秘密の臨海学校で無人島体験! 〜にゃんこの巻〜


<オープニング>


 学園祭も終わり、銀誓館学園も夏休みの季節となりました。
 夏休みは、海にプールにカキ氷、そして夏休みの宿題や自由研究など、やる事がたくさんあります。
 しかし、忘れてはならないのは、学校行事の臨海学校でしょう。
 銀誓館学園では、瀬戸内海の浜辺(銀誓館学園の私有地)で、8月10日〜12日の3日間、臨海学校が行われます。
 この臨海学校で、普段の授業では得られない様々な体験を楽しんでみましょう。

 なお、今年の夏は、瀬戸内海の小さな島(無人島)で、妖獣の発生が確認されているようです……。

「今年は瀬戸内海のビーチで臨海学校なんだってね。ボクは初めてだから凄く楽しみなんだよ!」
 嬉しそうな秋海棠・博史(フリッカークラウン・bn0120)の様子に、澄江・撫子(高校生運命予報士・bn0050)もにこにこしている。
「その調子で、妖獣退治も頑張って下さいね」
 瀬戸内海の小さな無人島に現れた妖獣を、被害の出ていないうちに倒す。それが、臨海学校の影で能力者達に託された依頼なのだ。
 撫子は、広げられた瀬戸内海周辺の地図に記された赤い印を指差す。
「皆様にはこちらの島をお願いしたいのですが、相手は子猫の姿をした妖獣です」
「へぇ、本物の子猫ちゃんって訳かい?」
「ただし、大きさは中型犬くらいで、下半身は50cmくらいの大きさの渦巻き貝の中に収納されていますね」
「……」
 流石妖獣。博史の微妙な表情から、そんな言葉が読み取れそうな気がした。
 妖獣は岩場の付近にいることが多く、猫の部分が白一色、キジトラ、三毛とそれぞれ違う模様の3体がいる。中でも、白いものがリーダー格のようだ。
「愛くるしい子猫の姿に気を取られていると、渦巻き貝で思い切り殴られて痛い思いをすることになってしまいます」
「うわ、なんか痛そう……精神的に」
 遠い目をしている博史を他所に、撫子は妖獣達がみゃあみゃあと鳴いて視界内にいる味方を回復させてしまうということも能力者達に伝えた。
「子猫の部分を見てしまうと、ちょっと可哀想に思ってしまうかも知れませんけれど……妖獣には変わりありませんからね」
 件の島へは、漁船が送ってくれることになっている為、キャンプグッズの中で嵩張るものでも幾分多く持って行けるだろう。
「あんまり優雅な船旅とはいえないけど……まぁ、しょうがないよね」
 肩を竦めた博史は、無人島でキャンプ等に使うものは忘れずにと仲間達に促す。
 妖獣退治を終えると、どうしても夕方になってしまう為、そのまま一泊してから翌日本来の臨海学校を行っているビーチに戻る予定なのだ。
「ボクは折り畳みのパラソルやビーチチェアでも持って行って、無人島のバカンスを楽しもうかと思ってるんだ。でも、もっと面白いアイデアがあったら教えて欲しいな」
「遊ぶだけでなく、キャンプの準備もお手伝いして下さいね」
 釘を刺す撫子の言葉に、博史も「そりゃ勿論さ」と尤もらしく頷いた。
「あ、でもボク、ギターより重いもの持てないんだ。そこんとこヨロシクね?」
「……」
 運命予報士は、妙ににこにこしながら博史を眺めている。
「うわぁ、撫子クンの笑顔が怖いよぉ。さぁみんな、真面目に相談しよう、相談!」
 口許を引き攣らせながら、能力者達の輪に逃げ込む博史だった。

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参加者
黒矢・剛(視誄の黒狼・b07495)
蟲姫・蛍(真夏に騒ぐ蟲・b13036)
藤生・琉架(ヘヴンリエア・b17156)
アイン・ヴァールハイト(黒翼・b22629)
エイアル・アーニング(にゃんこうもり・b24971)
ステラ・ディア(蒼の舞姫・b28705)
ユーリ・クライスラー(可愛い子には女装をさせよ・b31504)
銀・華蓮(白銀の閃影・b43986)
NPC:秋海棠・博史(フリッカークラウン・bn0120)




