怪奇クレーン


<オープニング>


●都内某所
 クレーンゲームをメインに設置していたゲームセンターがあった。
 このゲームセンターのクレーンゲームは設定が絶妙で、取りそうで取れないギリギリのラインだったのだが、経営者が替わったのと同時にアームの力が弱まり重さのある景品ばかりが扱われるようになった。
 そんな事ばかりしていたせいで、次第に客足が遠のいていき、閉店する事になったようである。
 そして、この場所で関係者と思しきゴーストが確認された。

「みんな、集まったな。それじゃ、話を始めるか」
 運命予報士、王子・団十郎(運命予報士・bn0019)。
 今回の依頼は彼の口から語られる。

 閉店したゲームセンターで、関係者と思しきゴーストが確認された。
 廃墟と化したゲームセンター内には、リビングデッドと化した犠牲者達がウロついており、クレーンゲームで景品が取れない怒りをお前達にぶつけてくる。
 ちなみにリビングデッド達がプレーしていたクレーンゲームは景品が鉛のように重く、アームがストローの如く脆いので、たとえプロ級のレベルがあったとしても手に入れる事は難しい。
 また、ゲームセンターの一部が特殊空間と化しており、自分達がクレーンゲームの景品になったような錯覚を受ける。
 地縛霊と化した関係者は巨大なアームを操ってお前達を捕まえようとするので、くれぐれも気をつけてくれ。

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参加者
弥栄・未生(緇素の死神・b00063)
不知火・双葉(永遠の花嫁・b00067)
峰連・要(コルネイユノワール・b00623)
相澤・頼人(闇纏う希望の双剣士・b01073)
皇・光(デビルズペイン・b16218)
黒間・律(闇喰い・b22094)
不破・赤音(高校生黒燐蟲使い・b22569)
魔諭羅・夜魅(鬼蜘蛛の闇姫・b29795)
古守・勘三郎(灰色歌撃・b45366)
白神・楓(戒メノ赫キ槭樹〜蓬莱忌譚〜・b46213)
麻生・流華(高校生雪女・b51834)
小鳥遊・桐音(月光の狩人・b53243)



