セキレイのいる風景
<オープニング>
清水さんちのおじいちゃん(79)は、早朝の散歩の途中で立ち寄る公園のベンチに座って、目の前の広場にやってくる小鳥たちに餌を与えるのが好きだった。
その小鳥とは――セキレイ。
正しくはハクセキレイと呼ばれている、水辺のある畑や市街地に生息するモノトーンの鳥。しっぽをぴこぴこと上下に振る姿が愛らしく、鳥なのになぜか地面をトトトトトトトトトトトトトトトッ、と猛ダッシュする。
おじいちゃんはその姿が面白くてたまらないらしい。
チチッ、チチッ、チチッ。
この公園を縄張りにしているのだろう。ほら、今日もまた可愛いアイツが飛んできた。
「よしよし、今日も餌をやろうなぁ」
皺だらけの顔をさらにしわくちゃにして、老人はパンくずを片手に小鳥の到着を待つ。
どっすん!
なんか物凄い重量感のある音をたてて、清水翁の背後に何かが着地した。
びっくりして振り向いた彼の瞳に映ったのは……見上げる程におっきなセキレイだったりして。
「のわぁ!?」
べしっ。
巨大セキレイの出現に思わず奇声を発した清水おじいちゃんの体は、勢い良く回転してきた小鳥のしっぽに思いっ切り弾き飛ばされて、鮮やかな朝日の空に高々と舞い上がった。
「とある自然公園に、妖獣が現れます」
教室へやってきた能力者に頭を下げてから北杜・文彦(高校生運命予報士・bn0040)は粛々と説明を始めた。
「もともとは山奥にいた妖獣が、偶然迷い込んだ人を襲って、その味を覚えてしまったのでしょう。血を求める獰猛なゴーストに変貌した彼等は、人を狙って地上に舞い降りてきました」
街中の公園にやってきた妖獣が清水という名の老人を襲う未来が見えた、と運命予報士は言う。
「つまり、おじいちゃんを助けて妖獣を倒すのが今回の任務って事だね?」
教室の窓際にいた鈴鳴・鈴蘭(高校生月のエアライダー・bn0105)の確認するような問いかけに、文彦は無言で頷いた。
清水老人はゆっくりとした速度で公園を一周し、最後に噴水を臨めるベンチに腰掛けるらしい。
文彦は自然公園の園内マップを机の上に開き、老人が歩く遊歩道のコースと噴水の位置を示した。
「老人は、ちょっとした広場になっているこの場所で小鳥に餌をやり、その仕草を眺めるのを日課としているみたいです。普段なら普通のセキレイが現れる筈なのですが、事件当日にやって来るのはセキレイの姿をした妖獣なのですから……嫌な偶然もあったものですよね」
能力者が現場に到着するのは、老人が公園内をのんびり散歩している時になる。
「まずは不自然にならないよう老人に近づき、言いくるめるなり誤魔化すなりして帰宅させるか離れた場所に避難させて下さい。方法はお任せしますが、なるべく穏便にお願いします。あまり時間をかけていると妖獣が噴水広場に到着してしまうので、何をするにしても急いだ方が良さそうです」
公園中央に位置する噴水前広場が戦闘のフィールドとなる。それなりに広く、障害物もない。早朝の公園には清水氏以外に人の気配はないので、彼さえ現場から離れてくれれば戦いに人を巻き込む心配もなくなるだろう。
「敵は巨大なセキレイの姿をした妖獣となります。そうですね……例えるなら軽自動車程度の大きさといったところでしょうか」
空から噴水前広場に舞い降りてくるこの鳥妖獣、しっぽぴこぴこ、つぶらな瞳、胸元の羽毛がフカフカしていて見た目はとても可愛いのだが、そんな事を言っている場合ではなさそうだ。
「見た目に反して獰猛ですからね、くれぐれも用心して下さい」
巨大な小鳥妖獣は全部で三体。毒を含む嘴で突く攻撃と、尻尾回転による回し蹴りみたいな殴打、加えて妖獣の分身のように見える『衝撃波』が猛ダッシュで突進して敵を薙ぎ払うといった戦法で攻めてくるという。
「鳥ですが、戦闘中に空を飛ぶ事はありません。三体は連携しつつ確実に獲物を仕留めようとしますので、気を付けて下さいね。また、不利を感じると逃げ出そうとする可能性もありますので、それも考慮しておいて下さい」
