Shining Xmas 2008 〜光の庭、ふたたび〜


<オープニング>


 銀誓館学園のクリスマスパーティー。
 毎年、様々な趣向を凝らすパーティーが開催され、学園はクリスマス一色に染まります。
 冬休みを目前としたクリスマスイヴの日は、様々なパーティーが開かれているようです。

 クリスマスパーティーは無礼講。
 たとえ、今まで一度も口をきいた事が無い人とでも、一緒にパーティーを楽しむ事ができます。
 クリスマスパーティーは、新しい友達を作る為のイベントなのですから。

 気に入ったクリスマスパーティーがあれば、勇気を出して参加してみましょう。
 きっと、楽しい思い出が作れますよ。
 
「ここに来るのも1年ぶりか……早いものだねぇ」
 キャンパスの片隅にある蔦の絡まるアーチを抜け、小さな庭園に踏み入った霧里・優雅(高校生運命予報士・bn0127)が懐かしげに目を細める。ウインターコスモスにプリムローズ、パンジー、シクラメン……植えられた花の色や形は多少違えど、手入れの行き届いた美しい庭の印象は、1年前に訪ねたときと何ら少しも変わらない。
 偶然優雅が見つけたこの場所を借り切り、イブの午後に開かれたクリスマスパーティー。クリスマスにツリーは付き物だと、ツリーに見立てたコウヤマキ(高野槇)にクリスタル製のオーナメントを皆で飾り付けた様は、それは見事で幻想的な光景だった。
 願わくば、あのときの感動をもう一度──。
「……という訳で、今年もよろしくね」
 優雅はにっこりと笑いかけ、去年よりもほんの少しだけ背の高くなったコウヤマキの木を見上げた。

「……はい? くりすますぱーてぃー、ですか?」
 暖かな柚子茶と共に馴染みの先輩を出迎えた峰月・あかり(中学生雪女・bn0188)にとり、優雅からの誘いはなんだか唐突にも感じられて。改めてカレンダーを見直した後、「そういえば、もうそんな時期なんですね」と感嘆の声を洩らした。
「1年と云うのは、案外長い様で短い物だからな」
 大学受験を間近に控え、受験勉強の合間に顔を覗かせた華宵・瑠璃花(紅薔薇の剣士・bn0080)がそう言うと、なんだか妙に説得力があるように感じられる。
「受験生とはいえ、たまには息抜きも必要だよ。ね、瑠璃花くんも一緒にどう?」
「ん……ああ、そうだな。私達高校3年生にとり、この学園の生徒として過ごせる最後のクリスマスだ。喜んで参加させて貰おう」
 快く頷いた瑠璃花はもちろん、あかりにも別にこれといって誘いを断る理由はない。むしろ生まれて初めて見るクリスタルオーナメントのツリーが楽しみだと、蒼氷色の瞳を輝かせた。

 星、月、雪の結晶、ハート、十字架、木の葉と、飾り付けるオーナメントの種類は全部で6つ。
 好みの色のリボンを通し、コウヤマキの枝に結んだクリスタルオーナメントに願いを込めて──。
 寒さなんて笑顔で吹き飛ばし、みんなで楽しい思い出を作れるといいね。

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参加者
NPC:霧里・優雅(高校生運命予報士・bn0127)




<リプレイ>

●願いのかたち
「遊姫と出掛けられるとは楽しみだのう」
「クリスマス、楽しみだったから嬉しいね♪」
 庭園までの道すがら、しっかりと手を握り合った琥斗葉と遊姫は暖かいコートやマフラーで愛らしく装って。
「寒くない? ……あ、大丈夫か♪ 私たち雪女だったっけ」
 それでも気になり尋ねた後で、遊姫ははたと気づいて苦笑い。
「わ、綺麗なお庭ー……!」
 小さな蔦のアーチをくぐった生子を、愛らしい冬咲きの花たちが出迎える。花々の間を抜けた先には、まっすぐ天に向かって伸びるコウヤマキ。あの樹にオーナメント飾るんだよね? と振り返れば、のんびり後をついてきた壱球がその頭をぽむぽむ撫でて。
「苺がなくて残念だったな」
「い、苺じゃなくても平気だもんっ」
 そう、大好きなお兄ちゃんと一緒なら、ちっとも残念なんかじゃないんだからね。
「可愛い……な」
 庭の入口で恋人の到着を待っていたカオルから思わず本音が洩れる。現れたロサの今日の出で立ちは、いつになく華やかなワンピース。
「カオルも……おめかし?」
 常と違う恋人の姿に驚いたのはロサも同じ。着慣れない衣装に不安げにしているカオルにそっと近づき、似合う……ねと囁いて。早くコウヤマキの木も綺麗にしてあげようと、彼の手を握り締めた。

