅ、筋肉隆々の坊主さんに鹿の角をつけても可愛くないですよぅ」
 サイコフィールドで防御力を強化しているサラがポロリと漏らす。まあ普通はそう感じるだろう。
「え? わたくしはとっても可愛いと思いますけれど?」
 少しずれた麗はやっぱり少々違う感想である。実際はマヒして体が動かないので相手を観察する事くらいしか出来ていなかったのだが。もちろんその間も彼女は警戒を緩めているわけではない。地縛霊も動けない能力者達に向かい上半身をお辞儀するように倒し、角の先から放射線状に広がるほとばしる稲妻を撃ち放った。
「むっ!」
 範囲内にいた者達は各々武器を構えて稲光をやり過ごす。本来なら防いだとしても相当のダメージを受けるはずの攻撃であるがサイコフィールドの効果もあってか受けタダメージは最小限で済む。
「響け、歌声! 傷を! 痛みを、癒すためにっ!」
 そして防御を貫いたダメージも晶のヒーリングヴォイスび寄ってカバーされる。電撃を振り払い足止めを受けていた者達も次々とその状態とダメージから脱し地縛霊へと肉薄していく。それでも鞘護のように自己強化にこだわる事で攻撃できる手番を減らしてしまう者もいるが。シフォンの蜘蛛童の「マサさん」も毒の牙で噛み付くことによって敵に傷を付けていく。
「……正座は慣れているはずなんだが」
 痺れる足が移動を封じている状態が続く貴也は相手にさらに毒を送り込むようにダークハンドを発動させる。影から伸びる手は地縛霊を引き裂く。
「ぬぅうん! この不信心ものどもが!」
 だが、地縛霊も防戦一方ではなく。近づいてきていた鞘護に掴みかかる。何処と無く相手からかもし出される匂いに顔をしかめるが、次の瞬間その意味は別のものとなる。
「そぉいっ!」
 地縛霊は彼を掴んだあと締めながら床に叩きつける。表情の歪みは匂いからではなく、痛みと痺れによるものへと変わる。鞘護に攻撃を加えた後、満足げに体勢を立て直そうとする地縛霊に麗の火球が着弾する。その間に美琴とモコの主従揃っての回復アビリティが即座に彼の傷を癒す。
「聖(セイント)君、こっちこっち」
 奇妙なあだ名を相手につけてにこやかに笑いながらクレセントファングを叩きこむ蓮。さりげなくサラからの白燐奏甲を受け武器から白い光が漏れ出ている。他の前衛とちがう方向からの攻撃を行うことによって相手の複数範囲に対する攻撃もしにくくさせている。その間にもシフォンの穢れの弾丸などが地縛霊を貫いていく。
「このまま一気に倒すぞ!」
 ようやく足止め状態から回復した貴也が蓮と相手を挟撃するように取り囲む。振りかざした刃は影をまとい切っ先が地縛霊へと突き刺さる。
「此処から先へは行かせねぇぜ!」
 彼の後ろには護るべき者がいる、たかだか妄執の塊には負けるわけにはいかないのだ。その意思を刀に込めて刃を相手の体に深く潜りこませていく。その痛撃に応えるように地縛霊は野太い咆哮を上げる。
「ぬおおおおぉぉぉぉっ!?」
 それは痛みに耐えかねて生まれた声か、はたまた自らに従わぬ相手への怒りか。言葉にならない声を上げて手にした数珠で右へ左へと貴也の体を殴打する。隆起する筋肉から見て取れるように相手の膂力は相当のもので、攻撃を受けて数瞬の間は足が地に着かない勢いであった。慌てて美琴や麗が治癒符で回復を行うがそれだけでは全快には至らない。
 このままでは押し負けると、鞘護が手にした鉄の塊とも言える斬馬刀に炎を纏わせて一気に振り下ろす。それもまた斜めに―まさに袈裟懸けに―入り炎を上げるが、驚くべきことに未だに地縛霊は健在でありまだ戦う力を残しているようである。それでも無事とは言えないようで徐々にであるが戦いの中で見せる行動の端々に弱っている兆候が見て取れる。互いに押し合う戦いの中、、地縛霊は再び角から稲光を走らせる。広がっていく雷光の枝は前で攻撃している者だけではなく回復に参加していた美琴や晶を巻き込んでいく。物理的な勢いを持った稲妻は前衛だけでなく彼らも焼いていく。