愛らしくファンシーな仕草にも惑わされない様に、と文彦は念を押した。
「このまま放置しておけばゴーストは人里で多大なる被害をもたらしますが、皆さんなら悲劇を事前に阻止する事ができます。清水さんを保護して、妖獣をきっちりと倒して来て下さい。どうぞ、よろしくお願いします」
「わかったよ。まかせておいて」
みんながんばろっ、と鈴蘭は笑顔を浮かべる。
皆さん、お気をつけて――そう言って運命予報士は静かに頭を下げた。
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参加者
シャロン・フォーブズ
(シルバーチップ・b34430)
ローズ・ブラックベリー
(黒薔薇の魔女・b36143)
来留須・京一
(道楽従属ヴァンパイア・b54059)
真中・由美
(中学生符術士・b54422)
フェリシア・ヴィトレイ
(きまぐれな野良猫・b54696)
緋色・烈人
(銀誓館の核弾頭・b55356)
如月・狩耶
(古流武術の無駄遣い斧闘士・b56011)
裏方・朝臣
(きまぐれ呪言士無頓着系・b56377)
NPC:
鈴鳴・鈴蘭
(高校生月のエアライダー・bn0105)
<リプレイ>
●おじいちゃんの受難
冷たくも爽やかな風の向こう。杖を突いた老人が、美しい朝日に照らされた遊歩道をゆっくりと歩いているのが見える。
「あの人が清水氏だね」
少し離れた場所に立つフェリシア・ヴィトレイ(きまぐれな野良猫・b54696)は、眼鏡を指で押し上げながら老人の動きを目で追った。
「よし、説得は二人に任せたぞ!」
「ああ、なるべく爺さんの気分を害さないように頑張るぜ」
緋色・烈人(銀誓館の核弾頭・b55356)の言葉に強く頷く裏方・朝臣(きまぐれ呪言士無頓着系・b56377)に、シャロン・フォーブズ(シルバーチップ・b34430)は持参した掃除道具を差し出した。
「よかったらこれ、説得力を増す小道具として持ってって。うちらは今のうちに周囲を確認しておくわ」
「特に敵の逃走経路にもなる通路の位置は、しっかりと調べておきたいですね」
妖獣に対する感情なのか、声に多少の怒りを込めながら真中・由美(中学生符術士・b54422)がシャロンの提案に同意する。
「各自の役目が終わり次第、噴水前広場で合流という形になりますね。さあ、急ぎましょう」
仲間達を促す如月・狩耶(古流武術の無駄遣い斧闘士・b56011)の言葉に迷いはない。例えどんな結果が待ち受けていても、静かにそれを受け止めたいと彼女は思う。
(「小鳥に餌をあげる心優しい老人を……救ってみせましょう」)
老人に近づく朝臣を一瞥してから、ローズ・ブラックベリー(黒薔薇の魔女・b36143)も公園の探索へ赴く仲間について駆け出した。
「あー、公園でぼけーっと小鳥眺めて過ごすのも良いなぁ……イカン、まだそんな年じゃないな」
繁みの陰に隠れた来留須・京一(道楽従属ヴァンパイア・b54059)は、自分のお気楽な発言を撤回しつつ仲間が老人に接近する様子を窺っている。
「や、お爺さん。おはようございます。早起きは気持ちいいですね」
普段使わない敬語を駆使しながら、朝臣は礼儀正しく声をかけて清水の注意を引く。見知らぬ者に話しかけられた老人は訝しげな表情を浮かべたが、公園を清掃するボランティアの学生だという彼の自己紹介を聞いて警戒心を解き、相好を崩した。
「今時なかなか感心な若者だなぁ」
しかし朝臣が手にした掃除道具に目を向けた清水は、今から噴水前広場を掃除するという彼の言葉に少し残念そうな顔になる。
「これから小鳥にパンをやりに行くつもりなんだけどな……あっ!」
それは一瞬の出来事。音もなく近づいてきた猫――フェリシアが、老人の持っていた餌袋を奪ったのだ。猫は広場とは間逆の方向へ脱兎の如く逃げて行く。
「こ……この泥棒猫!」
