魅惑のパンダフル温泉


<オープニング>


 月がこんなに明るいものだとは、知らなかった。
 人工的な光など一切ない、山奥のさらに奥。未舗装の道なき山道を進み、ようやく辿り着いた。
 真夜中の移動は思いのほか難航し、到着予定時刻をはるかに超えたが。彼らは仲間を労い合い、そして瞳を輝かせる。
 ごく一部のマニアしかまだ知らない――自然の川に湧く、秘湯。
 川自体が温泉であり、川原を掘ると熱い湯が湧き出て、好みの温泉も作れるという。そんな大自然の秘湯はレアなものなのだ。
 だが……ふと、川の中に。
 生き物のような影があることに、彼らは気がついた。
 先客か? と舌打ちしたものの。こんな秘湯を夜中訪れる物好きは自分たちくらいだと思い直す。
 もしかしたら、野生の熊かもしれない。そう警戒しながらも、さらによく目を凝らした。
 だが、その影の正体を確認した彼らは、その目を擦った。
 熊……に似ているが、熊ではなく。
「パ、パンダ……??」
 温泉に胸まで浸かって寛いでいたのは、つがいのパンダであった。
 熊ではない、間違いなくパンダだ。思わず顔を埋めたい衝動に駆られる白いモフモフの毛。そして両耳と目の部分が黒いことが、パンダであることを物語っている。
 つがいのパンダは並んで両目を閉じ、しっぽりと温泉を満喫している……ように見える。
 温泉愛好家たちはそっとパンダへと近づいてみたが、二頭とも全く動かない。余程温泉が気に入っているのか。そもそも、野生のパンダって?? 
 だが。
「か、可愛いっ」
 何故パンダが、という疑問よりも。そのモフモフさ加減にキュンとくる感情を抑えられず、ひとりがゆっくりとパンダに近づいた。それでも二頭はやはりじっとしたままだ。むしろその姿は、かなり和む。
 可愛さについ気を許し、彼らは大胆に歩みを進めた。そして、モフモフに手が届きそうな位置まで近づいた、その時。
 突然カッと、パンダたちの目が開かれたのだった。

「みんなっ、パンダだよう」
 集まって、第一声。いきなりそう言われた能力者たちはきょとんとする。だが、長谷川・千春(中学生運命予報士・bn0018)はお構いなしに、事の概要を話始める。
「このままだと温泉愛好家さんたちが、つがいのパンダの妖獣に襲われちゃうよ。彼らより先に秘湯に行って、妖獣を倒して欲しいんだ」
 パンダの妖獣は、毎晩23時頃から1時間半程度、川の温泉にしっぽりと浸かっているという。元々殆ど誰も知らない秘湯の上、出現時間も遅いため、今まで幸い被害者はいない。しかし、夜の秘湯を目指しやって来たマニアたちは、運悪く妖獣と鉢合わせしてしまうのだ。
 マニアたちが秘湯に到着するのは、今夜0時前。能力者たちは彼らが来る1時間前には十分現場に到着できるだろう。パンダは23時前後から現れるので、一般人と妖獣を遭遇させないよう解決したい。
 地形は広い川原で見通しは良い。川の流れは速くなく、幅も深さも何とか歩いて向こう岸に移動できる程度だ。
「妖獣の体長は、2メートルってところかな。あ、この妖獣って、パンダ『みたいな』妖獣でね。実は、上半身はパンダだけど、下半身は魚なんだ」
 上半身はパンダだけど、下半身は魚。
 か、可愛くない……それは全然可愛くない。
 全身モフモフを期待していた能力者は、一瞬密かに肩を落としたが。
 目的はモフモフではない、妖獣退治だ。そう、心の中で自分に言い聞かせる。
「妖獣たちは、相手と距離がある時は動かないけど。迂闊に近づいたり危害を加えようとしたりしたら、一気に牙を剥くんだ。近づいたら、噛みつきや引っ掻き、100キロある体で押しつぶしてきたりも。そのほかに、魚のしっぽで水滴を飛ばしたり殴ってきたりもするんだ。つがいだから、2頭が協力して攻撃してくることもあるかも」
 ただ、下半身が魚のため、川から上がるとその動きは鈍くなる。逆に川の中では、スイスイと素早く泳げるようだ。水に濡れると、格段にモフモフ度は低くなってしまうが。
「2頭で温泉に浸かってる姿は可愛くて和むけど、力が強くて体力もあるから、それなりに戦闘力はあるよ。でも油断さえしなければ、問題なく倒せる相手だと思うよ!」
 千春はそう一通り情報を告げた後、羨ましそうに言った。
「マニアたちの到着まで時間もあるから、早く片付いたら大自然の温泉を楽しむのもいいんじゃないかな? みんなで川原を掘って自分たちの温泉を作るなんてのも楽しいかも」
 秋の手作り天然温泉とは、なかなか乙なものだ。ジュースなどの飲み物や軽食を持参すれば、大自然の温泉に浸かりながら、ちょっとした勝利の祝宴なんかもできるかもしれない。
 千春は能力者たちを一度ぐるりと見回した。そして持ち前の明るい笑顔で、彼らを送り出す。
「んじゃ、気をつけてね! いってらっしゃいっ」

