無限の光〜其れは鎮めと希望の光


<オープニング>


 街に灯る幻想的な光。
 大きな震災があった年の12月。鎮魂と街の再生の祈りを込めてその光は輝きを灯した。
 無数の光が描く幾何学模様。紡ぎだされる芸術の光。
 夢と希望がそこに描き出される。
 毎年その華やかで優しき光は姿を変え現れる。

 そして今年は無限の可能性を秘め、再び光は灯される。

「今年はどうなるか思てたけど、ちゃんとやるみたいなん。一緒に行ってみぃへん?」
「噂のアレですね! 是非是非行きたいです」 
 山崎・あゆみ(小悪魔な従属種ヴァンパイア・bn0178)の誘いに花神・薔子(薔薇姫・bn0082)は、一度生で見てみたかったのですとはしゃいでみせた。
「のんびりは……」
「出来ひんと思うで?」
「それだけ注目されているということなんだろうね。僕も行ってみるとしようかな」
 あゆみにすぱんと言い切られた御護・妃(高校生運命予報士・bn0035)は、一瞬目を丸くしつつ、何事も体験と緩やかに微笑んでみせた。
「じゃあ、決まりやな♪」
 幻想的な光の下、どのように過ごすか。それもまた一つの楽しみだろう。

「せや、18時から21時まで点灯しとぉけど、いつでも人はぎょうさんおるん。歩く時は周りに十分気ぃつけてな?」
 あゆみは一緒に行くことになった皆に注意を促した。
 うっかり友達とはぐれてしまう、などという事になってしまうと折角出掛けた甲斐がなくなってしまう。また、人も増えれば些細なトラブルが起きかねない。きちんとルールとマナーを守った上で過ごす事が楽しく過ごすコツだろう。
「一人で行くんでも友達や恋人と行くんでも、最後まで楽しい方がええやろ?」
 あゆみは皆に笑顔を向けた。

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参加者
NPC:山崎・あゆみ(小悪魔な従属種ヴァンパイア・bn0178)




<リプレイ>


 港街に夜がやって来る。吹き付ける風は冷たく、体は芯から凍え、手足の感覚すらなくなってくる。
 そんな凍える夜に人々は光を求めてその道筋を歩く。『無限の光』を掲げた光の道を。

 柾世と紫空は手を繋ぎ点灯の瞬間を見守っていた。触れる温もりが一年前よりも温かに感じるのは大事な人になったからだろうか。無限とは可能性。止まることなく未来へと繋がる。諦めず努力したから球児の夢も傍らに居る人も手にできた。
「次は受験と…新しい夢に向って…頑張るための力をくれる?」
 ぎゅっと抱き上げる。一年前と同じで違う二人の距離。
「うん…柾世なら、きっと…」
 大丈夫、と言葉と共に紫空はそっと祝福を贈る。

 景綱は光の扉まであと一歩というところで人ごみに立ち往生する。
「気魄で進め!って人押しのけたらあかんな」
 あゆみはついと空いた隙間を縫うように動いて見せた。光の扉はもう目の前。
「今年も凄い人出だね!」
「せやなぁ、皆綺麗なんは好きやろから」
 龍麻はあゆみと挨拶を交わす。十四回目を迎えるこのイベントは意味あって開催される。
「俺達、若者が引き継いでいかないとね」
 龍麻がにこっと笑い募金するとあゆみもそれに倣った。
「サンキュー、みかもーらっと!」
 【綿高1−6】のクラスメイトとやってきて逸れそうになるヴァンは咄嗟に洸弥の見事な銀髪を目印にした。
「誰がモーラットだ!」
「さしずめグレートモーラット・御神、か」
「いいかげんにしろお前ら!っと志方は髪は引っ張ろうとするな」
 いづなの戯言に洸弥は怒り、手を伸ばす気配の雪子に先んじて言えば「歩幅が違うんだよ歩幅が」と紅一点に洩らされてはそれ以上強く言えない。
 騒ぎながらヴァンの配ったココアや軍が持ってきた猪肉の串焼きを堪能しつつ扉の前に辿り着く。教会の様な荘厳さを放つ光の扉にヴァンは息を呑み、冗談を口にして感動を逃すのは勿体ないといった風情。
「この扉の先は何所に続いているんだろうな……?」
 洸弥はらしくないと独り言を漏らす。
「さて、この扉のように輝かしい未来があるのやら……」
 かと思えば軍の呟き。いづなはすかさず指をさす。
「電球がひとつ消えている。あれがお前だ」
「そこら辺、夢のない話をしない」
 茶化すのは無粋かと好きなココアを片手に楽しんでいた雪子は暴れようとする二人に呆れながら笑う。

