<リプレイ>
●主役入場前のひととき 春の森で舞う妖精の様な緑のドレスはレースとオーガンジーで飾られながらも、大人の露出を演出する大胆なカットでアリーセ・エルンスト(颶風纏いし猟犬・b33163)の柔肌を見せ付ける。 一方控えめで凛々しい黒のカシュクールワンピースドレスを選んだ片崎・澪(白星紅風・b05292)を彩るのは、胸元の布の波打ちとブレスレット、文字盤にエスケルが彩られた腕時計のみ。 「澪ちゃんとアリーセちゃんは対照的だね。でもよく似合ってる。ばっちりだね」 「私的には結構恥ずかしいんですけど……そ、そうですか?」 今日の主役に合わせて普段の自分にない露出過多の服を選んだアリーセがわずかに頬を染める。 もっとも露出で言えば声をかけた篠森・臨(高校生黒燐蟲使い・b02387)も負けてはいない。 彼女の選んだチャイナドレスのスリットは艶めかしくミュールはさらにその足の美を引き立てている。 「露出的には上のアリーセさん、下の臨さんといったところでしょうか」 澪が二人をそう評したところで困った笑顔を浮かべてグラスを運んできたのは香澄・綾女(山間を渡る颯・b29624)だ。 「お嬢様方をお褒めするのは我々ホストの役目、ぜひその麗しさを言葉にする大役をこの綾之介にお任せいただけないでしょうか?」 「そうそうお姉ちゃっ、じゃなくてお姉様達のおもてなしはタクミ達に任せてよ!」 さらにその後ろからひょっこりと日下部・拓海(まだまだフリッカースペード・bn0008)が笑顔をのぞかせる。 貸衣装屋さんから借りてきた衣装でそれっぽく着飾った少年はタクミという源氏名をもらって張り切っているようだ。思わずその可愛らしい姿に約一名はすでにターゲットロックオンしているっぽい。 「おい、なんか肉食動物の目になりかけてるぜ」 思わず最後の客役を務める炎龍寺・金時(炎龍を携えた赤獅子の親分・b29314)が突っ込みを入れるが、それを言うなら男の身でホストクラブの客役を選んだあんたにも突っ込みを入れたいところだ。 この場にちょっぴり腐ったお嬢さんがいれば熱い視線を注がれ、かなり腐ったお嬢さんがいれば大掛かりな仕掛けを駆使して競りあがってきてもおかしくはないと気づいているのだろうか? がそんな事はまるで問題にならないといった冷静沈着な態度を見せる兵もいる、都筑・騰蛇(穢れ無き鋼のプライド・b08282)だ。 そつなく新年の挨拶を交えてでホストカタログを開くと当店自慢のホスト達を紹介していく。 「こちらの綾之介、タクミの他にも初々しいラクス。さらには当、睡蓮ナンバーワンホストであるギンがお客様をおもてなしさせていただきます。席に着きましたらどうぞお好みのホストをご指名くださいませ」 案内係兼ボーイとしてちゃっかり自分は指名できないように計らいながら騰蛇は臨達を客席へと導く。 その姿を見送りご指名を待つ綾之介とタクミにラクスことラクシュリ・スィフニール(特売マイスター・b04514)が感心した表情で声をかける。 「二人とも余裕なのね…わたしどこか変な所はないですか、綾之介さん?」 スーツにシャツまで黒で統一して夜の街のおにーさんを演出しようとするラクスは、本当にこれでいいのかなと心配顔だ。 「大丈夫だよ。僕のほうが衣装が大きめでだぶついてるんだよ? それに比べたらばっちりだよ」 タクミがサムズアップで太鼓判を押すと綾之介も力強くうなずく。 「大丈夫だ。後は従業員規約さえ遵守できれば問題なしだ」 ちらりと店の奥に隠されるように置かれているハリセンを視線で示す綾之介。 お客様に失礼な振る舞いをした場合あれが火を噴くことになっている。ちなみになぜかギンとタクミについては別個に『各種アクション土下座禁止』や『スカート捲り禁止』などが盛り込まれている。 おもわず視線の先を追ったタクミとラクスはごくりと緊張でのどを鳴らす。 「指名入りま〜す」 と同時に騰蛇の声、どうやらお客様は好みのホストを選び終えたようだ。いざ、ホスト新年会の本番の始まりである! ●さあ、No1ホスト降臨! 胸元に輝く薔薇はあくまで煌びやかに。 一見地味にすら見えるスーツは一針一針までしっかりとしたてあげられ品性を語るかのごとく。 締められたネクタイは毅然とした凛々しさのなかの妖しさを主張。 あ、かつてこれほどに自分を主張する格好をした事があっただろうか! いやない!! ナンバーワンホストの座を(強制的に)与えられたギンこと飛龍寺・銀時(脚は長いが腰は低い忍者・b27011)はなんかもう牙道忍者にでもジョブチェンジして冬眠したいような複雑な気分でドアノブに手をかける。 意を決して扉を開くと、そこは紛れもなくホストクラブでした。 