こすちゅーむぷれい〜パジャマパーティーにようこそ!


<オープニング>


「な、何なんだいったい……」
 時は深夜。一夜の宿にと廃墟へ侵入した男は、沢山のヌイグルミに囲まれた天蓋付きの大きなベットがある寝室へと迷い込んでしまっていた。本来なら廃墟であり、このような空間はありえないため、男はしきりに首を捻りながら周囲を見回している。
「ん?」
「……」
 見回す最中、一人のパジャマ姿の少女がベットに座っているのが目に留まった。男は申し訳ないと謝罪しつつ、口を開き……。
「お嬢ちゃん、ここは」
「だめだよ」
 問いは、少女の紡いだ言葉によって遮られる。
「まねかねざるおきゃくさまはおかえりねがわないと、ね」
 綻ぶような微笑みを見た男は、視界が暗くなるのを感じていた。そしてそのまま意識を失い……二度と、目を覚ますことは無い。
 少女は可愛らしく笑っている。クマのヌイグルミを抱いて、体に巻きつく鎖を鳴らしながら……。

 教室にて皆を出迎えた秋月・善治(高校生運命予報士・bn0042)は、何故か浴衣に袢纏という格好だった。ちなみに色は薄めの黒である。
「皆集まったな。早速説明を始めるぞ」
 疑問を差し挟む暇は与えずに、善治は説明を開始する。
 事件が起きているのはとある住宅街の外れにある元洋館の廃墟。現れたのは特殊空間を持つ地縛霊。現在までに五名の被害者が出ており、放っておけば今後も被害が出る事が予想される。
 そうなる前に、退治しなければならない。
「それでは具体的な説明に入るぞ」
 善治は現場までの地図を渡しながら、話を進めていく。
 場所は先に説明したとおり廃墟。そこに複数人でも良いので、夜九時から九時半の間に侵入すれば特殊空間へと誘われる。
 特殊空間内は、一言で表すなら寝室。壁際の中央に天蓋付きの大きなベットがあり、周囲を様々なヌイグルミが取り囲んでいるのが特徴。灯りは十分あるため困らないが、あまり広くは無いため安全地帯は無いと思った方が良い。
 出現する地縛霊は一体。水玉模様のパジャマを着て、クマのヌイグルミを抱い黒髪の少女。高い力量を持ち、力には優れない反面特殊な力に秀でている。そして三つの特殊な攻撃方法を持つ。
 一つ目はあくびを見せる事により、視界内に納めた全ての敵を深い眠りへ誘う技。特殊な加護を砕く力もある。運が良ければ避けられるのが幸いか。
 二つ目は周囲のヌイグルミを操って四方八方に飛ばし、戦場に居る敵全てを叩く技。基礎の威力は低いが追撃の効果を持つ上に、動けない状態では避けることも難しい。
 そして……。
「三つ目は、パジャマ姿で無い者のみに放たれる」
 それは、パジャマ姿でない者一人に微笑みかけ、内から壊す技。体力が高い者でも運が悪ければ倒れるほどの威力を誇る上、非常に避けづらい。
「策にもよるが、基本的にはパジャマ姿で赴いた方が無難だろう。また、俺の今の姿や」
 善治の寝巻きらしい。
「あー……なんだ。……下着姿などが寝巻きというものも居るだろうが、それはパジャマとは認識されないので注意してくれ」
 ともあれ情報は以上。下に策を考え、事に当たる必要がある。

 説明を終えた善治は一度息を吐く。後、締めくくる為に口を開いた。
「姿としては非常にやり難い相手かもしれん。だが被害者が出ていて、これからも増える事が予想される以上、放置は絶対にできん。故に確実に倒し、帰還してくれ。吉報を待っている」

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参加者
如月・芙月(中学生符術士・b01111)
ルーベット・アキモト(混色マーブル・b22039)
焔咲・硝子(炎流灼華・b32823)
クリスティナ・ドレアム(放浪していた夢魔・b35856)
神薙・紅葉(黒き刃の紅き鞘・b36251)
サラ・モラトリアス(は今日も龍の夢を見る・b36309)
リーベ・ウンシュルト(小学生鬼畜悪魔弾術士・b37844)
三咲・春奈(高校生ファイアフォックス・b56909)