「これが例のクリスマス前のBig festivalか!」
「綺麗ですね」
 早速一枚、とカメラのシャッターを切るネロと美歌。美歌は来られなかった結社『桜花爛漫』の仲間のためにもと光景を写していく。
「はわっ……!!すごく綺麗なのっ……!!」
 冬コートとマフラーのうさちゃんのぬいぐるみを抱く羽流は感動に声を上げる。
「これが噂に聞いてた……!」
 煌めく光の扉に遥姫はうっとりと見上げ、すごいのねとはしゃぐ。
 ただ写真から想像するのと実際に見るとでは違う。有栖は言葉もなく見上げていた。燦然と輝く光は周囲を圧倒するほど明るい。
(「きっとこの光が、文字通り人々の希望の光となったのでしょうね」)
「いいものだね……こういう、自然の光にはない暖かさっていうか優しさっていうか……」
 怜磨は琥珀色の瞳を細めてぽつりと呟く
「初めてみるけど、これはなかなか絵になるなぁ……」
 フランレーゼはくりっとした瞳を丸くして見上げる。その眺めを気に入ったのか、きょろきょろとあたりの出店にキーホルダーが売られていないかを探すのだった。
「あゆみ〜!」
 人波を掻き分けて抱きついてくる雨音。その声は涙に濡れていた。
「わっ、どないしたん雨音ちゃんって聞かんでもわかるか」
 今の今まで姿が見えなかった雨音をよしよしとあゆみは雨音の頭を撫でる。
「ほらほら雨音ちゃん笑顔笑顔」
 怜磨は写真撮るよーと皆を引き寄せる。
「はい、チーズ♪」
 遥姫と美歌は交代で写真を撮ったり、親切な人に撮ってもらったりした。

 カイトと燐音は共に過ごした一年を振り返る。
「思ったよりリンネってドジだよな」
「わ、わたくしのミスとか恥ずかしい記憶は無くして下さいませー?!」
「そういうとこ込みでリンネだろ?」
 忘れるなんて勿体ないとさらりと告げるカイトを燐音は憎らしい人と漏らす。
「来年もまた一緒にこうして光を眺めていられるといいなぁ…」
「おう!来年はもっと美人さんになってるだろうから楽しみだぜ」
 カイトは伸ばされた手をしっかり握り返す。
「氷魚と一緒に来れて嬉しいよ」
「去年は怪我をしてしまいましたからね」
 去年はお土産を受け取るだけとなってしまった氷魚は嬉しそうに恋人のケインに寄り添い歩く。暫く入口を眺め奥へと誘う光に氷魚はケインの手を引いた。
「アーチの方も行ってみましょう」


 光の扉を一歩踏み出せばそこは光の道。まるで流れる雲のように光の河が続く。
 鬼灯は穏やかな思いを抱いて歩く。これからの時間が希望に満ち溢れていますように。流れる光の雲がその祈りを純化していく。
 見るもの全て珍しいのか華月はきょろきょろと光のアーチを見上げて歩く。
「すごい…ですね」
 他の言葉が出てこない事にもどかしさを覚えつつほわりとした面持ちでまた見上げる。

「お一つどうぞ」
「有難うございます」
 由我は薔子に豚マンを差し出すとアーチを見上げ、光が灯される理由を思う。ゴーストとなりあえなく葬った者や犠牲者への鎮魂と未来を願ってもいいのかと。
「いつか、誰もが幸せになれる日を願って……」
 今の今まで無邪気にはいしゃいでいたエルが忽然と姿を消し橙泉は焦る。人波を掻き分け腕を引いてそのまま頬に口づけた。
「……心配したんですから、これくらいは許されると思うんですよ?」
 慌てふためくエルに諦めたわけではないと伝える。
「むぅ…手放して迷子になったの、せんちゃんなのに…でもまあ、頬くらいなら」
 心はあげられないしね、とアプローチにやんわりと釘を刺した。
「実家に戻ることにした能の修行をしようと思うんだ」
 卒業後の進路を尋ねてきた小春に根室は父とは相容れないが能は、好きだからと続ける。
「もし宜しければ今のまま私と一緒にくくく暮らしませんカ?」
 その告白に根室は驚いたように顔を上げそれから楽しそうに笑う。
「だとしたらわたしはわざわざコハルの家から実家に通わなければならないな」
 諦めかけた瞬間に見えた希望。小春は根室にそっと顔を寄せる。

