<リプレイ>
●駅前──捨て犬青年のブルース 夜のとある駅前──仕事や学校が終わって家路を急ぐ人や、帰る前にちょっと寄り道という人など、大勢がせわしなく行き交う。 そんな中、駅前の片隅で一人、膝を抱えて地面に腰を下ろしている男がいた。 小柄な体付きで、顔も少年っぽいあどけなさを残している。だがその顔も、身につけている服も薄汚れていて、まるで捨てられて子犬のような佇まいで、行き交う人々を伏し目がちに眺めていた。 「どうしたの?なにか辛いことでもあったの?」 当麻・彼方(高校生黒燐蟲使い・b19938)が男にそう話しかける。ウィッグを付け、綺麗めのフェミニンな洋服で、実年齢よりも更に大人っぽく見せている。 「んっとね、今晩寝る所がなくて。お金もないし」 男は顔を上げると、これまた子供っぽい口調で答える。 「そうなの? もっとゆっくりお話をきいてあげるわ。もうちょっと行った所に公園があるの。お姉さんがジュースおごってあげるから一緒にいきましょ?」 彼方がそう言うと、男はパッと表情を輝かせた。
●公園──迎撃者達のコーラス 同じ頃、駅に近い位置にある公園では、昼間ほどではないものの、男女のカップルが夜のデートを楽しんでいたり、金のない若者達がたむろしたりしていた。しかし── 「うわぁぁぁぁぁっ!」 悲鳴を上げて、カップルがベンチから弾かれるように逃げ出していく。 「申し訳ありませんが、今夜は場所を貸し切らせていただきますね〜」 瀬良・柚希(熾天の癒し・b49411)が逃げていくカップルの後ろ姿に向かってにっこりと笑いかける。どう見ても他人を怖がらせる外見ではない、長い黒髪の女の子だが、ブロッケンの魔物の能力によって、自分を恐ろしい魔物の姿に見せかけたのだった。逃げる前後の記憶も失うから、カップルの男が立場を失う心配はあるまい。別の所でも、朱森・舞華(お庭のディアボロス・b36419)が男の集団を相手にしていた。 「すみませんけど、他の所へ行ってくれますか?」 王者の風で威圧しているおかげで、身長150センチ未満の舞華でも、大の男数人が一目散に逃げていく。 能力者達はこの公園でリビングデッドを待ち伏せする作戦だったが、公園内にいる一般人を人払いするのに適当な口実が思いつかなかったので、柚希と舞華がいささか強引ながら能力で追い払うことにしたのだった。 「夜の公園、思ったより怖いな……初依頼なのに……」 公園内の人払いが一通り済むと、芒宮・かると(花嫁の彩る悪夢・b31307)がおどおどとした歩調でやって来る。 「しっかりしろよ。今回の相手は説明を聞いただけでムカムカするんだからよ」 対照的に、肩を怒らせるのは白馬・灘(イエティではない・b51571)。 「大体、弱々しい外見を利用して同情を買い、それにつけ込むやり口が許せんな。被害者は皆親切心で声を掛けただろうに……」 そんな灘の言葉は、自分とは対照的な敵に対するやっかみか、それとも義憤によるものか。 「気持ちは分かるけど、冷静にね」 灘と一緒に公園の中を歩いて、構造や遊具などの設置物の配置を把握していた相馬・郁(ロイヤルスカーレット・b50792)が言ってくる。身長110センチそこそこの小学生の郁が、180センチ超の高校生の灘をたしなめる様は、ある意味シュールである。 それから郁が調べておいた設置物の配置を伝えると、能力者達は公園中心部の開けた場所を囲むようにして隠れる。 しばらく待っていると、彼方が小柄な男を連れて公園内にやって来る。 (「ほんとにこの子かわいいわね。でもゴーストよ! 油断しちゃ駄目!」) にやけそうになるのを、彼方は必死で自分に言い聞かせる。そう、彼女が今連れている男は、女性の母性に訴え、誘われる形でついて行き、人気のない場所に来たところで襲って血肉を喰うリビングデッドなのだ。 