<リプレイ>

●廃墟に住まうお姫様
 住宅街のはずれにある廃墟には、風が小さな唸りを上げて吹き抜けていく。午後九時前という本来なら人々が賑わいを見せる時間帯だが、この場所は水を打ったような静けさに包まれていた。
 温もりさえも失ったように思えるこの場所に訪れたのは、明確な意志を持つ九人の能力者たち。内、クリスティナ・ドレアム(放浪していた夢魔・b35856)はひとまず……と、ドアも窓も取り払われ所々にひびすらも確認できる二階建ての廃墟を眺めていた。
 視線に込めるのは、これから出会う地縛霊の少女への想い。何が貴女を縛っているのかは知らないけれど、やっている事はあんまり感心しない。悪いけど、次に眠ってもらうのは貴女の方……そう、永遠に……と。
 クリスティナが静かな息を吐いた頃、サラ・モラトリアス(は今日も龍の夢を見る・b36309)がほうっと軽い呟きを洩らしていた。
「普通のパジャマパーティーなら大歓迎なんですけどねぇ。一度も参加したことないので気になるのですよぅ」
 今宵の少女が開くパジャマパーティーは、元の意味とはずいぶん性質の異なるもの。
「パジャマパーティーは楽しいよ。でもこのパジャマパーティーは……ダメだね」
 だからだろう。如月・芙月(中学生符術士・b01111)はサラの問いに優しく答えながらも、断罪するように語尾を強く紡いでいた。そしてそろそろ時間だから……と、皆にイグニッションを促している。かく言う彼女も、瞬時に姿を変えていた。
 中学生とは思えないほどの長身を誇る彼女を包むのは爽やかな水色パジャマ。猫さん模様が施されている様は、ボーイッシュな外見とのギャップと相成ってとても可愛らしく魅せてくれている。
「……」
 一方、先ほどまでは真っ赤な浴衣を着ていた神薙・紅葉(黒き刃の紅き鞘・b36251)。
 紅葉は元の真っ赤な浴衣とは対照的に、紺色のレディスツナギを着込んでいる。背中に白い字でウホッ、と書かれていたり、前は前でヤらないかと書かれていたりするのが特徴的。とても達筆であるのが、見たものに何らかの感情を残すだろうか。
 そんな紅葉の横には、ほぼ同じ背丈を持つ焔咲・硝子(炎流灼華・b32823)が佇んでいる。
「……寝巻き姿で戦いに赴くのも、変な気分なの……」
 小さく呟く硝子を包み込むのは、三毛猫模様が施されたネコ耳フード付きのパジャマ。ワンサイズほど大きいためか袖に手が隠れてしまっていたりする。それが肉球にも思えて、ネコ耳フードと合わさればねんねこ少女にも見えるだろう。
 思い思いの姿を象った彼らは、やがて短針が九へと辿り着いた事を知る。ならば戦う順序を整えて廃墟へと侵入し、特殊空間へと赴こう。

 廃墟に侵入した刹那、歪みだす世界。収まった頃には廃墟の様子など微塵も無く……代わりに、淡い電灯が照らし大きなベットが設置された寝室にて、水玉模様のパジャマを着てクマのヌイグルミを抱えた少女が出迎えた。
「ぱじゃまぱーてぃーへ、ようこそ」
(「ヌイグルミ、結構かわいいな。まあ、今回は武器らしいが……」)
 鈴を鳴らすように紡がれる少女の言葉ではなく周囲に散らばるヌイグルミに、そして現在の状況に意識を向けているルーベット・アキモト(混色マーブル・b22039)。
 装飾のないシンプルな紺のパジャマで臨むルーベットは、戦場の様子は情報通りであると確信。そして、ベットがあるため少女の背面は難しいが、側面は取れると判断し、宝剣に紅蓮の炎を纏わせながら駆けていく。
 ルーベットを見送るリーベ・ウンシュルト(小学生鬼畜悪魔弾術士・b37844)。彼女は着ぐるみパジャマで黒猫に扮し、真サキュバス・キュアのレンにも色違いの同様の格好、白猫に扮するよう命じながら魔法陣を描いている。
(「……羨ましい」)
 ネコにクマにイヌにウサギ、その他様々なヌイグルミが転がっているこの空間。魔法陣を描きながらも、大好きなそれらにリーベが心を奪われてしまったのは必然だっただろう。もっとも、隣で準備を行なう音を聞いたため、すぐに意識を取り戻す事ができたけれど……。
 音の主は三咲・春奈(高校生ファイアフォックス・b56909)。育ちの良い体躯をライトグリーンを基調としたベーシックなデザインのパジャマに身を包む彼女は、両手で構えるガトリングガンに黒燐蟲たちを集わせている。同時に、突入前まで浮かべていた、パジャマパーティーは良い響き、お泊り会はワクワクするっ! という意を汲んだ笑みの質を、別のものへと変えていた。相手は少女の地縛霊。被害者も出ているのだから、気を引き締めて打倒する……と。
 それは概ね、皆に共通している想いだろう。
「あそぼ、みんなであそぼっ」
 不可視の力で紅蓮を軽減した少女は、言葉と共に周囲のヌイグルミに力を込める。さすれば寝室に存在する全てのヌイグルミが宙へと浮き、パジャマパーティーへの参加を希望した能力者たちを襲いだした。
 それが、準備の時間が終わり本格的な戦いが始まった合図となる。

