孤島と馬と、僕らの愉快な冒険心


<オープニング>


 学園祭も終わり、銀誓館学園も夏休みの季節となりました。
 夏休みは、海にプールにカキ氷、そして夏休みの宿題や自由研究など、やる事がたくさんあります。
 しかし、忘れてはならないのは、学校行事の臨海学校でしょう。
 銀誓館学園では、瀬戸内海の浜辺(銀誓館学園の私有地)で、8月10日〜12日の3日間、臨海学校が行われます。
 この臨海学校で、普段の授業では得られない様々な体験を楽しんでみましょう。

 なお、今年の夏は、瀬戸内海の小さな島(無人島)で、妖獣の発生が確認されているようです……。
 
 
「今年の臨海学校、瀬戸内海のビーチなんですってね」
 どんな水着にしようカシラと、楽しい悩みを抱きつつ、久慈・久司(高校生運命予報士・bn0090)は集まった能力者達に笑いかけた。
 そして、ついでにとばかりに、一枚の無人島の写真を見せた。
「へぇ、瀬戸内海かぁ。楽しみだなぁ……。…ん?」
 ともに呼ばれていた風祭・遊(微睡み適合者・bn0161)も、興味深げにその写真を覗き込む。
「……実はネ、瀬戸内海にある無人島に、沢山の妖獣が見つかったの。場所が場所だから、まだ一般人に被害は出てないみたいなんだけど、このまま放っておくわけにはいかないでショ?」
 なので、今回の臨海学校を利用して、妖獣を倒してしまおうという話らしい。
 
 目指す無人島は、北部がやや急深の浜、東部と南部が岩場、西部が切りたった崖、そして中心部の丘陵地帯には、灌木が生い茂っている。歩いても、一時間もあれば余裕で一周できる程度の小さな島だ。
 現地までは、近くまで行く漁船で送り届けてもらえることになっている。
「……でネ、その島の岩場付近に、馬の妖獣が現れたのヨ」
「馬? そんな場所に?」
「えぇ。でも、サラブレットみたいな馬じゃなくって、どっちかっていうと日本在来馬っぽいカンジね。ポニーくらいの大きさで、足も首も太くって、尻尾や鬣はとってもフサフサ」
 数は3頭で、何処か一カ所に纏まっているらしい。
「遠目には普通の馬だけど、近くに寄れば、馬の皮膚が岩みたいな質感だって事が分かると思うワ」
 当然、見た目通りかなり防御力が高い。また得意の体当たりの威力も相当なものらしい。
 とは言っても、皆で油断せず挑みかかれば、そう苦労する敵ではないだろう。
「多分、探し出して退治して……ってなるから、片付くのは夕方頃だと思うのよね。その時間から海に出ると、暗くなって危ないし、折角だから無人島で一泊なんてどうカシラ?」
 釣具や花火、ちょっとしたキャンプ用品なら、漁船で一緒に運んでもらうこともできる。この機会に、一晩だけの無人島ライフを楽しんでみるのもいいだろう。
「そうだね。折角の貴重な体験だし……ねぇ、みんな、何して遊ぼうか?」
「んー、俺は……」
「あ、こんなのどうだろう?」
 楽しげに話し始める能力者達に、久司は笑って「妖獣退治も忘れないでネッ」と念を押した。

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参加者
風早・裕(地を薙ぐ風・b00009)
夕霧・薊(闇の中の光・b02514)
ルルティア・タカナシ(紫蘭・b03627)
蓬莱寺・凪斗(不羈奔放・b06976)
アメリア・ライト(人生楽しく・b17958)
向坂・結奈(貴方の夢の中に宿る小悪魔・b18887)
大桐・連花(月のグラウンダー・b25239)
烏森・メジロ(いつか月に行ってみたい・b26804)
明星・心和(泣いた土蜘蛛・b32742)
岩水寺・沙織(ライティングバック・b36938)
城崎・弓場白(青空はかなしや・b46540)

NPC:風祭・遊(微睡み適合者・bn0161)