大きな声で待てと怒鳴るも、足腰の弱い高齢者が素早い猫を追いかけるには無理があった。朝臣は、遠ざかる猫を為す術もなく見送る事しか出来ずしょんぼりと肩を落とす老人を慰める。
「お爺さん、気落ちしないでくれよ。ほら、丁度これから掃除するから小鳥なんかもしばらく寄ってこないかもしれないしさ。一旦家に帰って餌を取ってきたらどうだい? 一息付く頃には前より綺麗な噴水前で寛げるのを保証するぜ」
パンは取り戻せそうにないし、今から清掃作業が始まるという話もあったからか、清水は仕方ないなと溜息をついた。
「……そうするか。若いの、また後でな」
彼から距離を置いた場所で猫変身を解除したフェリシアは、手にした餌袋を申し訳なさそうに見つめながら、そっと囁く。
「すまないな、ご老人。今日はちょっとだけ長く散歩をお願いするよ」
●恐怖の巨大怪鳥
少しだけ時間を遡る。
公園の確認を終えた能力者達は噴水前広場に集った。行動が迅速だったらしく、まだ妖獣は到着していない様だ。ローズは上空を見上げる。
「不意を突かれる事なく、ゴーストを迎え撃てそうですね」
二人一組で戦いに挑む作戦。各自ペアを作って配置につこうとしたのだが。
「あれ、京一やんは?」
シャロンは周囲を見回したが、作戦のパートナーである京一がいない。少し離れた位置で全体を見渡す役を担う鈴鳴・鈴蘭(高校生月のエアライダー・bn0105)が辺りに目を向けても、目的の人物は見つからなかった。
それもその筈、現在彼は別の場所で老人説得班を見守っていたりするのだ。認識に若干の相違が生じたらしい。
「探しに行っとる余裕は……なさそうやね。でかセキレイのお出ましや」
強力な魔法陣を展開しつつ、シャロンは空を仰ぐ。
チチッ、チチッチチチチ。
鳴き声を上げて迫り来る三つの姿が、噴水前広場に影を落とした。
どすどす、どっすん!
大きな音をたててベンチの後方に着陸した『小鳥』を目の当たりにした烈人は、その大きさに思わず目を見開く。
「これは、名付けて『巨大怪鳥セキレイン』ってところか?」
いや、下らない事を言っている場合ではないと彼は首を振って、思いついた愉快な名称を頭から振り払う。
「今の時点で清水翁がここに来ていないという事は、説得は成功したみたいですね」
老人の安全は確保できたと判断した由美は、妖獣めがけて素早く導眠符を放った。強力な睡魔がセキレイを捕らえる。間を置かずに狩耶が炎の蔦を生み出して、攻撃を開始しようとした二体目の鳥の自由を奪った。
「行くぜ!」
破壊力に満ちた風を身に纏った烈人は、先手必勝とばかりに『ラス・オブ・レッド』を眠る敵の体に突き立てようとした。だが――攻撃は回避され、その反動として神の風が彼の体力を限界ギリギリまで奪ってしまう。
「……!」
びゅんっ!
束縛を受けていない妖獣が間髪を容れず、脱力して地面に膝をついた烈人へ襲いかかった。尖った嘴に貫かれた烈人はあまりの激痛に意識をもぎ取られそうになったが、彼の魂がそれを許さない。力を失った筈の身体は再び僅かな活力を取り戻し、烈人はゆらりと立ち上がる。
シャロンは栄養ドリンクを彼に投げつけてから、巨大怪鳥をきっと睨み据えた。
「可愛くないから、さくっと排除!」
「同感です……もともと、あまり小鳥に良い思い出はありませんし」
でもあのフカフカしているお腹だけは触らせてもらおうかしらと思いながら、由美は白燐奏甲で烈人を癒してゆく。
『ヂヂッ!』
「くっ!」
三体による連携を崩され、怒りの声をあげて横合いから襲いかかってきたセキレイの嘴を食らった狩耶は、体を浸食する毒の不気味な感触にも怯まず、自らが縛り上げた敵めがけてフェニックスブロウを繰り出す。ローズの雷撃が魔炎に包まれた妖獣に追い討ちをかけるのと同時に、朝臣の命を受けて戦場に来ていたサキュバスの『酒匂』が、後方から魔力を秘めた口付けを放って更なるダメージを与えた。
敵が逃げる気配はまだない。鈴蘭は清らかな風を巻き起こして仲間を回復しつつ、大声で戦況を伝える。
「動けない敵が二体、でもそっちの一体が既に虫の息だから、止めを刺すなら今だよっ!」
