ツルテカな君に魅せられて


<オープニング>


 焦がれた、のだと思う。
 
『むーじょうじんじんみーみょうほうひゃくせんまんごうなんそうぐう』
 訳の分からない平仮名が右から左の耳へと抜けてゆく。
 広い講堂で十人ずつの隊列を為して胡座を掻いているのは、素っ裸同然の全身を黄金で塗り固めたつるっぱげのマッシブメン達であった。身に纏うのは、光を浴びて白銀に煌めく褌一枚。お経だか、念仏だか、素人には全く分からない怪文を誰一人として乱れることなく唱え続ける。
 墨凪悠人は、講堂の上段にいた。彼等の中でもひときわ大きい、体長二メートルほどもある黄金のマッシブメンの胡座の上に座らせられ、逞しい両腕で熱い抱擁を受けながら、耳元でなま暖かい吐息と鼻息を浴びつつ囁かれるという拷問を味わい続けている。目の前に広がる全く同じ顔のマッシブメンは皆が悠人を凝視していた。
『がーこんけんもくとくじゅーじーがんげーにょらいじんじつぎー』
 目の前に広がる黄金のハゲ。耳から忍び込んで脳をなぶる湿った吐息。
「いやあああああああああああああああああああああああ」
 俺が願ったのは、こうじゃない。
 そんな魂の雄叫びが、悲鳴に消えた。

「あー、お疲れさまです。悪夢に苦しんでいる人いるので救出して欲しいのですが、いやーちょっと心構えが必要かもしれないです」
 楠・まひる(高校生運命予報士・bn0204)は乾いた笑い声を発しながら、言いにくそうに悪夢に捕らわれている者の話を始めた。
 対象の名前は墨凪悠人。今をときめく十六歳の少年である。
 彼は己の容姿に対するコンプレックスを抱えていた。
 モデルに憧れる女性達の誰もが羨む、ほっそりとした白磁の四肢ときめ細かい小麦粉のような素肌。薄胸板に痩せた体故のくびれた腰、艶やかな黒髪に長い睫、蠱惑的な桜色の唇。
 と、列挙すれば溜息ものだが、年頃の男子としては切なかったのだろう。勿論、こういった華奢な容姿を好む者も多いだろうが、墨凪悠人は真逆の容姿に憧れていた。
 雄々しく、逞しく、同性の尊敬を一心に集め、女性すら溜息を零す様な肉体美。アスリートも驚くような鍛え抜かれた体に焦がれていた。太陽と月のように、憧れる反面、己の容姿が嫌いでたまらなかった。
 どんなに食べても肉が付かない。脂肪にすらならない。
 どんなにお稽古事に励んでも、筋肉はついてくれない。
 だから、欲しいと思った。あの肉体が。あの輝きが。
 それがまさか……来訪者たるナイトメアの格好の餌食になろうとは、全く予想していなかったに違いない。
 今現在の彼が置かれた状況を話し終えた楠まひるは、青い顔色で溜息を零した。
「長年焦がれた存在が醜悪な姿となって現れる。論理的に考えればこれほど精神的に参る手段はないけど、余りにも可哀想で。急いで助けに向かってください。彼は現在自宅療養中です」
 古い民家だから侵入は簡単だろうと言った。
「肝心の悠人君はお寺のような歴史的建造物の最奥、講堂の中で、黄金のマッチョに囲まれています。講堂内部の敵数は大凡五十体プラス、悠人君をお膝に乗せたボス一体という所でしょうか。建物にはすんなり入れますが……最初の難問が、誰か一人、講堂前の扉で悠人君と同じ目にあう必要があります。具体的に言うと、門番マッチョの胡座に座って、息苦しい抱擁と耳元で湿った吐息を浴びるんです。何か意味不明な言葉を喋り続けますが、暫くすれば収まります。というのも門番役のマッチョの気が済まないと、強固な扉が開きませんので」
 あまりにも切なすぎる難問に涙が光る。
 貴い犠牲が生まれそうだ。
 もし攻撃して倒したら?
 結局どこからともなく黄金の褌一丁のマッチョが現れて、次の門番となるだろう。
「ちなみに講堂内で、ボスや雑魚が十人以上の集団で合唱した言葉は、衝撃波となって襲いかかってきますので注意してください。後は愛の抱擁ですね。捕まるとむさ苦しさと気持ち悪さに加えて骨砕けますから気をつけて」
 仮に、順調に倒して行けたとしても、心に深い傷を負った悠人を目覚めさせるのは至難の業だ。悪夢の原因となった存在への恐怖を払うと言ったって、モノには限度がある。手っ取り早いのは、自分の容姿に自信を持たせることなのかも知れないと、まひるは何気なく呟いた。
 楠まひるはティンカーベルの粉を手渡した。
「いいですか。いくら悪夢がまともで無いにしろ、悪夢の中はナイトメアの領域です。意味は、ご存じの方もいますね?」
 夢の中で追った怪我や致命傷は、そのまま現実の肉体に影響が跳ね返る。
 マッチョの抱擁で体が砕けたなんて、洒落にもならない。

