死神の13階段


<オープニング>


 13階段のうわさを聞いたことはないだろうか。
 トイレの花子さんなどと同じく、学校の怪談として、広く知られているものである。
 この小学校でも昔から、七不思議の一つとしてよく知られていた。
「4階から屋上へ向かう東側の階段は、普段は12段しかないが、夜中の12時になると13段に増える。そのとき13段目にいると死神に連れ去られる」
 というものだ。
 神隠し、ではなくて死神というのが若干現代風であるが、良くある類の話だろう。
 そして、実はこれが本当なのである。

「みんな集まったね!」
 長谷川・千春(中学生運命予報士・bn0018)が、集まった能力者たちを確認して言った。
「13階段って聞いたことあるかな? 今日はそれにちなんだ地縛霊を退治してほしいんだ」
 あらましはこうだ。
 とある地方の小学校。ここに真夜中になると特殊空間が現れる。その入り口が13階段。
 小学校の児童たちに、死神と噂されている存在の正体こそ、地縛霊なのである。
「まだ被害は出ていないけど、放っておいたらいずれ小学校の先生や児童が犠牲になるかもしれないよ。そのまえにみんなに地縛霊を退治してほしいんだ」
 夜中のことだから、児童が実際に目にするという事は考え難い。
 しかし、今すぐにではないとしても、何か起こってしまった後では遅いのである。
「じゃあ地縛霊と特殊空間について説明するね!」
 特殊空間は、夜中の12時になるとほんの少しの時間だけ開き、そのとき外からは13段目の階段が存在しているように見える。
 実際は階段に触れると特殊空間へと引き込まれるようになっている。
「特殊空間の中は学校の屋上みたいな風景になってるよ、もちろん実際の屋上じゃないし、広さはこの教室くらいかな」
 高さが結構あるフェンスが張られているので、べつに戦う分には落ちる心配はない。
 あと、特殊空間に入るための条件が時間のほかにもう一つだけある。
「4階から階段を登っていくときに、声を出して階段を数えること!」
 これが1人ならそうでもないが、複数人だと結構な音量になる。
 12時だとさすがに教師は残ってないと思われるが、もしかしたら警備員はいるかもしれない。
「どうにかして音を漏らさないようにするか、一般人を近づけないようにしないといけないので、その辺を考えてね」
 特殊空間に入ると、死神の姿をした地縛霊が現れる。
「ボロボロのローブをまとっていて、鎌を持っている、というお決まりの格好だね。もちろん鎌で攻撃してくるよ。
 遠くからの場合、鎌を振り回して、衝撃波で攻撃してくるからね。
 あと鎌を持ってない、援護ゴーストも2体現れるんだ。こちらも似たような格好だけど、長い爪で引っかく攻撃をしてくるから、気をつけてね」
 メモ帳を閉じ、最後に長谷川はこう付け加えた。
「小さいころ七不思議の話を聞いて怖かった、って経験を持つ人は多いだろうけど、それで実際に人が死んだり、傷付いてしまったらとても悲しいよね。
 そんな事件の起きる前に、なんとか地縛霊を倒して、噂が本当にならないようにしてほしいんだ」
 噂のうちは七不思議として話のネタになる程度だが、それが実際に起きてしまえば恐怖でしかない。
「とはいえ、みんなならきっと負けないと思ってるよ。頑張ってね!」

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参加者
村崎・紫(アルジェンタム・b05758)
氷室・静夜(蒼葬夜・b09744)
久住・茲葉(雪風舞・b11261)
クリスティーナ・ベルクシュトレーム(魔韻の歌い手・b24043)
鬼無瀬・織葉(夜香・b28825)
小鳥遊・斑(グラフィアス・b29031)
今江・雅鼠(騎士道精神括弧笑・b32445)
日比野・紅芭(天衣無縫・b46618)



<リプレイ>


 夜中の学校。
 それは、普段慣れ親しんだ場所が非日常に変貌する場所でもある。
「夜の学校って何か不思議な感じがしますねぇ」
 日比野・紅芭(天衣無縫・b46618)が辺りを見回して、一言つぶやいた。
 たしかにそうだ。今江・雅鼠(騎士道精神括弧笑・b32445)もなんとなくそわそわした雰囲気である。
「夜間の学校…学校の怪談……ウフフ。素敵。ろまんというやつですね」
 小鳥遊・斑(グラフィアス・b29031)は、この状況を楽しんでいるようにも見える。
「しかし、死神なんて人生これからって子供達の集まる学校に似つかわしくありませんよ」
 村崎・紫(アルジェンタム・b05758)は子供たちのことを思うと、なんとしても死神を退治しなくては、と思っているようだった。