 オーナメントとリボンが並べられたテーブルの前には、早くも人だかりが出来ている。
「わぁ……」
 クリスタルの美しさに息を呑む和奏。しばらく見とれているうちに、それまでへこんでいたのが嘘のように幸せな気分になってくる。
「本当は、誘いたいお友達がいたんだけどね」
 誘えなかったのは今も残念で仕方ないけれど。せめてお土産にしようと、和奏は雪の結晶を手に取った。
「ふむ……リボン、か」
 月のオーナメントを選んだ梟麻は、そこでしばし逡巡。私物のリボンを使っても良いのかと霧里・優雅(中学生運命予報士・bn0127)に尋ねれば、もちろんだよと愛想の良い笑みが返ってくる。
「色々なオーナメントがあって幻想的ですね……」
「どれも可愛いから……凄く、悩む……」
 オーナメントを眺めて溜息をつく澪の横で、華音亜も悩ましげに眉根を寄せる。やっとのことで決めた十字架と雪の結晶にリボンを通し、二人揃って木の下へ。
「……ぁ、でも……高いとこ、に……かざるの……少し、怖い……かも……」
 急に不安になって華音亜は澪に手伝いを頼むが、無論答えは聞くまでもないだろう。
「いつも見守ってくれる月を誰かさんに見立ててです♪」
 楽しげに笑うリースの手には、青いリボンを飾った月のオーナメント。司は雪の結晶を選択する。
「じゃあ、俺はこれだな。いつも優しい誰かに見立ててね」
 別に恋の駆け引きという訳ではないけれど。目の前の『誰かさん』と顔を見合わせ、二人は自らのオーナメントに想いを込めた。
「……って、先輩そんなに選んでっ!?」
 あわあわと泡喰う橙泉の前では、両手に1つずつオーナメントを持ったエルが首を傾げて。
「木の葉2枚って可愛くない? ……せんちゃんのケチ」
 軽く悪態をつきながらも素直に片方を返却すると、エルは自分のオーナメントにリボンを通した。
「あとはこれを飾って……」
「ああ、もう! 脚立使うのはいいですけど!」
 ちゃんと支えてますから! と世話を焼く橙泉の気苦労は、嬉しくもまだしばらく絶えそうにない。
「……好きなオーナメントを選べばいいの。どれもキレイよ?」
 優しくエマに促されてもなお、つい目移りしてしまうエリザベス。じゃあと頷いたエマが、後ろから腕を回して目隠しをする。
「目を瞑って……運命の糸を手繰り寄せましょ♪」
「え〜と……コレですわ!」
 言われるがまま引き当てたリズの手には、小さな星が瞬いていた。

●過去も未来も
「もうあれから1年経つんです、ね……」
 今年も変わらず凛と立つコウヤマキを見上げ、雨兎が感慨深げに洩らす。その隣には去年と同じ透輝の笑顔。
「雨兎ちゃんはどの形のオーナメントを選んだんですか?」
「あ、私は……」
 互いのオーナメントを見せ合い、雨兎と透輝は仲良く頬を寄せた。
「今年も此処で過ごすとは思わなかったなー。あ……うるるのイメージってなんか月っぽいから月」
「久夜のイメージハ……十字架のオーナメントカナァ」
 相手のイメージに合ったものを選ぶと決めた久夜と鴉も、早速いそいそと飾り付けへ。
「ギャー! スカートのレースがひっかかっター!」
 脚立の上でバタバタと騒ぐ鴉に半ば呆れつつも、今年は一人じゃないのだと久夜は実感する。
「わー、懐かしいなぁ……!」
「去年飾りに来たのがついこの間の事みたいだ」
 彼方と久遠の相棒同士もまた、ツリーの下で懐かしげに目を細めて。今年は二人だけで過ごすことになってしまったけど、楽しい気分に変わりはない。
 去年とは違う月のオーナメントにリボンをかけ、空へ──。
 彼方の頭とほぼ同じ高さの枝に結ばれたそれは、まるで彼女を彩る髪飾りのよう。
「よいしょ、っと」
 めいっぱい腕を伸ばして踵を上げた弥介が、枝にオーナメントを括り付ける。残念ながら1年前と身長に変化はないので、見上げたオーナメントの高さも去年と同じ。それでも背伸びした分、少しは高く飾り付けられたろうか。
 木漏れ日を透かして見る雪の結晶は、眩しいくらい輝いていて。今年はお揃いなんよと朔は珠璃に笑いかける。
 優しくて大事な、お花みたいな笑顔の珠璃ちゃん。
 大好きで大切な笑顔をくれて……笑顔にさせてくれる朔。
 どうか二人、これからもずっと仲良くいられますように。
「……願い事、叶うと良いね」
「うん、きっと叶うんよ」
 交換し合ったオーナメントに祈りを込め、珠璃も朔もふわりと笑んだ。

