折り畳みは突然に 〜サンタさんだって畳まれる〜


<オープニング>


 銀誓館学園のクリスマスパーティー。
 毎年、様々な趣向を凝らすパーティーが開催され、学園はクリスマス一色に染まります。
 冬休みを目前としたクリスマスイヴの日は、様々なパーティーが開かれているようです。

 クリスマスパーティーは無礼講。
 たとえ、今まで一度も口をきいた事が無い人とでも、一緒にパーティーを楽しむ事ができます。
 クリスマスパーティーは、新しい友達を作る為のイベントなのですから。

 気に入ったクリスマスパーティーがあれば、勇気を出して参加してみましょう。
 きっと、楽しい思い出が作れますよ。


●帰ってきちゃった折り畳みゲーム、今年も開催!
 次第に狭まっていく陣地からはみ出さぬよう、仲間と共に耐え抜いた去年の折りたたみゲーム。
 だだ今年は、去年とルールが変わっているから注意してね。

●ルール
 まず、2〜5人で一組のグループになり、メンバー全員でサンタクロースの衣装を着る。
 サンタクロース衣装のサイズは多数取り揃え、色も『赤』『緑』『白』『青』から選択可。
 三角帽子にトナカイ帽子、ヒゲ、サンタが抱えている白い袋、長靴といった小道具もご用意。
 ちなみに女の子用はワンピースタイプだから、下にスパッツをはいて下さいね。

 1・メンバー全員で、トナカイとツリー柄カーペット(広げた新聞紙サイズ)の上に立つ。
   二人一組であれば貰えるカーペットは一枚。人数が多いグループ程、陣地も大きくなるよ。

 2・司会が「○○がいるチーム」「○○がいない」といった具合に条件を叫んでいくぞ。
   この条件にあてはまったチームは全て、カーペットを折り畳まれていくことになる。
   例えば「女子がいないチーム!」なら男性オンリーチームが。
  「ヒゲつけてる!」ならヒゲを装着した人のいるチームが折り畳まれるんだ。
  「トナカイ踏んでるサンタさん」のような、カーペットの絵柄に関わる条件が出ることも。
   後は「今女子を肩車してる男。太もも羨ましい」と嫉妬紛いな条件もあるぞ!

 3・もちろんカーペット(陣地)が畳まれていく間、メンバーは誰一人欠けてはならない。
   陣地から一人でもはみ出すとアウト。苦しければギブアップを自己申告も可能だ。

 4・最後までアウトやギブアップせず、陣地に立っていたグループが優勝となる。

 おんぶや抱っこ、ピラミッドを組むといった行動も可能です。
 ですが、危険すぎる行為は司会から強制アウトを申告される場合があります。
 また、参加人数が多い場合、数回に分けて開催する可能性もございます。奮ってご参加下さい。


 君の目に留まったチラシは、クリスマスパーティのイベント案内を知らせるものだったらしい。
 通りかかった井伏・恭賀(高校生運命予報士・bn0110)が、君に気付き声をかけてくる。
「……あ、それ俺出る予定なんだ〜。良かったら君も参加しようよ」
 単独参加でも気後れする必要は無い。他の単独参加者と組めば良いと彼は微笑んだ。
「チーム組むメンバー、学年も性別も関係ないから大丈夫、よ」
 不意に、君の後背から声が届く。
 振り返ると、そこには高城・万里(田舎育ちの黒猫・bn0104)が立っていて。
「友達やきょうだいと……ってのもいいし、気になる人と一緒も楽しいだろうね〜」
 つまり、組むメンバーの性別や年齢は問わないのだ。
 組む仲間や衣装、小道具の有無も含めて「作戦のうち」となる。
 しかしこれはゲームだ。
 公序良俗や常識などに気を遣う必要もあり、主催者の趣旨に逆らう行動は即退場に繋がるだろう。
「……ひとりで参加するなら、これを機に交友関係を広めるのもいいわ、ね」
「楽しんだもの勝ちってことだしさ。君も一緒にがんばろうよ〜」
 万里と恭賀が交互に言葉を投げかけ、君へ手を振りそのまま立ち去ってしまった。

 君はこのゲームに参加する? それとも参加しない?