<リプレイ>

●真夜中のゲームセンター
「……クレーンゲームか。あれで人形を吊り上げている所を見ると、父様の事を思い出すんだよな……」
 どこか遠くを見つめみながら、魔諭羅・夜魅(鬼蜘蛛の闇姫・b29795)が廃墟と化したゲームセンターにむかう。
 ゲームセンターのまわりはすっかり寂れ果てており、何台も自転車が放置されたままになっている。
「それにしても、取れそうで取れないギリギリのラインとは、なかなかの職人芸ですね。あと少しで取れそうだと相手に思わせれば、また挑戦したくなりますから……。それで何回か繰り返すうちに、だんだん意地になって取ろうとして、大枚をはたくわけなんですが……。逆に1回やって全く取れそうな気配がないと、普通に続けようとは思いませんからね。それに景品は物凄く単価が安いので、適度に出した方がいいと思います」
 納得した様子で店を眺め、不知火・双葉(永遠の花嫁・b00067)が自分なりに意見を述べた。
 基本的にクレーンゲームの景品は数百円程度の粗品レベルだが、稀にゲーム機の本体や、カプセルの中に入っている鍵を使い、宝箱の中身を手に入れるイベントなどを行っていたので客の回転数も良かったようである。
「クレーンゲームは取れた取れないに関わらず、それなりに楽しめるものだからな。万が一、何も取れなかったとしても、取れるように研究したり努力したりするものだから……。それもまた楽しみで、取れた時の喜びも一入の筈だ」
 自分の経験談を語りながら、弥栄・未生(緇素の死神・b00063)が答えを返す。
 彼の場合は景品の付いたゲームを始めてしまうと、止まらなくなってしまう性分なので、クレーンゲームには不思議な魔力があると思っている。
「俺も昔はハマったよ。アームの調整はパチンコの釘打ち並みに難しいから、最近は何個取られようとへでもない物を景品にしているようが……。妹に『直接買った方が早い』と言われて一気に熱が冷めたっけな……」
 苦笑いを浮かべながら、皇・光(デビルズペイン・b16218)が自らの思い出を語り出す。
 現実的に考えればクレーンゲームで苦労して手に入れるよりも、直接買った方が安く済むのだが、前者の方が妙な達成感を得る事が出来た。
「クレーンゲームって、単純なようで案外コツがいるからね。熱心な客も居るんだし、経営者がズルはいけないよ……」
 店が潰れてしまったのも仕方がないと思いながら、峰連・要(コルネイユノワール・b00623)が口を開く。
 経営者が代わるまで絶妙な設定が客に受けていたのだが、新任者になってから設定があまりにもいい加減になったため、クレーンゲームのブロと呼ばれる者達でさえなかなか取る事が出来なかったらしい。
「絶対に取れない様な設定をしていれば、そりゃ客も見放すだろ……。自業自得もいいところだが、ゴーストになっているのでは見逃すわけにも行かない。あの世に強制送還と行こうか」
 仲間達に向かって声をかけながら、相澤・頼人(闇纏う希望の双剣士・b01073)が気合いを入れる。
 ゲームセンターの周辺は異様な空気に包まれており、突き刺すような寒気が能力者達の体を包む。
「普通に『楽しいゲームセンター』やってりゃイイのに、なーんでこう言う商売しちゃうのかねぇ……」
 しみじみとした表情を浮かべながら、古守・勘三郎(灰色歌撃・b45366)がゲームセンターの中に入っていく。
 店内にはリビングデッドと化した犠牲者達がおり、まるで何かに取り憑かれたようにクレーンゲームをやり込んでいる。
 しかし、何度やっても景品を手に入れる事が出来ないため、ストレスがピークに達しているようである。
「クレーンゲームが原因でリビングデッドになるなんて……、一体どれだけ執着していたのやら……。まあ……、私に出来る事は、その執着ごと彼岸に送り届けるだけだけど、ね……」
 警戒した様子で物陰に隠れ、白神・楓(戒メノ赫キ槭樹〜蓬莱忌譚〜・b46213)がイグニッションをした。
 その間もリビングデッド達はクレーンゲームに集中しており、自らの感情をぶつけるようにしてガラスを叩いている。
「……クレーンゲームをやった事はないが、よほど難しいゲームみたいだな。だが、ゲームはゲーム。その怒りを人にぶつけるのは筋違いというものだ。その邪念に駆られ生き続けるその魂、今終わらせる」
 鋭敏感覚を鋭くさせて奇襲に備え、黒間・律(闇喰い・b22094)がリビングデッド達を睨む。
 それと同時にリビングデッド達が唸り声をあげ、半ば八つ当たり気味に迫ってきた。

