Do geese see God?


<オープニング>


「ふふふ〜ん♪ 新年一発目のライブはここがいいかな」
 すでに機能を停止しているビルの六階。
 暗く、静かな空間に女がいた。
 彼女はビジュアル系ロックバンドのボーカリスト、アスタロト。
 ……と、いうのは仮の姿。
 マフラーの代わりに首へ巻きついた蛇が特徴のゴースト……リリス。
 このリリスは、新たな獲物を狩るべく、縄張りとなる場所を探していた。
 目をつけたのが、小さな廃ビルの最上階にあるクラブ……だった場所。
 営業当時から良いうわさはなく、たびたび事件があったようだ。
 喧嘩は日常茶飯事、DJもそれを煽って楽しんでいたという話すらあり、最終的に殺人事件が起きて、このクラブはクローズとなった。
 いかにも、凶悪な思念が残っていそうな場所だ。
「気に入ったわ。楽しそうじゃない」
 リリスは何本ものナイフが突き刺さったガチョウをフロアへ放り投げる。
 その周りにろうそくを立て、火をつけていく。
 まるで、怪しい儀式を行っているようだ。
「これくらい雰囲気がないと楽しめないじゃない」
 ねっ♪ その声に反応してか、フロアに爆音が鳴り響く。
 ダンスミュージック……ユーロビートだった。
 ブースに地縛霊のDJが現れてフロアを煽ると、影から這いずるように出てきたリビングデッド達がお立ち台に上り、一心不乱にパラパラを踊る。
「いい感じね。シ・ビ・レ・ル、わ♪」
 リリスは、その様子を満足そうに見ていた。
 
「え、えっと……ちょっと、やっかいなじけんなんです……」
 栗栖・優樹(小学生運命予報士・bn0182)が教室へ集まった能力者達に、ゴースト事件の内容を伝えるが……少々、彼は震えていた。
 明らかに恐怖からくる怯え、だった。
 やや、普段の事件と様子が違う。
「ゴーストは……リリスです……」
 リリス。
 厄介な相手だ。
 ヤツは能力者の所在を感知する能力を持っている。
 その能力は、自分がいただく獲物……そう、能力者、あるいは、その素質を持つ者……を見つけるため。
 そして、自分を倒しに来る能力者を察知し、危機を回避するためにある。
「このリリスが……また、わるいことをしようと……」
 リリスは「アスタロト」と名乗っている。
 この名前は、かつて存在したインデーズのビジュアル系ロックバンドのボーカリストで彼女を殺し、今はそのままそっくり入れ替わっている。
 また、とは……以前、アスタロトは能力者達の強襲を退けた。
 そして、再び能力者の資質を持った人間を集めようと画策しているらしい。
 今回、根城にしているのが、とある廃ビルの最上階にあるクラブだった場所。
 ここには地縛霊やリビングデッドといったゴースト達の存在が確認されており、彼女の知名度を生かして、ここへファンを誘き寄せ、食べてしまおうと考えてるようだ。
 万が一、能力者が来ても、これらのゴーストが守ってくれるし、アスタロトには絶好の場所なのであろう。
「リリスは……もう、手をうってるようです……はやくしないと……」
 すでにアスタロトは動いているらしく、新年初ライブという触れ込みで、このクラブに客を呼ぼうとしている。
 大々的に告知するのではなく、「うわさ」を利用し、期待を煽ると同時に正体を隠して能力者達の動きを牽制する。アスタロトはかなりの策略家であることが判明しており、こちらも相応の態勢で臨まなければ危険だろう。
「え、えっと……クラブには……」
 根城にしているクラブには地縛霊と六体のリビングデッドがいる。
 リリス自体は全く強くないが、ゴーストを扱う手腕に長けるため、用心したほうがいい。
「これが、クラブのみとりずです……」
 優樹は見取り図を広げた。

●クラブ
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 ◇□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□◎
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 □:道、および侵入可能エリア(一マスは二メートル四方)
 ■:進入不可
 ◎:非常階段
 ◇:窓

