In the HOUSE


<オープニング>


 男は『出る』とうわさの廃墟にきていた。
 別に幽霊なんて信じていないし、そういうのに興味があるわけでもない。
 夏も本格化し、肝試しのネタに使おうと思って、ここにやってきたのだ。
 入り口に入ると、何やら音が聞こえてくる。
 ダンスミュージック……ジャンルでいえばハウスだ。
 だが、サウンドはやたら明るくハッピーで、古臭さを感じさせる。
『Who´s in the house?』
「「「「SANTAMARIA in the house!!!」」」」
 中に入ると、DJがフロアのクラウドを煽りまくっている。
『Put your hands up in the AIR!』
 一斉に手が上がり、フロアは絶叫の渦へ。
 よく見ると、踊っているのは……ドギツいメイクをした……乙女の心を持つ野郎達。
 いわゆるオカマである。
 DJが男を見ると、途端に目がイヤラシイ感じになり……ブースから出て彼に近づいてくる。
「うわぁー!」
 男は叫びながら逃げようとするが……捕まってしまい、フロアの中に引きずりこまれていった。

「うぅぅ……また、でました……」
 栗栖・優樹(小学生運命予報士・bn0182)が疲れた表情で、集まった能力者達に事件の内容を説明する。
「え、えっと……クラブっていうの? おどってあそぶところがあって、そこのはいきょにゴーストがあらわれたんです」
 場所は十数年前に営業停止したクラブ。
 そこにゴーストの存在が確認されたらしい。
「そこにはいると、とくしゅくうかんにひきずりこまれて……」
 そこで、優樹の口が一時停止する。
「……女の子のようなすがたの、おっきい男の人が……」
 ブルッ……何ともいえない怖気を感じ、背筋が寒くなる。
 どうやら、オカマらしい。
「男の人が中に入ると……とびかかってきます……」
 今回の敵は一筋縄ではいかないようだ。
「え、えっと……とくしゅくうかんはとくになにもなくて、おくのほうにレコードをまわしているじばくれいがいます」
 気を取り直して説明を再開する優樹。
 特殊空間はダンスフロアのようで、特に障害となるものはない。
 そこに、オカマリビングデッドが腰をくねくねさせながら踊っているわけである。
 そして、奥にDJの地縛霊。生前はDJ惨汰魔離亜と呼ばれてたようだ。
 こいつがボスらしい。
 もちろん、オカマである。
 男性が大好物だ。
 特殊空間に入ると、間違いなく男性陣に殺到するだろうから、注意しなければならない。
 当然、逃げ場はないので、ある意味覚悟が必要だろう。
 ヤラれる前に倒すしかない。

「うぅぅ……すごくたいへんなことになっちゃいますが……おねがいします……」
 説明を終えた優樹は、疲れ果てたかのようにイスに座った。

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参加者
風見・玲樹(の弱点は虫・b00256)
外走・真名(仁吼義侠・b02142)
歌胤・カノン(月葬のエチュード・b02970)
霊屋・月納(葬送道士・b03140)
天瀬・一子(雪華媛・b05184)
天雅・雛愛(花の下にて春死なむ・b16873)
守森・姫菊(橙黄の延齢客・b20196)
滝沢・千鶴(一片氷心・b38883)