そして2人が公園の中心の開けた場所まで来ると、彼方はいきなり足を止めて男の方を振り返る。 「このへんでいいかしら? オシオキの時間よ! わんこ君!」 そう宣言すると、彼方はウィッグを脱ぎ捨て、イグニッションカードを取り出して起動する。 同時に既に起動を済ませ、遊具やその他の陰に隠れていた他の能力者達も現れて、2人を取り囲む。 「よくも騙したな! この嘘つき!」 先程までの捨て犬のような風情をかなぐり捨て、敵を目の前にした野良犬のような形相で叫ぶと、公園の入口の方から女性のリビングデッドが2体現れる。1体は勤め人らしいスーツ姿で、もう1体は学生だろうかカジュアルな服装をしている。 「どこまで生前の行動のままなのかな? ま、どれにしても同情はできないし容赦する理由もないよ。これ以上被害を出さない為に早く終わらせよう」 かると、舞華と組む柏木・リク(赤と青の唐辛子・b38226)がマイペースながらも厳しい言葉を投げつける。 「弱者のみを狙い恩を仇で返す駄犬が……――噛み砕いてやる」 柚希と組む狗々・狗々狼(闇狗ノ牙・b46699)が、激情を抑えた低い声で言った。
●公園中心部──外れし者達のハードロック 「いっくよーっ!」 かるとが自分に気合いを入れながら、白燐奏甲を武器に纏わせる。 「見た目はともかく、中身はとんだ野犬のようですね〜」 戦闘中にそぐわないのんびりした口調で、柚希がミストファインダーで大きな霧のレンズを自分の前方に出現させる。その前で前衛に立つ狗々狼も森羅呼吸法で自分の肉体を強化する。 そんな彼らには目もくれず、ナイフを抜いた男のリビングデッドは最も幼い郁めがけて襲いかかる。が、彼女と組む灘が前に立ちふさがり、体を張って男のリビングデッドを止める。ナイフは幸い急所を外れていたが、刃が深々と腹に刺さり、血が地面に滴り落ちる。 「子犬っぽいのは見かけだけで、中身はとんだ下衆だな……」 痛みと怒りに顔を歪めながら、灘は息と共にそう吐き出す。 「うるさいうるさいうるさい! 何しようが僕の勝手だろ! お前ら、そっちの女を動けないようにしておけ!」 男のリビングデッドの命令に、女のリビングデッド2体が彼方に襲いかかる。彼方はスーツの方の腕はかわすも、カジュアルな方の爪に腕を引っ掻かれる。 「そんなずるいことしてご飯をもらおうなんて……虫が良すぎますよ!」 リビングデッドが3体全て射線に入るのを確認して、舞華が龍撃砲を放つ。カジュアルな女のリビングデッドには直撃するが、スーツの女と男のリビングデッドは残念ながら一部しか当たらない。 「そうだよね、悪い子には痛いオシオキがあるの。おねーさんは優しいだけじゃないのよ」 そう舞華に応えるように、彼方が男のリビングデッドの後ろから黒影剣で斬りかかる。相手もとっさに振り向いて受けようとするが、一瞬間に合わず真っ向から斬られる。 「グァァッ!」 傷口から血を吹き出しながらも、男のリビングデッドは怯む様子がなく、ナイフを振り回して威嚇する。 「良い子にしてないとダメだよ」 そう注意するような口調で、リクがショッキングビートを披露する。超絶技巧の演奏に、カジュアルな女のリビングデッドは立ち尽くすが、他の2体のリビングデッドはまだ動ける。その間に、郁が灘の武器に白燐奏甲を纏わせながら尋ねる。 「なだ、まだ動ける?」 「ああ、まだ大丈夫だ。まだな」 歯を食い縛りつつ、灘は笑みで返す。 「俺はどちらかと言うと犬派なんだが、貴様は大嫌いだ。覚悟して貰おうか」 そう言って、灘は男のリビングデッドに龍顎拳を叩き込もうとする。が、傷でスピードが鈍ったか、渾身の拳はリビングデッドにガードされてしまう。だが、その直後にかるとが撃った穢れの弾丸が、男のリビングデッドの背中に命中する。 「女の子の優しさを付け込んで襲うなんて酷いの……ッ」 泣きそうな顔でかるとが言う。 