≪町外れの古屋敷≫真っ白な独り者


<オープニング>


 雪遊び体験ツアーに参加した一行が訪れたのはとある雪山。
「わーい、雪がいっぱいだー」
 早速走り回る者もあれば。
「えーと、かまくらを作って、中でロッジで自分たちで調理したもの食べたり、キャンドルの明かりを中で灯して外の景色を楽しんだりできますって」
 パンフレット読み上げる者もあり。
「広場では雪合戦とかそり遊びも出来るんだったよね、盛りだくさんだ!」
 と、いても立ってもいられないほど盛り上がる者もいて。
「盛りだくさんついでにこれも」
 風見・玲樹(の弱点は虫・b00256)が一枚の写真を見せる。
「え、何? この写真。大きい切り株……あ、これ!」
 写真には白い影が、明らかに残留思念。
 玲樹が説明する。
「前に友達がここに来た時にとった写真なんだけど、あそこに森になってるところがあるだろ、普段は誰も入らないような鬱蒼とした、森なんだって、で、あそこを少し入ったところに大きい切り株があって、そこで撮ったらしいんだ」
 一同はもしやと身構える。
「だからさ、後で自由時間に退治に行こうよ」
 あー、やっぱり。
「ま、仕方ない、放っておくわけにはいかないしな」
 皆を見回しながら玲樹は続ける。
「だからさ、今はツアーを楽しんで、で、自由時間にさくっと退治しに行って、帰ってきたらかまくらの中から雪景色を楽しみつつのんびりする、ほら完璧なプランでしょ」
 そう言って彼はにぱっと楽天的な笑顔をみせた。

 さて、玲樹の言うとおりの楽しいひと時となるか、それとも。
 それは能力者たちの行動如何だ。


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参加者
風見・玲樹(の弱点は虫・b00256)
言乃葉・伝(元気印なたくあん娘・b02161)
葉月・さなえ(爽風の落葉繰者・b05852)
諏訪神・かずら(冠を被りしポンポーソの旋律者・b41678)
黒霧・凛(あまねく花・b41925)
真野・彼哉(鏡の向こうの自分を探して・b42877)
冷泉・香夜(水面に映る優しき銀蝶・b47140)
天岩戸・胡蝶(蒼キ胡蝶ノ夢・b47927)