<リプレイ>

 能力者達は非常に複雑な表情でゴーストがいるという廃墟にやってきた。
 この廃墟は十数年前までクラブとして営業していたそうだ。 
 ハッピー系のハウス・ミュージックを回すDJが毎晩、クラウドを熱狂させていたという。
 当時、ハッピーハウスやハッピーハンドバッグといわれたサウンドがあり、女の子がその名のとおりハンドバッグを持って踊る姿が見受けられた。
「ハウスか……ここのやつらとは踊りたくねぇな」
「今、流行ってるらしいけど、私はロックの方が好きね」
 歌胤・カノン(月葬のエチュード・b02970)と守森・姫菊(橙黄の延齢客・b20196)はイグニッションすると、入り口の前に立った。姫菊が「さて、ガチバトル楽しみますか」とやる気満々なのに対し、カノンの表情は硬い。
 残念なことに、このクラブでは乙女の心を持ったお兄さん達がハンドバッグを振り回していたらしい。
 と、いうことは……今まで戦ってきた中で、一番関わりたくないと断言できるゴーストがここにいる。
 とりあえず、ヘッドホンで音楽を聴いて集中するカノン。
「オカマのゴーストどもなんぞに食われてたまるかっ!」
 過去に何があったのかはわからないが、外走・真名(仁吼義侠・b02142)も憤慨しつつイグニッションした。
 そのまんま言ってしまった……敵はオカマであると。
 当然、ここに集まるゴーストもオカマなわけで、能力者……特に男性陣は食われないようにと真剣であった。
「そうだよ! 絶対に清い体のまま、無事に生還するんだ!」
 血の涙を流しつつ、風見・玲樹(の弱点は虫・b00256)が叫ぶ。
 その割には微妙に肌を露出した服装なのだが、これは囮になって敵を引き付けるため。
 自ら危険な立ち回りを買って出るとは、まさに漢である。
「なんでクラブにオカマなんかが集まるんだろう……」
 霊屋・月納(葬送道士・b03140)も表情に不安の色を隠せない。
 元々、ハウスはそのような方々の文化と結びつきがあるのだが、そんなことはともかく、いろんな意味で危険なので早々に滅ぼしておいた方がよいだろう。
「『食べられないように』ってのは、意味深だよねー♪」
 軽いパンクルックにちょっとしたフェイスペインティングをした天瀬・一子(雪華媛・b05184)が、何やら怪しげな目つきで男性陣を見ていた。
(「今回は風見くんや月納くんが見所かなー? いやいや、歌胤さんや外走くんが抵抗しつつも……というパターンも捨てがたいかも? しっかし、優樹くんもなんだってこんな予報を見ちゃうんだろ? はっ!? もしかしたら、優樹くんの潜在意識にこんな願望がっ!? 優樹くんだったら……うふふふふふふふふ♪」)
 一子がこんな妄想をしているなど、誰も知る由も無いが……男性陣が背筋に妙な怖気を感じたのは気のせいか。