「こんなかんじです……」
 ビル自体はすでに機能を停止しており、エレベーターは動かない。
 東側にある非常階段から進入し、通路を進むと、ダンスフロアへ入る入り口がある。入り口は二つあり、中に入って西側にDJブースがある。その奥に控え室があるといった感じだ。残念ながら、ゴーストの配置はわからない。
「え、えっと……リリスは……にがしてもいいです。まずは、ほかのゴーストをやっつけてください……」
 優樹は他のゴーストを優先して倒すように指示した。
 リリス自体はたいした戦闘力もなく、仮に逃げたとしても再び力を蓄えるまでに時間が必要だろう。だが、他のゴーストを残したまま、万が一にも失敗した場合、被害は大きなものとなるのは目に見えている。
「リリスは、あたまがいいですから……きをつけてください……」
 心配そうに能力者を見つめる優樹。
 彼の不安が、リリスの狡猾さを表現しているというのは、誰しもが感じた。

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参加者
朱鴉・詩人(紅月・b00658)
穂乃村・翠(常磐の符術士・b01094)
ミライ・モリア(燈色の勇者・b01734)
飛鳥・篠舞(悠憂一笑・b02716)
テオドール・フォルクナー(白ム廃園・b16818)
高天崎・若菜(土蜘蛛の大黄龍将・b19366)
四月朔日・悠夏(闇を纏いし光に焦がれる者・b38230)
御桜・八重(花手毬・b40444)
葉霧・百(ねとげー廃人レベルマックス・b46841)
セドリック・ヘブナー(中学生魔剣士・b50715)
NPC:白河・アイリス(高校生呪言士・bn0084)




<リプレイ>

 狭い非常階段を、静かに、物音を立てぬよう、息を殺しながら、ゆっくりと進む影があった。
 ゴーストを討ちに来た能力者達だ。
 ここまで会話らしいものはなく、皆、表情は硬かった。
 以前、不利な状況に身を置きながら、能力者達の強襲を退けたというリリスが相手。
 他のゴーストを使役し、地形を最大限に利用し……その狡猾さを最大の武器として扱うゴーストだ。
 生半可な覚悟では通用しないだろう……強い緊張で息苦しい。

 すでに機能を停止したビルの六階へ侵入するには、この非常階段を利用するしかなかった。
 最上階である六階にたどり着き、狭い通路を進むと、入り口が見えてくる。
「ボク達が奥の入り口から進入します」
 先頭を行くテオドール・フォルクナー(白ム廃園・b16818)が必要最小限の言葉を小さく、素早く仲間へ伝えると、朱鴉・詩人(紅月・b00658)と共に、奥にあるもう一つの入り口へ向かった。
「どう出てくるでしょうか……」
 詩人の口が小さく震えた。
 リリスは能力者の存在を感知する能力を持っている。
 我々が侵入していることなど、すでに知っているはずだ。
 どう相手が迎え撃ってくるか、罠を仕込んでいるか……。
 それを打ち破るために、策を講じてきた。
 今はただ、それを全力で遂行するのみ。
「通路の奥には、何もありませんでした」
 セドリック・ヘブナー(中学生魔剣士・b50715)が通路の奥を覗くが、そこには運転を停止したエレベーターがあるだけだった。別段、変わったこともない。
「倒すべき敵は、全て中ということですね」
 高天崎・若菜(土蜘蛛の大黄龍将・b19366)の息は、やや荒かった。
 一生、忘れることはないであろう、あのリリス……違うとはいえ、やはり似たような存在は……。
 武器を握る手に、思わず力が入る。
 胸が熱く……血が騒ぐ。
「準備は整いました」
 覚悟も……穂乃村・翠(常磐の符術士・b01094)が呪符を握り締める。
 強力なゴーストと戦う時、必ず作戦を立てるはずだ。
 そして、仲間と協力しあうからこそ、自分達より強い相手に勝つことができる。
 たとえ、力が小さくても、うまく作戦を立てて連携すれば、能力以上の力を発揮することができるというのは、能力者なら理解できるはず。
 ……では、敵が我々のように作戦を立て、連携してきた場合は?
 答えは、体の震えが代弁してくれた。
「あとは……突入の時間を待つだけですわね……」
 一方、最初の入り口。東側の入り口にも、能力者達が待機している。
 四月朔日・悠夏(闇を纏いし光に焦がれる者・b38230)も、体が小刻みに震えていた。
 彼女だけではない。
 皆、震えていた。
 まるで、伝染したかのように。
(「どうか、わたくし達をお守りください……」)
 日本刀を握り締め、悠夏は震えの元凶を取り除こうとした。
 御桜・八重(花手毬・b40444)が呼び出した白燐蟲の淡い明かりも心強かった。
「いつでも……大丈夫」
 八重はこの震えを、心が奮い立っているからだと自分に言い聞かせる。
 決して、あの言葉を思い浮かべては……。
「私もオッケーだよー」
 口元に笑みを湛えている飛鳥・篠舞(悠憂一笑・b02716)の瞳も、その表情とは違った感情だった。
 言葉もくだけてはいるが、声はやはり震えている。
 刻々と近づく決戦の時。
 緊張も高まってきた。
 空気が張り詰めてくる。
「そろそろっすか……まさにリアルGvGってカンジっすねぇ」
 ネトゲで言うなら……葉霧・百(ねとげー廃人レベルマックス・b46841)の例えに、白河・アイリス(高校生呪言士・bn0084)が小さく首を縦に振った。
 オンラインゲームなら、どんな強いボスでも、いずれは攻略法が確立される。
 だが、対人戦となると、そうはいかない。
 戦略を練ることができる相手が、いかに強いかというのは、ある意味では理解している二人。
 リリスとの知恵比べ、負けるわけにはいかないっす……百は気を引き締めた。
「ユゥ……そろそろダッテ……」
 ミライ・モリア(燈色の勇者・b01734)が西入口班の翠から突入の合図を受けた。
 イヤホンを外し、携帯音楽プレーヤーをしまう。
 空気に電流が走った。