<リプレイ>

●孤島と
「んじゃ気を付けてなー!」
「はーい、有難うございまーす!」
 瀬戸内海にある、とある無人島のへ辿り着いた能力者達は、浜辺に重い荷物を降ろし、送り届けてくれた漁船に笑顔で手を振り別れを告げた。
「う〜ん……、夏はやっぱり海よね!」
 待ち焦がれていた臨海学校。
 去年同様、学校行事で海に来れたことに喜びを感じつつ、大桐・連花(月のグラウンダー・b25239)は潮の香りがする空気を胸一杯に吸い込んだ。
「だれもいない島でのおとまり。楽しみなのね〜〜♪」
 兄に持たされた重いクーラーボックスから解放された烏森・メジロ(いつか月に行ってみたい・b26804)も、真似て思いっきり息を吸い込む。
 波と風の音だけがする、自然そのままの無人島。
 けれど、この島の岩場のどこかに、馬の妖獣が3頭もいる。
「在学中に行きそびれた臨海学校……わくわくなのです!」
「折角のチャンスだ。楽しませてもらうぜ」
 既に学園を離れたルルティア・タカナシ(紫蘭・b03627)と風早・裕(地を薙ぐ風・b00009)だが、妖獣が絡んでいるとなれば話は別。ここぞとばかりに、無人島キャンプを満喫する気満々だ。
 あまり感情を表に出さない明星・心和(泣いた土蜘蛛・b32742)も、その出で立ちや、リュックにデジカメが入れられているあたり、かなり楽しみにしているようだ。
(「……あれ? でも……」)
 考えてみたら、普通こんな場所には馬はいない。
 それが何故、妖獣となって現れたのだろうかと、夕霧・薊(闇の中の光・b02514)はふと素朴な疑問を抱いた。だが彼も、今はそれよりも妖獣退治のあとのバーベキューと花火が楽しみで仕方ないようだ。
「でもまずは、やることをきっちりやりましょう」
「勿論! 海辺に馬なんて風情もないし、さっさと倒してしまお!」
 その後で、思う存分楽しもうと、岩水寺・沙織(ライティングバック・b36938)の言葉にアメリア・ライト(人生楽しく・b17958)が満面の笑顔で頷く。
「うっし、それじゃそろそろ向かうか!」
 蓬莱寺・凪斗(不羈奔放・b06976)は持ってきた荷物を一カ所に纏めると、そう言って、仲間に出発を促した。

 出発の準備を整えた能力者達は、一路南東の岩場を目指し歩き始めた。
「それにしても、暑ッついねェ……」
 海を渡る風はそれなりに涼しいが、照りつける真夏の太陽は容赦ない。
 目の中に流れ落ちそうになる汗を防ぐため、城崎・弓場白(青空はかなしや・b46540)はツルッとした頭に手拭いを巻きつけた。
「何だか、馬に縁が多いでありんすねぇ☆」
「あははっ、言われてみればそうだね」
 ふとナイトメアのことを思い出し、向坂・結奈(貴方の夢の中に宿る小悪魔・b18887)と風祭・遊(微睡み適合者・bn0161)が、歩きながら笑いあう。
「どこにいるかなぁ……」
 目の上に掌を翳し、ぐるりと周囲を見渡す薊。
「普通のお馬さんだったら、背中に乗せてもらえるかもしれなかったのに〜〜」
 メジロは心底残念そうに、足下の小石を海に向かって蹴飛ばした。
 岩場で砕ける白波の中に、小さな礫が消えてゆく。
「まァ歩き回るしかないかねェ……。あっ、メジロの嬢ちゃん、水飲むかい?」
「わーい、ありがとなのね〜!」
「あっ、いいなー! 私にも一口ー!」
「わたくしも少し飲みたいです」
「どうぞどうぞ、アメリア嬢もルル嬢も、遠慮せずに飲んどくれよ」
 そう言って、喉の渇きを訴える女性(?)陣に、笑顔で水のボトルを回してゆく弓場白。
「ねぇ、僕も喉乾いちゃった」
「野郎にはごめんだね」
 だが男には厳しい。
 遊はルルティアの件を突っ込むべきかと思ったが、面白いのでとりあえず黙っておくことにした。