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参加者
NPC:井伏・恭賀(高校生運命予報士・bn0110)




<リプレイ>

●1ゲーム目
 彩られた聖夜を迎える日。
 多くの人と夢を乗せたトナカイとツリー柄のカーペットが、会場に広げられていく。
 さすがに数が多かったため、ゲームは二度に分かれて行われることとなった。

 この抱き方にはロマンがあると考え、まゆこを横抱きしてみた。想像以上に軽く感じるのは、想いの力ゆえだろうか。
「ちゃーんと掴まれよ?」
「リズさん、ありがとうございますの」
 こっそり耳元でまゆこが囁く。カーペットから足がはみ出ているとも気付かず、リズはくすぐったそうに微笑むだけで。
 二人のすぐ近くでは、おみ足失礼、と弾んだ声を言い残し三月が誠へ上陸していた。
「わーい、高い高いー。がんばれおとーさーん」
 麦丸が感情の篭もらぬ声で発破をかければ、二人を支える誠の踏ん張りにも、力が入った気がする。
 よく知る仲間同士だからというべきか、対抗心や行く末を見守りたい心を寄せて、『怠惰1』の眼差しがそんな彼らを見遣っていた。
「一年分の根性使ってる気分だわね」
 沙夜がくすぐったそうに微笑み、呟く。朔と有栖が彼女を軸に手を取り合う中、『怠惰2』では司会に「白サンタがいるチーム」を宛てられ、手をぶんぶん振る三月の勢いにも挫けた誠が力尽きていた。結局怠惰1も、白サンタ分を折り畳まれバランスを崩し、両チームで笑い合いながら転がる結果となった。
 一方、代々では。
「姉様に抱っこ、して欲しいです……!」
「腕が疲れるから駄目」
 つゆの願いを一蹴したのは霜月だ。サンタ姿になれて鼻歌交じりな湊は、つゆを背負いつつ、頑張ろうと声をかけていたのだが。
「定番な赤サンタさん、折り畳んでー」
 次々襲ってくる司会の条件には、なす術がない。

 平常心という単語を幾度も思い浮かべて、真深が自分へ言い聞かせていた。
 そんな真深へ、一は思い出したように胸の内を言葉へと変える。
「……思ったとおり。天海先輩サンタ服よく似合ってるっすよ」
 絶やさぬ笑顔で、率直な感想を述べた。素直で真っ直ぐだからこそ、背中が痒くなる。
(「……っ、はずかしい」)
 耳まで朱に染まった真深の顔が今にも沸騰しそうなまま、二人の足取りはやがてカーペットではなく床を踏んでしまう。けれど、与えられた時間の優しさは充分すぎる程だった。
 一方の理尋は、自分を抱き上げる影斗の逞しさに鼓動が抑えきれずにいた。腕の太さ、背中が広くなったこと。それらは全て時間の流れを思わせる。
「影斗さん……また、大きくなっていますね」
 触れ合う熱さに声がこもり、小さくなった刹那、呟きを聞き届けてしまったのか影斗の膝が思いがけずガクンと崩れてしまう。当然、理尋を守るよう自らをクッションにしながら。
 その頃、トナカイチームを名乗る『町外れの古屋敷』の面々は、互いを励ましあっていた。香夜が、ファイトですのよ、と声援を送りながらしがみつくかずらを一瞥する。そして彼哉が、そんな香夜と間合いを詰めてはみ出ぬよう粘った。
(「思い出になったら嬉しいですね」)
 真っ白サンタな彼哉が薄く微笑んだ。やがて司会の「青サンタがいるチーム」という合図をきっかけに、これ以上は厳しいと判断した莱花がギブアップを申し出て。
「ここまでだわね。楽しかったわ、お疲れ様」
 互いの健闘を褒め称えあった。
 トナカイ帽子が揺れる。『bizarre moon B』もほぼ塔に近い状態で戦っていた。
「ははは! 崩れていくサンタどもがゴミのよ……」
「わっ。笑うと揺れちゃうのです」
「千晴ちゃん頑張るんよ〜」
 上から注がれた声に、言いかけた言葉が遮られる。
「玲樹さん、凛さん頑張ってー!」
 サンタチームと自称した『町外れの古屋敷』で、伝の励ましが飛ぶ。
「あっ、無理しないでね」
 謙虚に告げるさなえを背負う凛は、安心して下さいと力強く答えた。そのすぐ傍では、東風が玲樹へ「だっこー」と強請っている。玲樹が難なく東風を抱えれば、不自然な体勢が完成して。
 同じ頃、紅潮した顔のためまともに合わせられず、味鈴の熱は雅鼠の肩口へ染みた。
「……あったかい」
 その熱さゆえか体温の所為か、雅鼠は彼女を背負い耐えながらも暢気そうな音を零す。
「彼女に怪我などさせてたまるものかぁああ!」
 執念が雅鼠自身を下敷きと化し、おかげで痛みを一つも受けなかった味鈴は、慌てて雅鼠を気遣い支え起こした。怪我を心配してみるものの、どうやら無事のようで胸を撫で下ろす。
 その時、司会の告げた次手は――。
「女の子おぶってる人がいるチーム。羨ましいから!」
 嫉妬心に溢れた言葉は、結局三チームが保っていた均衡を崩してしまった。