「……うっ……」
 体の中を巡る雷撃に晶が膝を付く。使役ゴーストを使うメンバーの中で一際体力の低い彼はこの稲妻の攻撃に耐え切れなかったようだった。彼だけではなくシフォンや美琴もよろめきながらも立っているのがやっとだ。
「こいつっ! 楽に滅べると思うなよっ!」
 雷撃を凌ぎきった貴也は後ろに控えていた仲間達の惨状を目の当たりにして先程の攻撃よりもさらに深く刃を突き立てる。さらに彼と同じように先程の攻撃を耐え切った麗が火球をあわせて叩き込む。燃え上がる地縛霊を一気に倒しきろうと他の仲間達もこの気に乗じて攻撃に参加する。
「女の子には優しくしないと嫌われちゃうよ?」
「人の恋路を邪魔するような人は、ナイトメアに蹴らせますよぅ」
 位置的に美琴達に大きな攻撃が加えられていたことが視界に入っていた蓮は軽口を叩きながらも真剣な眼差しで一撃を見舞い、サラも仲間達が大きく傷を受けた怒りを夢馬に乗せて叩きつける。
「おぬしらぁっ……!?」
 連続する攻撃に耐え切れずについによろめく地縛霊。だが、能力者達の攻勢はまだ止まらない。その一瞬のよろめきを見逃さずに鞘護が背丈ほどの尺を誇る得物を大上段に構え、そして床まで断とうとする勢いで振り切る。一拍遅れて地縛霊の体から炎が吹き出る。体の端々から漏れ出る小さな火は確かに相手の体を焼いているのを示すが、そこまで追い込んでいるのにもかかわらず地縛霊はまだ両の足で立っている。そして辛うじて動く体で一人でも多く巻き添えを増やそうと近くにいる者に殴りかかろうとする。
「もきゅっ♪」
 しかしそんなクライマックスの中空気読まないモコが一鳴き。てーんと地縛霊の頭上にジャンプして全身から火花を生み出す。弾ける火花は輝きながら地縛霊を次々と貫き、耐え切れなくなった地縛霊の体は塵へと消えていく。同時に周りの特殊空間も揺らいでいきその形も留める事が出来なくなっていく。


 特殊空間が解けると能力者達は元いた場所へと帰還する。近くには打ち捨てられた寺があり周りは寂れた雰囲気である。
「終ったね、皆お疲れ様」
「坊主さんお強かったですねぇ」
 イグニッションを解きながら終ったことを確認する蓮と感想を簡単に述べるサラはふと晶のほうへと目を向ける。
「あはは、ボクは大丈夫ですよ♪ ほらっ」
 体を軽く動かそうとしてすぐさま引きつるような痛みに笑顔を引きつらせる晶。
「無理はするな」
 鞘護が短く言葉を告げながら救急箱を取り出し彼の治療にあたる。幸い後に引くような傷はないようで能力者なら治るのに時間はかからないだろう。
「……ところで、貴也ちゃんたちはこんなところで何をしてたのかな〜♪」
 ふとシフォンが周りの状況を見ながら二人に声をかける。普通に考えれば人っ子一人も通らないような辺鄙な場所で二人きりで居たのは疑問である。
「それは秘密です♪」
「人に言えないような事は何もしてないよ。ね、貴也君♪」
 有無を言わせない笑顔を向ける貴也と美琴。
「こんな所で秘密にしなきゃいけないこと……はぅぅ」
 そしてその答えに対して顔を赤らめるサラ、果たして何を想像したのだろうか。何はともあれ一件落着。
「もきゅっ!」
 麗に枝の角をつけてもらったモコが誇らしげに一鳴きしてこの一件はシメと相成ったとさ。


マスター:西灰三 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2008/06/15
得票数:楽しい3  カッコいい7 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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