 そして、かれこれ20分近く歩き通し、そろそろ島の裏側に辿り着こうとしたその時。
「ん……? あれか?」
 裕が、もぞもぞ動く茶色い影を、数メートル先に見つけた。
「間違いない、あれだな」
 遊に自分の水を分け与えながら、凪斗も確認するように視線を向ける。
「それじゃ、気合入れていきましょうか!」
「「「イグニッション!」」」
 彼らはカードを高く掲げ、詠唱兵器を身に纏うと、自己強化を施しながら、先に見える馬の妖獣に向かって走っていった。

●馬と
 能力者達の姿を見つけた馬妖獣が、ヒィィンと甲高い嘶きをあげる。
「なんだかブサ可愛いお馬さんでありんすねぇ」
 やけにずんぐりして、尻尾と鬣がフッサフサの馬妖獣。目も、つぶらで案外可愛らしい。
 しかしその体表は、まるで土粘度で固めたかのようにゴツゴツしていて、尻尾と鬣も、何だか藁のような質感だった。
「か、硬そうです…うっうっ……」
 ふわもこ容姿を想像していたルルティアが、ショックでちょっぴり涙ぐむ。
 だが馬妖獣は、当然そんな事などお構いなしに、能力者達へと襲いかかってきた。
 連花は突撃してきた1頭をふわりと軽くジャンプしてかわすと、そのまま背中をクレセントファングで切り裂いた。
「まずはそこに攻撃を集中させましょう!」
 言うが早いか、傷付いた馬の脇腹に獣撃拳を叩き込む沙織。白い瓦礫から磨きだされ短棍に、また新たな赤い血が滲む。
「大人しくしてるでありんす〜★」
 結奈の悪夢爆弾が、まだ無傷の2頭の頭上でぼぅんと弾ける。
 ほぼ同時に、遊が解放した夢の力が、バリアとなって仲間達を包み込んだ。
『ブルル……』
 1頭の馬が目を覚まし、アメリアに思いきり蹴りを入れる。
「わわっ、まだ起きちゃダメです!」
 彼女の回復をメジロに託し、符の力でふたたび馬を眠りへと誘うルルティア。
 弓場白が右から、心和が左から、紅蓮に燃える拳を放ち、馬の身体を炎に包む。
『……ィィン』
 燃え盛る馬を、裕の怨念に満ちた瞳が睨みつける。
 馬はまるで内側から攻撃されたかのように切り裂かれ、そのまま地に伏し消え去った。
「さて次はどっちだ?」
 薊は、眠る2頭の馬を見比べて、より近くにいる1頭めがけ、炎の魔弾を撃ち出した。
『ヒィィィン!』
 炎の中で嘶きをあげる馬妖獣に、凪斗が氷の吐息を吹きかける。
「熱いだろ? まあ、こおっとけこおっとけ」
 身を焼かれる一方で、氷にも蝕まれる馬妖獣。
 しかし馬はそれでも倒れず、彼に体当たりをかましてきた。
「うわっ!」
 幸い後ろにいた遊にぶつかり、遠くへ飛ばされることは防げたが、下手をすれば海に落ちていただろう。
「そっちの方は崖だから、みんな気を付けるのねー!」
「大丈夫! そう簡単に落ちないよ!」
 アメリアは、そう言ってメジロに親指を立ててみせると、水刃手裏剣で馬の喉笛を切り裂いた。更に連花と沙織も、続けざまに攻撃を加える。
 結奈の悪夢爆弾が弾け、馬がまた眠りへ落ちる。
 その隙に、ルルティアが凪斗に治癒を施す。
「太平の 眠りを覚ます 紅蓮撃……なんてね。遠慮は要らねェ、たっぷり食らいな」
『……ィィイ…!!』
 弓場白の拳から放たれた紅蓮の炎が、満身創痍のまま眠っていた馬を、永遠の眠りへと誘った。
「残りは1頭だけですね」
 今だ深い眠りの中にいる最後の1頭に、心和が紅蓮撃を叩き込む。
『ヒヒィィーン!』
 馬は跳ね起き、彼女を蹴り飛ばそうとしたが、その蹄は彼女の腕を僅かに掠ったに過ぎなかった。
 少しばかり血の滲む心和の腕を、メジロが祖霊の力で癒す。
 裕の魔眼、続けて凪斗の吐息とアメリアの手裏剣に襲われた馬妖獣は、岩の上で暴れ、そのままの勢いで沙織を大きく跳ね飛ばした。
 幸い立ち位置に気を配っていたため、立木に身体をぶつけることで落下を阻止することのできた沙織は、森の息吹を深く吸い込み、負った傷を全快させた。
「遊ちゃん、一気にいくでありんすよー☆」
「うん! 早く終わらせなくっちゃだもんね!」
 結奈と遊が同時に放った光の槍が、馬の額を刺し貫く。
『ヒィィーーーン!!』
 瀕死となった馬は、前脚を高く持ち上げ、それでもまだ襲いかかってこようとした。
 しかし、馬の脚が彼らを蹴るより、薊の魔弾の方がほんの一瞬早かった。
「当たれー!」
 黒獅子と名付けられた黒い刀から、真紅の炎が放たれる。
『………ィ、ィィーーン…』
 最後の馬妖獣は、前脚を高く掲げたままの姿で燃え尽き、この世から完全に姿を消した。