●リビングデッド
「一体、いくらつぎ込んだのか知らないけど、俺達に攻撃を仕掛けてくるのっておかしくない?」
 黒燐奏甲を発動させながら、要がリビングデッド達の数と位置を確認する。
 リビングデッド達は能力者達を店員だと思い込んでおり、『こんな設定じゃ、取れるわけがないだろ』と文句を言った。
「確かにおかしい事ですが、ここで反発しても火に油を注ぐだけですから、同調しておいた方がいいかも知れませんね」
 あえてリビングデッド達には反論せず、双葉が黙って彼らの言葉に耳を傾ける。
 しかし、リビングデッド達があまりにも自己中心的だったため、だんだん話を聞いているのに嫌気が差してきた。
「……そろそろ限界だ。殴って……いいか?」
 怒りをグッと堪えながら、夜魅が森羅呼吸法を発動させる。
 能力者達が反論しないせいで、リビングデッド達は調子に乗っており、関係のない事までケチをつけてきた。
「ああ……、手加減する必要はない」
 頼人と連携を組みながら、律が一緒に旋剣の構えを発動させる。
 そのため、リビングデッド達がイライラとした表情を浮かべ、『俺達の事を無視するんじゃねぇ!』と襲いかかってきた。
「物に当たるな、ド三流」
 旋剣の構えを発動させながら、未生がリビングデッドを叱りつけていく。
 それに合わせて夜魅が紅蓮撃を放ち、リビングデッドの体を魔炎に包む。
「黒燐蟲、彼の者どもの呪われし、生を喰い尽くせ!」
 リビングデッド達を引きつけながら、頼人が暴走黒燐弾を撃ち込んだ。
 次の瞬間、無数の黒燐蟲がリビングデッドに襲い掛かり、『こんなものはいらない』と悲鳴が響いた。
「……どうやら、別の物が欲しかったようだな。それなら、これで……どうだ?」
 リビングデッド達に語りかけながら、律が容赦なくダークハンドを炸裂させる。
 その一撃を食らってリビングデッドが血反吐を吐き、『俺が欲しいのは熊ちゃんだ』と答えを返す。
「熊ちゃんって顔ですか、あなた達は……」
 生暖かい視線を送りながら、双葉がパラノイアペーパーを放つ。
 その漫画はリビングデッド達の思いを具現化させたような内容だったため、ウットリとした表情を浮かべて切り刻まれた。
「それに景品が取りないからって、八つ当たりをするなんて、どうかしているよ。まぁ、確かにゲーセンってハマるけどさ……。そんなに後悔するのなら、途中で止めておけばよかったのに……」
 一気に間合いを詰めながら、要がリビングデッドに黒影剣を叩き込む。
 それでも、リビングデッド達の怒りは収まらず、『早く熊ちゃんを渡せ!』と叫んで飛びかがってきた。
「……塵も残さず消え失せろ」
 リビングデッドの攻撃を避ける事なく、律がダークハンドを炸裂させる。
 その間に仲間達がリビングデッドを倒していき、辺りがシーンと静まり返った。
「クマのぬいぐるみ……か」
 疲れた様子で溜息をつきながら、頼人がクレーンゲームのぬいぐるみに視線を送る。
 だが、そこに置かれていたのは、熊っぽい……柴犬であった。
「……今できる事はこれくらいか」
 以前クレーンゲームで取った人形と花を供え、未生がリビングデッドと化した犠牲者達の冥福を祈る。
 彼らにとってクレーンゲームは命を懸けた戦いであり、敗北は許されなかったのかも知れない。
 もちろん、そこまで言うのは大袈裟かも知れないが、そう錯覚してしまうほどリビングデッド達は、クレーンゲームに情熱を注ぎ込んでいた。
「そう言えば、昔……。父様の浮気がばれた時、母様が父様を縛り上げて、近くの工事現場にあったクレーン車で、天高く吊り上げて一晩放置した事があったんだ。あの時は本当に怒っていたんだろうな。いつもは裏庭の木に縛り上げる程度だったのに……。リビングデッド達の表情を見ていたら、あの時の母様が思い浮かんだよ」
 昔の事を思い出しながら、夜魅が気まずい様子で汗を流す。
 そして、能力者達は微妙な空気に包まれ、乾いた笑いを響かせた。

