百合色の饗宴


<オープニング>


●堕ちゆく少女
 七色のライトが照らす薄暗い空間に、二人の少女が照らされていた。
 一方は、その裸身に蛇を纏わせた、豊満な肢体を持つ長い銀髪の少女。もう一人は、飾り気の無い白い下着と紺のハイソックスだけを身に付けた、ほっそりとしたボブカットの黒髪の少女。傍らには、脱ぎ捨てられた制服が散らばっている。
「はぁ……、ぁん……」
 銀髪の少女が、ボブカットの少女を愛撫する度、ボブカットの少女の口から、切なげな吐息が漏れる。その近くの暗闇では、同じような少女の嬌声が、絶えず聞こえていた。
「お、願い、です……。下、さい……。お嬢様、の……、全部……」
 とろんとした目で、ボブカットの少女は、銀髪の少女に懇願する。その紅潮した顔と、だらんと開いた口から糸を引いて涎を垂らす様は、少女に理性の欠片も残っていない事を物語っている。
「ええ、よろしいですわ……」
「ん……っ!」
 『お嬢様』と呼ばれた銀髪の少女は、ボブカットの少女の唇に自らの唇を重ね、抱き寄せる。ボブカットの少女の身体がビクッと震えるが、それを優しく包み込むように、蛇が彼女の身体に巻き付いた。
「お、嬢様……」
「その代わり……」
 唇を離し、銀髪の少女は妖艶な笑みを浮かべ、舌なめずりする。
 彼女の瞳もまた、とろんとした、濁った光が宿っていた。
「あなたの全ても……頂きますわ……」
 
●リリスと、捕らわれし者達
「ふぅ……」
 門倉・志津奈(高校生運命予報士・bn0038)は、能力者達の前に現れた後、自らを落ち着かせるように、ひとつ深呼吸した。
「ん、すまない。では説明を始めよう。愛媛県のとあるライブハウスに、リリスの群れが現れ、一般人が多数捕らわれた。丁度その時、近所の女子高の軽音部によるライブが行われており、観客たちも、丁度その女子高の生徒達ばかりだったらしい。そこを運悪くか狙われてか判らぬが、リリス達の襲撃を受けてしまったのだ」
 志津奈によると、リリスの数は8体で、うちボス格の銀色の髪を持つリリスが1体、部下の紫色の髪を持つリリスが7体。そして、助けるべき一般人は20人ほどで、全員がその女子高の生徒であるとの事であった。
「リリス達は、そこでサバトのような儀式を行い、快楽を得る為に、彼女等と共に背徳的な行為に耽っている。背徳的な好意というのは、その……まぁ、判るよな?」
 と言って、志津奈は所在無げに髪を掻き上げる。
 志津奈によると、リリスに捕らえられた一般人は、リリス達によって理性を奪われ、本能のままに快楽を求めているという。
「既に、何人もの少女が、快楽の中、命を落としている。このままでは、捕らわれた者達が全て殺害されるのも時間の問題だ。そこで、お前達にはその儀式の場に乗り込み、リリスを倒して彼女達を救出して欲しいのだ。それから……」
 と言って咳払いをした後、志津奈は言葉を続ける。
「今回のリリス達は、儀式の影響で、通常のリリスに比べ、かなり強い力を持っている。特にボスである銀髪のリリスはかなり高い実力を持っている。どうか心してかかって欲しい」
 だが、今回のリリスは力こそ強力なものの、儀式の影響で快楽に酔っている状態だと志津奈は説明する。
「つまる所、通常のリリスのように、逃走や撤退や説得といった行動は一切せず、ただただ快楽の虜となり、餓えた獣が生肉を貪るように、本能の赴くがままに快楽を貪り、邪魔するものがあれば殺害しようとするのだ。当然、お前達も快楽を貪るべき獲物か、殺すべき邪魔者としか映らない筈だ。充分に気をつけろ」
