<リプレイ>
●溢れる光の下 聖なる夜の前日、その街は光に溢れていた。 どこもかしこも、イルミネーションの光で溢れかえり、その中にそびえ立つ超高層ビルの窓には全て光が灯されている。 今日は特別な1日。 学園のクリスマスパーティーで疲れたけど、ここに来ればそんな事を忘れてしまう。 愛用のカメラ片手に景綱は、今日のこの特別な風景を写真に納めようと、クイーンズパークを歩いていく。 綺麗な光の大洪水。 光の瞬きに吐息をはき出す真湖。結構楽しみにしてやって来たのだけれども、今日はどこもかしこもカップルで一杯。自然と一人でいるのが侘しくなってくる。仕方ないな。と、今日は諦めて帰る事にした。
大好きな唯一と一緒に光の中を歩く朔夜は、とてもうれしくて飛び跳ねる様に歩きはしゃいでいた。 「スッゴイね! キラキラで……光のシャワーみたいだっ!」 「見応えのある…綺麗な景色だな」 光の中、くるくる回る朔夜は、唯一には光のドレスを纏った妖精の様に見えて、思わず呟いてしまう。 「ちょーキレー! 楽しいよっ……っ、くしゅ」 「雪の妖精みたいだ……っと、寒いのか?」 「あー…ちょーっと寒い、カモ。でも、もーちょっと遊ぶ!」 「ん…。サクヤ、ちょっとこっち来てくれるか?」 「うぃ? なーにー?」 「…捕まえた♪ ……これなら、寒くないだろ?」 自分の前にいる朔夜を呼び、自分の方へと手招きする。無邪気に駆け寄ってきた彼女を自分のコートの中に包み込んだ唯一。その突然の出来事に目を瞬かせる朔夜だが、直ぐに満面の笑みになり彼の腕の中、大きく頷く。 「うんっ暖かいのー。ぬっくぬくー♪」 「…ん♪ ……サクヤ、大好きだよ…」 「ひゃっ! ん、うん……サクヤも、ユーイチのコト、ダイスキなのよぅ!」 近づいた体と体。直ぐそこに感じられる相手の温もり、唯一は朔夜の耳元に唇寄せて囁く言葉と一緒に、きつく彼女の体を抱きしめる。それにはやっぱり朔夜は驚くけれども、とても幸せそうな笑顔で彼の腕をぎゅっと抱き返す。
「さすがに寒いな」 「あったかなのです〜♪」 「風邪引いたら、正月を楽しく過ごせないからな?だからだぞ」 カイルがエルの体を抱き寄せる。それにエルは自然に彼の体に頭を預け、買って貰った缶のココアを自分の頬そして、カイルの頬へと宛てて笑うエルに、カイルは何かと理由を付けてしまう。こんな理由なんていらないくらい彼女の事を自然に抱けたらいいのにと思うけど。 目の前に広がる光の海。 どこもかしこも今日だけ光り輝く。 「カイルんみてみて、綺麗なのです〜!」 「綺麗だな」 寄り添い合う体と体、エルの顔は自然とカイルの方を向く。ちゃんと彼が近くにいるのを分っているのに、それでも何故だか確認してしまう。 向けられたエルの笑顔に言葉を返すカイル。 彼女のその凄く嬉しそうな笑顔に、自分の顔も綻んでしまうのが分るけど、カイルの言葉が彼女へと向けたものなのか、それともこの夜景へと向けたものなのか分らない一言。 「素敵です」 だからエルも、たった一言を返す。
クリスマスに告白し、今夜は恋人同士としての初デートの終凪と雪那。 今まで見てきたどの夜景よりも綺麗だと思うのは、恋人同士になったからだろうか、なんて考えれば自然と雪那の頬に紅が差す。 隣を見れば凄く可愛い女の子がいる。しかも自分だけに笑いかけてくれる。なんて幸せなのだろう。 こうすれば寒くないと終凪が言うままに、雪那は終凪の言うとおり彼の腕に自分の腕を絡ませて、体を寄せ合い歩いていく。嬉しいのに、とても緊張して、でも嬉しくて、恥ずかしくて、彼の存在を近くに感じとれるこの瞬間瞬間が愛しい。 「綺麗ね」 「だって…俺としては夜景より雪那の方が…綺麗だし、ずっと見ていたい対象」 「…え?夜景より私の方が綺麗って…も、もう、何を変な事言ってるのよ…」 夜景を見ていた雪那が終凪の方に視線を向ければ、夜景ではなくずっと雪那を見ていた彼と視線が合う。聞こえる言葉は直ぐそこで、知らずのうちに頬が赤く染まり、恥ずかしさからか、絡め合った腕、ぎゅっと彼の腕に更に自分の体を寄せてみる。雪那がくっつくと、腕から彼女の柔らかい胸の感触が伝わり、すると今度は終凪の方が赤くなっている。