 頼りなくても一応男だ。そう、蒼流がエルデへ安心を手向ける。
「実は結構鍛えてるんですよ」
 安堵をもたらすべく告げた話に、エルデはこくんと頷くだけで。
「狭ッ。楓、乗りやがれ!」
 直後、健一に促されて楓が彼の肩へ乗った。
「重いとか言ったら後でクレファンだよ!」
 何事か口を開きかけた健一の上で、楓が釘を刺す。
 同じ頃、肩車から所謂お姫様抱っこへと体勢を整えようと、結が祐理へ一言断っていた。あんまり見ないで下さいね、と念を押して祐理が肩から下りようとした瞬間、不意に力をこめてしまい結の頭を太股で挟み込んでしまい、そのまま流れるように倒れて。
「それじゃ肩車してる人ー、折り畳んでねー」
 司会者は、ある意味微笑ましい両チームに容赦なかった。

 面積節約のため肩車で凌いできたのは十字団だ。
「負ける気はミジンコほどもない! そのために小菊先輩だって女装やってるんだ!」
 熱意が拳に握り締められる。
「小菊は女装しても違和感が……」
「えっと、あまり見ないで下さいね?」
 本音が零れた仲間を徐に諌めていると、司会の爽やかな声が響き渡る。
「異性の服着てるチーム、折り畳んでしまえー!」
 これ以上は生存できそうになかった。
 杏自身、期待半分断られる可能性半分だったのだろう。
「絵、踏んじゃ駄目ですよ」
 男物のサンタ服をまとった杏は、そう言いつつも服と同じ色で耳まで染めている。まさか本当に加音に抱き上げて貰えるとは思わず、頭から湯気が出そうだ。
「っ、これで文句ないだろ!」
 覚束ない足取りで耐える加音が、踏ん張るために全てを注力する。
 そのすぐ傍らでもまた、大切な存在のため踏ん張り続ける少年がいた。
「この松本銀二、倒れることは許されていねぇッス!」
 重くないかという問いに対する答えだ。海藍は抱き上げられたまま、やや斜め下から彼を見上げくすぐったそうに笑う。やや目深に被った帽子が、恥ずかしげな海藍の表情を隠した。
「愛の力で最後まで残ってみせるッス」
 意気込みを必死に力へ変え、銀二が耐える。
 直後、司会の声が高らかに会場に響いた。
「トナカイの絵を踏んでるチーム!」
 それぞれで抱えられる側だった海藍と杏がカーペットを見下ろす。
 暫しの間は、当人達のみならず周囲の参加者の意識をも釘付けにして――トナカイの絵柄を踏んでいたのは、銀二だ。
 杏のつけヒゲが、驚きのあまりぽろりと取れる。
 勝ち残ったのは、杏と加音ペアだったのだ。