「……」 思わずその日常とのギャップに言葉を失うナンバーワンホストギン。目に入った女性客の艶姿にさらには思わず頬も赤く染まるというものだ。 そのギンのそばをフルーツ盛を運ぶ騰蛇が通り過ぎる。 「(あちらの御飲物を手にご挨拶を、その際御召し物をお褒めして会話の糸口をつかむのです)」 しかもただ通るだけでなくさりげなく的確に助言を与えていくあたり実はこの男こそ影の支配者だったりしないのだろうか? ほらメガネキャラ的にも! まあそれはともかく仲間の言葉にギンは胸の内に秘めた決意を取り戻す。 「い、いかせていただきます…いいえ、い、いってくるよ」 言葉を崩しギンはお客様方へのテーブルへと歩み寄っていく。
「とうとうナンバーワンホストのご登場だな。で、どんな風にもてなしてくれるんですか?」 待ち受けるは背筋をぴん伸ばし堂々とした澪である。ちなみに詳しく説明するならそれは同時に女性らしいふたつの膨らみを主張しているわけでもある。 なんかもう冬眠どころか三段ジャンピング二回半ひねり土下座ぐらいはしたい衝動に駆られながらもギンは精一杯の言葉でその衣装を褒めグラスにドリンクを注ぐ。 「お、お、おきれいですね」 が、言葉同様に手元も心なしか震えて見える。 「あらあら駄目だよ? もっと自信のある自然な笑顔じゃないと。はい見本、タっくんもう一回お姉ちゃんに笑って見せてくれるかな?」 「えへへ。笑うくらいならお安い御用だよ、臨・お・ね・え・ち・ゃん♪」 仲間を鍛えるために心を鬼にして笑顔に駄目だしする臨。だが小学生男子の笑顔を心から楽しんでいるように見えるのは気のせいだろうか? 「な、なるほど」 思わずノリノリ年下笑顔に感心しつつもギンも笑顔に再挑戦だ。 だがまだまだ社会経験(?)は続く、今度はアリーセの指輪を褒めるべくその手をとると笑顔のまま手の甲を抓られたり。 「あらあら、もう少し優しく扱って下さらないと…こう見えても、繊細なんですよ?」 「も、もうしわけご…ではなく、ご、ごめんね?」 もはやホストとお客というより篭絡される純情少年と笑顔で糸に絡め取るお姉様といった様相だ。 「おーい、ホストつったらぁアレだろ? 客を喜ばせなきゃなんねぇんだろ? よーし、その失敗を挽回する機会を与えて進ぜようじゃん。さあギンを含めたホスト達、俺を褒めることに徹してもらおうかねぃ♪」 そんな弟をどっかりと座ったままニヤニヤと眺めていた金時が、助け舟をだすふりをして更なる試練を広範囲にばら撒いてみる。 「お兄ちゃんは派手だよ!」 元気よく答えるタクミ。 「見事な飲みっぷりですお客様、お代わりは如何でしょうか?」 グラスにお代わりを注ぐ綾之介。 「それは難しいですね。……あ、いえそういう意味ではなく、えっときっぷがよさそうです」 何とかクールな笑顔で言葉を紡ぐラクス。そして注目のギンはむぐぐと涙をぬぐって言葉を捜す。 「に、任侠だね」 「わはは、そのまんまじゃねーかおめぇ!」 あまりにもストレートだったので爆笑する金時。よく見ればホスト側にもお客側にも笑いを堪えている者がいる。 「盛り上がってきましたね。そろそろ趣向を凝らしたものを見せていただけません?」 この流れに乗って提案された言葉にギンをはじめとしたホスト達は七転八倒、もとい獅子奮迅の活躍を要求される。 ギンとタクミはデュエットし、綾之介はホストボールを巧みに操り、ラクスが身一つでできるミニゲームの数々を繰り広げ、コーラの一気飲みはホスト仲間の裏切りによりギンが挑戦する事になる。 (「多少優雅さには欠けますが、盛り上がり的にそろそろ頃合でしょう」) その間も裏方に徹していた騰蛇は状況を的確に判断しそそくさと準備のため引っ込んでいく。
●光と水とグラスの輝き 騰蛇が奥に行ってしばらく、臨がついに一つのオーダーを口にするとホスト達がその言葉を復唱する。 「「「「シャンメリータワー!!」」」」 途端に今まで以上にムーディーな音楽が流れ始め、騰蛇によって多数のグラスが運ばれると早速お客様の前に綾之介がタワーを築いてゆく。 (「あ、あのグラスがプラスチックなのよね。間違いなく安物のプラスチックなのよね」) その繊細な建築物にラクスはもう祈るような気持ちでハラハラドキドキだ。 いやハラハラもドキドキもラクスだけのものではない。 「これが噂のシャンメリータワー…!」 透明なグラスが光にきらめきながら積み上げられていく緊張感にアリーセはコクリと喉を鳴らす。 「おお、一つ一つ積み上げるその姿、まさしく愛だろ愛!! 人生ラブですよ!」 自分的にもテンションがあがってるのか画用紙を広げて盛り上がる金時。 