 そして、リリスは、相手の目を見つめただけで魅了させる能力を持つ他、マヒを伴う衝撃波を使用するという。当然ながら、ボスの攻撃力は一段と高く、魅了やマヒの効果も強い事を志津奈は付け加えた。
「また、最初に説明した通り、捕らわれの生徒達も、理性を失った狂乱状態にある。もし戦闘が始まれば、彼女達を刺激し、暴れたり、近くに居る者を殺害しようとするかも知れん。更には、お前達能力者がリリスを攻撃すれば、生徒達はお前達を敵だと思って攻撃したり、羽交い絞めにしようとしたりするかも知れんのだ」
 つまり普段よりも一段と強い力のリリス8体に対処せねばならないのみならず、襲い掛かってくる少女達も、何とかして静めなければならないというわけだ。
「私個人の希望としては、出来れば生徒全員を救出して欲しい。だが、厳しい事を言うようだが、全員の生存は相当苦しいと言わざるを得ないだろう。だから、運命予報士としてお前達に頼みたいのは『出来る限り、多くの一般人を救出して欲しい』だ。辛い仕事になるかも知れんが、どうか頼む」
 志津奈は、胸の前でぎゅっと拳を握り締めた後、能力者達に一礼をする。それは、運命予報士である少女の、苦渋の決断だったのであろう。
「それから言い忘れる所だったが、リリスを撃破した後は、仮に一般人に怪我人が出ていたとしても、彼女等の手当てよりも先に、現場から速やかに撤退して欲しい。お前達がその場に居れば、彼女達はお前達を仲間の仇として襲い掛かって来るかも知れんからな。理性を失わせた元凶であるリリスさえ居なくなればじきに元に戻るから、お前達は彼女達を出来るだけ刺激しないように、その場を後にして欲しい」
 リリスの対策に一般人の安全確保、そしてその場から速やかに撤退する為の作戦と、能力者達が考えなければならない事は多そうだ。
「正直、今回のリリス達の行動は不可解な事ばかりだ。だが、手をこまねいているわけにもいかぬ。今はただ、リリスを倒し、囚われた少女達を救出するのみだ。厳しい事件だが、どうか頼んだぞ」
 最後に、運命予報士の少女は、もう一度、能力者達に深く一礼するのであった。

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参加者
鷹月・亞衣(温泉くノ一・b00905)
社・龍一(熾神・b01662)
夜刀神・蒼姫(鮮血と業に彩られし戦姫・b06044)
宵・月亮(吸血的薄羽蜉蝣・b11733)
赤金・茜(銅・b13957)
エリアーデ・クロウリー(惑乱の蜃気楼・b20972)
葦原・夜子(夜をまもるもの・b25086)
月詠・優理(中学生水練忍者・b39059)



<リプレイ>

●暗がりの中、少女達は互いの身体を求め合う
「んっ、ちゅ……」
「やっ……、もっとぉ……」
「先、輩……、わた、し……、もう……」
 ライブハウス会場は、生温く湿った空気が篭っていた。
 聞こえるのは、衣擦れの音や、くぐもった喘ぎ声や、卑猥な水音。
 ステージ上の七色の光が客席を仄かに照らして、互いの身体を絡め合い、一心不乱に快楽を貪る少女達の秘め事を、能力者達に見せ付けている。
「……えっちぃです」
 葦原・夜子(夜をまもるもの・b25086)は、その様子を表情ひとつ変える事なく見つめ、呟く。
「女性ばかりを集めて、こんな……。小さい子供には見せたくはない状況ですね」
 エリアーデ・クロウリー(惑乱の蜃気楼・b20972)は、常軌を逸した光景に、眉を顰め、下唇を噛み締める。
「うむ。『えってぃ』のは抵抗は無いのぢゃが……」