「うふふふっ、このイルミネーションとても綺麗ですわ」
 早苗はあくまで息抜きと主張しながら和馬とデートで来ていた。
「ぼく、この光のイルミネーションをくぐるのは初めてでとてもきれいと思っていると思います」
 緊張からなの和馬の口から飛び出した感想に様子を見守っていた薔子は思わず、和馬りらっくすですと声をかけてしまった。
「にゃふふふ♪カップルがいっぱいにょ!存分に見て楽しむにょ!」
 心の栄養分を求める紗耶とそれに付き合う清隆。
「それにしても心の栄養分補充って、月翔さんにはそういう相手はいないのですかね……?」
 楽しげな様子に清隆は独りごちた。行動とは裏腹に心では真摯に祈っていた。震災でゴーストの事件で犠牲となった人々に安らかな眠りを。そして今幸せである事を伝える。
 紫衣とマコトは逸れないよう腕を組んで歩く。
「こんなに綺麗なイルミネーションを…大好きな人と、マコトさんと見られる事が凄く嬉しいです。ありがとうございますね…?」
「…お礼を言うのは俺の方ですよ。一緒に見てくれて大好きでいさせてくれて本当にありがとうございます」
「また来年も、一緒に見たいですね…」
 自然とお互いの背に腕が回された。
 ファルチェは初めてのルミナリエにはしゃぐ。けれど手袋を忘れてしまったせいで手がかじかみしきりに手を擦っていた。
「こうやって繋いだ方が暖かいよ。それにはぐれるといけないし…ね?」
 渓の温かな手が熱を伝えてくる。暖かいのは触れた手だけな筈なのに二人の頬は熱を持った。
「やっぱり大きいですだよー…」
 ぶかぶかの上着に恥ずかしそうに縮こまるリトをその上着を貸した裕斗は微笑ましそうに見つめ手を差し出す。リトは恥ずかしそうに少し握るだけ。
「ちゃんと握っておかないとはぐれちゃうよ?」
 小さな手をしっかり握ると歩き出す。気後れしていたリトは次第に光のアーチに目を奪われ、裕斗はその様子を楽しげに見つめた。

「きゃっ」
 人にぶつかられてよろけた雪那は咄嗟に手を繋いでいた終凪の腕にしがみつく。すぐに離れるであろう温もりはけれど離れず。
「…い、行こっか?」
「あ…う、うん」
 雪那は踏ん切りのつかない思いを振り払うように終凪の腕に抱きついたまま歩きだす。終凪は顔を真赤にしながら何を話せばいいだろうと話題を探した。
「見れば見るほど終凪と雪那は初心じゃの」
「そうね」
 二人の様子にお目付け役としてやってきた鷸瑠と華凛はそれぞれに感傷じみた思いを抱く。鷸瑠はかつて自分が居た場所を、華凛はかつて感じたときめきをそこに見る。華凛は雪那の一番近い場所に居るのが自分だけでなくなった事を寂しく思う。
「物思いに耽りゅうんは良いんじゃが2人を見失ってまうで…って、遅かったがか」
 鷸瑠は出口は一つやき、とこれ以上逸れないよう手を差し出した。

 人ごみに巻き込まれ、上を見ないと何も見えない状態の鈴香はシグルドに手を取られながら歩く。互いに照れくさそうにガレリアを見上げ歩く。
「今年はお世話になりました…また来年もよろしくお願いしますね?」
「俺の方こそ、ですよ。…来年もこうして出かけたりしましょうね」
 ずっとお世話になりっぱなしだったと言いながらシグルドは微笑んだ。
 達也と友梨は互いに送り合った指輪を嵌めた手を繋ぎ二人の時間を楽しむようにゆっくりと歩く。ガレリアの光に照らされながら会えない時間にあった出来事を語り合う。
「寒い」
 達也が一言呟くと友梨をぎゅっと抱きよせ、友梨はその腕に身を任せた。
「きっと色んな想いが篭められているから、その想いの分だけ綺麗に輝くんでしょうね」
 きらきら輝くアーチに雛は自然と顔を綻ばせた。ふと感じる視線はチャールズから送られるもの。互いの視線が絡み合う。
「雛と一緒に見に来れてよかった」
 思いを示すように雛は微笑みぎゅっとその腕を抱くとチャールズは少し照れた様子を見せた。眩いのは想い合う心で胸を満たすから。

 握った手を包まれ風流はもう片方の手を重ね、視線を合わせる。
「誕生日おめでと」
 幸せそうな笑みに唯は紡ぎかけた言葉を呑み込む。
「…一緒にきてくれて、ありがと」
 離れ難くなると抱きしめる事はせず、こつんと彼女の肩に頭を乗せる。
「イルミネーション、綺麗だね」
 暫くして顔をあげた唯に風流は頷く。思い掛けない喜びも、忘れ難い哀しみもあった。光がそれらを包みこんでくれればと願う。