御守は後ろにいる直矢を振り返る。 彼には3人もの彼女が居る。わかっているけれども、やっぱりどこかで彼を独占したいと思ってしまう。 ――ジェラシーかな。 浮かび上がる少し寂しげな笑み。それを打ち消す様に、彼女はその場をくるくるっと回ってみせる。 「わぁ綺麗ーっ♪ 四堂さんも光に包まれてるみたーい♪」 「ああ、綺麗だな♪ ここまで来た甲斐もあったな」 はしゃぐ声を上げる御守を見守る直矢。今日だけの特別な光の海 「……ほら? こうすると、暖かいだろ?」 「…四堂さん暖かい…体も心も…えへへ………あたし、最近思うの。四堂さんはやっぱりカレンが合ってるんじゃないかなーって…」 寒がる御守の体を後ろから優しく抱きしめる直矢。そのまま御守は俯く様にして心の中の寂しさを言葉にしていく。 その言葉に直矢は直ぐに答える事が出来ずにいた。 「……俺は、誰が合っていないとか思ってないぜ」 漸く告げた言葉。その後に腕の中の彼女を抱く腕に力を込める。 「……今の俺にできるのは、精一杯で…御守の傍に居てあげる…だけかな? でも……俺の存在が重荷になっているなら、いつでも言ってくれな?」 より近くなった体と体。直矢は御守のッ身元で囁き続ける。彼女を護ってやりたい、彼女の力になりたいと。
今日ばかりは綺麗に着飾った日本丸。 その前でココアで乾杯する瑞鳳と兇。 「クリパお疲れー」 「こうやって光の洪水に包まれてるとクリスマス終わるのが惜しくなるな」 プレゼント飾ったり、勉強したり、ダンスしたり……キスしたり。 今年は沢山、兇と一緒に過ごせてとても嬉しかった。今日の出来事を思い出す度に、そのひとつひとつが幸せの欠片で、自然と頬が緩んでしまう。 その時間ももう少しで終わりを告げようとしてるのが分かるから、瑞鳳は兇の身体にもたれかかる。 その感触に気がついた兇が、彼女の長い髪の毛に指を絡ませ彼女の頭を撫でる。 「二人で一緒にいれることがこんなに嬉しいなんてなぁ…」 だから彼女の言うとおり、このまま終わってしまうのが惜しい。 「イルミネーションが消えたら、この幸せ気分も消えそーな感じしなくね? ヤドリギの下でしたように…この幸せが消えないお呪い、してもらってもいい」 「けどこの幸せな気分が消えるのは嫌だなー…。だからもう一度、お呪いするとも」 身体を預けたまま、視線を上に向ける彼女の瞳が静かに閉じる。それにもちろん彼も答える。 もう一度。 これで消えない。 重なる唇。 優しい感触。 来年も、その次の年も、ずっとずっとその先も。 一緒に、沢山幸せになっていこう。 そうして、優しく相手の指に自分の指を絡ませた。
●静かに煌くその中で 誕生日に貰った片眼鏡をかけて上機嫌の杏夜と、杏夜から貰った黒マフラーと黒に赤が絡みつくような模様のリボンを身に纏った柳は、二人並んでドッグヤードガーデンの光の階段を眺めていた。 「すごいな。こんなキレイなもんだとは思わなかった」 「すっごく似合ってるよ♪ さすが柳、可愛いね♪」 目の前にはイルミネーション。 さすが万単位にもなると、輝き方が違うと柳が目を細めていると、杏夜の言葉が聞こえ思わず、瞳を瞬かせた。 恋人同士なのだから、ここでいちゃついたりするのだろうけれども、自分にはそんな感情が抜け落ちているらしいと、杏夜の方を見て笑う。 