 鷹月・亞衣(温泉くノ一・b00905)もまた、腕組みして苦笑する。
 これも全て、此処で背徳的な儀式を行っているリリスによるもの。
(「能力者としてするべき事は一つぢゃな」)
 と、心の内で決意する。
「こ、ここは、れれ、冷静に、冷静に参りましょう、みみ皆さんっ!」
「赤金クン、君が一番冷静じゃないようだが」
 思春期の少女らしく、顔を真っ赤にしている赤金・茜(銅・b13957)を、彼女の援護に来た鬼頭・菫(イビツカゴ・b16213)がなだめる。
「それじゃ、行きましょ」
 宵・月亮(吸血的薄羽蜉蝣・b11733)の合図で、能力者達はリリスの撃破と、快楽に囚われた少女達の救出に動き出した。

●巻き付いた蛇は、リリスの肉体の密やかな部分を、或いは隠し、或いは晒す
 ウィルベル・アヤツジ(人造天稟・b05068)の白燐光や、夜子達の用意したライトによって、会場内が明るく照らし出され、ライブハウス全体の様子が露になる。
「きゃあああああっっ!!」
 そこで漸く能力者達の存在に気付いた少女達が、狂乱の叫び声を上げた。
「それでは、頼むぞよ」
「ん、任しとぅせ♪」
 亞衣の親友であるパールヴァティー・ディーヴァ(海援艶女隊・b03123)と菫が穏やかな眠りの歌を歌うと、少女達は忽ちのうちに倒れる。
 しかし、全員ではなかった。
「ねぇ、起きて、起きてよぉ!」
「お嬢様、助けてぇ!」
 ヒュプノヴォイスが効かなかった数人の少女は、恐怖に顔を引き攣らせ、ある者は眠っている者を揺すり、またある者は奥へと逃げ込む。
 そして、蛇を従えた、紫色の髪を持つ少女――この淫靡な空間を作り出した元凶であるリリス――が、能力者達の姿を認めると、立ち上がる。長い間背徳的な行為に耽っていたのか、蛇が巻き付いた裸身は汗でしっとりと濡れ、その肌は耳の先や胸元に至るまで、ほんのり薄紅色に染まっていた。
「まあ……、随分と、美味しそうな娘達だこと」
 出入口の傍に居た数体のリリスは、とろんとした瞳で能力者達を見つめ、舌舐めずりしつつ近寄る。
「貴女達を討ち、この場所を清いものに変えますわ」
 夜刀神・蒼姫(鮮血と業に彩られし戦姫・b06044)は、闇のオーラを宿した『蒼皇霊神瑠璃姫』の刃を構えると、藍色の髪と巫女服の裾を翻して斬り込んだ。
「ふふふ。少々抵抗してくれた方が、こちらも燃えるわ」
 まだ余裕の笑みを浮かべているリリスへ、朱の飾り紐の付いた剣『黎幻ノ焔』を握った社・龍一(熾神・b01662)も接近する。
「随分楽しいコトしてるな。仲間に入れてもらおうか」
「ええ、歓迎するわ。女の子にも飽きてきた所よ」
 龍一を抱きしめようと手を差し伸べたリリスに、龍一は土蜘蛛の妖気を込めた一撃で応える。
「生憎、こっちは戦いが快楽の魔女狩りだけどな」
 炎に包まれ、灰になったリリスを見つめ、龍一はサングラスの奥の瞳を僅かに細める。
「キミも可愛いね。ボクと遊ぼうよ?」
 ボーイッシュな印象を与えるショートカットのリリスの誘惑に、月詠・優理(中学生水練忍者・b39059)は「へんっ」と鼻で笑う。
「俺ってば、こう見えて紳士なんだよね。気持ち良ければなんでもいいっていうの、虫唾が走るんだよ!」
 そして、『Cold Steel Knives』を逆手に構え、水の刃を飛ばした。
「リリスの血、さぞかし美味かろうのぅ」
 亞衣が作り出した吸血コウモリは、会場内のリリスの全身に纏わりつき、その血を啜る。苦痛と快楽の嬌声が、リリス達の口から漏れる。
「リリスは、上に乗ってる、おっぱいの小さい方です」
