恋人達に忍び寄る影


<オープニング>


『シングルHELL! ベリー、クルシミマース!!』
「うわー!」「きゃーっ!」
 この時期、恋人達を襲うゴーストがいても不思議ではない。

「ううぅ……へんなのがでました……」
 グスン。
 栗栖・優樹(小学生運命予報士・bn0182)が泣き顔でゴースト事件について説明する。
「サンタさんのすがたで……カップルをおそうゴーストなんです……」
 サンタクロースの格好……といっても、ほぼ全裸。
 帽子とマント、赤と白の縞パンツにブーツという出で立ち。
 まるで変態のような姿だ。
 というより、ガチで変態。
 これが、恋人達を襲っているという。
 まったく、許せないゴーストである。
「ほかにも……トナカイさんのすがたのゴーストが……」
 ゴーストは地縛霊で、このサンタゴーストの他にもトナカイの姿のゴーストもいる。
 トナカイ……といっても、頭は安い馬の被り物、パンツ一丁で全身を茶色で塗ったような姿らしい。
 これも、変態の類だろう。
 このトナカイゴーストが二体、計三体のゴーストで恋人達を襲う。
 ……どんな未練があったかというのは理解できるが、どうしてこんな姿になったのかまでは理解不能である。
 だが、被害が出ている以上、放っておくわけにはいかない。
 なお、サンタゴーストはプレゼント袋を持ち、怪しいアイテムを投げつけてくる。
 中からグローブが飛び出して吹っ飛ばされたり、爆発したり、毒ガスが入ってたり、まったく、とんでもないものばかり。
 何が当たるかはお楽しみ……ではなく、予測不可能なため、結構きついかもしれない。
 トナカイゴーストは暴走して、周囲にいる者をブン殴っていくようだ。

「ううぅ……こんなサンタさん、いやですぅ……」
 まだサンタさんの存在を信じたい小学一年生。
 それを粉々にブチ壊した今回のゴースト達。
 あの日に恋人達が幸せに過ごすことができるよう、がんばろうではないか。 

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参加者
風見・玲樹(の弱点は虫・b00256)
言乃葉・伝(元気印なたくあん娘・b02161)
パーン・イッツァーン(さまよう鎧っぽい魔狼騎士・b18241)
如月・式(天性のヘタレ・b27275)
的中・撃太(的中屋・b34653)
イバラ・アオ(ブルーリボン・b34864)
赤藤・歩夢(夢謡い・b35721)
シャレル・マリア(紅暁の娘・b37076)
エルム・レガート(パートタイム雪女・b39299)
風深・翼(幻葬の蒼き硝翼・b43787)



<リプレイ>

●シングルHELL
 もうすぐ『アノ』イベントがやってくる。
 特に、前日はイヴと呼ばれ、カップルが一緒に過ごす日でもある。
 お相手がいないシングルの方にとって、その日はとても切ない日である。
 敗北感と屈辱感を味わい、寂しく過ごすしかない……まさに、独り身地獄。
 その怨念が、カップルを襲うゴーストになって現れたとしても、まったく不思議な話ではない。