「了解や!」
炎の蔦から逃れられないまま大きく生命力を削り取られたセキレイに、シャロンは『Kerykeion』を振り翳して容赦のない一撃を加える。放たれた雷の魔弾は妖獣の大きな体を貫いて、その姿を一瞬にして消し飛ばしてしまった。
同時に、それまで眠りに落ちていた妖獣が目を覚ます。
敵はあと二体。
●偽セキレイの最期
老人を一時帰宅させた朝臣は、フェリシア、京一と共に噴水前広場を目指して全力疾走していた。
「見えてきた!」
通路の向こうで激しく暴れ回るビッグバード。なかなかシュールな風景だ。
敵に攻撃が届く位置で止まり体勢を整える朝臣の横をすり抜けたフェリシアは、魔法陣を描きながら半ば呆れ顔で呟いた。
「かなり大きいな……このサイズで小鳥ってのは詐欺だろう」
シャロンが攻撃の手を緩めずに、遅れて駆けつけてきた京一に素早く声をかける。
「京一やん、今までどこに居たんや。心配したんやでー」
「申し訳ない、説得の成り行きを見守っていたら遅刻したっす! 今から全力で戦うっすよ」
彼はそう言うなり体を丸めて回転したかと思うと、間近まで近づいて来ていたセキレイに飛翔突撃を繰り出した。
(「マトがデカいから殴り甲斐がありそうだね」)
気絶させるには至らなかったものの、京一による正面からの強力な攻撃によって鳥は足を縺れさせ、激しくバランスを崩した。と、その時。
「向こうの鳥、何か様子が変。気をつけて!」
鈴蘭が警告を発するのと同時に、もう一方の鳥が体を震わせて寸分違わぬ姿のセキレイを生み出した――いや、違う。それは実体のない『分身』。
トトトトトトトッ、というよりドドドドドドドッと表現した方が正しい。
分身の様な衝撃波は、凄まじい速さで広場を駆け抜けた。
「きゃ!」
「危ねっ!」
横に跳躍する事によって大きな打撃から逃れた由美と烈人が、直ぐさま反撃に出る。
(「普通の小鳥が寄って来てくれないのは悲しかったけれど、今回はあまり近づいて欲しくないわね」)
由美の放った符が再び鳥を眠りの淵へと誘う。
「昔の人が言ってたぜ、目には目を……鳥には不死鳥ってな!」
接近してきた妖獣の嘴攻撃を避けた烈人は深紅のジャケットを翻しながら、フェニックスの力を宿した鋼鉄の槍を渾身の力を込めて敵の体に突き立てた。勢い良く立ち上った魔炎が、セキレイを包み込む。
「小鳥達の憩いの場を……これ以上荒らす真似はさせませんよ」
炎に苛まれて暴れ、地面を踏みにじりながら攻撃を仕掛けてくる怪鳥へ向けて、ローズは躊躇なく雷による攻撃を叩き込んだ。
「……老人のささやかな楽しみを奪おうとするとは、許し難いゴーストだな」
フェリシアは先刻餌を奪った時の老人の表情を思い出しながら、その痛みを叩きつけるかの如く妖獣へ雷の魔弾を撃ち込む。
『チチィッ!』
「清水老人が来ないうちに、早くカタをつけないといけませんね」
彼は餌を取りに帰っただけで、いずれ公園へと戻ってくる。世界結界の影響がある以上、戦いの最中に一般人がここへ近づく事はないと思うが、万が一老人が来てしまった時に盾となるつもりで公園の入口側へと移動していた狩耶は、『ハルムベルト』を握りしめて一気に妖獣との距離を縮めた。
不死鳥のオーラを宿した彼女が二体目の妖獣を薙ぎ払い、魔炎がその体を燃やし尽くした時、それまで眠っていた残りの一体が目覚めた。
そして、仲間二体が倒された事で自分の不利に気づいた巨大セキレイは。
『チチチチッ』
踵を返して颯爽と逃げ出した。
「やっぱそう来たか……当たります、ようにっ!」
それまで仲間の回復に集中していた鈴蘭は、半ば祈る様な気持ちでセキレイの足元に風を巻き起こした。この攻撃が失敗すれば体力が大幅に削られる。だが強大な力を秘めた風に包まれた彼女の心配をよそに、強烈な上昇気流は巨大な鳥を空中へと巻き上げてその動きを封じ、且つ確実な打撃を与えた。
「ラッキー♪ 良かったぁ〜」