 夜子は、手持ちのライトで攻撃すべきリリスを照らし、仲間を誘導する。そして、傷付いた者が居れば、土蜘蛛の祖霊を飛ばして癒していった。
 だが、能力者の攻撃は、一般人の少女達を更に刺激する。
「いやぁぁ! お願い、殺さないでぇ!」
「よくもお姉様をっ!!」
 その場に座り込んで命乞いを始める者、倒したリリスの仇と言わんばかりに掴みかかる者、その騒ぎで起き出す者。少女達の泣き叫ぶ声が更に他の少女を刺激し、現場は恐慌に包まれる。
 理性を失った彼女達にとって、リリスは快楽を授けてくれる『お姉様』に他ならない。その『お姉様』が目の前で殺された事で、自分達にも同じ目に合うのではないかという意識が彼女達を支配する。
 彼女達の目に、能力者達は自分達を救出しに来た者ではなく、殺しに来た者としか映らなかったのだ。
「危な……あぐっ!」
 少女を庇って、蒼姫は衝撃波の直撃を受ける。
 羽交い絞めをしてきた少女達を気絶させようと、月亮は宝剣『DarkBringer』の柄を使って殴りつけ、鳩尾に肘を入れる。
「化かし合いが無いだけマシと思ってたけど……正直面倒よ」
 月亮は機嫌が悪そうに、苦しげに呻いている少女を見下ろして呟いた。
「悪いけど、俺はそんなに安い男じゃないんだよね〜」
 優理は軽口を叩きつつ、纏わりつく少女を振り払い、ショートカットのリリスの首筋を水刃手裏剣で切り裂く。
「これは悪い夢です。次に目覚めた時には、全て終ってますから……」
 エリアーデはそう言い、悪夢の力を込めた爆弾を爆発させ、少女達を眠りに誘った。
「女の子達の心と身体を弄んだ罪、許しませんっ!」
 茜はキッと前を見据え、『月に叢雲』『花に風』の二つの獣爪に獣のオーラを宿し、リリスを殴りつけた。戦う前は気まずい現場に恥ずかしがる思春期の少女でも、いざ戦闘が始まれば、そこは一人の能力者である。
 エリアーデの悪夢爆弾は充分な回数とは言えず、パールヴァティーと菫の補助的なヒュプノヴォイスだけでは、即効性に掛けていた。
 結果として、能力者達は少女達が完全に眠りにつくまで、リリスの攻撃に対しては後手後手に回り、普通に戦うよりも、余計な消耗を強いられる事となった。
 だが、少女達が完全に眠りについてからは、地力に勝る能力者達が、紫髪の淫魔を着実に屠っていく。
「紫のえっちぃリリスは、全て倒しましたね」
 少女一人一人の髪の色を、夜子は確認する。
 茜が床に目を落とすと、冷たい床の上には、ある者は抱き合い、ある者は自らの身体を弄るような姿で、少女達が折り重なるように倒れていた。聞こえる寝息は決して穏やかとは言えず、一様に荒い吐息が漏れている。
「強要された快楽など、苦痛も同じでしょうに……。ま、今は大人しく寝てて下さいまし」
 快楽の虜にされた、哀れな犠牲者の姿を一瞥し、能力者の少女は、ボスが待ち構える最奥へと向かった。

●リリスの紅の瞳は、あらゆる者を快楽の虜にする
 背徳の儀式を取り仕切っていた銀髪のリリスは、部屋の隅で、豪奢な椅子に悠然と腰掛けていた。
 能力者に見せ付けるように、リリスはボブカットの少女を膝の上に乗せ、白い下着に手を入れて愛撫をする。無抵抗の少女は、目と口が開いたまま心ここにあらずといった表情で、意識の有無や生死は判らない。
「随分と暴れてくれましたわね。お礼に、今度はあなた達と遊んであげますわ」
 リリスはそう言うと、少女を壊れた人形のように足元に投げ捨てて立ち上がると、正面に立っていた、茜の瞳をじっと見る。
「さぁ、快楽に身を委ねなさいな」
「っ!?」