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参加者
笠雲・いつか(雪小石・b00401)
藤波・沙和(戦場のお花畑・b02259)
鈴城・悠(ファイト一発・b15958)
宮代・月音(ほんわかゆったり・b18821)
エルデ・レグリディカ(ひだまり憧憬・b31176)
サラ・モラトリアス(は今日も龍の夢を見る・b36309)
百鬼・ルル(ウェザー・b40707)
伊礼・榮司(小学生ヘリオン・b41416)



<リプレイ>

●パンダの川流れ
 月明かりが水面を照らす、大自然の秘湯。まだ誰の姿もそこにはない。
 人目につかぬようイグニッションしていた能力者は、早めに秘湯に到着していた。
「山奥の秘湯って何だかワクワクするね〜♪ 辿り着くまでに苦労しなくちゃいけないってゆうのもまたオツなのよ〜」
 険しい山道を進むこと数十分。鬱蒼とした森林から川原に出て、藤波・沙和(戦場のお花畑・b02259)は、はしゃぐように笑む。
「自然の川に湧く秘湯……すごく楽しみです! ……い、いえっパンダの妖獣2匹退治、それが一番の目的っ」
 エルデ・レグリディカ(ひだまり憧憬・b31176)は同じく瞳を輝かせながらも慌ててフォローした。
 その隣で鈴城・悠(ファイト一発・b15958)は頬を緩ませている。
「パンダ妖獣ですかー。……ウフフフ、もこもこふわふわー!」
「モフモフパンダは抱いて寝てみたいですねぇ。魚が混じっているのと倒さないといけないのが残念ですよぅ」
 サラ・モラトリアス(は今日も龍の夢を見る・b36309)はそう言ってふっと綺麗な銀の瞳を細めた。 
「温泉パンダさん……お湯につかっているだけならいいのですけれど、一般の方に被害を出すわけにはいきませんよね」
 笠雲・いつか(雪小石・b00401)はモーラットの八を撫でつつ、表情を引き締める。
 宮代・月音(ほんわかゆったり・b18821)もおっとりした口調ながらも頷いた。
「せっかくの秘湯、皆で安全に楽しめる様にしませんと」
 能力者たちは現場を確認し、持参した道具で下準備を始める。川原は広く、特に障害になるものもない。月も明るくライトもあり、視界的にも問題ない。
「では、パンダ魚が現れるのを待ちましょうか」
 一通り準備を終え、百鬼・ルル(ウェザー・b40707)の言葉に全員が頷いた。
 能力者たちは森林に身を潜め、周囲に目を配る。一体どこから妖獣はくるのだろうか。能力者たちは緊張した面持ちで待つ。
 ――その時だった。
「あっ! あれ……だよね?」
 伊礼・榮司(小学生ヘリオン・b41416)は川を指差し遠慮気味に言った。彼の指先に全員の視線が向けられる。
 だが、その思わぬ登場の仕方に、全員が数度瞬きをした。
「なっ、流れてるっ!?」
 どんぶらこ、どんぶらこ、と。
 つがいで仲良く上流から流れてくる、モッフモフなパンダ。何ともキュートなほのぼのさ加減である……が。
「って、行っちゃうよ〜!」
 妖獣の誘き寄せ役の沙和はハッとし、目の前を通り過ぎて尚も流れて行く2匹に焦ったが。
 程なくピタリと止まり、しっぽりと温泉を楽しみ始めたパンダ。そこが定位置らしい。ほふうっと溜め息をつき、目を細めている……何とも和む光景である。
 だが、放置すると犠牲者が出る。早急に倒さなければ。 
 能力者たちは森林から飛び出し、陣形を成す。
 温泉を楽しむパンダには悪いが。妖獣は、退治すべき存在である。