勿論、鈴蘭が攻撃を外した時の為に複数の者が退路を断つ手段を用意していた。妖獣が逃げのびるチャンスは最初からなかったと言って良い。
安堵する鈴蘭を尻目に、能力者達は全員で足止めされた妖獣を取り囲む。
「今更逃げようだなんて、考えが甘すぎるぜ」
朝臣が呟いた呪詛の言葉が宙に浮かぶ鳥を直撃する。次いでローズとシャロン、そしてフェリシアの三人が連携して、目映い雷撃を放った。
『ヂヂ……ッ!』
苦悶の声を上げながら放ってきた鳥の衝撃波を身に浴びながらも、京一は構わずローリングバッシュで突撃して妖獣に強烈な一撃を加えてゆく。
風の呪縛から逃れたセキレイは体を回転させて反撃を試みるが、その威力は明らかに弱っている。尾による攻撃をものともせず幅広の刃を振り上げた狩耶は、妖獣に飛び掛かってフェニックスブロウを見舞った。
ぐらり、とセキレイの巨躯が傾く。
「チャンス!」
再度荒れ狂う暴風を纏って前に出た烈人は、保身を考慮せずに妖獣へ突撃した。
「これで獲ったぞ!」
神風の名を冠した技は巨大な鳥の生命力を奪い尽くし、その体を勢い良く周囲に四散させた。
最初から何もいなかったかの様に、周囲に静けさが戻ってくる。
「よぉし、退治完了! これで爺さんの老後の楽しみってやつを守る事が出来たのかな?」
「……カッコ良いよなぁ」
烈人を褒め称える京一の横で、由美はちょっとだけ残念そうだ。
(「消える前に、フカフカな羽毛を触ってみたかったわ」)
……。
とにかくこうして、ゴーストの脅威は公園から去ったのである。
●小鳥を待つ老人
「で、掃除とかするのん?」
確かに道具はあるけれど、とシャロンはなんとなく面倒臭そうに仲間達を見回す。
「公園は綺麗にしておきましょうか……」
ローズが周囲に落ちている空き缶をてきぱきと拾い始めた。立つ鳥跡を濁さずですね、とゴミを集めてゆく由美を手伝いながら空を仰いだ狩耶は、
「今度は普通のセキレイに生まれ変われるといいね」
と呟いた。それを聞いた朝臣も掃除の手を止めて、今度は爺さんから餌を貰えるような鳥になれよと鳥達の為に祈りを捧げる。
「あー、せめて戦いの痕跡くらいは消しておいた方が良いっすよね」
「せなあかんかな……あかんよね、トホホ」
状況を読んだ京一の言葉でシャロンも観念し、箒を手に取って周囲を掃き始めた。
と、そこへ。
「おお、やっとるな若人」
清水老人が近づいてきた。まるで、戦いが終わるのを待っていたかの様な登場だ。
よっこいしょとベンチに腰掛けた老人は、家から持ってきたパン屑を脇に置いて、清掃に勤しむ若者達の動向をにこにこと眺めている。
(「これでまた清水老人も、日常の様に小鳥に餌をあげる事を楽しめるでしょう」)
ローズが満足げにそう思った時、近くの繁みで猫に変身したフェリシアがひょっこりと姿を現した。餌袋を銜えているところを見ると、老人に返すつもりなのだろう。
「にゃ〜」
ベンチに上がって餌袋を置く。悪気はなかったし許して欲しいな、と仄かな期待を込めた瞳を老人に向けたフェリシアだったが。
「この猫、またパンを取る気かっ!」
小鳥を愛する者が猫を嫌う確率は高い。ましてや清水老人は既に餌袋を奪われるという被害を受けているのだ。猫がそれを返しに来たなどという発想に至らないのも無理はない。
許されそうにないと悟ったフェリシアは、一目散に逃げ去るしかなかった。
能力者達は黙ってそれを見ているしかない。
「フェリシア一人に悪役を押し付けた形になって、ちょっと申し訳なかったな」
彼女にとっては少し切ない幕切れとなってしまった。
清掃が終われば、老人の待つ本物のセキレイが舞い降りてくるだろう。
のどかな公園に、いつもと変わらない平穏な一日が訪れる。
マスター:
南七実
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参加者:8人
作成日:2009/01/12
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