<リプレイ>

●青い海を渡って
 白い尾を引いて穏やかな海を滑っていく、一隻の船。
 港を出る頃には何艘も見られた同じような船も、今や遠い水平線の辺りにぽつぽつと影が見えるだけになった。
 冴え冴えするような深い空の色が何処までも続き、白い入道雲のコントラストが爽やかな夏を感じさせてくれる。
「おっちゃん、素人でも銛で魚獲れるもん?」
 準備してきた銛を手に、漁師に魚の獲り方を熱心に教えて貰うアイン・ヴァールハイト(黒翼・b22629)は、「坊主はスジがいい」と褒められて自信を付けたようだ。
 白いシャツの襟を風に靡かせ、サングラスで既にバカンス気分の秋海棠・博史(フリッカークラウン・bn0120)は、彼らの様子を何気なく眺めている。
 初めての臨海学校で緊張気味の銀・華蓮(白銀の閃影・b43986)は、そんな博史に含みのある視線を向けていた。
「ん? ボクの顔に何か付いてるかい?」
「い、いえ……」
 それに気付いた博史はひょいとサングラスを上げて首を傾げたが、さして気にした風もなくにっこりと笑った。
「そう、あんまり緊張しすぎると船酔いするかも知れないから、気を付けてね」
「ほれ、島が見えてきたぞぉ」
 大きなリュックに様々なものを詰めてきたユーリ・クライスラー(可愛い子には女装をさせよ・b31504)は、漁師の声に興奮して荷物の側から立ち上がる。
 目の前には、青い海の先に浮かぶ小さな島が、こんもりと緑を乗せた姿をはっきり捉えることが出来た。
「なんか、すげーワクワクしてきたぜ! バカンスバカンス〜♪」
 蟲姫・蛍(真夏に騒ぐ蟲・b13036)が思わず即興で歌い出すと、年若い少年達も期待に胸を膨らませはしゃぎ出した。
「待っててね、猫さん達〜っ!」
 島へ向けたユーリの声とともに、短い船旅は終わりを告げようとしていた。

●岩場に潜む猫
 無人島に到着した能力者達は、そのまま漁に行くという船を見送って早速起動した。
 到着した場所から見渡すと、右手に妖獣が潜むという岩場らしき場所が広がっている。
「シロもキジトラもミケも友達にいる気がするけど……気のせいにゃ! がんばるにゃ!」
 相対する妖獣の姿を想像して顔を曇らせる、エイアル・アーニング(にゃんこうもり・b24971)。しかし、妖獣は別物と眉を吊り上げ決意を固める。
 アインは荷物の安全を考慮しながら、リフレクトコアを使おうとして思い止まった。
 直後に現れるとわかり切っているものを待ち伏せるのならともかく、探索前に強化しても戦闘が始まる際に解除されてしまうのだ。