<リプレイ>

●雪遊び
「ゆーきーだー! 沢山遊ぶぞー!」
 言乃葉・伝(元気印なたくあん娘・b02161)は両手を広げ元気に声をあげた。
「わぁ〜い雪だぁ〜」
 隣りで伝よりお姉さんの葉月・さなえ(爽風の落葉繰者・b05852)もはしゃぐ。
 何せ結社の面々でのお出かけは初めてだ。
「あは、ここでも服装は一緒なんだ」
 さなえが伝の姿を見て言う。口を尖らして伝が返す。
「そんなこと無いよ、雪対策にちゃんとマフラーとミトンと」
「でも、服が」
 半袖のTシャツ姿だ。
「だって東北出身だから寒さには強いんだよ」
 そういう問題なのだろうか。左隣には天岩戸・胡蝶(蒼キ胡蝶ノ夢・b47927)がいる。
「雪女ですので、本当はもっと薄着でも平気なのですが」
 和服のストール姿。あまり雪山っぽくはない、いや、むしろ雪女らしい服装とは言えるのかもしれない。
「うわー、雪だ、雪だ、えい」
 そこに雪があるのなら、丸めて人に投げつけずにはいられない。風見・玲樹(の弱点は虫・b00256)もその本能に忠実な模様。 
 自然と雪合戦へと移行する。
 ベシャ。
「やったなー、えい!」
 伝が投げ返す。
「わぁ〜面白そう。混ぜて〜」
 さなえも加わる。
「雪球作りなら私がしますよ」
 黒霧・凛(あまねく花・b41925)が請け負う。
「玲樹お兄様、こっちを向いて下さいな」
「ん?」
 胡蝶の言葉に振り向いた彼に当然のように雪球数個がどこからともなく投げつけられる。
「わふ! と、わ、わ」
 バランスを崩してそのまま仰向けに雪に倒れこむ。
 胡蝶が駆け寄ってきて言うには。
「まあ、丁度いい」
「……何が?」
「そのまま手足をバタバタさせて」
 疑問顔ながら言うとおりにしてから玲樹は助け起こされる。
 雪に残った跡はまるで羽を持った妖精の姿。
「『雪の妖精』と言いますのよ」
 どこか得意げに胡蝶が説明した。
 ベシャ。冷泉・香夜(水面に映る優しき銀蝶・b47140)の後頭部にも雪球があたる。
 彼が振り返って言う。
「転ばないよう、気を……つけて、ください……ね」 
 当てられた所を擦りながらも周囲への気配りは忘れない。
 ひとしきり雪と戯れた後はいよいよ、かまくら作り。玲樹が皆に呼びかける。
「とりあえず雪を集めるよ、それから」
「雪積んでー 固めてー 中くり貫いてー」
 伝が歌うように手順を唱える。かなりテンションが上がっている。
「皆が入れるくらいおっきなかまくらが出来るといいねー」
「集めるって、こうですか?」
 諏訪神・かずら(冠を被りしポンポーソの旋律者・b41678)がしゃがみこんで両手で雪をかき集める。その様子を見て慌てて真野・彼哉(鏡の向こうの自分を探して・b42877)が止める。
「素手だと冷たいよ、スコップ借りてくる」
 まずは雪の山を作り、それから中をくりぬく。
「へぇ〜こうやって作るんだ」
 さなえはいちいち感心する。何せ初めての経験だ。
「中に入って内側から固めるのするね」
 伝が中をのぞきこんで呟く。
「……水神様の神棚どーしよう。台作って、交通安全のお守り持ってるから飾ろうかな?」
「よし、かまくらはできたし、僕は料理作ってくるね」
 玲樹の言葉に凛も続く。
「私も温かいものを作りに」
「はーい、私も手伝う! 寒いから心身ともに温まるのがいいなぁ〜」
 料理を作るのが好きなさなえが元気よく手をあげ、弾んだ声で言う。
「何作るの? 私おしるこ食べたい〜」
 残った面々は雪で色々なものを作る。
 かずらは雪だるまに丸っこい耳をつける。
「雪熊さん」
「とっても、上手……だね」
 香夜が脇で彼女を手伝いながら言う。そんな彼がこっそり作っていたのは雪ウサギ、そっと雪熊の横に並べてみる。喜ぶかずらに恥ずかしそうに香夜が言う。
「雪うささん、作って……見たかったん、だ」
「僕、美術とか苦手で……これってウサギに見えますか……?」
 自信なげな彼哉に胡蝶が彼の雪ウサギに装飾を施す。 
「ハッパで耳をつけて南天の目を入れると……ほら」
 かわいらしい雪ウサギが出来上がった。
「ありがとう」  
「これから彼氏になる方ですもの、これぐらい何でもありませんわ」
「あ、そ、そうだね」
 胡蝶は微笑し、演技上の恋人とはいえ彼哉はどぎまぎした。
 ロッジから玲樹が戻ってきて言う。
「そろそろ行ってみようか」
 伝が答える。
「うん、ゴースト退治もしなきゃだねー」
 森に向かう途中、凛は振り返って自分たちのかまくらを見つつ言う。
「すぐ帰ってきますからね」

●戦闘
 玲樹は詠唱銀を取り出し、切り株に歩み寄る。ふと振り返る。
「凛ちゃんは近くにいてね、すぐ作戦が開始できるように」
 凛が正面を見たまま言う。
「すでに背後から視線を感じるんですが」
「勉強させてもらうね」
 さなえは興味津々だ。
 銀を掛けると素早く凛の隣りに寄り添う。
 白いもやもやした塊が実体を伴っていく。
 この雪山には寒々しい白いワンピース姿の女性。
「女に……男……」
 女は鬱陶しげに彼らを眺めやる。
 カップルっぽくするためには手でも繋いだ方がいいだろうか凛がおずおずと手を伸ばすと
 玲樹が彼女の手を取り、いきなり腕を組む。
「凛ちゃん、雪の中だけど2人でいるから暖かいよね」
「は、はい」
 凛の顔を赤らめうろたえる姿がむしろ初々しく映る。女の顔も赤くなる、怒りで。
「おーまーえーらー、死ね!」
 彼女の叫びと共に、二人の間を裂くように馬が走り抜け、凛とかずらを庇うように動いた香夜に傷を負わせる。
「初めから飛ばしてきますね」
 傷を受けた凛に。
「回復するねー」
 伝がヤドリギの祝福を用いハートマークを描く。
 あたかも玲樹と凛を祝福するかのように。
「痛いの痛いの雪の中に埋まってしまえ〜ですわ」
 かずらも自分を庇った香夜をいたわるように土蜘蛛の巫女の力で癒す。
「癇に障る連中だ!」
 霊が言葉を吐き捨てる。
 黙っていれば儚げに美しくも見えるこの地縛霊、どこで性根を曲げてしまったのか。
「こっちも反撃だよ、スケちゃん連続斬お願い」
 伝のスカルサムライが霊を切る。
 合わせてさなえが光の槍を放つ。
「よくも僕の凛ちゃんを!」
 勢いで玲樹がローリングバッシュで突撃する。
 たまらず霊は自分の身を回復させる。
 これ以上、霊が保身に回らぬよう、胡蝶たちも挑発に移る。
「彼哉さん、手を繋いでも宜しいかしら?」
 彼哉が光の槍を放った後に手を差し出し、頷く。
「うん、胡蝶さん、足元に気をつけてね」
 ぎこちない動きながらも確かに相手を思い遣った動きは霊を刺激した。
「さりげない気遣いだと?」
「私、彼哉さん大好きよ。ねぇ、私のこと愛してる?」
 胡蝶が甘い声で彼哉の耳元で囁くように、しかし霊にも届く声で言う。
「ふざけるなっ!」
 霊はブンと右腕を振ると嫉妬の炎という名の火の玉を彼哉に叩きつける。 
「っ!」
 ダメージを与えただけではなく、嫉妬の炎というだけあってそれはしつこく纏わりつく。
「どうか、御力を……」
 香夜が祖霊に呼びかけ彼哉を回復させ、重ねるように胡蝶が赦しの舞で魔炎をかき消す。
「貴方の嫉妬の炎と私達の愛の焔……どちらが熱いか、勝負です!」
 凛が霊をビシッと指差し言い切った後、すぐに横を向く。
「流石に恥ずかしすぎなんですが……」
「自信を持って。愛があれば大丈夫」
 玲樹が親指を立て根拠のない励ましをする。
「何をごちゃごちゃと」
 襲い掛かろうとする地縛霊に向き直り、叫ぶ。
「行きます、愛の紅蓮撃!」
 彼女の赤手は炎を宿し、霊に強烈な打撃を与える。
 嫉妬の炎よりもなお強い魔炎が霊を包む。
「バカな。こんな炎……」
「風よ みんなの傷を癒して」
 霊が怯んだ隙にすかさずさなえが封術状態となった凛のために、そして傷を負った面々の為に清らかな風を吹かせる。
「皆様を傷つけるのは許しませんのぉ!」
 かなえは声をあげ、後衛の位置から光の槍を放つ。
「ぐあっ!」
 そしてそれは見事に霊を貫いた。
 苦しげに己が身を掻き毟りながら、霊は一同を睨みつける。
 段々と姿は薄れ、消えようとしていく。
「恋人達なんかいなくなれ」
 霊は小さく呟いた。しかし、実際に消滅したのは彼女の方だった。