●2ゲーム目
 動揺を隠すように前を見据える立花に、なななが声を震わせる。
「去年よりおっきくなっちゃったけど……だ、大丈夫?」
 月日の経過を思い知らされる、二人の関係と背丈や重みの変化。それさえ包む立花の両腕は、次に陣地が畳まれるまでなななを横抱きしたままだった。
 同時に、同じく「袋」を条件にバランスを保てなかったジングルがごろんと倒れこんだ。その拍子に、背負われていた千破屋も床の上へ横たわり、そのまま大口開けて笑い出した。
「やべー、足つりそう!」
 弾む笑い声につられ、ジングルも堪えきれずに噴き出してしまう。後で奢らせて下さいねと付け足せば、千破屋の唇が礼を紡いだ。
 長引くゲームの中、紅百合の掲げる紅十字が照明を浴びて煌いた。
「式守、しっかりくっつけよー!」
 秋都に促され、冬緒は正に肩車された深琴と協力して安定感を保っていた。勝つ為にと女装を引き受けた秋都へ今にも噴出しそうな視線を向け、正は「後で何か奢ってあげよう」と胸の内で呟く。いずれにせよ長く持ちそうにはなく、各々手足が震えている。
「良い思い出に……なりそう、です」
「サンタ服が4色綺麗に揃ってるチーム、折り畳んで〜!」
 冬緒の呟きが、無情にも敗北へ誘う司会の声と重なった。

「そういえば赤以外のサンタって、あんまし見ないネ」
 真っ青なサンタ服を纏ったやみぴが、コノハを背負い辺りを見回す。さすがにゲームというだけあって、この会場には色とりどりのサンタがいた。コノハも、落ちてしまわないよう手を回し、視線を彷徨わせて。
「そうだよね……わわ!?」
 そこで突然、安定感を無くしたやみぴの足がカーペットの外へ着地する。コノハがやみぴを覗き込むと、その顔は緊張の余りかりんごのように真っ赤に染まっていた。
 同じ頃、万里を肩車し続ける龍麻が「頑張れ」と喉を震わせ発破をかけた。抱きつく陸を支える恭賀へ向けたものだ。長時間同じ体勢は厳しいらしい。
「保体4点、負けるなー」
 淡白な万里の声援。反対に陸は、大丈夫ですかと思わず尋ねる。
「やっぱり肩車だよ肩車!」
「お、女の子肩車はちょ……っ」
 龍麻の提案も虚しく、基礎体力が低い恭賀は何か言いかけたところで、陣地からはみ出てしまった。
 基礎体力は大事だ。
 刹那、鈍い音を立てて尻餅をついたのは近くにいた常陸・忍だ。彼へ被さる形でリネが転がる。
「ししし、しの、忍さんだいじょう……」
 言いかけた声が、緩んだ笑顔を知って飲み込まれる。姫抱きしたリネを庇い倒れた忍に、痛みなど無かったらしい。幸せそうな表情を見て、リネは「はきゅん」と音を立てそうな勢いでぎゅっと目を瞑った。