 夜の街角。
 白い季節をイメージした演出が施された、ムードを高めるストリート。
 そこに、一組のカップルがいた。
「見てごらん。この、きれいなイルミネーション」
 男はライトアップされた木々に灯された、幻想的なイルミネーションを指差した。
「きれいだね」
「夜空に輝く星も、とても美しい……でも」
「でも?」
 男は女の顔を覗き込み、その表情を真剣に見つめる。
 吐息を感じられるほど顔を近づけ、女のエメラルドのような瞳へ目を合わせた。
「あなたの瞳にはかなわない。今日は僕達のものだよ。今、世界には……」
 甘い言葉をささやく男に、女はこう言った。
「うーん。寒いし、それより早く家に帰ってケーキ食べようよ。ボクが焼いてあげるからさ」
 あらら……男はちょっと崩れた。
 とても、微笑ましいカップルである。
『何たるスイーツ! ユルセマセーン!』
 と、そこへ突然、後ろから声が聞こえた。
 カップルが振り向くと、そこには裸にマント、パンツは赤白の縞パンという姿の男がいた。
 プレゼント袋を持ち、どうやらサンタクロースをイメージしてるらしいが、正常な思考を持つものは、この姿を見て間違いなくこう思うだろう……変態だ!
「出たね! これ以上、ここで暴れることは、この僕が許さないよ!」
 男……風見・玲樹(の弱点は虫・b00256)は振り向きざまにイグニッション。
 彼らは能力者であり、カップルを演じることで、ゴーストを誘き出していたのだ。
「子供達の夢を壊す、許せないゴーストだね」
 女……シャレル・マリア(紅暁の娘・b37076)も剣を構えた。
 このイルミネーションスポット周辺に、カップルを襲うゴーストがいるということで、能力者達が派遣されてきた。ここにいるのは、彼らだけではない。
「本当にひどいゴーストですわ……どんな未練があったのかは、何となくわかりますが、だからといって恋人さん達を襲うなんてっ。それに、その格好も最悪ですわっ!」
 邪魔にならないように隠れていたイバラ・アオ(ブルーリボン・b34864)も出てきたが、ゴーストの姿を見て嫌悪感を示した。
 レディに対して、その姿はまったく失礼である。
 何があって、あのような姿のゴーストが生み出されたのかはわかるが……おぞましき視覚的暴力を振りまく、その姿は何とかならなかったものか。
「これは……予想外ってやつかなー。もちろん、悪い方向に」
 如月・式(天性のヘタレ・b27275)もゴーストの姿に眉を顰めた。
 話を聞いてある程度は想像していたものの……実際に目の当たりにすると、やはりキツい。
 これが変態と呼ばれる存在。
 もしも彼女がいたとして、こんなのがデート中に現れたら……式は拳を強く握る。
「どうして、こんな格好で出てくるのかな。とっても迷惑だよね」
 エルム・レガート(パートタイム雪女・b39299)も、お怒りの様子だった。
「本物のサンタさんがあんなの見て、機嫌悪くして帰っちゃったらプレゼントもらえなくなるよ!」
 アレに人権なし……と、いうことで、思いっきりやらせていただきましょう。
 能力者達は武器を握り締めた。