「やっほー、ゆーちゃん!」
 寒そうに肩を竦めた海里が、脚立の上から優雅を呼び止める。互いの成長ぶりを称え、オーナメントとは別に黄色のリボンをコウヤマキにプレゼントした後は、クリスマスお助け隊の出動! と優雅にも協力要請。そこに自らのオーナメントを飾り終えた龍麻も加わる。
「神様、サンタ様、どうか来年は彼女と来れますように! てか、彼女が出来ますように!」
 手早く願い事を済ませると、龍麻はすっかり人のいいお兄さんの顔になって誰か困っている子はいないかと視線を巡らせた。
「……おや?」
 見れば、星のオーナメントを手に一度はツリーの方へ歩き出したはずの参九朗が、瑠璃花のいる場所まで戻って何やら話しかけているではないか。
「瑠璃花……」
 深く息を吸い、参九朗は硝子の星を握り締める。
「卒業した後も、時々でいいからボクと一緒に遊んでくれる……?」
 騒ぐ鼓動の高鳴りを抑え切れずにいると、すっと白い手が伸びてきて。緋色の髪を愛しげに撫ぜ、勿論だと瑠璃花は快く頷いた。

 久しぶりーと声のする方をあかりが振り返ると、そこには小さく手を振る燐の姿が。
「峰月さんはどのオーナメントとリボンを選んだの?」
「あ……私はこれ、です」
 改めてお久しぶりですの挨拶の後、あかりが見せたオーナメントの形に燐はにっこり。わ、雪の結晶に青いリボンまで私とお揃いだねーと声を弾ませ。
 と、そこへ見覚えのある顔がまた一人。
「峰月……その、良かったら一緒に飾らねぇか?」
 耳まで真っ赤になりながらも懸命にそう問うた祭波の声は、少し頼りなげで優しくて。
「はい、喜んで」
 お願いしますねと微笑み返したものの、あかりを誘いたいと考える者は何も祭波だけに限らないようだ。
「峰月さん、オーナメントはここに付けたらいいのかな」
 祭波と連れ立ってツリーのところまで行くと、早速所在からも声がかかる。二人はすぐにお喋りに夢中になり、所在のオーナメントを飾り終わる頃にはすっかり意気投合。最後に感謝の言葉を伝え、所在はちょこんと頭を下げた。

「あの、一緒に……やりませんか?」
 もじもじと恥らうようなリシティアの誘いにも応じたあかりは、馴染み深い ≪Reve*Lune≫ の仲間たちの輪に加わる。
「きらきらな飾りがいっぱい……なのです」
「わたくしにとって高校生最後のクリスマス、素敵な思い出になるといいですわ」
 それぞれ好みのオーナメントを選び、適当な枝を探すコレットと翠月。梯子や脚立は危ないからと、二人は手の届く範囲で飾り付けを済ませることにしていた。
「うー……あかりさん……」
 思わず涙目になってあかりを呼ぶアルトは、枝にうまくリボンが結べないとSOS。そんなアルトの傍らで、あかりの白い指は器用に綺麗なちょうちょ結びを作り出した。
「わはー」
 まるで魔法か何かみたいだとアルトは大感激。ありがとうございますなのです! と興奮気味に礼を言い、何度もあかりを照れさせる。
「今年、も……見られる、なんて……嬉しい」
 去年とは違う仲間と過ごすクリスマス。けれど、褥の瞳に映るきらきらたちは去年と同じ……否、もしかしたらそれ以上に美しく感じられるのかもしれなかった。