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参加者
繭月・暁(悪殲狗闘・b12442)
草壁・志津乃(白鳥奏歌・b16462)
神宮・戒(の恋人は日本刀・b20174)
九條・葵(ストーリーテラー・b23090)
烏森・メジロ(いつか月に行ってみたい・b26804)
井上・皓凱(我が目指せしは壁の華・b31993)
花屋敷・幽兵(銀誓館のバナナキング・b32720)
赤藤・歩夢(夢謡い・b35721)
宮島・梅花(に後退はない・b43852)




<リプレイ>

 その卑しい悪夢の存在感に、圧倒される者達がいる。
 まさに古来の芸術家が一本の丸太から削りだせし芸術品。例えるなら猛々しい阿吽の二王が如き威光を放っていると言っても過言ではないだろう。金箔で隙間無く飾られた肉体は、神々しさを備えたはずだが、輝くもっさり褌と荒い呼吸が全てを台無しにしている。
 講堂に繋がる唯一の扉。
 扉を守るムキムキマッチョの抱擁を受けねば先に進むことは叶わない!
 何を思ってか犠牲を立候補した井上・皓凱(我が目指せしは壁の華・b31993)は、いざ目の当たりにした眼前の処刑台……否、玉座の存在感に挫けていた。
 男に二言はない、と言い切りたいところだが、思わず仲間を振り返る。
 まず目に飛び込んできたのは、男子でありながら愛らしい容姿を備える九條・葵(ストーリーテラー・b23090)が、まぁるい漆黒の瞳に零れんばかりの涙を浮かべる姿だった。
「皓凱さんの命、絶対無駄にしないからね!」
 既に殉職者に捧げる台詞である。
 しかも尊敬と憐憫を秘めたる瞳は、有無を言わさない。
 傍らにいたのは哀悼を捧げる繭月・暁(悪殲狗闘・b12442)だった。
 絶対に前は見ない。瞼をしっかりと瞑り、両手をあわせ、合掌したまま事が終わるのを待っている。ただでさえ視界の暴力を振るう黄金のマッシブメンだ。
 見たくない、という者は少なくない。
 例えば草壁・志津乃(白鳥奏歌・b16462)は完全に余所を向いていた。右斜め下を見つめたまま、胸を痛めるような表情を浮かべつつも、井上の視線を横顔に感じると。
「ネタが何の話かは分かりませんが、此処へ来る前に、これも人生経験と言い切った皓凱さんの姿は立派でした。……――『立・派』でしたから、ね?」
 大事な事なので二度言った。さりげなく前言撤回と飛び火を阻む。
 後に引けない。
 神宮・戒(の恋人は日本刀・b20174)は明後日の方向を見上げて拳を握る。
「全力をもって醜悪な黄金マッチョ共を殲滅しよう……待っていろよ、黄金マッチョ」
 彼の標的に門番は数えられていない。暗に任せたと言われている気がする。
 烏森・メジロ(いつか月に行ってみたい・b26804)はひたすら眩しげに目を擦っていた。
 花屋敷・幽兵(銀誓館のバナナキング・b32720)は爽やかな微笑で励ますかと思いきや。
「まあ、パッと散るのもまた一興。お通じが良くなる様な事もありますまい、多分」
 不穏な言葉が恐怖を呷る。
 その時、ぼんやり立っていた宮島・梅花(に後退はない・b43852)と井上の視線が合う。
 宮島は視線を逸らすことも、必殺『私は何も見なかった』を繰り広げるわけでもなく、緩慢な動きで片手を上げて、拳を握り、親指をピシィッと立てた。
「頑張れ男の子。主役は君だ」
 畳み掛けるようなゴーサイン。
 実は宮島、若干妄想の中にいた。もやしっこよりは肉体美よね、強く願うと皓凱くんも筋肉美を身に着けたりしないかしら、等と心を怪しく躍らせているなんて誰にも言えない。
 此処まで来ると、残された選択は『諦める』のみ。
 犠牲者井上が悲嘆にくれながら黄金の肉体と対峙した時、赤藤・歩夢(夢謡い・b35721)が井上の横に並んだ。艶やかな美貌と豊満な肉体に、健全な男子なら平常心は保てまい。
 赤藤は耳元に甘く囁いた。
「勇気ある生贄役に感謝かな。自分から飛び込むなんて……最後まで頑張れたらご褒美をあげるよ」
 聞き捨てならない台詞にどよめく開門待ち一同。
 これで踏ん張れなきゃ男が廃る。
「仲間のために、俺はこの身を差し出そう! いくぜ! ギンギンパワーZ!」
 掌に現れた栄養ドリンクを、腰に手を当て一気に飲み干す。
 まるで風呂上がりの牛乳だが、どてらを着込んだ男は闘志に燃える。要は気合いだ。
 黄金のマッチョは逞しい両腕を大きく広げた。準備万端、いつでも来い。無言で訴える運命の玉座へ、井上が一歩一歩歩んでいく。
「これは猫のスフィンクス、猫耳付きスフィンクス……駄目だ……スフィンクスたんはこんなにムッチリしてない……スフィンクスたんはこんなにテカテカしていない! うッ」
 時、既に遅し。
 両腕というシートベルトに固定された井上に、最早抗う術はない。包み込む体温、脈動する筋肉、つるりと滑る脂汗の玉座に加え、耳の中にまで届く湿った吐息は嫌すぎる。
 むふー。むふー。むふぅ。むふー。むふふぅ。むふー。
「やっぱ、ィやだああぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ」
 燃え尽きていく井上と両頬を桜色に染め、満足そうに抱きしめるマッチョ。
 懇願しても泣き叫んでも、呼吸困難に陥るまで締められても耐えるしか、ない。献身的な仲間の勇姿を視界から外したままで、繭月達は井上の笑顔が虚空に浮かぶ幻を見ていた。
 彼は確かに、輝いていた。