●特殊空間
「うわー……、何この空間。まるでテレビゲームの世界みたいなんだけど……」
 唖然とした表情を浮かべながら、楓が旋剣の構えを発動させる。
 地縛霊の作りだした特殊空間には沢山の景品が置かれており、能力者達の体が半分まで埋まっていた。
 彼らの頭上には巨大なクレーンがあり、能力者達に狙いを定めている。
「ちょっと、動きづらいわね。……まぁ、いいわ」
 自分達が置かれている状況を把握しながら、小鳥遊・桐音(月光の狩人・b53243)が景品の山を掻き分けていく。
 その間も能力者めがけてクレーンのアームが落下し、掴んだ景品を端にある穴めがけて落としていく。
 この穴がどこに通じているのか分からないが、落ちたら只では済まなそうである。
「阿漕な事をして稼ごうとした割には、クレーンに妙に思い入れがあるようですね」
 警戒した様子で辺りを見回しながら、麻生・流華(高校生雪女・b51834)が地縛霊を探す。
 地縛霊がどこに隠れているのか分からないが、特殊空間内のどこかにいる事は間違いない。
「……余計な事を考えている暇はなさそうだな」
 クレーンのアーム真下ギリギリまで移動し、不破・赤音(高校生黒燐蟲使い・b22569)が転がるようにして素早く横に跳ぶ。
 それと同時にクレーンのアームが急降下し、乱暴に景品をガシィッと掴み取る。
「その程度の攻撃じゃ、トップクラスの防御を誇るこの服は破れねぇぞ」
 クレーンのアームを挑発しながら、光が間合いを詰めて黒影剣を放つ。
 その一撃を食らってアームがグラつき、次々と景品が落ちていく。
「景品扱いされるのはゴメンなんでな! まずはアームを破壊させてもらうぜ!」
 少しずつ間合いを取りながら、勘三郎がリフレクトコアを展開する。
 その間にクレーンのアームが天井まで上がり、逃げるようにして穴まで移動した。
「まさか、これで終わりじゃないだろうな? せめてひとりぐらい捕まえてみたらどうなんだ?」
 含みのある笑みを浮かべながら、赤音が大声をあげて地縛霊の事を挑発する。
 そのため、クレーンのアームが再び動き、赤音ばかりを集中的に狙ってきた。
「そんな事じゃ、いつになっても私達を捕まえる事なんて出来ないわよ」
 アームの死角に回り込みながら、桐音が雷の魔弾を撃ち込んだ。
 次の瞬間、クレーンのアームがマヒ状態に陥り、中途半端な状態のまま動かなくなった。
「アームごと凍り付いてしまえば、ゲームとしては役に立たないはず……」
 すぐさま吹雪の吐息を吐きかけ、流華がクレーンのアームを魔氷に包む。
 それに合わせて勘三郎が光の槍を放ち、クレーンのアームを撃ち落とす。
「どうだっ! これで俺達を捕まえる事が出来なくなっただろ!」
 勝ち誇った様子で笑みを浮かべ、光がクレーンのアームを踏みつける。
 それと同時に地縛霊が穴の中からムックリと顔を出し、千切れた右腕を庇うようにして能力者達を睨む。
「……まるで蟻地獄だな」
 乾いた笑いを響かせながら、赤音が地縛霊に紅蓮撃を叩き込む。
 しかし、地縛霊は怒りで我を失っているため、魔炎に包まれた状態でアーム状の左腕を振り回す。
 地縛霊の左腕は右腕と比べて極端に小さいが、その見た目に反して破壊力がケタ外れであった。
「なんだ、その格好は! デパートの屋上でショーをやっているんじゃないんだぞ。……真面目に働けー!!」
 不機嫌な表情を浮かべながら、勘三郎が地縛霊を叱りつける。
 だが、地縛霊は『そんな事を言って、俺に嫉妬しているんだろ』と、まったく見当違いな事を言った。
「……相手にするだけ無駄だ。何もかも壊れてしまっているようだからな」
 地縛霊のアームを避けながら、楓がダークハンドを炸裂させる。
 そのため、地縛霊が悔しそうな表情を浮かべ、『……人気者は辛いな』と自嘲した。
「……そろそろ飽きた。消え失せろ」
 地縛霊の考えを理解する事が出来ぬまま、桐音が炎の魔弾を撃ち込んだ。
 その一撃を食らって地縛霊の体が魔炎に包まれ、狂ったような笑い声を響かせて消し炭と化した。
「やはり、クレーンゲームは楽しんで行いたいものですね」
 しみじみとした表情を浮かべ、流華が疲れた様子で溜息を漏らす。
 結局、地縛霊が何者なのか分からなかったが、思い込みの激しい自信家であった事は間違いなさそうである。
「……ああ、久しぶりにクレーンやりたくなったな。せっかくだから、これから寄っていかないか?」
 苦笑いを浮かべながら、光が仲間達を誘ってゲームセンターにむかう。
 そして、能力者達はクマのぬいぐるみを手に入れ、廃墟と化したゲームセンターに供えるのであった。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:12人
作成日:2008/12/05
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