 ――鳥羽玉の 闇に出で来る 照る月の 光さしたる 道のけはしき

 和歌が聞こえ、光が一段と強くなった。
 白燐蟲も、より一層明るい燐光を放つ。
 勇んだ足音が、静かな廃墟に響いた。

 ――WELCOME TO YOUR DOOM!

 西入口班が突入するなり、女性の甲高い声が響いた。
 同時に音楽が流れる。
 ユーロビート。
「「「「「!!!」」」」」
 彼らの前に現れたのは……リリス、地縛霊、リビングデッド……全てのゴースト達(図1)。
「っ……!」
 詩人は言葉を失った。

●図1
 ■□□□□□□□□ ◎:左からテオドール、詩人
 ◆□□□□□□□□ ★:リリス
 ▼□□□□□□□□ ▼:地縛霊
 ■□□◆◆◆□□□ ◆:リビングデッド
 ■□□◆◆◆□□□
 ■□□□□□□□□
 ■□□□□□□□□
 ■□□□□□□□□
 ■■■■■■◎◎■

 リリスは片側に戦力を集中してきた。
 フロアへの入り口は二つある。
 西側から能力者達が来ればそのまま戦えばいいし、東側から来ても冷静に対処できる。
 戦力を分けてきたら……ラッキー。
 大きなプラスになる確率は少ないが、マイナスになることはない。
 下手に奇策を狙うより、リリスは安定性を選んだというだけのことだ。
 幸運にも、深読みしすぎた能力者達が半々に戦力を分けてきた。
 また……リリスの策に嵌ってしまうのか。
「……か、固まっているのなら、蟲の餌食です!」
「少しの間……耐えましょう」
 若菜の、セドリックの黒燐蟲が騒ぐ。
「す、すぐに向かいますわ!」
「ちょっとの時間だけ、がんばって!」
 悠夏、八重がフロアを駆け抜けた。
 中央には何本ものナイフが突き刺さったガチョウと、その周りにろうそくが立てられている。
 まるで、何かの儀式のようだった。
 百と篠舞も走った。
 ミライは通路を通り、西側へ駆けつける。
「……回復お願いするね」
 テオドールは覚悟を決め、言葉にならぬ淋漓たる意気を吐きながらリビングデッドへ襲い掛かった。