●パンダ、怒る
 パンダのいる場所まで、少し距離がある。川原からの射撃は届きそうにないため、射撃役の沙和は川へと入った。すぐ後ろからフォローの悠が続く。ふたりは気を抜かず射程圏内まで進み、沙和は『鉄の塊』という名のガトリングガンを構えた。
 パンダはまだ動かず能力者に背を向け、相変わらずしっぽりしている。
 川原では、ルルが注意深く視線を投げ、後衛では榮司が緊張の眼差しで見守る。
 そしてサラがサイコフィールドを、エルデが前衛のルルに白燐奏甲を、月音が施剣の構えを、いつかが雪だるまアーマーをそれぞれ施し、来る戦闘に備えた。
 刹那、沙和のガトリングガンが火を噴く。
 ドゴオッ!!
 1匹のパンダの後頭部に射撃がモロに命中する。周囲に緊張がはしった。
 だが。
「……!?」
 パンダは思わぬ衝撃で前のめりになりながらも、動く気配がない。
 射撃では駄目なのか? そう、思った時。
 パンダが――くるりと、振り返った。
 次の瞬間。
「!! 早っ!」
 悠は沙和を抱え、川原へと必死に走り始める。
 振り返ったかと思うと、ゴオォッと水しぶきを上げてすごい勢いで向かってくるパンダ。その表情は、怒りの形相に変わっている。かなり怒ったらしい。
 だが、作戦は成功である。しかももう1匹も、追って川原へとやってきている。
 何とか水から上がった悠と沙和は、所定の位置についた。
 ほぼ同時に、怒り狂ったパンダも川原へと上がり……その下半身が、露になる。
「下が魚なんて、反対ですーっ!」
 エルデは思わず叫んで首を振った。
「うわぁ……こ、このパンダと魚の絶妙なバランス……! かわいくデフォルメすればキャラクター商品としていけるかもっ!?」
「動物園とかに放置したら人気でるんじゃないですか?」
 沙和とルルは同時にそう言って、身構える。
 1匹のパンダは怒り狂っており、かなり川原へ上がっているが。残り1匹は川から離れない程度の位置で、もう1匹と能力者を挟むように留まっている。 
 だが、それこそルルが狙っていた状況だ。ルルは隙のない華麗な舞のような動きで、スラッシュロンド改を放った。
「パンダ魚の膾切りって美味しそうですね」
 流麗なその技をくらい、妖獣2匹は同時に奇声を上げる。
「皆さん、頑張ってくださいませ」
 サラとエルデは共に仲間に白燐蟲を放ち、中盤からサポートする。月音は白く光る長剣で、怒り狂っている方の妖獣へ、渾身の紅蓮撃奥義を叩き込んだ。
「さあ、まずはこいつから仕留めますわよ」
「グアァッ!」
 強烈な斬撃に、妖獣はたまらずよろめく。
 だが倒れるまでには至らず、さらに怒った妖獣たちは反撃に出た。
 川に近いパンダが広く大きな尾を水に付けた、次の瞬間。