●ベリー、クルシミマス
「偽装カップルで、演技だとわかっていても、やっぱり妬ましいぜ」
 離れた場所で待機していた的中・撃太(的中屋・b34653)が姿を現す。
 俺がやればよかったか……そう思いつつ、イグニッション。
「スケちゃん、あれがヘンタイさんだってー」
 言乃葉・伝(元気印なたくあん娘・b02161)も、ゴーストが現れたのを確認するとイグニッションし、スカルサムライの多助さんと共に木陰から出てきた。
 小学生の女の子が見るべきモノではないが……それでも、ゴーストだから戦わなくてはならない。
 つくづく、能力者とは大変であると思ってしまうが、意外と彼女は楽しげにしていた。
「これ以上、恋人さん達にイタズラされても困るから、ボコりにいくよー」
 伝は多助さんと合体し、己を高めた。
「やれやれ、何ておもしろ……もとい、ヒドイ変態だね」
 赤藤・歩夢(夢謡い・b35721)は、腕を組みながらゴーストを見ている。
 ゴーストはガチムチなマッチョでなかったのがある意味、救いだった。
 能力者にしても、こんなのを見てしまった運命予報士にも。
「……ヒドイにも程があるな。女が見るようなものではない」
 風深・翼(幻葬の蒼き硝翼・b43787)もイグニッションし、その存在に対する怒りを表現するかの如く、魔狼のオーラを発現させる。
 その間、ゴーストに近づいたのはパーン・イッツァーン(さまよう鎧っぽい魔狼騎士・b18241)。
「まるで、昔の俺を見てるようだが……お前には足りない。何もかもが足りない!」
 パーンとゴーストの間で何やら、やりとりがあったようだが、真偽は不明である。
 とりあえず、言いがかりをつけている模様だった。
 そうしてる間に、新たなゴーストの存在が確認された。
「あれがトナカイ?」
 シャレルが疑問の声をあげる。
 変態はサンタクロース、ということで、おそらくはトナカイのイメージなのだろうが……。
 パンツ一丁で全身を茶色で塗り、頭は馬の被り物という安っぽい姿。
 トナカイ、というには大きな疑問符がつく。
「冒涜ですっ。サンタさんとトナカイさんにひざまずいてあやまりなさいっ」
 イバラは感情的だった。
 本人は後に「イバラ、いつもはもっと大人っぽくて素敵なレディです!」と語っているが、やはりゴーストがそのような、とんでもない姿だからなのだろう。
 ゴーストといえど、小学生の女の子が変態なんかを見てしまったら……仕方あるまい。
 リフレクトコアを召喚し、おしおきである。
「ある意味、この光景が悪夢といえそうだけど……」
 歩夢はバリアで仲間を包み込む。
「でも、そんなこといったらナイトメアが怒りそうだよ」
 支配したナイトメアさんはどう思っているだろう……それは、知る由もない。
「子供達と僕の夢を壊すなあ!」
 戦況が動いたようだ。
 玲樹の荒立った声で、夜の冷たく澄んだ空気が震える。
 彼の視線の先にあるのはトナカイゴースト。
 まずは、こいつらから徹底的にボコっていく。
「悪いことしたら、めーなんだよー」
 伝の放った気の塊がトナカイゴーストにぶつかり、玲樹は魔眼で睨みつけて苦しめていく。
「……近づけば近づくほど、醜悪だな」
 翼はそのトナカイゴーストへ接近する間に、ため息交じりの愚痴をこぼす。
 こんな醜い存在など近づきたくはないが、倒さなければ被害が出る。
 まさに、二重災害。
 ならば、さっさと始末したほうがいい。
「……早々に消えてもらおうか!」
 翼、そして、シャレルがトナカイゴーストを蹴りつけていく。
 それは、もう、感情をぶつけるかのように、思いっきり蹴り倒す二人。
「悪いが、今日の俺は虫の居所が悪い……斬らせてもらう」
 女性陣によって袋叩きにされてる感のあるトナカイゴーストへ、パーンが斬り込んでいった。
 やり方がスマートじゃない……何か思い当たる節はあるが、カップルを傷つけるなど言語道断。
 大上段に振り上げた長剣をトナカイゴーストへ、気合と共に斬り下ろす。
「変態なんかに手加減はいらないねー。本当ならグーで思いっきり殴り飛ばしたいけど……」
 式も日本刀で斬りつけていく。
 二人の斬撃、そして、漆黒の瘴気がトナカイゴーストから体力を奪っていった。
「お前らが生前抱いていたであろう感情は、身にしみてわかる気がする」
 撃太はギンギンパワーZをグビッと一気に飲み干した。
「だからこそ、俺の手で葬ってやりたいんだ!」
 宙に素早く描かれたイラストが魂を持ったかのように、トナカイゴーストへぶつかっていく。
 悲鳴をあげ、崩れ落ちた。
 一体は倒したが、まだまだ敵はいる。
 もう片方のトナカイゴーストが暴走し、周囲の能力者達を殴り倒していく。
 そして、サンタゴーストがプレゼント袋から箱を取り出して……。
『ベリー、クルシミマース!』
 それを投げつけた。

 ――ドーン☆

 大・爆・発☆
「うー、こんなプレゼントいらないー」
 伝が目を回した。
 凶悪なプレゼントである。
 小学生がこんな攻撃を受けたら、トラウマになりそうだ。
「前の人、大丈夫? すぐに癒してあげるよ」
 エルムの支援を受け、翼は全快した。
「……ありがたい……けど……いや、なんでもない」
 できれば、後ろに下がって、自らの力で回復したかったなんて、これっぽっちも思ってはいない。
 ありがたい支援を得て、再び変態ゴーストに立ち向かわなければ……あれ、目から汗が。
「がっ、がんばってくださいませっ」
 イバラもシャレルへ癒しの護符を投げつけた。
 まだまだ、持ち堪えれそうである。
 できれば、精神的支援もあればと思うのは贅沢だろうか。
「好き勝手に暴れるのはトナカイらしくないね。おとなしくしたらどうかな」
 歩夢の投げ放った蜘蛛の糸が、暴れるトナカイゴーストを絡め取った。
 その隙に、翼が再び超高速のキックを見舞う。
 続けて、他の能力者達も一斉に飛び掛り、フルボッコ。
 ボコ、バキ、ドスン、ズッカーン!
 壮絶な効果音と舞い散る砂煙。
 視界が晴れると、地面には馬頭の変態がピクピクしながら倒れていた。
「次はお前の首だ」
 パーンが長剣をサンタゴーストに向けた。
 すると、サンタゴーストはニヤリと不敵な笑みを浮かべ、また袋をゴソゴソと漁りだす。
「つ、次はなんだっ!」
 撃太が叫ぶ。
 そして、一斉に逃げ出す能力者達。
 だが、それをあざ笑うかのようにサンタゴーストは、能力者の固まりに向けて、それを投げつけた。