●ヌイグルミに包まれて眠る少女たち
 静かに輝く電灯に照らされて、ピンクを基調としたサラの衣装が軽く輝いている。胸元と裾にフリフリがついていてとても可愛らしくもみえる。けど肩が出ていて胸元が強調されていて、裾も短いいわゆるネグリジェといわれる衣装。故に、スタイルも相成ってとてもセクシーに見えるのだろう。
 そんなサラに襲い掛かったヌイグルミはネコ、そしてイヌ。二度目をとても強い衝撃として受けた彼女は、同様に追撃を受けた仲間たちも癒すために幻夢の領域を展開した。
「皆さんに癒しのフィールドをですよぅ」
 一方、今宵白一点と相成ったリューン・クリコット。とても幼いが故に、少女だらけの集団に混じってもあまり違和感のない彼は、コーン柄のパジャマの袖を伸ばしながら癒しを願い舞い踊る。
 二つの癒しが重なるなら、一度の追撃ならばほぼ全快させる事ができる。故にクリスティナは、夢魔の字を持つ枕を投げる構えを取った。
「さぁ、甘美な夢に溺れさせてあげるわっ」
 クリスティナが着込むのはサラと同様ネグリジェと呼ばれる衣装。色は白。けれども、サラのものより布地が薄いため、抜群のプロポーションを包む下着が薄っすらと透けて見える。
 一方、クリスティナが使役する真サキュバス・キュアのアルプちゃんも、同様のデザインのネグリジェを纏っていた。色は黒であるためか、スタイルこそ負けているように思えるものの、主よりもセクシーと感じられる。
 そんな二人は、心の絆で呼吸を合わせて攻撃する。アルプちゃんの投げキッスが不可視の力に弾かれた刹那、クリスティナが投擲した枕が側頭部へとヒットした。
 続いたのは、同じくレンを従えるリーベ。彼女もまたレンの投げキッスを牽制に、魔法陣越しに放った炎をぶち当てた。
「……ふあぁ……」
 しかし、魔なる炎も一瞬にしてかき消える。少女は眠そうなあくびを背後、ベットの近くに居た硝子を巻き込むように見せ、睡魔をもたらす波動を放った。
「……むー、あと……五年」
 力に抗いきれず、崩れ落ちる硝子。身を丸めて眠る姿は、場所さえ違えば健やかに眠る仔猫に見えただろう。
「ねむいよー……」
 同じく、春奈もヌイグルミに包まれながら安らかな寝息を立てていた。
 故に芙月は、力を二つ重ねる事のできる硝子を援護するために走りよる。パジャマの水色を、三毛猫模様を輝かせる淡い光を放っている白燐蟲を差し向けた。
「良い子はおねんねの時間だぜ?」
 一方、ベットの正面から攻めていた紅葉は、こちらへと意識を引きつけるために紅蓮の一撃を叩き込む。龍神の宝剣に纏わりつく紅蓮は少女にも分け与えられ、身を焼く炎を巻き上げた。
 さなかにも、リューンの舞により硝子のみが起床する。
「あそぼ、みんなであそぼっ」
 けれども、少女の取る行動はあまり変わりがなく、ヌイグルミを縦横無尽に散らばせるもの。
「……ふ、この程度」
 ルーベットは宝剣を盾にして、ヌイグルミを完全に防ぎきる。けれども仲間たちが、特に殴られて起床する形になった春奈が三つのヌイグルミを食らったため、射線上へと回りこみ何かあった時に庇う構えを取った。
 フォローし、攻撃を重ねる。それが、少女をこの地に眠らせるために一番早い方法なのだから。