「フフ、面白いことを……さて見事にシャンメリーは見事流れますかね」 余裕綽々で見守る澪。 それぞれみんな様子は違えども実際に目にするそれに心躍るものがあるのだ。 慎重に積み上げられたグラスに満足げな笑みを浮かべ一歩下がると綾之介が選び抜いてきたシャンメリーをギンへと手渡す。 「お客様にグラスを捧げるのは花形の見せ場、さあ、ギンさん」 「がんばってギンお兄ちゃん!」 「で、できるだけ零さないようお願いなの」 あっけらかんと励ますタクミと神仏に拝むようなラクスの応援を受けてギンは決意に満ちた表情で栓を開けるとイグニッションカードを取り出して何故かしゃがみ込む。 「ギンお兄ちゃん?」 「何を?」 ?マークのタクミとラクスの言葉に緊張もほぐれて来たギンはにこりと笑う。 「忍者らしく天井に張り付いてそこから注ごうと…」 「ホストだーーーーーーーー!!」 思わず用意していたハリセンを手に取ると突っ込みを入れる綾之介。ちなみに勢いで手から離れたシャンメリーは騰蛇がしっかりと確保している。 「えー、お客様しばらくおまちください」 「その間は僕がサービスだよ!」 ラクスがぺこりと頭を下げタクミがマイクを握るその後ろでギンは別室へ連行されていく。
閑話休題──?
さて何故かさめざめと泣きながらやってきたナンバーワンホストが気を取り直して騰蛇からシャンメリーを受け取りなおす。 緊張の一瞬。 今度は普通に頂上で輝くグラスに魅惑の液体が注がれていく。泡を内包したそれは光に煌き、流れは目まぐるしく変わる美の曲線を何重にも見つめる瞳に描く。 「ほぅ」 その華麗な美の滝に思わず誰からともなくため息が漏れる。 「はぅ」 その豪華すぎる遊戯に思わず気を失いかけるラクス。 何はともあれギンはその大役を見事に果たして、グラスが振舞われていく。 「ギン君、今度はばっちりだね」 グラスを受け取り臨がクスクス微笑む。 「私達の期待に応えていただき嬉しく思います」 グラスの向こうで澪もうむうむと満足げに頷く。 「溢れるばかりのおめぇの愛、見せてもらったぜ。あと俺的にはさっきのもよくやった」 金時がほんの一瞬役を忘れてギンを褒め、慌てて「でもまだまだ修行が必要だな」と付け加える。 「こんな立派なギンさんを見られるなんて、私もこのような格好をしたかいがあります」 スカートの裾をちょっと持ち上げ感動を口にするアリーセ。ちょっとだけ演技っぽいのはまあしかたあるまい。 ギンも自業自得とばかりに恐縮する。 「まあまあ、失敗も人生だよ。僕もよく恋子お姉ちゃんとかに怒られるから♪」 タクミがぽんと背中を叩く。 「タクミ殿……」 「こら、ホスト二人で変な友情を育てててどうするまだ閉店ではないんだ」 そんなタクミの襟首をひょいと掴んで臨にパスする綾之介、もはやホストというより猫扱いだ。 「わ、わわゎ!!」 その勢いに慌てたタクミはたたらを踏んで転びそうになると臨の右足にしがみつく。 「え、あ? きゃぁっ!」 さすがにびっくりして可愛い悲鳴を上げる臨。思わずいつもの辞書の代わりにホストカタログでぱしぱしとタクミをはたく。 「え、あれ?」 成り行きにぱちくりとする綾之介の肩には先ほど共にギンの教育的指導を行った騰蛇の手が乗せられる。 こうしてまたもやタクミと綾之介、二名のホストがどこかへと連行される。 「いやー、ずいぶん直線的な愛だったじゃん。にしし」 ギンに続いての騒ぎに金時は本当に楽しげに笑っている。 「どうしてこんな事になるんでしょうね」 銀時さんのこれからの門出を祝おうとしていたアリーセも頬に手を当て首をかしげる。確かにもはや華麗なホストクラブからホストコントへと流れは変わりつつあるようだ。 「そろそろ終わりなら……食材とか頂いて帰っちゃダメかしら?」 ホストラクス、いやその中のラクシュリも顔を出してくる。 「えっと、結局私はホストを勤められたのでございましょうか?」 おずおずとギンも銀時に戻りながら尋ねると澪が振り返る。 「まあそれは新年会が終わった後に皆でじっくりと語る話だな」 讃えるような面白がるようなそんなどちらとも判断のつかない笑顔が銀時の藍の瞳に映る。 こうしてにせホストクラブは新年会へと変わっていくのであった。ちゃんちゃん。
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参加者:8人
作成日:2009/01/12
得票数:楽しい13
笑える2
泣ける1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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