「寒がりの私には少しキツイ」 「寒い? じゃあこっちきて♪」 冬の夜の寒さは堪えるなと柳がこぼすと、杏夜が彼女の肩を抱きそのまま抱き寄せる。 二人の間になくなった空間。 寄り添う影と影。 「これは館に帰るまでくっついてたほうが良さそうだな」 そのまま杏夜の身体に柳が自分の身体を預けて、静かに瞳を閉じる。 「それにしても綺麗だ♪ 盛大〜…」 寄り添う彼女の身体を優しく抱きとめ、イルミネーションを見上げる。彼女から言葉は返ってこなかったけど、静かに頷く感触が伝わってきた。
ナビオス横浜周辺は、駅から少し離れていることもあってか、静かだった。 ここのイルミネーションも素敵だが、ここから駅の方向を見ると宝石箱をひっくり返した様に光が煌いていた。 「綺麗…!」 「さ、寒いねえ」 「…くっついてれば暖かいよね?」 「ね? あ、暖かいでしょ?」 「ん、ちょっと屈んで? 一緒に巻こうよ」 志摩が桜木町の駅の方を見て声を上げる。一面の光はとても綺麗だけど、冬の寒さはやぱり堪える。だから重太郎が志摩の肩を優しく抱き、プレゼントのマフラーを彼女の首に巻く。そのマフラーが長いことに気がついた志摩は一緒にマフラーに彼と包まろうと、彼の首にもマフラーをかける。 すると重太郎が近くなった志摩の身体を後ろから抱きしめる。 「これ、今日の記念になるかなあ?」 「ひ、光に溢れたこ、この場所で、このランプが、一番輝いてい、いるね」 切欠を見つけた志摩は重太郎へのプレゼントを取り出す。包みの中には桔梗を模したランプが入っていて、嬉しそうに重太郎はすぐにランプへと火を灯す。 「あ…ち、違うな。い、一番輝いてるのは志摩の笑顔だね」 「この景色、忘れないよ」 「絶対にわ、忘れないよ」 「またここに来ようね!これはその約束の印、ね?」 光の灯ったランプを見てから重太郎が、ほんの少しだけ志摩を抱く力を強めて、耳元で囁く。キラキラしてるのは彼女の笑顔。 忘れる事なんてないのは分かっている。 多分、口実が欲しいだけ。 志摩がマフラーを引っ張り、重太郎の顔が下がってくるとそのまま顎を上げて、彼の唇に自分の唇を重ねたのは一瞬。だけど直ぐ後に重太郎からのキスが待っていた。 また一緒に来ようね。
まだ唇には相手の感触が残っている。 指で触れてみては分からないけれども、感じ取ることは出来る。 此処にきたのは、その火照りを冷ますためなのか……それとも……。 分かりきった答え。 ただ一緒に相手と長い時間を過ごしたいだけ。 もう少し、静かな時間を過ごして、相手の想いを一番近くで感じたいから。 佳奈芽の方から双翼の腕を取り、そのまま絡めた。 双翼の反応も気になるけど、それよりも自分の頬が赤いことが分かる。 「もうちょっとだけ、こうしていてもいいか?」 双翼が佳奈芽の身体に自分の身体を寄せる。 聞こえた言葉に、佳奈芽は彼の腕に顔をうずめて頷いた。 恋人たちの夜はふけていく。
「光の洪水…」 「星の海みたいだね…」 紫空がイルミネーションの方へと両腕を伸ばす。 すぐそこの光が宝石に見えて、掴み取れてしまいそうな気がしてしまう。 柾世は宝石を掴めなかった紫空の手をとる。 「最後のクリスマスだな…」 「…あと少しで卒業か」 「でも、最初のクリスマスだよな…」 友達との日々も、互いに想いを通じ合わせた日も……。 全ての事が愛しい日々。 想いが通じ合ったのは、クリスマスを過ぎてからの頃だったから、今年は恋人ととして過ごす初めてのクリスマス。 「去年は2人でキャンドルを見に行ったんだったな…」 「卒業しても…ずっと傍に、いてくれる…?」 「…卒業後も、その先もずっと一緒に」 柾世の言葉に彼を見上げる紫空。 ないとは思えども、よぎる小さな不安。彼女の事は分かっているから、柾世が繋いだ手に力を込める。 そうすると直ぐに紫空に浮かぶ小さな笑み。 去年与えてくれた喜びを今年は自分から柾世へと伝えたい。 「メリークリスマス…柾世、大好き」 「メリークリスマス……好きだよ、紫空」 言葉にして、形にして……。 紫空の寂しさは、柾世からの口付けで吹き飛んでいく。