●パジャマパーティーにようこそ!
 少し前まで静寂を保っていたのであろう悠久の時に取り残された寝室は、今は賑やかさに満ち溢れている。それは知らないものが見れば、聞けば戯れにも思えるもので……少女が称したパジャマパーティーという催しに、相応しい暖かさを持っていただろうか。
 もっとも、行なわれているのは戦い。地縛霊たる少女を、本当の意味で眠らせてあげるための。
 少女は再びあくびを見せ、睡魔の波動を正面へと放つ。しかし、絆の力は夢よりも深く、強い。
「ふぁ……アルプちゃん、ありがとうっ」
 目覚めたクリスティナは大切な存在にウインクして見せた後、幻夢の領域を貼りなおす。それは、癒しきれなかった仲間たちの細かな傷を完全に浚ってくれていた。
 同様にリーベもレンに起こしてもらい、再び逆巻く炎を作り出す。竜と蛇を象徴とする漆黒の杖を振るい差し向けた炎は不可視の力に弾かれてしまったものの、ある程度の衝撃は届いているはずだ。
 傷が癒されれば、後顧の憂いはあまりない。追撃への数少ない対策に、できるだけ体力を高く保つというものがあるのだから。
「いい加減休んで!」
 だから芙月は、今宵初めて少女へ一枚の符を投げつける。禍々しき力が込められた符は少女の首元へと張り付き、強き呪いを残して消えた。
「っ……」
 多大な衝撃を受けたからだろう、少女は力なく座り込む。けれども、まだ戦う意志は衰えない。
「あそぼ……一緒にあそぼっ……」
 痛々しくも聞こえる声は、ヌイグルミに命を吹き込む魔法の言葉。宙を舞うヌイグルミたちは彼らの元に殺到し、一撃、二撃と重ねていく。
「はぅぁっ、い、痛いですよぅ」
 強く受けてしまったのか、涙目で講義しているサラ。彼女は枕を抱えながら、自らを癒すため白燐蟲たちを集わせる。
「もう一つオマケにどうぞ!」
 仲間たちに傷を癒すことは任せているから、避けきったルーベットは宝剣を紅蓮で包み込む。強き衝撃を与える為に振るわれたそれは、少女の守りすらも貫き貴き炎をもたらした。
「…………時間が飛んだの?」
 殺到したヌイグルミに叩き起こされる形となった硝子は、座り込み燃え盛る少女の様子から瞬時に状況を判断。起き抜けの一撃といわんばかりに赤く染まる得物を更なる赤、紅蓮へと染め上げて、炎を灼熱へ変えんと振るう。
 もたらされた灼熱は浄化への標となり、少女は静かにベットへと倒れていく。やがて光に融け始めたのなら世界も歪み、気付けば元の世界。寒々しい風が吹き荒ぶ廃墟へと帰還していた。

 廃墟。恐らく、かつて少女の住居があった場所。
「きっと寂しかったのかしら……」
 アルプちゃんに感謝の意を込めてハグしたり頭を撫でてあげたりした後、皆と一緒にイグニッションを解いたクリスティナ。彼女は地縛霊の少女がいたであろう場所に瞳を細めて微笑みかけ、別れの言葉を投げかけていた。
「……お休みなさいなの……」
 硝子もまた、静かに眠れるといい……と、呟きと共に祈りを捧げている。
 その頃には紅葉の膝をついての黙祷も終わっていた。
「……お休みなさい、良い夜を」
 永久の眠りが、安らかである事を……。
 ……祈りを捧げる事を終えた皆。寒々しい風が吹き荒んでも、心地よく沈んだ空気はさらえない。だから、それを打ち破るかのように、春奈が元気良く提案した。
「みんなパジャマを持ってることだし、私の家でお泊り会をやりませんかっ」
 パジャマパーティーへの誘い。楽しき時の過ごし方。
「はわ、良いですねっ。とても楽しみですっ」
 元々興味を持っていたサラがいち早く賛同し、期待に満ちた視線を皆に向けている。早く早くと急かしているかのような眼差しの先には、もちろんリューンの姿も捉えていた。
「……ふあぁ。……まあ、悪くは無いか」
 気だるげにあくびをもらしながら、ルーベットも賛同の意を示している。
 彼女を始めとして反対する者は一人もおらず、一路春奈の家へ向かう事と相成った。
 楽しげに向かい始める仲間の背中を追い、話の輪に加わっている芙月。彼女の表情も弾んでいて、皆と同様パジャマパーティーをとても楽しみにしているよう……。
 ……そんな賑やかな彼らが去ったのなら、廃墟は再び沈黙に包まれる。廃墟を巡る世界が深い眠りに……もう、二度と覚まさせられる事のない安らかな眠りについたかのように。
 空に浮かぶお月様は、眠る世界を優しく見守っている。きっと少女がいた頃も。そして、これからも……。


マスター:飛翔優 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2009/01/23
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
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