 紅芭たちが階段を登っていくと、すぐに4階にたどり着いた。
 ここも同じように暗い通路が広がっている。昼間はきっとにぎやかなのだろうが、今はその面影も無い。
「さてと……12時まであと少しですね」
 紅芭が時計を確認して言った。
「警備員は見かけませんでしたね、これから来る可能性もありますから、注意を怠らないようにしましょう」
 クリスティーナ・ベルクシュトレーム(魔韻の歌い手・b24043)が言った。
 彼女はここに来る前に、小学校の当直室の番号を調べたいと思っていたが、あいにく時間が足らなくて分からなかった。
「もしこちらに来そうな場合、わたしが何とかしますので、まかせてください」
 彼女がそういうと、皆は分かった、と言って信頼する表情を見せた。
「ここですね」
 紅芭たちは、屋上へと続く階段の前で立ち止まった。
 12時まであと少し。果たしてうまく行くのだろうか。皆はじっと目立たないようにして、時が来るのを待つしかなかった。


 静かな校舎内に、嫌な雰囲気が広がる。
 携帯電話の時計が、12時丁度になったことを示していた。
「……来たか!」
 氷室・静夜(蒼葬夜・b09744)は、階段の上方を見上げた。確かに、先ほどまで無かった階段が増えているような気がする。
「警備員は、この階には来てないようですね」
 久住・茲葉(雪風舞・b11261)が廊下を確認しながら言った。
「では……今のうちに。行ったほうが、よろしいですね?」
 斑が確認するように皆に見回した。
「そうですね、時間はそんなにありませんから」
「じゃあ、氷室様、今江様、久住様……お先にお願いします。僕たちは次で」
 静夜と雅鼠、そして茲葉は階段の前にならんだ。
「……なるべく声は小さくしましょう」
 茲葉は回りに言うというより、自分に言い聞かせるような感じで言った。そして、タイミングを合わせ、三人は階段を登り始める。
「1、2、3……」
 階段の下に居る者達も緊張した面持ちで三人を見守っている。
 学校の怪談として長く噂されてきた13階段が、今本当に現実になるのだろうか……?
 三人はとうとう、最後の段に差し掛かる。
「……12、13!」
 その瞬間。ふっと掻き消えるように三人は姿を消してしまった。
「き、消えた」
 紫がつぶやいた。実際には特殊空間の中に引き込まれたのだ。
 三人は大丈夫だろうか。視界から消えてしまうとやっぱり不安である。
「あ……急ぎましょう。中で、皆様待ってます」
 固まりかかった場を打ち破るように、ゆらりと斑が立ち上がった。それにあわせて、残りの者達も階段へと向かう。


 階段から消えた三人はどうなったのだろうか。
 13段目の階段を踏もうとした瞬間、目の前が真っ暗になり、どこかに放り出されるような感覚を覚えた。
「いたた……」
 雅鼠が足元をさすりながら立ち上がる。周りには一緒に来た静夜と茲葉もいて、起き上がるところであった。
「ここは……?」
 見回すと学校の屋上のような造りの空間が広がっていた。
 明らかに現実と違うと分かるのは、空が夜空ではなく禍々しいオーラのようなものが渦巻いているためである。
 三人が様子を伺っていると、頭上から不気味な笑い声のようなものが聞こえてきた。
「おおっ!?」
 雅鼠が驚いたような声を上げた。見れば三人の周りにボロボロのローブをまとった地縛霊がゆらゆらと回るように取り囲んでいた。
「……現れたな。悪いが、これ以上好き勝手にはさせない」
 静夜は刀を構えて立ち向かう。と、そのとき後から場の雰囲気から浮いたが聞こえてきた。
「はあ……カッコいい」
 静夜が振り向くと雅鼠がうっとりと地縛霊を見つめている。
「が、雅鼠さん?」
 茲葉が思わず声をかけた。すると雅鼠は我に返ったように、きりっとした顔に戻った。
「いえ……なんでもありませぬ! 皆様、援軍が来るまで気を引き締めてまいりましょう!」

 そのころ、特殊空間の外、つまり階段の外では、残った者達が順番に階段を登ろうとしていた。
「5、6……」
「まってください」
 廊下の様子を伺っていたクリスティーナが皆を制した。
 物音がしたような気がしたのだ。警備員だろうか。
 皆押し黙って廊下を見ている。しかし……風で一つ空き缶が転がってきただけであった。
 皆ほっとして胸をなでおろした。そして2番目の組が階段の上へ行き、姿をかき消した。
「では、最後はわたしたちですね」
「はい、急ぎましょう。みなさん待っているはずですから」
 クリスティーナ、と紫の二人が階段の前に立ち、ゆっくりと一歩を踏み出した。