●僕らの愉快な冒険心
 彼らが北の浜へと帰り着く頃、既に陽は西に大きく傾き、空も海も茜色に染まっていた。
 幸いひどい怪我を負ったものは誰も居らず、彼らは役割を分担すると、陽が沈み切らぬうちに急いでキャンプの準備を始めた。
 メインは、何と言ってもバーベキュー!
「ところで、BBQって何だィ?」
「肉とか野菜を串に刺して焼きながら、みんなで食べるんだよー」
 聞き慣れない単語に首を傾げる弓場白に、とにかくやれば分かるよと説明し、彼に紙皿の準備を頼む薊。しかし男に用事を言いつけられた弓場白は、ちょっと不満げ。
「わわーい! キャンプだなんて、わたくし初めてです!!」
 初めての体験にテンションが高まるルルティアだが、いかんせん何をすれば良いのか分からず、皆を真似て野菜を切ろうにも、不器用さにはちょっと自信があるため、その場でウロウロするばかり。
 そんな彼……もとい、彼女に、先程とはうってかわって優しく手を貸し、一緒に紙皿を用意する弓場白。
 結奈と薊が切った肉野菜を、心和と遊が串に刺す。
 メジロも、玉葱や人参の皮を剥いてお手伝い。
 料理に自信のない沙織は、アメリアとともに石を並べて竈を作り、手帳片手に四苦八苦しながら炎を熾した。
 デザートの西瓜を、岩の間に溜まった海水へと漬けて冷やす連花。蚊取り線香の準備もぬかりない。
 そして皆がBBQの準備をしている間に、裕と凪斗はテントを組み上げた。

 ワイワイと笑いあい、協力しながら準備を進め、太陽が西の崖の向こうに消える頃には、竈の上の網で肉や野菜が美味しそうな音と匂いをさせて焼けてきていた。
「体動かした後は、やっぱりお腹が空くもんね!」
 泳ぐ時間がとれなかった分、ここで目一杯楽しもうと、早速肉に箸を伸ばすアメリア。
「皆さん、どんどん食べてくださいね」
「どんどん食べてほしいでござそーろー……って、心和ちゃんも食べるでありんすよ☆」
 すっかりBBQ奉行になった結奈が、皆に気を遣っている風な心和に、小学生はもっと食べろとばかりに肉を盛る。
「明星のお姉さん、とっても楽しいのね〜♪」
「はい、すごく楽しいですね」
 てんこ盛りの肉を頬張り笑うメジロに、無表情だった彼女の顔も僅かに綻ぶ。
「連花嬢、こっちの肉いい感じに焼けたけど、食べるかい?」
「あら、貰っちゃっていいの?」
 BBQが何なのかを理解した弓場白も、レディーファーストを心掛けつつ、自分もしっかり串に刺さった肉に齧りつく。
「ジュース、まだ余ってるっけ?」
「こっちのクーラーボックスにありますよー」
 飲み物を探す裕に、薊が椅子代わりにしていたクーラーボックスから苺牛乳を取り出し手渡す。
「わわわーーーーっ!!」
「何ッ!?」
 マシュマロを炙って食べていたルルティアが、突然大きな悲鳴をあげた。
「かにさんは苦手です! 鍋です! 鍋!」
「落ち着け、落ち付けって……!」
「えーっと……こうやって、ぽーい!」
 天敵の甲殻類に慌てふためくルルティアを、仲間達が宥めている間に、遊は急いで蟹を海の方へと放り投げた。
「あー、ビックリした。何か出たのかと思っちゃった」
 ほっと安堵の溜息をつき、コップのジュースを飲み干すアメリア。
「焼きそば、そろそろ作るか?」
「それじゃあ私も、デザートの西瓜を用意するわね」
 凪斗は、何かすっかり保護者っぽくなってんなーと思いつつ、竈の隅に鉄板を乗せ、焼きそばを炒めはじめた。連花も、よく冷えた西瓜を水から揚げ、食べやすい大きさに切り分ける。
「西瓜割りはしないでありんすか?」
「ん〜、こんだけ暗いと、ちょっと危ないかもね」
 けれど、電気の光が殆どないこの島でなら、花火はとても美しそうだ。
 彼らはできたてアツアツの焼きそばで夕餉を締めくくると、花火の準備に取り掛かった。