「どうして恋人同士を恨んでいたのかは判らないけれど。空へお帰りなさい……」
 胡蝶は切り株に小さな雪だるまを二つ並べて乗せた。
「ボクも。少しは寂しくないように」
 伝も雪ウサギを置く。
「僕からは祈りの舞を」
 香夜は地縛霊の女性が安らげる様に舞を捧げる
「カップルさんに嫉妬するって、以前何かあったんでしょうか、ここは寒すぎますから、これで少しでも暖かい所に行けるといいな」
 彼哉が澄んだ空を見上げて呟く。
「嫉妬心って、恐ろしいものなんですね。うん、分からないままでいたいなぁと思います」
 凛の言葉に頷きながらも玲樹は続ける。
「でも僕は霊の気持ちもちょっとわかっちゃうんだよね。僕にも本当の恋人が出来るといいなあ」

●かまくらは楽し
「よし、これでいいね」
 伝はかまくらの中に水神様の代わりに戦闘中携帯していたお守りをまつった。
 彼哉が小さく笑んで言う。
「かまくらって雪のおうちだったんですね。ぼく、大仏とか作るのかなって思ってました
 それは鎌倉。しかし彼の天然には誰もつっこめなかった。代わりに香夜がふと思い出す。
「そう……いえば、かまくら、の語源に……水神様を祭る『神の座』が転じた説が、ありましたね。この説、僕は神秘的で……好きかも、です」
「さあ、お料理運ぶよ」
 玲樹は熱いおしるこにお雑煮、暖かいうどんや醤油をつけた焼餅等和風と次々に運び入れる。 
「シャーベットも美味しいんだよね、これは外に置いとこう」
 それからケーキやキャンディーの形をしたキャンドルをガラスのホルダに入れる。可愛らしくてとかしてしまうのは一寸勿体無くもある。
「私もボルシチ作りました、あったまりますよ」
 凛が差し出す鍋は美味しそうな香りといかにも温かそうな湯気を立てる。
 皆が身を寄せ合ってかまくらの中に入る。
 かまくらと言ったらこれが定番だと伝はみかんと温かな麦茶を振舞う。
「食べるのは得意ですの!」
 かずらはそう言って、ご馳走の数々に目を輝かせた。
「かまくらって雪なのにこんなに暖かいんだ?! なんか不思議だね」
 さなえの純粋な驚きに皆も同意する。
 でも、この暖かさはもしかしたらかまくらの中だからというだけでなく。
 彼哉が満面の笑顔で言う。
「雪のおうちで皆さんとこうして一緒にご飯食べて……凄く楽しいです……!」
 この暖かさは結社の皆と一緒だからこそのものかもしれない。


マスター:八雲秋 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2009/03/06
得票数:楽しい14  カッコいい1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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