 弾丸のような無数の水滴が、前衛の能力者たちを容赦なく襲う。そして間髪を入れずもう1匹の妖獣の鋭い爪が、川との間に位置取っていた悠目掛けて振り下ろされた。
「つぅ……っ!」
 引き裂かれ血の滲む肩を押さえ、悠は思わず顔をしかめる。妖獣は悠に、再び腕を振り上げたが。
「させません!」
 いつかは妖獣目掛け、ふっと冷気を帯びる息を吹きかける。妖獣の身体が瞬時に氷に覆われた。
「悠さん、今回復するね!」
 榮司は土蜘蛛の魂を宿らせ、悠の体力を回復させる。
 それから再びルルが、美しい輪舞曲のような衝撃を2匹まとめて見舞った。
 さらに悠がパンダのモフモフが堪能できるほどの間合いに入り、水の衝撃を流し込む。
 そして。
「夢の世界に行ってくださいませ!」
 サラは攻撃が集中していない方の妖獣に悪夢爆弾を飛ばした。漆黒の余波の中、標的のパンダは夢の中へと誘われる。
 もう一匹の妖獣は爆水掌で深いダメージを負いつつも、まだ倒れない。それどころか、大きな尾をぶんっと振り回す。
「きゃあっ!!」
 その強襲を受けたのは、いつか。受けた衝撃の大きさに思わず膝をつく。
「いつかさん!」
 だが、すかさず八が、主人のために祈りを捧げた。
 エルデも白燐奏甲で彼女を癒し、深かった傷を治す。
 沙和は仲間の回復にホッとした後、自身の武器に黒燐蟲を這わせた。
 そして月音の長剣による斬撃と榮司の光り輝く槍の衝撃が、妖獣を貫く。
 さらに攻撃の手を緩めず、ルルの放ったクレセントファング改が、その身体を引き裂いたのだった。
 轟音のような唸り声を上げ、地に倒れる妖獣。
 その身体は、跡形なく消滅した。
 全員が一瞬ふうっと息をついたが。しかし、まだ終わっていない。
 残り1匹も覚醒を始めたようだ。みすみす目覚めさせるほど、甘くはない。まどろんでいる妖獣に、全力で集中砲火を浴びせる。
 もう一度懐に飛び込み、爆水掌を見舞う悠。
 ぐらりと揺れる巨体はエルデの魔弾により炎に包まれた。
「これ以上皆さんを傷つけさせません! 馬に蹴られて落ちてください!」
 サラに生み出された漆黒の馬が妖獣に襲い掛かる。
 月音の長剣によって生じた妖獣の傷跡から、どす黒い血が噴出した。
 妖獣は呻きながらも反撃し、鋭い爪を振り下ろしたが。  
 それを受けた月音の傷も、榮司の祖霊降臨ですぐに癒される。
「さーぶちかますよ〜!」
 その声とともに沙和のひと睨みが、妖獣の身体を内側から引き裂いた。
 それに追い討ちをかける、いつかの氷の吐息。断末魔を上げることも叶わず、妖獣の身体は一瞬で凍りつく。
 そして、パンダ魚の氷像は……脆くも儚く砕け落ち、消滅したのだった。