 広い背に身を預ければ、それだけで心が充たされていくようだった。かと思った瞬間、ルシアを背負っていたイグニスが崩れる。大丈夫か、と心配しつつルシアを庇い倒れたイグニス。そんなイグニスの手を借り、ずれたトナカイ帽を正しながら、微笑んでルシアは立ち上がる。
 すぐ近くでは、姫抱きのまま耐える腕が僅かに震え、蒼十郎の止まない笑顔を琴里が覗き込んでいた。
「無理せぇへんて。な?」
 そんな優しさへ腕を回しここまで生存してきたものの、さすがに厳しいと判断し、琴里の方からギブアップを申し出た。これ以上無理をさせて怪我でもしたら大変という、琴里の温かな心が。
 こうして次々と脱落者が増える中、『草魂』では柾世の人任せな呟きが零れていた。
「キューが片足で耐えてくれると信じてる……」
「柾兄ぃもじゃないの?」
 弥琴が口元を緩ませる。背中合わせで耐え続ける仲間をじっと見つめ、直後紫空は思ったことを紡ぐ。
「柾世ときゅーにロマンスの予感……」
「柾の背中温かいネ」
 反射的に棒読みで言葉を返したのは壱球だった。そんな他愛の無いやり取りがいつしか笑いのツボに嵌り、彼らの日常を覗かせていく。敗れても、そこから笑顔が無くなりなどはせずに。

 行くぜ、という滾るヒビキの声を合図に、レテノールと光里が塔を組んでいた。天辺を極めた光里が、白サンタに扮したレテノールにしがみ付く。他チームを脱力させるべく変顔を次々形成していくヒビキへ、周りのチームから同じ仕返しがされて。
「ぶふっ!」
「あ」
「木霊、今笑わないでくださ……」
 噴き出したヒビキにつられるかのように、長く耐えていた塔が呆気なく崩落する。
「最高のクリスマスだぜっ!」
 直後には、ヒビキの笑い声がその名の通り木霊した。
 その頃、女性陣のサンタ姿を見て、目に嬉しいゲームと称したのは『bizarre moon A』の雪之丞だ。
「光、若い頃の苦労は買ってでも……って言うだろ?」
 アリスと小巻はともかく、下敷き――否、縁の下の力持ちとなって全員を支えるのはどちらかと、雪之丞と光が視線をぶつけあう。
「大柄の男まで担げっかい! っだー! 男は根性だ、どんと来やがれ!」
「気張っとくれやすー」
「光様に勝利を託します」
 無理が祟って結局崩れてしまうのは、火を見るより明らかだ。
 赤と緑のどちらが2Pか不毛な争いを続けつつ、暁は翔太の肩に乗っていた。
「かっこよくイナバウアーするね!」
「なんでそんなイロモノな動きしたがるの!」
「某沈没船映画の恋人同士のポーズがいい?」
「しないよ! 僕には彼女がいるんだー!」
 二人の賑やかさが微笑ましいのか、周りから笑い声が零れる。息を切らすほど叫べば体力も消耗し、扇形へ変えようとした瞬間、力尽きてしまった。

 意気込むそば吉の面々は、組み体操のアーチを模っていた。練習してきたと言うだけあってか、陣にブレは無い。挟まれた月詩に発破をかけられ続ける二人だが。
「長くやるのは辛いです……っ」
「くっ」
 安定はしたものの、耐えるのには向かず落ちてしまった。
 そして対抗心ゆえか否か、そば吉・Bでは、烈人が少女三人を支えるという脅威の技を披露していた。
「がんばれヒーロー、男手はキミだけだー!」
「緋色君、重いかもしれないけど頑張ってね」
 ぷるぷると、堪え続ける猛者から振動が伝わる。
「……あ、だめそう」
 やはり長くはもたず、まどかの呟きを最後に崩壊してしまった。
 似合ってると囁く声音の柔らかさに、雛の頬が朱に染まる。負担を減らすべく小物も取っ払った雛は、トナカイ帽子を被ったチャールズを見上げ、引き寄せられたかのように少しばかり身を起こす。そのまま、流れに沿って彼の頬へそっと唇を寄せた。思いがけぬプレゼントに、チャールズの足がカーペットの外を踏んだ。
 微笑ましい二人の傍らでは、おそろいの猫しっぽを揺らして、猫部の三名が踏ん張っていた。否、実際に踏ん張っているのは清信と春子だろう。鼎を抱え支えたまま、折り畳まれていく陣地の恐怖に耐えている。
「猫になれたら……あ、あぁちょ、もう畳まないで下さいー!」
 春子の叫びも虚空へ消え、次にカーペットが畳まれた直後、陣地からはみ出てしまった。