 リリスの紅の瞳に見つめられた瞬間、茜は体温が急速に上がるのを感じた。頭がぼんやりとし、生まれて一度も感じた事が無いような甘美な心地良さが、身体中を支配する。リリスの細い指が頬に触れると、茜の顔はたちまち赤くなった。
 あの目を見てはいけない。頭では判っているのに、沸き起こる悦楽の奔流が、それを許さない。
 茜は劣情をもよおす己の肉体に抗うように、眉を寄せ、叫ぶ。
「この身……今更貴女方に喰われる位なら、とっくに相手選んで押し売ってますってんですよ!」
 最後の力で、意識を確かに持とうと、自分の舌を力の限り噛み締める。
 鋭い痛みと、口の中に広がる鉄分の味。しかし、その痛みさえも快楽に変換され、彼女の肉体だけでなく、心までも陶酔させる。
 茜に残っていた最後の理性は、リリスの瞳の前に消えてしまった。
「あ……」
 最後にそう小さく呟き、強張った表情は、うっとりと弛緩する。
 リリスは、茜の口の端から流れた血を舌で舐め取り、そのまま接吻した。茜は目を閉じ、その唇を抵抗なく受け入れる。
 口を離すと、血の混じった唾液が、リリスと茜の口の間で糸を引く。それを拭う事無く、リリスは能力者の少女に命令した。
「さぁ、あいつらを殺しなさい」
「は、い……」
 茜は夢遊病者のようにゆらりと能力者の方へ向き直ると、銀色の獣爪に獣のオーラを宿し、傍に居た蒼姫を襲った。
 胸元に爪が食い込み、その巫女服を赤く染める。
「茜、さん……、目を覚まして下さいませ!」
 だが、蒼姫は、その腕を掴むと、自分の側に一気に引き寄せる。茜は空いた方の獣爪で再び獣撃拳を見舞うが、蒼姫は構わず、その身体を反転させ、後衛の夜子達に引き渡した。
「早く……茜さんの回復を」
「その友情、美しいですわね。憎らしい位に」
 リリスはくすりと微笑むと、向き直った蒼姫に、先ほど獣撃拳で受けた傷口を抉るように、衝撃波を叩き込む。
「誰、も、犠牲には、させま……」
 その身を挺して仲間を守った巫女は、刃を握りしめたまま、前のめりに倒れた。
「これ以上好き勝手出来ると思ったら、大間違いぢゃぞ?」
 亞衣は語気を強め、吸血コウモリでリリスを襲わせる。
 だが、リリスは全身に噛み付くコウモリもそのままに、亞衣に接近し、衝撃波で攻撃する。
「随分と、可愛がり甲斐のある身体ですわね」
 全身が痺れた亞衣を抱き寄せ、大きく開いた忍装束の胸元に手を入れる。
「なっ!? わ、わしの身体を好きにして良いのは、我が義妹だけぢゃ……!」
「そんな事言わず、素直になりなさい」
 リリスが亞衣の唇を奪おうとした、その刹那。
「こっちとも遊んでくれや、お嬢さん!」
 機を伺っていた龍一が、側面から突撃し、紅蓮撃の一撃を与える。
「う……っ! ふふ、いいですわよ」
 そう言うと、リリスは龍一に視線を向けたまま、亞衣を抱きしめていた手に衝撃波を込め、直接、彼女の体内に叩き込む。
「あ、ぐっ……」
 リリスの腕の中で、亞衣はその身体を波打つように痙攣させ、崩れ落ちた。
「この娘は用済みですわ。さぁ、次はあなたの番」
「いい気になってられるのも、今の内だぜ」
 二人が対峙する間に、優理が茜を押さえつけ、夜子の赦しの舞によって茜を正気に戻す。
「お〜い、大丈夫か?」
「……はっ!? あわわ、わ、私、何て事を……」
「さて、そろそろこっちも反撃開始ね」
 エリアーデは、可能な限り離れた距離から、戦況を伺っていた。足元には少女達が眠っているが、多くの抵抗に遭ったのか、その髪や服は乱れ、顔には爪で引っ掻いたような傷が見える。
「まだ回復量は充分にあります。皆さん、気を確かに!」
 そう仲間達を鼓舞し、ナイトメアを召還させる。