 僅かな時間であったが、戦いは苛烈を極めた。
 詩人とテオドールがリビングデッドの壁を崩そうと激しい気迫を見せ、若菜の解き放った黒燐蟲の群れが飛び交い、腐った体を貪っていく。
 悲鳴に混じり、リリスの破壊の歌が響いた。
 それを打ち消すように仲間の背中から癒しの歌が聞こえ、翠の治癒符が傷を塞ぎ、セドリックも黒燐蟲の力を仲間の武器に与えて耐え凌ぐ。
「ど、どういうことよ! 一人も倒せないなんて!」
 リリスの声が荒々しくなる。
 恐らく、東側の能力者達が到着する前に、西側の戦力を削るつもりだったのだろう。
 だが、能力者達は倒れない。
「向こうに硬いタンクを配置して正解だったのう」
 百が戦渦の中心に届く位置に入った。
「よかったー、みんな無事で!」
 篠舞は呪符を手にし、百も支援の態勢を整える。
 早期突破を狙って西側に熟練した能力者を多く配置したのが、不幸中の幸いだった。
 セドリックが回復要員となってしまったが、リビングデッドが固まっていたため、若菜の黒燐蟲の餌食になる数が多く、火力面でそれを補っていた。詩人の隙を打ち貫く素早い蹴りが一体のリビングデッドを破壊し、テオドールが突撃槍で一体を薙ぎ払うように吹き飛ばす。
 リリスは安定性を重視し、ゴーストを固めたことが、能力者側の配置・戦術と相性が悪く、結果的にマイナスとして作用した。それでも、優位性はあったが、ここを凌がれてしまったら、増援が参加し、戦力は五分となる(図2)。

●図2
 ■□□□□□□□□□□□□ ◎:左からテオドール、詩人
 ★□□□□□□□□□□□□ ◇:セドリック、八重
 ▼□□□□□□□□□□□□ ☆:悠夏、百、篠舞
 ■□□□□□□□□□□□□ ○:若菜
 ■□□◆□◆◆□□□□□□ ▽:翠、ミライ、アイリス
 ■□□◆◎◎□□□□□□□ ★:リリス
 ■□□□□□◇□□◇□□□ ▼:地縛霊
 ■□□□□□□□□☆□☆☆ ◆:リビングデッド(一体が圏外)
 ■■■■■■○□■■■■■
 □□□□□□▽▽▽□□□□

「これで、どうにかなりそうです」
 翠の声に安堵の情が混ざった。
 これで、他の手段を選ぶ余裕ができる。
 刹那。
「ち、ちょっと! アンタもなんとかしなさいよっ!」
 リリスの怒号が響き、地縛霊を蹴りつける。
 叱責を受けて、地縛霊はマイクを手に能力者達に汚い言葉を浴びせかけた。
 それに激怒したセドリックが、我を忘れて飛び出そうとする。
「ユゥ……それは、ボクが言ってあげようと思ってた言葉ダヨ……」
 だが、すぐにミライが頭を冷やす清らかな風を起こして、その怒りを静めた。
「ここから反撃ターンじゃ」
 百の投げ放った漫画原稿が乱れ舞う。
 原稿は鋭い刃となりて、リビングデッド達の腐った体を切り刻んでいく。
「残り一体です」
 詩人が開いた穴から後ろに回りこみ、ナイフで亡者の首をはねた。
 カウントダウンが始まる。
「アスタロトが逃げないように、前進するよ」
 テオドールもリリスがフロアの後方から入口へ逃げないように牽制するため、リビングデッドの後方に回る。そして、槍で背中から体を串刺しにした。
「踊るなら、あの世で踊っていてください」
 若菜の投げつけた黒燐蟲の塊がはじけ、一体のリビングデッドが崩れる。
 詩人は、テオドールに目で合図を送った。
 二人は無言でうなづくと、視線を地縛霊へ向ける。
「リリスは、まだ動かないみたいだね」
「ここは、わたくし達が抑えますわ」
 八重と悠夏が戦列に加わった。
 ほのかな光を放つ武器で八重はリビングデッドを攻め、悠夏は闇の力を湛えた刃で斬りつける。
「ここは完全に封鎖されてるから、他にリリスが逃げないように気をつけてください」
 セドリックが影の腕を伸ばし、さらに一体のリビングデッドをひねり潰した。
 リリスはまだ歌い続け、地縛霊はアナログを投げつけて前衛の能力者達を攻撃している。
「風向きは変わりましたが、気を抜かないようにお願いします」
 受けた傷を翠の治癒符が癒す。
「絶対、逃がさないからねー」
 その間、篠舞もリリスを逃がすまいと距離を詰める。
 着々とリリス包囲網は完成しつつあった(図3)。