「ふふ、今年もこういうイベントやってくれてうれしいな」
 去年は参加出来なくて残念だったからと話す夢亜に、陽菜も思い切って参加してよかったと微笑んで。よく見れば、案外単身での参加者も少なくないようだ。
 木の根元に脚立を置き、雪の結晶を握り締めたミシェル、別に弱点じゃありませんから……と十字架のオーナメントを手に苦笑を浮かべた貴種ヴァンパイアの散人もその一人。
「なるべく上の方に飾りたいですけど……」
 脚立に乗ってもなお、天辺はまだまだ遠いとミシェルは溜息をつく。けれども綺麗なオーナメントを眺めていると、憂鬱な気分などすぐに消えてしまった。
「来年は大切なお友達や仲間とも一緒に参加できますように……」
 星のオーナメントに向けて祈る陽菜。夢亜も、恋人が欲しいですと切実な願いを捧げた。
「来年、か……」
 医学部を志望している散人は、来年のこの時期には間違いなく修羅場が待っている。だがそれも、自分で決めて志した道だ。憂うことなど少しもない。

●きらきらの木
「なるほど……くりすますって、そういうお祭りなんですね」
 クリスマスがどういうものなのかピンとこないという華月が、簡単に由来を説明してくれたアルノーに礼を言う。
「無理しないでねー」
 少しでも高い位置に飾りつけようと背伸びする華月に、下で脚立を押さえるアルノーは何度もハラハラ。けれど、いざというときは身を呈して華月ちゃんを守る覚悟は出来てるからねー。
「そあせんぱいと、いっしょに、飾りつけするの、なのっ」
 舌足らず気味な口調で喜びを表す茨優にとっても、これが『初めて』のクリスマス。すべてが新鮮に見えるであろうその姿が、塑亜には堪らなく愛しくて。抱き締めたくなる衝動を抑え、二人分のオーナメントを飾り付ける。

「レディーファースト、お先にどうぞ」
 飾り付けを先に譲った星流は、どこかよそよそしくて。普段とは違う態度に戸惑いながら、まどかは用心深く梯子に足を掛ける。星流のため、選んだ白いドレスの裾を踏んでしまわぬように。
「しっかり支えてて下さいね。……あ、覗いては嫌ですよ」
「ばっ、バカ……」
 顔を赤らめて付け加えたまどかの言葉に、星流も負けずに頬を紅潮させる。まどかは単なる幼馴染みでしかないはずなのに、こんなにもドキドキしてしまうのが不思議で仕方ない。
「大丈夫ですか? 重くないですか?」
 影郎に肩車された朱美が、心配そうに恋人の顔を覗き込む。きっと重い方ではないとは思うけど。そんなに軽い訳でもないからと、朱美は身を竦ませた。
「ウン……ダイジョウブダヨ」
 ここは男の見せ所と張り切る影郎は、何のこれしきと笑みを浮かべて。実際小柄な朱美は羽のように軽く、その控えめな重みはこの上なく好ましいものであった。
「えと……どうか、しましたか?」
 自分の目の高さに近い枝を選び、藍色のリボンを結ぼうとしたところで瑞樹の手が止まる。早希の視線が自分に向けられているのに気づいたのだ。
「……いや、もう少し上でもいいと思う、けど……」
 一度はそう言いかけたものの、やっぱりその方が瑞樹らしいと思い直す。
「月代は、もう少し誰かに頼ってもいいんじゃないかな」
 代わりに早希が洩らした呟きに、瑞樹もつられて微苦笑を浮かべた。
「良い場所があるのですよ。お借りしますね」
 サキからリボンとオーナメントを受け取った桜は、するすると器用に木の幹を上り始めて。目指すは一番上、木の天辺と誓い、見事にそれを達成してしまう。
「……君は、全く」
 桜ならきっとやり遂げられるであろうとは思っていたものの、さすがのサキも驚きを隠せない。素直に拍手を贈る一方で、自慢げにこちらを見下ろしている桜の姿に苦笑を禁じ得ずにいた。