 砂浜の上に並べ置かれた、手持ち花火に打ち上げ花火。
 綺麗に切り分けられた西瓜も、トレーの上に置かれている。
「まだ夜は序の口でありんすし、いっぱい楽しむでありんすよー☆」
 手持ち花火で、まるで虹のような軌跡を描き出す結奈。
「とっても綺麗なのね〜♪」
 メジロも海岸を元気に駆け回り、白みを帯びた炎の残光を楽しむ。
「こういう場所だと、ハデめな花火が合う気がするわ」
「よし、それじゃ点けるぞ!」
 まったり西瓜を頬張りながら、沙織の置いた打ち上げ花火に火を付ける裕。
 ぽーんぽーんと等間隔で飛び出す火の玉に、一発毎に歓声が上がる。
「皆さん、ちょっとだけこっち向いてください」
 すっかりカメラマンになった心和が、BBQに引き続き、皆の笑顔を次々とデジカメへおさめてゆく。
 ここでも凪斗は保護者全開で、バケツに水を汲んだり火を付けたりしている。
 そして、皆で目一杯派手な花火を楽しんだところで、弓場白が、懐から小さな袋を取り出した。
「〆はやっぱりコレだろ?」
 笑みを浮かべる彼の手に握られていたのは、人数分の線香花火。
「あっ、私も欲しいなー!」
「いいわね。私にも頂戴」
 アメリアと連花が早速手を伸ばし、線香花火を1本ずつ受け取る。
「うん、風情があって良いよねー」
 派手なものは見るの専門だった薊も、最後のこれは自分の手に取った。
 そして無事全員に行き渡ったところで、彼らは風を遮るように円陣を組んで座り、蚊取り線香の先でそっと順番に火を付けていった。
「やっぱり線香花火って、しっとりとしてて良いなぁ」
 パチパチ弾けるオレンジの火花に、ルルティアがほぅっと溜息をもらす。
 ぱちり。
 パチパチ。
 小さな火花を見つめていると、何だか自然と心が穏やかになってくる気がする。
「依頼で知り合った方々、結社の方々、それに初めてお会いする方々とも、このような素敵な想い出を作ることができて、とても嬉しいです」
「うん、僕もみんなと一緒にここに来れて、とっても嬉しいよ」
 ぽつりと零れた心和の言葉に、皆も幸せそうな笑みを向ける。
 そして、最後の玉が砂に落ち、また波と風の音だけの世界になったところで、楽しかった花火大会もオシマイ。
 能力者達はそれぞれのテントに分かれ、陽が昇るまでグッスリと眠り込んだ。

 翌朝───。
「……あら?」
 帰りの船が到着する前に、皆で昨夜のゴミを片付けていると、沙織が奇妙な縄のようなものを発見した。
「やけに古い縄だね」
「どっかから流れてきたんじゃないか?」
 若干不思議に思いつつも、彼らはその縄を、他のゴミと一緒に袋に捨てた。
 そして、到着した船にまた沢山の荷物を積み込み、一夜を過ごした無人島を後にした。

 荷物と一緒に、沢山の想い出も積み込んで────。


マスター:大神鷹緒 紹介ページ
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いまいち
参加者:11人
作成日:2008/08/11
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