 不可能を可能にするとか、忍耐は美徳とか。
 消し炭とか化した生ける屍の口から零れる言葉に生気は感じない。
 お疲れさまでした、と全く相手を見ずに苦労をねぎらう者もいれば、面白がって見ている者もいるし、いやむしろ清々しいほど爽やかな笑顔で開門に向かう者すらいる。
「さて、数は多い分的には事欠かないな! 存分に暴れまわらせてもらうぜ?」
 繭月が意気揚々と扉を蹴破ると、内部の眩しさに目が眩む。鳥森が呻いた。
「キンキンピカピカで目が痛いのね。目が痛いのが無くなるように頑張って倒すのね!」
 後光と見まごう輝きは、テカテカに輝く後頭部だ。救出対象を見つけた宮島がぼやく。
「汗くさいってより熱気がきついね。あー、みつけた。悠人君、可哀想に」
 ボディビルダーの大会が開けそうな人数の黄金マッチョが、隊列を為して壇上を拝んでいる。壇上に菩薩が如き不動さを感じさせるマッチョと、脱出を諦めかけている墨凪悠人がいた。やがて彫りの深い厳つい顔が、全く同じ動きで扉を振り向く。
「……ある意味、壮観なのかもね、この光景……むさ苦しいのに、なんか寒い、よ?」
 九條は悪寒を感じながら、身を守るかのように己の細い体を抱きしめた。助けてやりたいのは山々だが、生理的嫌悪感が拭えない。皆が死んだ魚のような目になっていく。
 そしてそれは、起こるべくして起きた。
 美少年を守るべく立ちはだかる黄金の筋肉が、一斉に口を開こうとした刹那。
 あまりの暑苦しさと気味悪さに、草壁の絶叫が木霊する。
 おまけに力つき。鉄の理性も、生理的嫌悪感にはうち勝てないようだ。
 パンッパンッパンッパパパァン!
 激しく割れていく天井の硝子や飾りの置物。肝心のマッチョは衝撃に揺らめく程度だ。
「て。ああ、悠人さんが!」
 肝心の救出対象がノびている。
 偶然とはいえ、敵の中心部にいたので致し方あるまい。
 九條の一声に、力の限り叫びまくっていた草壁が我に返った。攻撃対象を選択し、近くの仲間を対象外にできるとはいっても、敵以外の全てを攻撃対象から完全に除外出来ないのがブラストヴォイスの欠点だ。動揺込みの衝動的なら、益々精度は鈍る。
「無駄に動かれるよりはマシでしょう。暑苦しい空間ですね。少し冷やしましょう」
 結果オーライ。鋼の理性が帰ってきた。若干目が据わってる点は、気にしてはいけない。
 