 ひとつ、またひとつ。
 誰かが飾り付けを終えるたびに増えていくツリーの煌き。
「段々綺麗になっていく木を見るのって何だか面白いですね」
「あ、ああ……」
 そんなにすごいことをしている訳ではないのに、クリスマスって不思議。
 夢中になってツリーを眺める漣花に、将はただ曖昧に頷いて。そうしている間にも、将の瞳には漣花その人の姿しか映っていなかった。
(「こういう表情、横から見るの……珍しいしな」)
 貴重な発見をしたようで、なんだか少し得した気分。
「……ん?」
 飾り付けの手を止め、ぼーっとツリーに見蕩れるエレナに気づいた白都の中に芽生える悪戯心。それは、愛しい恋人に対する独占欲の顕れか。そっとエレナの耳を塞ぎ、吐息のかかる距離まで顔を近づける。
「え、あ……」
 俺を見て、俺もエレナだけを見たい──唇の動きだけでそう伝えると名残り惜しげに手を離し、白都はぽんぽんとエレナの頭を撫ぜた。
「さて、決闘といきますか」
 飾り付けを終えて二人しっとり寄り添うのかと思いきや、鎖灼が妃菜に持ちかけたのはジャンケン3本勝負。勝敗の結果も気になるところだが、その後の鎖灼の行動がまた可笑しくて。
「エビークリスマスって……」
 一瞬きょとんと目をしばたかせた妃菜に構わず、大胆にも鎖灼は自作の海老型オーナメントをツリーに投入したのだ。まさに気分はエビークリスマス!

「……たくさんの人たちの想いで、願いできらきらしてる」
 飽くことなくツリーを見上げる結の瞳が、枝先で揺れるオーナメントの輝きを映し出す。
 結と空色のお星さまに、零斗のお月さま。
 そこには、目には見えないけれども確かに輝く3人を繋ぐ絆が見えるような気がして。
「きらきらの、かけら」
 零斗の呟きは、果して結や空色にも届いたろうか。
「ね、そろそろ私たちもお茶にしようか」
 ドライフルーツとナッツをふんだんに使ったシュトレン。日本ではシュトーレンと呼ばれることの多いドイツ菓子を作ってきた空色は、久しぶりに会う瑠璃花にもその味をお裾分けしたいと考えていた。

●笑顔のごちそう
 僅かに日が西に傾き始めた頃にはツリーの飾り付けも終わり、ドレスアップしたコウヤマキを囲んでのパーティーが始まる。
「やぁ、あかりく……」
 美しいツリーに惹かれ、ふらりと会場に現れた紫郎。偶然見かけたあかりに声をかけようとしたところで、同じ結社の彩華とアウラにばったり出くわす。
「メリークリスマス、ですの」
 素敵な庭への招待に対する感謝の気持ちだと彩華が優雅にクッキーを手渡した後、3人はあかりや優雅を自分たちのテーブルへと誘った。
「やはり、クリスマスといえばチキンだろう」
 ドン! とアウラが差し出した鳥の丸焼きは、どう見ても軽食の範疇を超えていて。思わず紫郎からツッコミが入るが、そんなのアウラは気にしない。豪快に肉を取り分け、あかりにも沢山食べるよう勧めた。

「うふふふっ。ことしもクリスマス、結構楽しそうですわ」
 そう言って笑う早苗は、手作りのクッキーを挟んで瑠璃花とお喋り。途中から瞳亜と羅偉、さらには新たな出会いや交流を求める風華やみのりも加わって、今年一年の思い出話に花を咲かせる。
「今年のクリスマスも一緒にお出掛け出来ましたわね」
 香りのよいキャンディ紅茶を淹れながら、まったりと微笑む瞳亜。
「去年も一緒に飾り付けしてケーキ食ったよな」
 あれからもう1年経ったのかとしみじみ呟き、羅偉は今年もお手製のケーキを持って来たと取り出す。雪のように真白いケーキを切り分けると、中からは優しいピンク色のストロベリームースが現れ、瞳亜や瑠璃花を喜ばせた。
「私は、カップケーキを持って参りましたの」
 紅茶風味の生地に生クリームを乗せてアザランを散らしたものやドライフルーツを乗せたもの、色とりどりのケーキは目にも美味しい。瑠璃花が作り方を尋ねると、みのりは嬉しそうにレシピを公開した。
「楽しいパーティーになってよかったです」
 ツリーを眺めながら口許を綻ばせた風華は、ささやかな幸せをそっと噛み締める。
「……あぁ、そういえば」
 手作りのパウンドケーキと紅茶を用意し、パートナーの翔太や優雅も呼んでのお茶会。とりとめない会話の途中で蒼衣は大事なことを思い出す。……本当は『思い出したフリ』をしただけなのだけれど。
「先輩に聞いてみたいことがあるんだったー。あのね、先輩は私の事、どう思ってるのかな、って」
 何やら直球で頑張ってる蒼衣を、珈琲片手の翔太は微笑ましく見守って。その隣で意味深に笑い、じゃあ蒼衣くんはボクのコトどう思ってるの? と質問に質問で返した優雅はちょっぴり……ずるい。