「さすがにそういったのに興味あるわけでもありませんし、食べられているところを見たいわけでもありませんから、本気でいきます」
 特殊空間のクラブに進入した能力者達。男性陣は恐る恐るといった感じだったが、女性陣は滝沢・千鶴(一片氷心・b38883)をはじめ、本気モードだ。
「僕は静かな曲が好きなんだけどなぁ〜」
 中に入るなり、月納は両手で耳を塞いだ。
 爆音で流れるダンスミュージック……明るくポップなメロディラインが特徴のハンドバッグ・サウンド。
 アンプによって増幅された低音がウーハーから吐き出され、その重いビートが体に炸裂する。
 聴くための音楽ではない。踊るための音楽に戸惑いを感じた。
『Who is in the house?』
「「「「SANTAMARIA in the house!!!」」」」
 DJが踊っているオカマ達を煽っている。
「さんたまりあ いん・だ・はうす〜♪」
 中に一子の声が混ざっているのは気のせいか。
 自分は攻撃されないからっていい気になってなんかナイヨ? といった表情だが……。
「ICHIKO in the house!(今夜は一子が主役だよ!)」
 視線を感じてコホンと咳をすると、祝詞を唱えつつ遅れてイグニッションした。その姿は先程のパンクルックとはかけ離れた、ゴーストを清めるために戦う巫女である。
「なんだかハイテンションなゴーストさんですね♪」
 天雅・雛愛(花の下にて春死なむ・b16873)が踊り叫んでいるゴースト……オカマなリビングデッド・ダンサーズを見てつぶやく。腰をくねくねしつつハンドバッグを頭上でブンブン振り回す姿は、魔剣士のアレにそっくりかもしれない。
「えらく気合入ってるね……って弱気になったらダメだよ! 食われたくはないけど、カマさんを引き付けなきゃ!」
 パーティーの始まりだ。
 玲樹がフロアへ飛び出すと、その服装を目立たせるように華奢な振る舞いと挙動不審な動きでカマゴースト達の気を引く。すると、「んま! なんておいしそうな男子なこと!」とばかりに即座に反応し、一挙に玲樹へ殺到した。
「うわぁ! こんなに一気に来るなんて聞いてないよ! あぁ、でも我慢だよ! ここで僕がやらずに誰がやる!?」
 涙目になりつつ囮となる玲樹は、それはもう食われまいと必死。
 だが、カマリビングデッドの数は多い。
 逃げ回るものの「いただきま〜す☆」と飛び込んできたカマリビングデッドに取り押さえられ、フロアの中心に引きずり込まれていく。
『Let me hear you say Yeah!』
「「「「Yeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeah!!!」」」」
 勝ち誇ったかのようにイェー! と叫ぶカマゴースト達。
「風見! ちっ……しかたねぇ。男の生き様ってもんを見せてやるっ!」
 カマリビングデッドに服を脱がされそうになっている玲樹を助けるため、真名が意を決して飛び込んだ。「こっちにこい!」と、バラバラになるように引き付けようとはしてみたものの……「んま、こっちはオ・ト・コらしいわ!」とばかりに今度は真名に殺到。
「……なんて節操ないやつらだ……救助頼むぜ、ヒナ」
 音楽と深呼吸で集中力を高めたカノンは、ヘッドホンを投げ捨てる。
 少しでも分散すればいいのだが……覚悟を決めてギターマシンガンを手にフロアへ出た。
「じ、冗談じゃねぇっ! まだ彼女とキスすらしてねぇってのに、オカマに食われる訳にはいかねぇぜっ!」
 必死にカマリビングデッドを振り払う真名。
 その間に雛愛がフロアのど真ん中でぶっ倒れている玲樹を引きずり出していた。
「イタイのイタイのとんでけー、ですよー」
 白燐奏甲で回復させるが、玲樹は体の傷より心の傷の方が大きいかもしれない。
 貞操は何とか守られたものの、露出した肌が赤く腫れ上がってたり、キスマークがついていたり。
「あんまりおイタしちゃダメなのです。ちょっとだまっているですよ」
 雛愛はDJへ向けてヒュプノヴォイスを歌うが、特に効果はなかった。徐々に歌声が小さくなり、声はフロアに轟く爆音に飲み込まれていく。歌が消えた後に残ったのは、グガーとフロアにブッ倒れて眠っている一体の取り巻きカマリビングデッド。
 効果が薄いと判断した雛愛は、白燐蟲を呼び集める。
「オレの熱い魂の曲で踊れ!」
 カノンが真名を取り囲んでいるカマリビングデッドにギターマシンガンを乱射。
 真名も服を脱がされかけ、あわやというとところだった。
 ここで、カノンに興味を持った三体のカマリビングデッドが近寄ってくる。
「よ、寄るんじゃねぇ!」
 銃声とカノンの悲鳴は爆音にかき消されていく。
「食べられたくないからねぇ……さぁ、ここまでたどり着けるかな?」