 探索を始めた面々は、程なくして妖獣と遭遇することになった。
 岩場の奥の方から、みぃみぃにゃあにゃあと愛らしい複数の鳴き声が聞こえてきた。
「近付いてくるぞ!」
 黒矢・剛(視誄の黒狼・b07495)の声に、一同は配置を確認し待ち構える。
 やがて現れたのは、やはり奇妙な姿の獣だった。
 最初に見えたのは円らな瞳をこちらに向けた、可愛らしい子猫達。甘えるように鳴く姿だけを見れば、思わず騙されてしまいそうだ。
 子猫にしては少々大きめの胴体の先が収まった巻貝は、足がある訳でもないのに滑るように岩場を移動している。
「なんでこんなところににゃんこがいるにゃ! おかしいにゃ!」
 エイアルはきっと妖獣達を睨み、体内を逆流する魔弾の力で魔方陣を展開させた。
「うぅ……まじまじ見ちゃダメです」
 猫の部分から目を逸らし、藤生・琉架(ヘヴンリエア・b17156)も魔弾の射手を発動する。
「モフモフしたいけど……痛いのはイヤだなっ」
 愛らしい子猫の姿に瞳を輝かせるも、意を決して光り輝く4つのコアを展開するユーリ。
「敵は……敵……」
 油断することはないとぽつぽつ呟きながら、ステラ・ディア(蒼の舞姫・b28705)も術式の力を高める魔方陣を生み出す。
「覚悟しろよ、お前らの鳴き声は今日からメソメソだぜ!」
 蛍は威勢を張りながら前に出て、白燐蟲の淡い光を三日月のような前立のついた兜に宿した。
「早く倒そう」
「うん」
「(――デートの為に)」
「……!」
 剛の声に頷いた琉架は、その後ぽつりと小さく付け加えられた言葉を耳にしてボッと火を噴くように赤面した。
「あれ、顔赤いな。大丈夫か?」
「あ、暑いだけですっ」
 獣のオーラを纏った角兜で妖獣を突き上げ、きつい一撃を食らわせた蛍がきょとんとした顔で尋ねると、琉架は慌てて首を振り、燃え盛る炎の玉を白猫に向け放った。
 燃え広がる炎が、妖獣の身を苛む。
「巻貝に隠れる発想はなかったにゃ。入れそうな貝があったらやってみるにゃ」
 ふと呟くエイアルに、そんなに大きな巻貝はそうそう見付からないとは誰も突っ込めなかった。
「ごめんね、キミ達を攻撃はしたくないけど……」
 少し辛そうな顔をしながらも、ユーリは夢の中から呼び出した白馬を駆らせる。
 妖獣達はいずれかが指揮を取るというような能はなく、統率が取れている訳でもない。白猫を狙うのは簡単だったが、前衛がそちらに集中した分他の妖獣達を遊ばせてしまうことになった。
 後方のユーリやステラにも攻撃が及んだが、そこは自らを癒す術でなんとか堪え予定通りに白猫を先に倒そうと反撃の刃を重ねる。
「す、素早いですね……」
 華蓮が生み出した無数の蝙蝠が猫達に襲い掛かるも、ごろんごろんと転がってことごとく避けられてしまい、攻撃をスラッシュロンドに切り替える。
「ヒロフミ、ヒーリングヴォイスを!」
「了解っ!」
 アインの呼び掛けに2人の歌声が涼やかに響き、柔らかな波紋が仲間達の傷を癒していく。
 更に、多くのダメージを負った者は剛の治癒符や蛍達によって癒され、深刻な事態を迎えることなく流れを能力者側に変えていった。
 エイアルが人差し指を突きつけると、幾度かの追撃と共に白猫の体力が流れ込み、続けてアインの放った光の槍が白い妖獣に突き刺さる。
「バイ……バイ……」
 別れを告げるステラの手を離れた火球が、妖獣の白いふわふわな体毛を焼き尽くす。
 白猫の体力は他の妖獣よりも優れていたようだが、集中攻撃の甲斐あって比較的早く倒すことが出来た。
 キジトラも優先順位に従って攻撃を絞られ、呆気なく力尽きる。
 残る三毛には、数度の応酬の後炎の魔弾を放つ琉架と護るべき者を背にして一際輝く宝剣を払う剛、そして蛍の獣撃拳が目を見張る程のタイミングで炸裂して止めとなった。
 妖獣にとっては不運だったかも知れないが、連携が格好良く決まって清々しい幕引きだ。
 潮の香りと森の匂いを胸に吸い込んで一息つくと、能力者達は起動を解いて荷物を取りに戻った。

●バカンスなひと時
 妖獣退治の後は、森の一角にテントを張れる広さの場所を確保して、今度は荷物の大移動だ。
「重いものは俺が持つから」
「あ、ありがとう」
 剛は体格のよさもあってか、女子や小さい生徒の分まで荷物を運ぶ。
「ヒロもサボってないでなんか……」
「んー?」
 小さな身体で、荷物をキャンプ場所に一生懸命持ち運ぶエイアルが振り向いた先には、テントのポールを纏めて担いだ博史の姿があった。
 奴はギターより重いものは持てないなんて言っていた筈だが、そういえば戦闘中はスラッシュギターを2本振り回してヘビィクラッシュしていたような気がする……。
「なんか騙された気分にゃ」
 腑に落ちない顔をしながらも、キャンプの準備は順調に進んだ。
「なかなか丈夫そうだな」
 組み立てられたテントを眺め、剛は感心げに呟く。
「昔使うてたヤツなんやけどな」
 アインが持ってきたテントは市販のものより色も地味で無骨に見えるが、その分頑丈そうだ。