●しっぽりと賑やかに、勝利の宴
「これで心おきなく温泉に浸かれるね〜! きゃっほぅ〜い!」
「わーい! 温泉ですー!」
 沙和とエルデは逸る気持ちを抑えきれず、はしゃいでいる。
「はぅ、皆さんお疲れ様でした。怪我も無くて良かったですよぅ」
 サラも仲間の無事を喜び、にこりと笑んだ。その言葉に、悠といつかも顔を見合わせ微笑み合う。
 滅した妖獣に律儀に合掌した後、月音も皆に続いて着替えるべく森林へ入っていった。

 その間、ルルと彼に誘われた命と儚、榮司の男性陣は、早速男湯を作ろうと張り切っていた。
「まずは川原を掘って温泉作りじゃ。自然の中、修業で鍛えたこの腕で一息に完成させてくれる!」
 命はオーラすら見えるほどの勢いで、川原に穴を掘り始める。
「うっわ、熱っ」
 ぷしゅーと噴出した温泉に、ルルは顔をしかめる。実は彼は、熱い風呂が苦手なのだ。だが密かに、自分たちの温泉に『僕達の秘湯』という素敵ネーミングを考えていたりもしていた。
 そんなルルに儚はにっこりと微笑む。
「湯あたりしても団扇と救急箱持参だから大丈夫だよね?」
 それから着替え終えた女性陣にちらりと目を向けた。水着着用とはいえ、混浴はやはり照れる。
「楽しいな……また一緒に何処かにいこうね」
「……秘湯は良いのう。心が洗われる」
 大切な友達と居られることの幸せ。ルルは友人たちを見つめた。
 そして思わず、心からの笑みを零すのだった。

 一方。
 戻ってきた女性陣に、いつの間にか最年少の榮司は捕まっていた。
 お姉さんたちに囲まれオタオタしつつも川原を掘り、コポコポと湧き出てくるお湯に目を輝かせて手を入れてみたが。
「少し、熱いみたい……」
 もきゅーと温泉を待っている八を見つめ、榮司は小さく首を傾げる。
 そんな榮司に月音はこう提案してみる。
「川のお湯と混ぜてみては?」
 早速川からお湯を引き、再び温度を確認する。そして八の主人のいつかに視線を向けた。
 いつかは八を、榮司の掘った小さな温泉に入れてあげる。八は気持ちよさそうに、もきゅーと声を上げ、可愛らしい瞳を細めた。
「やっぱり、モーラットの方が可愛いです」
 魅力的なモフモフではあったが。パンダ魚の魚部分を思い出し、いつかはそう呟く。
 例え温泉でモフモフがぺったりなったとしても、八は別格に可愛い。そう改めて感じながら、いつかは八を愛しそうに見つめた。
「えーい、お湯かけます!」
「あっ! やったなっ、お返しなのよ〜っ!」
「わわっ、こっちにもかかってますってー!」
 きゃあきゃあ騒ぎながら、エルデと沙和と悠はお湯を掛け合っている。月音はその様子を微笑ましく見ながら温泉を掘る。
 そして、温泉に足をつけてみたサラは。
「はぅ〜、気持ちいいのですよぅ……」
 その気持ちよさに、早速ウトウトしはじめていた。

 温泉も掘り終わり、落ち着いたところで。
 それぞれ持参した飲食物を分け合い、改めて勝利の祝宴が始まった。
「いやですねぇ、何も入ってないですよ、何も」
 ルルは一見穏やかな笑みを宿しながらも、栗ご飯おにぎりを振舞う。
 悠は全員に瓶牛乳を渡した後、自分の分をゴクゴク飲んで思わず呟いた。
「五臓六腑に染み渡りますねー」
 ――その時。
「あっ……これって、まずいんじゃないかな〜?」
 沙和は人の存在を確認し、そう呟く。どうやら温泉愛好家が到着したらしい。
 いつかは八をイグニッションカードへと素早く戻す。
 愛好家たちは、思わぬ先客にためらっているようだ。だが近づいてきて能力者たちに声をかける。
「こんばんは」
 通報されるのでは、と懸念していたが。聞くと愛好家たちは、某大学の温泉愛好会とOBらしく若いグループだった。
 能力者たちは自分達は温泉好きの仲間だと、そう言い訳をする。マニアたちは小学生の榮司に少し疑問を持ったが、弟だと言うと納得したようだ。
「せっかくですし、一緒に楽しみませんか?」
 ルルは笑顔ですかさず話を逸らし、愛好家たちにも栗ご飯おにぎりを振舞う。
「大人数の方が楽しいですしねぇっ」
 そう言って大所帯になった秘湯を見回した後、エルデはふと月を見上げた。
 あの妖獣たちもこの風景を見ながら、温泉に浸かっていたのだろうか。
 そんなことを、心の中で思いながらも。
 愛好家たちが無事に、自分たちと楽しんでいる今。その現状を見つめ、再び笑顔を宿した。

 柔らかに照らす月明かりの下で。
 誰も知らない秘湯とは思えぬほど、賑やかな天然温泉。 
 だがこういうのも……なかなか、乙である。


マスター:志稲愛海 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2008/10/16
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