 マッチョ達は十人ずつの一塊りになってその場に座した。
 襲ってくるかと思って万全を期した神宮達に向かって、寸分違わぬ動作で手を組み。
『むーじょうじんじんみーみょうほうひゃくせんまんごうなんそうぐう、がーこんけんもくとくじゅーじーがんげーにょらいじんじつぎー』
 野太い声の大合唱。素人には解せぬ怪文を、瞬き一つせずに唱えだす。彼等の声は草壁の悲鳴に勝るとも劣らぬ衝撃波となって九人を襲った。見た目の莫迦さ加減に比べて、その攻撃力は凄まじい。
「流石五十人。馬の耳になんとやら。欠伸が出そうですねぇ!」
 強がってみせた繭月だが、額には汗が滲む。
 サイコフィールドで包まれているとはいっても物には限度がある。
 そんな中、彼等の言葉を理解する者が現れた。赤藤である。
「少し遣りすぎだね。ぼくの中なら歓迎してあげるんだけれどね、ふふっ――流石にきついかな、戦えやしない。……先回りして唱えてみようかな、えーと、我昔所造」
 ぴた、と波動が収まった。
 其れまで全く乱れの無かった黄金のマッチョ達が沈黙し、動揺が走る。
 眉を顰めた赤藤は、しばしの沈黙の末に「諸悪業、皆由無始貪瞋癡」と言葉を続けた。
 益々動揺が走り、衝撃波が完全に止んだ。鳥森が目を輝かせ、宮島が冷静に分析する。
「赤藤のお姉さん、すごいのね。これならばっちり戦えるのね」
「へぇ、キミ。連中の言葉が分かるのかな? 凄いね。どうやら同文の横やりが入ると衝撃波にならないみたいだね。今のうちかな? 悠人くんを早めに助けてあげないとね」
 繊細な美少年は国の宝です、そう断言した宮島は、黒燐蟲の群れで出来た弾丸を前方に放った。爆発によるマッチョ達の隊列が崩れる。一人でポージングしながら走ってきたマッチョに、赤藤前方の壁を担っていた神宮が一太刀を浴びせた。まずは一体。
「今、完全に赤藤を狙ってきたな。赤藤、続きを頼んだ。安心しろ、後方には俺や暁がいかせはしない。衝撃波を阻んでしまえば、あとは周りが範囲で削りながらオレ達が全力を持って醜悪な黄金マッチョ共を倒してみせよう」
「え、本気で全部唱えるのかい? 別に私は声に力があるわけでもないんだよ?」
 軽く戸惑った赤藤に、前衛を務めていた花屋敷が頷きながら振り返る。
「どうやら彼等の呪文を邪魔できるのは赤藤さんだけみたいですし、宜しくお願いします。ところで九條さん、げっそりしてますが大丈夫ですか?」
「近づかれる前に倒す、近づかれる前に倒す」
 かくして、思いつきによって発覚した弱点を赤藤が押さえつつ、戦闘は過熱していく。
「氷で消毒です。あんな狂った配色センスの方達に近寄られたくありません。何故金ピカ。凍っておしまいなさい」
 草壁が消毒と称して凍てつく吐息を浴びせ、宮島と花屋敷が黒燐蟲の群れで爆発させる。
 五十人も相手をしていると、徐々に相手をするのが面倒になってくるのは仕方ない。
 蠱惑的な微笑は何処かへ消えてしまった九條は、念仏のように『近づかれる前に倒す』を繰り返しつつ、手短な対象へナイトメアを疾走させる。悪夢から弾きだされんばかりに消耗していた井上も、怒りと執念と哀愁のつまった栄養ドリンクの御陰で、半ば程から復活をとげ、門番で晴らせなかった恨みを見境無しにぶつけていた。
「肌の接触は好きですけど……暑苦しいのはお断りです」
 繭月の深紅の爪がぶすりと突き刺さる。神宮や宮島の手によって遠方のマッチョにまで打ち込まれる炎の魔弾や魔眼の力、清々しいまでに容赦がない。
 これが美女とか美少年だったら、躊躇いもあったのだろうか。
「花屋敷のお兄さん、残るは奴だけなのね! 頑張って行くのね!」
 鳥森は花屋敷をボスに押しつける気満々だった。
 体力及び精神の消耗が激しい中で、井上の栄養ドリンクを口の中に押し込まれた花屋敷は、爽やか且つ変態に微笑み、両手を後頭部に回して両肘を伸ばし、左足に重心をずらして右足の足先を浮かせ、完璧なまでのアブドミナル・アンド・サイを決めた!
「そこのムキムキナイスガイ……やらないか?」
 これで裸体だったら、真っ先に草壁達によって除菌されていたに違いない。
 自殺行為の誘惑によって、しっかり捕まる花屋敷。豪腕の抱擁にあった花屋敷は叫ぶ。
「今です! 自分に構わず、早くモヤシっ子の保護を! そして早くボスを倒してくださ」
 めきょっ。花屋敷の言葉が途切れた。井上の二の舞である。
「嫌な音が……気のせいと言うことにしよう。花屋敷、お前の勇姿は忘れないからな?」