「眠りなさい!」
 背徳の舞台を駆け抜けたナイトメアは、リリスの身体を強かに蹴り上げた。
 月亮は亞衣の衣服の乱れを直し、回復の黒燐奏甲を施すも、その傷を完全に癒すには至らない。
「うう、悔しいのぢゃ……」
「今は休んでなさい」
 ウィルベルや久遠寺・彩華(記録者・b21625)にも回復を頼んでいたのだが、リリスの一撃一撃は、それをも凌ぐ威力であった。
「回復役が生命線なのは解るんだけど、緊張感に欠けるわ」
 やっぱり自分が危険に晒されてこその戦闘よね、と毒づく。武器を構え直接攻撃しようと一瞬考えるも、
「そこっ、来るわよ!」
「おっと!」
 リリスに襲い掛かろうとしていた龍一に声を掛け、注意を促す。普段は闘争本能のまま敵を狩る少女も、強敵を前にした今回ばかりは、自らの仕事に徹した。
 援護を受けた龍一は、返す刀で黒影剣を放つ。龍の文様が刻まれた闇の刃がリリスの胸に突き刺さると共に、傷付いた魔剣士の体に力が満ちる。
「はっ、リリスから生気を頂けるなんて、最高じゃねぇか」
 その機に乗じ、持ち直した茜の獣撃拳や、夜子の光の槍が追い討ちをかける。
「そんなに、激しくされたら……、もぅ……!」
 流石のリリスも、自らの身体を抱きしめるようなポーズで、苦しげな吐息を漏らす。
「その隙もらったッ! 剣撃の輪舞曲!」
 その体勢が崩れた間隙を逃さず、優理は、優雅なステップを踏んで、リリスを切り刻む。
「ああ、果ててしまいます、わ……!」
 快楽の絶頂に達したような表情のまま、能力者達の目の前で、リリスは消えていくのであった。
 
●全てが終る迄、少女達はただ眠り続ける
 リリスの全滅を確認した後、能力者達は速やかに退散の準備を始めた。アビリティの力で眠っているとは言え、その効果は長続きしない。
「瑠流衣。一応、生命と貞操と唇は守ったぞよ」
 亞衣は、傷む身体でクローバーのビーズリングに口付け、愛する義妹を想う。
 どんな儀式が行われていたのか、現場をノートに書き写しておきたかった夜子だが、どうやらその時間的余裕も無さそうである。
 床に倒れている、あられもない姿の少女達。次に目覚めた時には、この状況をどう思うであろうか。
「……生きているだけマシ、なのかな?」
「変な癖、付かなきゃ良いですけど……」
 自身が魅了された事で深手を負った蒼姫の肩を担ぎ、茜は呟く。正気には戻ったものの、まだ全身の火照りと気だるさが抜けきっておらず、唇にはまだ生々しい感触が残っている。自分がリリスにされた行為を思い出し、少女は再び顔を赤く染めた。
 月亮は、リリスに虜にされていたボブカットの少女の首筋に触れる。脈は有るようだが、全身の至る所に擦り傷や痣が付いており、衰弱も激しいようだ。隣で、龍一がずれたサングラスを直す。
「さぁーて、これは何の序章かねぇ?」
「どうかしらね。でも、こんな事が二度と繰り返さないことを願うわ」
 蒼姫が用意した救急箱を置いて、月亮をはじめとした能力者は、少女達による背徳の饗宴が行われたライブハウスを後にするのであった。


マスター:柾木みなと 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2008/09/12
得票数:カッコいい12  えっち22 
冒険結果:成功!
重傷者:鷹月・亞衣(温泉くノ一・b00905)  夜刀神・蒼姫(鮮血と業に彩られし戦姫・b06044) 
死亡者:なし
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