●図3
 ■□□□□□□□□□□□□ ◎:左からテオドール、詩人、八重
 ★□□□□□□□□□□□□ △:悠夏、篠舞
 ▼□□□◆□□□□□□□□ ◇:セドリック
 ■□□◎◎□◎□□□□□□ ☆:百
 ■□□◆□□□△□△□□□ ○:若菜、アイリス
 ■□□□□□□□□□□□□ ▽:翠、ミライ
 ■□□□□□◇□□□□□□ ★:リリス
 ■□□□□□□□□□□☆□ ▼:地縛霊
 ■■■■■■○○■■■■■ ◆:リビングデッド
 □□□□□□▽▽□□□□□

「壁はもうほとんど崩れたネ。ユゥ、覚悟しちゃいなヨ」
 ミライの手にした一筋の光が、リビングデッドを貫き、元の死体へと変えた。
「ア、アンタ! ここを絶対通さないでよ!」
「逃がさないよ」
 不利を悟ったか、リリスは地縛霊を壁にし、DJブースの奥に引き下がった。
 詩人とテオドールがブース入口へ突入、一気に攻め込む。
「そこをどいてもらうよ」
 テオドールの渾身の一撃が地縛霊へ叩きつけられた。
 並のゴーストなら、間違いなく吹き飛んでるはずだが……地縛霊は耐えた。
「さすがに、一筋縄ではいきませんか」
 詩人の蹴りが、三日月の軌跡を生む。
 直撃を受け地縛霊は崩れるが、すぐに身を立て直すと、詩人へ殴りかかる。
 すでに、ゴースト達の戦力は消耗していた。
 残り二体のリビングデッドも動かなくなり、地縛霊が攻撃に晒されて消滅するまでは時間の問題。
「リリスは奥のに逃げ込んだようですわね」
 悠夏の一撃が、地縛霊を闇に葬り去った。
 気がつけば、リリスの姿はない。
「奥の部屋は控え室だっけ」
 八重が急いでブースを駆け抜け、隣にある部屋へ侵入した。
 そこには……。
 誰もいない。
「逃げられましたか」
 セドリックは開いた窓を見て、深い息を吐いた。
 近くの露出したパイプにロープが縛り付けられており、それが外に垂れ下がっている。
 これを使って逃げたのだ。
「最初から用意してたんすかね」
 百は地上まで届くロープを見てつぶやいた。
 こんなもの、咄嗟に用意できるものではない。
 リリスは、最悪の事態も考えていた。
「来る前に、ざっとビルの周りを見ておけばよかったかなー」
 篠舞はイスに腰掛けると、大きく背伸びをする。
 リリスには逃げられてしまったが、残りのゴーストは掃討し、大きな怪我をした者もおらず、無事に終えることができた。
「……ひとまずお仕事完了、としておきましょう」
 若菜の声は最後まで震えていた。
 この想いを叩きつけることができず、血は滾り続ける。
 リリス……やはり、侮れぬ存在。
「リリスを逃がしたのは残念ですが、みなさん無事でなによりです」
 翠が仲間の傷を癒す。
 逃げたとして、再びリリスが行動に出るには大きな時間がかかるだろう。
 もし、次に姿を現したときは、必ず……。
 討つ。


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参加者:10人
作成日:2009/01/27
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