 ゴーグルとシュノーケルを装着したアインは、魚を獲る為の銛を肩に掛けた。
「ほな、ヒロフミも行こか!」
 呼び掛けた先の博史も、既に派手な柄の水着にびしっとゴーグルを掛け、網を持ってスタンバイしている。
「……なんや、結構気合入っとるやないか」
「そりゃ、夕飯が掛かってるからねぇ」
 一方、岩場での釣りに繰り出した面々は、のんびりとした時間を過ごしていた。
 波に揺られて浮きがぷかぷか。
「エイアルさん、引いてますよ」
「にゃっ?」
 猫の姿で転寝していたエイアルは、隣で竿を握る華蓮に声を掛けられ飛び起きた。確かに竿の先は拉げ、糸が引っ張られている。
「あ〜……」
 急いで人に戻った彼はリールを巻き始めるも、タッチの差で逃げられてしまった。
「うわ、初っ端からこいつか!」
 一番慣れている蛍が最初に釣り上げたのは、小さなフグだった。
「食べられないんですか?」
「毒だらけで食えたモンじゃねぇんだ」
 華蓮が魚をよく見ようと身を乗り出して尋ねると、蛍は渋面で針から引っぺがした外道をぽいと沖面目掛けて投げた。
「次はいいの来てくれよ、今日の晩飯がなくなっちまう!」
 気を取り直して餌を付け直し、海へと放る。
「難しい……」
 ステラも一度は何かが掛かったものの、結局餌を取られて逃げられてしまい、裸にされた釣り針を眺めて溜息をつく。
 しかし、初めて挑戦する仲間ばかりだし釣りは運もあると、面々は諦めず釣り糸を垂らした。

 夕暮れも、そろそろ夜の色に飲み込まれる頃。
「いっぱい釣れたにゃ〜!」
 片方にはバケツと釣竿、もう片方には自分で釣った中で一番大きな魚の尾を持って、元気いっぱいな様子のエイアルを筆頭に釣り組はキャンプへ戻ってきた。
 外道に悩まされていた蛍も、その後は順調に魚を釣り続けていたし、初めて挑んだ面々も、表情からはそれぞれ自分なりに納得出来るものは獲れたようだ。
「こっちはカレイなんかも獲れたで」
 初めてにしてはまぁまぁやったなと呟きながら、博史を引き連れたアインも魚や海草が入ったバケツを見せる。
 皆の釣果を合わせると、なかなかの量だ。
 目覚しい大物はなかったが、市場では高値で流通しているスズキやシロギス、外海とは味が違い、この近辺ではよく食べられているというベラ等も結構な数を獲ることが出来た。明日の朝食に回してもいいくらいはあるだろう。
 早速、夕食の支度が始まった。
「将来は立派な主婦……違う、主夫になりたいから、色々と教えて下さいなっ」
 リュックから丸ごとのレタスを取り出し、ユーリが笑顔を浮かべると、琉架もにっこり笑い返す。
「一緒に作れば美味しく出来ますよー、大丈夫!」
「迷惑を……掛ける気……ないから」
「それじゃ、ボクと一緒にお皿やテーブルを用意するにゃ!」
 不器用さを気にしているステラにエイアルは声を掛け、一緒に準備をする。
 シンプルに塩を振って火に掛けられた魚が、煙と一緒に香ばしい香りを周囲に漂わせ始めた。
「こういうの得意なんだ」
 学園に入るまではサバイバルな生活を送っていた蛍がちょっと懐かしそうな顔をしたものの、涎を垂らさんばかりに焼き魚を見詰めるエイアルに小さく笑みを零す。
「こんな感じかな?」
 ユーリはレタスを敷いた皿に華蓮が持って来た胡瓜と先程採れた海草を合わせ、ツナ缶の代わりに焼いた魚の身を解して乗せてみる。
 なかなか食べ応えのあるサラダが完成した。
 獲った魚や蓮華が持ってきた南瓜を入れたカレーは、普段とは一味違う仕上がりだ。
 カレーにカレイでは駄洒落のようだが、脂の乗った魚の身は意外とよく合う。
「うん、美味い」
 カレーを頬張って素直に一言零す剛に、琉架は嬉しそうに微笑む。
 大人数でこんな風に食事をするのは初めてで、ステラは賑やかに食事をする面々に囲まれスプーンを口に運びながら何処か擽ったそうにしていた。
 