 床をしかと踏みしめる龍之介の肩へ足をかけ倒立で耐えていた忍も、かかとに重心を傾け堪えていた壱烙も、さすがに長時間は厳しいのかバランスを崩しカーペットから外れてしまった。
「この時期はカップルにエンチャントがかかって見える……」
 忍の呟きも、強ち間違っていないように思える。
 同じように銀の傘も、ここまでしぶとく続いていた。
 一番粘っていたのはエイゼンだろう。次々乗っていく仲間の下で腕を震わせている。しかし四段目に入ったところで、スタッフの笛が鳴った。
「縦一列もそこまでいくと危険です! アウトー!」
 さすがに、一人だけで四人を支える五段タワーは危険極まりなかった。

 同じ三角帽に同じ赤のサンタ服。プリメーラはそんな波那を「お揃いでママみたい」と嬉々とした感情を乗せて微笑んだ。その言動や仕草の一つ一つに、和むのと同時に癒しを覚え、波那が瞼を伏せる。
「見てごらんプリムちゃん、萌えるサンタがいっぱい……」
 更なる重みを感じて振り返ると、プリメーラぬくぬくな背で半分睡魔に誘われていて。波那はそのまま静かに会場を出て行った。

 青サンタに身を染めた柊は、加奈に姫抱きをされながら触れる温もりを有り難く実感する。絆が深まらなければできぬこと、一人ではできぬこと――その重みと優しさは、何より二人の時間を彩っていく。
 迫り来る狭さに世々では昴琉がステラを抱き上げ、椿姫がしがみつく形で耐えていた。
「あれです。テスト結果を見る時と同じ焦燥感が……!」
 試験がつい先日だっただけに、周りの面々もびくりと震える。身に覚えでもあるのだろうか。
 一方、悠仁と十六夜は背中合わせで立っていた。照れを脱ぎ捨てるかのように、円と眞琴が仲間へしがみつく。
「ユーカリとコアラの図ですね」
 その光景を喩えたのは悠仁だ。
「……重いとか言ったら切腹するから!」
 抱きつくのは良いがやはり年頃。本人曰くふくよかさを気にしていた円が、嘆きを言葉の節々で表した。
「別に気にする必要は無いと思うぞ?」
 敢えて『何が』とは言わずに十六夜がフォローする。眞琴もまた、乙女でカワイイ、と円へ笑みを向けた。咄嗟に悠仁も口を挟む。
「男二人分の足裏面積で、世界を支えますよ」
 スケールが大きすぎた。
「お姫様抱っことはけしからん! 折りたたんでしまえ〜!」
 嫉妬染みた司会の叫が響く。畳まれるカーペットが残っていたチームを更に圧迫し、アウトへと追いやる。
 最後まで生存が叶ったのは、横抱きをしていなかった悠仁達だけだったようだ。

 思いがけず迫った現実に、仲間同士で手を叩き、喜びを分かち合う。
 会場に湧いた拍手は、優勝者へのみ与えられたものではない。
 それぞれの想いや熱意を含んだ、短くも長い時間。
 それを称える賑やかさが、見物していた人々からも止め処なく溢れていく。
「皆さん、まだ朝ですからね! クリスマスイブは始まったばかりですよ!」
 司会者やスタッフの声が、会場に木霊した。
 準備はいいですか、と司会が張り上げた声が耳朶を打てば、大勢のサンタクロースが帽子を、或いはプレゼントをつめる袋やヒゲを手に取る。
 赤いサンタだけでなく、青や白、緑まで鮮やかな色が会場を埋め尽くして。
「「メリークリスマス!!」」
 掲げた物は天井高く放り投げられ、クリスマスイブの一日が始まったことを知らせた。


マスター:鏑木凛 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:108人
作成日:2008/12/24
得票数:楽しい34  笑える2  泣ける1  カッコいい1  ハートフル1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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