「苦しいですよね〜……、すぐに……すぐに楽になりますので〜」 前方の霧のレンズに、柚希が瞬断撃を繰り出す。一瞬遅れてカジュアルなリビングデッドが胸を切り裂かれる。そこへ狗々狼の獣撃拳が追い討ちを掛け、カジュアルなリビングデッドは地面に倒れて動かなくなる。 「よくも僕のモノを!」 男のリビングデッドが叫ぶと、持っていたナイフを狗々狼に向かって投げつける。 「くっ!」 ナイフは肩口に刺さるも、狗々狼はすぐにナイフを抜き取って放り捨てる。 それからスーツの女のリビングデッドが先程攻撃してきた舞華に向かってくる。が、舞華は冷静に両腕を跳ね上げて敵の両腕を弾く。そうしてノーガードになったところへ龍尾脚を繰り出す。回転しながらの連続の蹴りが叩き込まれ、スーツの女のリビングデッドは派手に吹き飛ぶと、地面に倒されたきり動かなくなる。 「余所見してちゃ駄目よ!」 女のリビングデッド2体を失い、流石に狼狽を見せる男のリビングデッドに、再び彼方の黒影剣。敵と距離がある上に長距離用の直接攻撃手段を持たないリクは、ミストファインダーを展開する。 一方、郁は目の前で仲間が傷付けられるショックで持病とも言える吐血をするも、気丈な表情を崩さず、仲間を援護するべく土蜘蛛の檻を放つ。飛んできた蜘蛛の糸に、男のリビングデッドは全身を絡め取られる。 「なだ、今よ!」 「おうよ!」 郁の思いに応えようと、灘が二度目の龍顎拳。今度こそ拳は男のリビングデッドの体に叩き込まれ、敵は足元がふらつくほどのダメージを受ける。 「……被害者の絶望、少しはお分かりになりましたか〜?」 更に柚希の瞬断撃で切り裂かれ、男のリビングデッドは多量の血を流すも、まだ倒れない。 「畜生……こんな所で終わってたまるかよ……」 恨みの言葉を吐きながら、新たに出したナイフで蜘蛛の糸を切り、まだ抵抗の意志を見せる。 「――お前などにこれ以上被害を出させるものかよ」 そこへ狗々狼がとどめの獣撃拳を繰り出し、ようやく男のリビングデッドは倒れた。
●再び公園──再び死せる者達へのレクイエム 戦闘後、能力者達は怪我の応急処置と現場の後始末に入る。 物言わぬ死体となった3体のリビングデッドは狗々狼たちが運んでナイフを持たせる。刃物による切り傷もあるし、これで事情を知らない一般人が見れば、三角関係のもつれか何かで殺し合いに発展したと判断するだろう。 「どうか、安らかに……」 かるとが女性たちに黙祷を捧げる。 「被害者のような心優しい方……、生きて欲しかったですね〜どうか、安らかに〜」 柚希も悲しげな表情で手を合わせる。傍らでは灘も合掌している。 一方、彼方のように加害者である男の方に祈りを捧げる者もいる。 「可愛い子だったから残念ね。生まれ変わったらこんなオイタはしないようにね」 「次は……かわいいわんちゃんに生まれ変われるといいですね……」 舞華の言葉に周りはおいおいと突っ込む。 「子犬、ね。牙は少し大きめだったな」 皮肉げにリクは言いつつも、被害にあった女性に対し黙祷する。 「次があったらわたしのところに来ればいいわ。リビングデッドでさえなければ、こういった男性を飼いならすというのも……」 郁の発言に、周りが怖いものを見るような目で彼女を見る。 「いえ、少しはしたない発言でしたか」 そう撤回する郁だったが、あれは本気だと周りは思った。
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参加者:8人
作成日:2008/09/28
得票数:カッコいい8
せつない5
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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