「この辺でいいかな……元気でやれよ」
 皆が片付けをしている最中、こっそり森と岩場の際にやって来た蛍は残った魚を3匹、丁度いい岩の上に置いて手を合わせる。
 暫ししみじみと魚を眺めていた少年も、キャンプの方から聞こえた「じゃあ花火やろう!」という声にぱっと立ち上がった。
「あ、俺もやる!」

●花火と星と、夜の潮騒
 夕食の後片付けをした後は、スイカを傍らに皆楽しみにしていた花火が始まる。
「あれ、えーくんもうおネムかな。テント行く?」
「うにゃ……」
 花火を始める前に猫変身してころんと横になったエイアルを、博史はひょいと小脇に抱え上げ、みんなは先にやっててとテントに運んで行った。
 1本では物足りないとばかりに、数本ずつ両手に持って火を点けるユーリ。
「わぁ、綺麗!」
 剛の傍らで花火をしながら、琉架は仲間達が繰り出す花火の色合いに目を輝かせた。
 テントから戻ってきた博史は、激しく噴出している炎を眺めて瞬きしたが、火傷しないようにねと軽く笑う。
 締めはやはり、線香花火らしい。
 真っ赤に揺れる玉を中心にパチパチと跳ねる火花を眺め、これをやらなければ終わりという感じがしないとステラは微かに微笑んだ。

「ヒロ先輩、演奏して頂けませんか?」
「ギターでもいいなら喜んで! どういう感じの曲がいいのかな?」
「……そこまでは、考えてなかったです」
 花火を片付けた後、華蓮に声を掛けられケースからギターを取り出す博史だったが、返答に笑って肩を竦める。
「うーん、じゃあとりあえず即興で合わせてみよっか」

 星々が照らす夜の砂浜は、昼間とはまた違う顔を見せていた。
 キャンプの方から微かに聞こえる、ゆったりとしたギターの音色が打ち寄せる波に混じって不思議な安息に満たされる。
「怪我、しないようにな」
「はーい」
 手を引きながら素足の少女を気に掛けると、素直な声音が応えた。
 やがて少女の影は離れ、波打ち際で遊び始める。
 まるで星と戯れているようだと、降り注ぐ月光に煌く飛沫を纏った少女の姿に剛は目を細める。
「わ、剛さん見て下さい」
 ふと動きを止めた琉架は、掬った水に映る光輝を見付けて天を仰いだ。
 月とともに深い藍空に散りばめられた星々の瞬きは、今にも零れ落ちてきそう。
「凄いな……」
 都会では久しく見られないような景色に感動すら覚えていると、少女は青年の傍へ戻ってきた。
 日常の忙しなさや命を掛けた戦いも嘘のようだと呟くと、顔を見合わせて笑い合う。
 琉架が意を決したように腕を剛のそれにそっと絡めると、お互い温もりを意識しすぎて暫し時が止まる。
「来年も一緒に星を見ような」
「ん、来年も、再来年も……」
 星の下で交わす約束は、例え他愛のないものだとしても、少し特別。

「あれ、おかえりー」
 すっかり静かになった広場で剛達を迎えたのは、寝袋に入ったユーリだった。
 星が綺麗だから外で寝ることにしたようだ。
「んー、ハニーと一緒に来ればもっと楽しかったかな……」
 密やかな逢引が見付かって気恥ずかしげなふたりが、名残惜しげにお休みの挨拶を交わして男女別のテントに入っていくのを見送ると、少年はちょっと羨ましげに呟いた。

 虫も動物達も眠りについた島は、子守唄のような波の音に包まれてまるで揺り籠のよう。
 明日も続く楽しい時間に胸を馳せながら、彼らは夢の世界へ旅立った。


マスター:雪月花 紹介ページ
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作成日:2008/08/11
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