 後衛でパッと見では男女の区別がつきにくかったので今まで安全圏だった月納へ、ついに魔の手がさしかかる。
 寄ってくるカマリビングデッドに八卦迷宮陣で足止めしようとするも効果はなく、「たっぷりと味わってあげるわぁ〜ん☆」と月納へダイブ。
「汚らわしいです。霊屋さんに近づかないでください」
 飛んできたカマリビングデッドの顔面に、千鶴のクレセントファングがNice Hit。
 迎撃されたカマリビングデッドを月納は石兵点穴で石化させた。
「う〜、あまりこんなオブジェ見たくないな〜」
 カマが微妙なポーズで悶える石像がフロアに転がった。
「これ以上、好き勝手なことはさせません」
 月納を守った千鶴は、さらに近寄ってくる一体を迎え撃つ。
「こっちの相手もしろよなぁ!」
 三体のカマリビングデッドにもみくちゃにされてるカノンだが、救いの手が差し伸べられた。
 姫菊が彼にガチで迫ろうとしているヤツを思いっきりブン殴る。
「大丈夫? モテる男は辛いねぇ」
 服がはだけたカノンをクスッと笑いながら救い出すと、姫菊は残りのカマリビングデッドを龍顎拳でフルボッコにしていく。
『Somebody Scream!』
 DJがMCでカマリビングデッド達に気合を入れる。
 フロアは絶叫。残ったカマリビングデッドはハンドバッグを振り回し、ヒートアップして能力者(特に男性)に襲い掛かる。
「ヤられるだけが僕じゃない! カッコイイ僕を見せてやる!」
 うっすらと涙を浮かべる玲樹だが、カマリビングデッドに対抗して大鎌を振り回すと、今までヤラれっぱなしだった怒りをぶつけるが如く、紅蓮撃による烈火の一撃でカマリビングデッドを玉砕した。「いや〜ん」などと最後までカマらしく散っていくリビングデッドに戦慄するも、まだ敵は残っている。
「よくもヤッてくれたな!」
 真名の憤激がフロアを揺るがす。
 脱がされかけた服を直すと、フロストファングでカマリビングデッドを蹴散らした。
「まとめて消えちゃうといいですよ」
 雛愛の裂帛した声がクラブに流れるサウンドを切り裂き、同時に放たれた白燐蟲がカマゴースト達を蝕んでいく。
 一子が光の槍で追い討ちをかけ、千鶴が雷の魔弾を準備。
「こんな音楽ではなくて、私にシビれてください」
 零距離から放った魔弾の電撃がビリビリ。
 千鶴は感電死してしまうほどにカマリビングデッドをシビれさせた。
「ラストに向けて盛り上がってきたな。キラーチューン用意して待っていな……ラストは葬送曲をリクエストしてやるけどな」
 カノンはギターマシンガンのネックを掴んでカマリビングデッドをぶん殴り、ふらついたのを姫菊が捕まえた。
「最後の口付けが女でごめんね」
 嫌がり、必死に抵抗するカマリビングデッドだが、姫菊が後ろに回りこむと、耳元でそっとささやき……ガブリ。
 女に食われるという最悪の結末で、短いリビングデッド人生を終えた。
 単純にいえば、吸血噛み付きで倒されたということである。
「ヒナ、進撃開始だ。あっちのオカマもヤッちまおうぜ」
 こうしてフロアのカマリビングデッドは全て倒され、残るはDJのみ。ラストスパートとばかりに牙道砲を撃ち込むカノンに続き、能力者達が一斉にDJブースになだれ込む。
 真名がクロストリガーを乱射してDJとブースを穴だらけにし、玲樹が大鎌を振り回して斬り払い、カノンと姫菊がブースに侵入してターンテーブルとミキサーもろともDJをブッ壊していく。
 凄まじいスクラッチノイズが響いた後、フロアは静寂に包まれた。

「……みんな、無事か? 特に男衆」
「な、なんとか……」
「今までで、一番最悪な戦いだったぜ……」
 真名の呼びかけに半分魂が抜けたような声で返す玲樹。そして、カノン。
 皆、服がはだけ、ボロボロになっており、壮絶な戦いが展開されたことを物語っていた。
 まぁ、イグニッションを解けば元に戻るのだが……刻まれた心の傷が元に戻るには時間が必要かもしれない。
 男の子の心はガラスのように繊細なのである……。
「人類の敵は滅ぼしました」
 よくやった、私……と、心の中でグッと拳を握り締める千鶴。
 何とか月納を守りきり、彼の最後の仕事「除霊建築学」による浄化を見守る。
「ふ〜……ある意味、悪夢だったね〜」
 男性陣にとっては悪夢以上の恐怖だった。
 こんなことが二度と起こらないことを願って、月納は廃墟の隅に小さな祭壇を作る。
 願わくば、こんなゴーストがもう現れませんように……。


マスター:えりあす 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2008/07/01
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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