 ボロボロになりながらも救出した墨凪悠人に向かって、一同は思い思いの説得を行った。
「全世界の女性達を敵に回す台詞は言わない方が良い。痛い目に遭いたくなければ……な」
 神宮が不穏な説得を試みる。少年は理解できないようだった。片隅で呻き声が聞こえた。
「その体は貧相というよりは華奢。強さより美しさを持つ、稀有な存在なのです。食べても太らない。それもまたステータスだ、マイノリティだ! 神宮先輩の言うように、そこの女性陣が泣いて羨ましがる特異能力です。もう少し、自分に誇りを持つべきです。がは」
 主張をしきって果てた同士に、井上が涙しながら栄養ドリンクを差し出している。
「俺は美人さんが好きだからその容姿はかなりクルんだけどなぁー…」
 繭月が小声で呟き、舐めるように若者を眺めた。もったいない、と思う者もいる。
「お兄さんも『いけめん』のまま、強くなればいいと思うのね。皆を驚かせると良いのね」
「どうすれば強くなれるのさ」
 筋肉ショックから立ち直れない悠人は鳥森に言った。宮島が覗き込む。
「怪我は無いよね? ちょっときつかったでしょ」
 ちょっとどころではない。
「演劇をやれる鍛え方ってのもあってね。無理に筋肉をつけるより向いてると思う」
「何にしても、中身がダメなら外見を鍛えてもどうせあの金色と同じさ。きみはどうする? 外面が気に食わないからって腐るかい?」
「その体は親御さんから受け継いだものだろう? この世で、たったひとつの一つの理想にこだわるより、好きな部分を増やす方がいいと思うよ」
「そーそー、生まれ持った特徴を嘆いてもしょうがないよ! むしろそれを磨いていけば人生の役にも立つし自分にも自信が持てるんじゃないかな!?」
「人それぞれ個性があり合う道も各々違います。美しさと体力、両立出来るならその方が良いのでは。貴方は充分立派ですよ」
 一瞬の沈黙。
「そ、そうなのかな?」

 ところで犠牲者二名の介抱はと言うと。
「この心の傷はちょっとやそっとでは癒せない! オネエサマー!」
「あ、生贄達はおねーさんで良ければ癒されなさい。アイスあげるから」
 そんなぁと宮島に情けない声を返す花屋敷。赤藤はでこちゅー位してやろうかと思っていたらしいが、素知らぬふりをしていた。不憫に思った神宮は、悩み抜いた末にその身をしなやかな猫の姿に変えた。
 みゃあ。小首を傾げてすり寄ってみる。
「ああ、あったかい。手触り抜群。神宮さあぁぁん」
 もっふもふのつっやつやな毛並みと、ぷっにぷにの肉球に癒される井上の姿は大変微笑ましいのだが、猫の中身が年上で細身の美形オニーサンという辺りに、帰り道で草壁とともに熱いコーヒーとアイスを配っていた宮島達の妄想が、怪しく羽ばたいたかどうかは神のみぞ知る。

 とりあえず、結果良ければ全てよし。


マスター:やよい雛徒 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:9人
作成日:2008/10/20
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
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