恋人ができると、クリスマスはこんなにも待ち遠しい日になるものだろうか。 子どものように指折り数えたくなるほど。 待ちに待った日はとてもすばらしいもので、愛と幸せに溢れていた。 目の前に広がるイルミネーション、雛はその宝石を触ろうと指先を伸ばしてみる。 「わぁ…綺麗」 光の中、伸ばした自分の指に嵌められた指輪の、ピンクダイヤモンドがどの光の宝石よりもとても輝いて見えて、それだけで嬉しくなるから、雛の顔には自然ととても幸せそうな笑みが浮かぶ。 「もっと近くで…俺と同じ目線で見てみる?」 彼女の答えを待つことなく、チャールズは雛の身体を抱き上げ、すぐそこへと近くなった彼女の頬へと愛しげに口付けをひとつ落とす。 「綺麗な光だね。雛も凄く綺麗だよ」 「ありがとう…」 近くなった互いの身体と身体。 感じる相手の存在。 その全てが愛しく、深く相手の事を感じることが出来る。 チャールズは想いを真剣に言葉に乗せたけれども、その気恥ずかしさから、頬すこし朱に染めて視線を彼女から、光の海へと向ける。 だから今度は赤い頬のままの雛が、彼の頬へと口付けを返す。 思いは同じ、愛しい想いを沢山抱えて、共に歩く道は今日見た、風景と同じくらいキラキラ輝いている。
妙に距離がある深龍と紅吏。 その理由。 さっきキスされたから。 心臓が止まるかと思った紅吏は、無意識のうちに深龍を警戒し、そんな彼女に少しだけ困ってしまう深龍。 会話の切欠さえ見失ってしまいそうになる。 「身につけられるものを選んだの…」 けどその切欠を作ったのは紅吏。 彼へと選んだプレゼントを渡す。選んだシルバーのイヤーカフスには紅吏の誕生石をあしらった物。 「…少しでも私の事を想ってて欲しいから…」 呟くような囁くような、静かでなければかき消されてしまいそうな紅吏の言葉。 それに嬉しそうな笑みを浮かべた深龍が、うつむき加減の彼女の顔を覗き込む。 「ありがとう。これは俺からのプレゼント」 貴女を護ると祈りを込めて、深龍が紅吏の首にクロスのネックレスをかける。しかしその間、紅吏の身体は硬くなったまま。そのまま離れて、向こうでコーヒーでもとなったときだった。 「あ、あの。りゅー君……?」 「無理にというつもりはありませんよ」 手なら大丈夫ですよねと、確認をとった後、深龍は紅吏の手をとり歩き出す。 ゆっくりと……。
クイーンズパーク。日本丸。ナビオス横浜。 イルミネーションでひっくりかえった、みなとみらいを愛用のデジカメで収めていく克乙。 「乙姫と一緒なら良かったのですが…」 けれどもここに訪れる人の多さを見れば、こなくて良かったのかもしれないと思い直す。
今日1日だけの光の大洪水。 今日だけの特別。 終わってしまうのは寂しいけれども、また来年も一緒に。 来年も、その次も、そのずっとずっと先も……。 待っているのはこの光のようにキラキラしたものばかり。
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参加者:27人
作成日:2009/01/10
得票数:楽しい1
ハートフル3
ロマンティック12
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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