 ――ボン☆

 爆発と共に周囲に撒き散る大量の紙テープのようなもの。
「わっ! なにこれ!」
 蜘蛛の糸のように絡み付いてくるテープ。
 その餌食になったシャレルは、ジタバタして振りほどこうとするも、逃げれない。
「そーゆーときは、ボクにおまかせ〜」
 エルムの祈りを込めた舞により、シャレルは自由となった。
 怒りの矛先がサンタゴーストに向けられる。
「よくもやったね!? お星様になれーっ!」
 シャレルの強烈なアッパーが、サンタゴーストの顎を砕いた。
「そんなの、僕が知っているサンタさんじゃなーい!」
 玲樹のクルシミマスな思いをたっぷりと込めた魔眼が突き刺さる。
 その怨念ともいうべき思いは、サンタゴーストへ毒というステキなプレゼントを贈る。
「サンタとは、こういうものだ!」
 撃太は理想のサンタ像のイラストを描いた。
 夜に煙突から入って、子供が用意した靴下にプレゼントを入れる姿。
「次に生まれてくる時は、こういうサンタになるんだぜ」
「素手の変わりじゃ! これでもくらえぃ!」
 イラストがぶつかり、式は影の腕を伸ばしてグーで思いっきりぶん殴る。
 影の腕は、ダウンしたサンタゴーストの首を持って起こすと、顔面を往復ビンタでビシバシ叩く。
「恋人さん達の幸せな時間と、子供達の夢を壊さないで下さいっ」
 イバラは両手に集めた光を伸ばし、それをサンタゴーストへ思いっきり投げつけた。
 輝く穂先が、その体を貫く。
「……どこまでもおぞましい奴だ」
 地面に座り込んだサンタゴーストの顔面に翼の蹴りが直撃した。
 大股を開いてダウンするサンタゴーストへ、ナイトメアが突撃。
「こんなのは、さすがに見たくないな」
 歩夢は目を背けた。
 サンタゴーストのものすごい悲鳴が聞こえる。
 ナイトメアがどこを踏みつけていったのかは、よくわからないが。
「……そーゆー事するから恋人さん作れないんじゃないかなぁ」
 ぽそり、と小さくつぶやいた伝が放った気が、サンタゴーストへクリティカルヒット。
 当然、一番効く場所に命中したわけだが……パンツ一丁で悶絶するサンタゴーストの姿など見たくもないし、どこに当たったかなんて気にもしない。
 凄まじい断末魔の声が響き、サンタゴーストは消滅した。

●それから
 パーンは月を見上げながら、拳を握り、何やらボソッとつぶやいていた。
 戦いは終わり、平穏な時が戻る。
「彼女いなくて悲しかったのかなー……?」
 式がゴーストのいた場所を見つめながら考えた。
「……おそらくは、生前の思いがそうさせたのだろう」
 翼も同じようなことを思っていた。
 その無念を残して死んだ者の思念が、ゴーストとなったのだろうか。
 だとすれば……まだ、潜在的にその思念が存在し、同じようなゴーストがまた現れるかもしれない。
 ……いや、何となく、そう思っただけだ。
「さーて、ここからもお楽しみだね♪」
 ワクワク……エルムは木の後ろに隠れながら、撃太の行動を見学している。
 撃太は気晴らしのために、女性陣へデートの申し込みをおこなっていた。
「デート? それって美味しいのですか?」
「何それ? ボクしーらない」
「ぼくは、デートよりもパーティの方がいいね」
「……的中さん、年下スキー?」
 玉砕だった。
 地面に両手と膝をつき、愕然とする撃太。
「しんぐるへ〜る、べり〜くるしみま〜す……」
 今年も独りで過ごすイヴの夜。
「ある意味強敵だった。僕も一歩間違えたら、ああなってしまうだろうか」
 玲樹はイルミネーションを眺めながら、物思いにふけていた。
 アレみたいなゴースト化予備軍は多いのかもしれない。
 そうならないようにがんばらないと……玲樹をはじめ、孤高の戦士達は誓いをたてるのだった。

 ――来年こそは……。


マスター:えりあす 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2008/12/24
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冒険結果:成功!
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