 肩にかけたギターが人に当たらないよう気をつけながらジローは光に誘われる様に光の円の中へと入る。
「そういえば個々に名前があるんだよな。ココのはなんだっけ…」
 考えるも思い出せずただ眺めた。
 美智は人ごみに奥まで進むのを諦め、イルミネーションを見上げた。
「さて、元気も出たし。帰るか!」
 その足取りは軽やかだった。
「凄く綺麗ですね…何だか時間が経つのも忘れてしまいそう…」
 雪葉は何を想い光を見るのかと妃を窺う。卒業や学園の今後、それとも誰かを想うのか。
「ただ力になれたらと思うよ」
 これから出会う、もう出会った数多の人を思って。

 光の中心に立てばまるで包み込んでくれる優しさ。
「リネちゃん綺麗だね!」
「はい、ととと、とっても、とっても綺麗ですね!」
 手をぎゅっと握り満面の笑みを向けてくる忍にリネはどもりながら頬を染め笑顔で返す。忍は初めて名前を噛まずに言えた事を嬉しく思いながらこれではリネ本人を褒めているのではとひっそり思い、綺麗なのに違いないと考え直した。
 花火では手を繋げなかった事もあって瑛斗は緑の手をしっかり握っていた。
「綺麗だ」
「何処を見てもきらきらしていて、うっとりなのです!」
 緑は嬉しそうにぐるっと見回す。嬉しくて幸せを感じられるのは綺麗な光景だけではない。大好きな人と過ごせるから。二人は繋いだ手を固く握りあった。

「今年もこうして一緒に来れて嬉しいわ、沙羅ちゃん」
 沙羅を腕の中に納め、去年よりも綺麗な光の前で楼心に応えるように沙羅はその腕に手を添える。
「…沙羅もとっても嬉しいです。また、来年も一緒に見に来ましょうね」
「そうね、また来年もその先もここがこうして煌いてくれている限り、一緒に来ましょうね」
 無限の光を心に納め、その輝きと共に想いを幸せを大事に抱き続けようと願う。
「我が麗しの姫君、お手をどうぞ」
 章は煌めく光を背にアリアに手を差し出し小さな手がそっと置かれる。章は光に負けない煌めきを放つ夜空の瞳と星色の髪に見惚れながらエスコートする。が、アリアはそれに不満を抱いた。時折くれる眼差しだけでは足りなくて、その瞳にずっと映したくて。手をぎゅっと掴むと体を引き寄せ自分は伸びをしてその唇に触れる。私だけを見ていて。ただそれだけを望んで。

 ソープは両側から亮と蒼馬に手を繋いで貰って歩く。
「光の記念堂ってホントにメリーゴーランドみたいだね!」
 蒼馬は灯された明りに込められた想いを感じ取っていた。
「シャズナも一緒に来れたら良かったのにねっ」
「そうだな」
 人前で連れ歩く事の出来ない存在、亮の使役ゴーストであるシャーマンゴースト。いつか必ず連れて来てあげるという約束を胸に今は写真を一枚一枚丁寧に撮っていく。ソープも結社の皆に見てもらおうと写真を撮る。写し撮る光を見つめ、この光の祭りが続く事を願う。この地で失われた命と傷ついた人々に安らぎと希望を与える光だから。
 譲羽は光を見上げ、皆祈りと共に今の自分を報告するのだろうかと思う。
「……これから、も頑張って生き、ます…だから、見守って、てね…」
 両目にじわりと溜る雫に妃はハンカチをそっと差し出した。
 早苗と壱球は二人で中心に立ち周囲を巡る光に見惚れる。イルミネーションに見入る早苗に壱球は愛しさを覚え、思いを伝えるように握られた手をしっかり握り返す。
「来年も一緒に来なくちゃ、ですもんね」
 来年の為にと早苗は幸せの鐘に向けてお金を投げるが少しも届かない。
「綺麗な音聴かせてやっかんな」
「良い音に期待です!」
「もしかして、すげぇ期待されてる?」
 早苗は野球部に所属する壱球に熱い眼差しを送る。壱球は真剣な表情で鐘を見る。
 カーーーーーン
 綺麗な音が響き、歓声と拍手が沸き起こった。

「そろそろ…かな?」
 終わりを感じて巴はその瞬間を見守った。光が一瞬にして消える瞬間を。それは一番美しく、一番儚い巴の一番好きな瞬間だ。
「終わり…か」
 溜息を零すようにワッチを被り直し、来年を望みながら去って行った。


マスター:神月椿 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:74人
作成日:2008/12/17
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