 特殊空間の中では、死神とその手下たちが静夜たちを囲み、旋回していた。
 ゴーストたちも様子を伺っているようで、手を出してくる気配は無い。
「……攻撃してこないか。ならば、こちらからいくぞ!」
 静夜が霧影分身術を使うと、彼の姿が二重になった。そのまま敵の目を欺きながら死神の手下の一人に駆け寄り、爆水掌を放つ。
 フワリ、と手下は避けようとしたが、避けきれずに静夜の手のひらからダメージを受けた。
 手下はウウ……とうなりながら静夜から離れ、茲葉に向かって爪を振り下ろしてきた。
「どこみてるの、こっちよ」
 茲葉がひらりと攻撃をかわし、敵を挑発するように呼びかける。
 そのとき、背後からドサリと音がした。雅鼠が振り返ると、鬼無瀬・織葉(夜香・b28825)、斑、紅芭の三人が起き上がるところであった。
「遅くなりましたっ」
 紅芭が立ち上がって皆を見回した。特に深い傷を負っている者もいなかったので、安心したようである。
「これで三対六だな」
「では、そろそろ本気を出す出ござるよ!」
 静夜と雅鼠は、死神の手下たちを倒すべく、爆水掌と暴れ独楽を放った。
 雅鼠の武器は回転しながら手下たちを斬りつけた。オオオ…と手下の一人が悲鳴を上げて消滅した。
「……さぁて、この学校の生徒が平和に暮らせるよう、貴方達を倒させてもらうわ」
 茲葉が残りの手下に駆け寄って氷の吐息を吹きかけると、敵は凍り付いて動かなくなった。
「残るは……敵の親玉のみ、ですね。ごー。ですよ。蟲様」
 斑が白燐蟲を静夜達の武器に纏わせる。その間にクリスティーナと紫も特殊空間内にたどり着いた。
「皆さん! 大丈夫でしたか?」
「ええ、後はあの死神を倒すのみです」
 紅芭はそう言って死神の方を見た。
 死神は手下が倒れるのを見ると、鎌を振り上げて大きく一振りした。
「危ないっ……!」
 鎌を振り下ろしたあたりから、衝撃波が発生し、斑、紅芭、茲葉たちを襲った。
 茲葉は再び何とか衝撃波を避けたが、二人は攻撃を受けて地面に叩きつけられた。
「大丈夫でござるか!?」
 雅鼠が二人に呼びかける。衝撃は強かったが、二人とも無事に起き上がってきた。
「はい、大丈夫です!」
「……大丈夫。です」
 斑はなるべく味方の強化に優先して使っていた白燐蟲をやむを得ず自分の治癒に使う。
「ウフフ。真夜中の学校と死神……なかなか素敵な舞台ですが、そろそろお終いにしましょう」
 斑の言葉に紅芭も頷いた。斑が牙道砲、紅芭が光の槍をそれぞれ死神に向かって放つ!
 死神はゆらりと舞うように避けようとするが、避けきれず両方の攻撃をまともに喰らってしまった。
 後衛を何度も危険に晒すのはまずい。雅鼠はオトリ弾を死神に向かって放った。
「スカロ様もどき! まずは拙者を倒して御覧なさい!」
 死神は何とかまだ浮いており、残った力を振り絞るように雅鼠に鎌で斬りかかって来た。
 雅鼠はその攻撃をナイフで受け止めた。
「うむ、すばらしい太刀筋でござりますな。拙者の使役でないのが残念であります」
 雅鼠がナイフに力を込め、死神の鎌を振り払う。死神は大きくうなり声を上げると、再び衝撃波を放ってきた。
「同じ手は何度も通用しません!」
 衝撃波はクリスティーナ、紫たちを襲ったが、二人ともこれを避けた。
「これで最後です」
 紫が光の槍を、そしてクリスティーナが破魔矢を死神に向かって放った。
 矢と槍は死神の体を貫き、死神のボロボロのローブが吹き飛ぶように粉々になった。
 とうとう、死神は力尽きて地面に倒れた。


 死神が地面に倒れ、かき消すように消滅したと思った瞬間、視界が暗転した。
 クリスティーナたちが気が付くと、小学校の校舎の中に戻ってきていた。
「……終わったか」
 静夜がぽつりとつぶやいた。さっきまでの戦いが嘘のように、校舎の中には静寂が広がっている。
「ええ。少々名残惜しいですけれども。終了です。終わりました、閉幕です…ウフフ」
 斑が言った。やや暗くて表情はよく分からなかったが、その口調は楽しそうだ。
 これで13階段の死神が噂ではなく、現実の事件になってしまうという最悪の事態は避けられた。
「はああ……せっかく、拳で友情を確かめ合って仲間になるフラグだと思っておりましたのにぃ〜っ」
 一方雅鼠はなにやら残念そうであった。死神地縛霊を気に入っていたようなので仕方ない、のだろうか?
「では、そろそろかえりましょうか。今度こそ警備員が来るかもしれませんし」
 クリスティーナの発言により、皆は速やかに学校から立ち去ることにした。
 紫が持ってきていた懐中電灯を消し、辺りは闇に包まれた。
「これで、怪談は怪談のまま……」
 この先も、13階段の死神の噂は小学校の児童たちに代々伝わっていくだろう。
 しかし、誰もその真相を知ることは無い。あくまでも噂。それでいいのだ。


マスター:黒蓮 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2008/11/06
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