 【遊戯道場】の面々が囲むテーブルも、美味しそうなケーキやお菓子でいっぱい。
「卵とハムとカツのサンドイッチです。お口に合うと良いのですが……」
 遠慮がちにバスケットから取り出したレイラに礼を言い、春美も我妻も早速ぱくり。お返しに春葵は持参したショートケーキを勧め、瑠璃羽は手作りのシュトーレンを振る舞う。
「あずま君も食べてね、あ〜ん」
 いやはやなかなか見せ付けてくれるねと、たまたま傍を通りかかった優雅が冷やかして。そんな優雅も誘い、我妻は自慢の紅茶を給仕した。大切な恋人である瑠璃羽には何も言われずとも彼女の大好物である黒糖入りミルクティーを出し、またまた優雅に冷やかされる始末。
「身体に良い薬草茶をブレンドしたの♪」
 すっかりご機嫌な瑠璃羽が勧めるお茶は、ほのかに密かに地雷の匂い。果敢にも最初の挑戦者となった春葵はひと口飲むなり、あまりの苦さにごろごろと芝の上をのた打ち回った。

 団員同士仲のよい結社なら、ティアナたちの【*Snow Tears*】だって負けてない。いつもは和菓子が多いからとティアナが用意したブッシュドノエル、それに琴乃の焼いたクッキーも摘みながらのティーパーティーは、誰もが優しい笑みを顔に浮かべて。
 お洒落なお庭に合わせ、白いドレスでおめかししてきた芽李も、大好きなお菓子に囲まれてこの上なく幸せそうな表情。
「このお庭は素敵なの。記念に絵を描くなの!」
 記憶にとどめておくだけではもったいないと、得意のスケッチに筆を走らせる。ティアナに琴乃、それに結姫も。かわいい芽李の絵の中は、みんなの素敵な笑顔でいっぱい!

●愛する者へのメリークリスマス
「誰かに誘われてクリスマスとか初めてだぜぇ」
 互いに好意を抱き合う真魔と二人、小さなテーブルを囲む行也がはしゃいだ声を上げる。デートデート♪ と浮かれて囃す行也のため、真魔が用意したのは紅玉のシフォンケーキに苺とシャンパンの香りの紅茶。
「行也の髪の色に因み、ピンク色のケーキだ……」
 そのひと言が、行也の恋心にとどめを刺したであろうことは想像に難くない。
「先輩、あのね……」
 エイゼンといると、燈子はいつも話したいことがいっぱいで困ってしまう。いくら話しても話し足りなくて、かといって話題が途切れてもちっとも気詰まりにならなくて。
「あー、んっとそうだな……」
 燈子と喋ってると、何もかもが楽しくて会話が尽きない。他愛もないことで笑って、そのたびに幸せを感じて。
 お揃いの指輪を嵌め合ったばかりの小指が、じんわりと暖かい。

 唯月が静夜のために作ったドーナツは、彼の好みを熟知した者でしか作れないであろう優しい甘さ。その控えめな味と、静夜の用意したココアとの組み合わせは絶妙としか言いようがない。
「うん、美味しい……唯月は、こういうの得意だよな」
 兄と妹、義兄妹の二人は決して恋人の関係ではないけれど。
「きらきらと輝くオーナメントがきれいですね」
 夕映えのツリーを眺めながら幸せそうに寄り添ってくる唯月を、静夜は暖かなマフラーでふわりと包み込んだ。
「……ありがとうございます」
 楯のくれた黒いマフラーにすっぽりと埋もれたリヴィアは、少し照れた風に頬を赤らめて。楯兄さまの匂いがすると、幸せそうに笑う。
「風邪を引かれても困るしな」
 他意はないと楯は抑揚のない声で突き放すが、一見クールそうに見えても楯が誰よりも熱いハートの持ち主であるのは誰よりもリヴィアが一番よく知っている。

 今日ここで楽しいイブを過ごしたすべての人に、メリークリスマス。
 クリスタルが奏でる澄んだ音色を響かせ、コウヤマキはいつまでも彼らの笑顔を見守り続けた。


マスター:水綺蒼猫 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:89人
作成日:2008/12/24
得票数:楽しい12  怖すぎ2  ハートフル21  ロマンティック12 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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