友明の誕生日 〜HOT&COLD〜


<オープニング>


 正月も半ばを過ぎれば、古都鎌倉にも厳然たる冬が来る。山から吹き下ろしてくる風は骨まで凍らせるほどの冷たさを持ち、海からの風は道行く人の熱を奪って吹き過ぎる。だが空だけはいつの季節にもまして美しい青を見せ、夜ともなれば無数の宝石に飾られる。
「よっ、滑りにいこーぜ!」
 外がどんなに寒くても元気な少年というのはどこにでもいるもので。無論片岡・友明(中学生青龍拳士・bn0125)もその1人。
「わざわざ滑ってけがしたいんですか?」
 尋ねる雛森・イスカ(高校生魔剣士・bn0012)はマグカップを取り上げてのんびりと聞き返す。今日のような寒い日にはカモミール・ホットミルクがとても美味しい。
「イスカねーちゃん、スキーとかスノボだとは思わないのか?」
 呆れつつも少年は素早く自分の分のホットミルクを受け取り、お茶受けのチョコレートを掻っ攫う。
「ああ、そういうこと……お誕生日ですものね」
 1月29日は友明の誕生日。この日ばかりは彼の希望をいれて遠出することにイスカ達は前々から決めていた。もっとも少年の性格からして山紫水明を堪能するだの、お茶と花を吟味するだのいうこととは無縁だというのは判りきったことではあったのだが。
「今年ぁスケートもいーと思ったんだけどな、やっぱ大滑降は外せねー」
 スキー場の中央をぶっちぎろーぜっと息巻く少年に今岡・治子(高校生運命予報士・bn0054)は溜息を以って報いた。
「……まったく君は能天気ですね」
「なんだよー。下ってく時は落ちるみたいですげーし、飛んでるみたいなんだぞ」
 ヤマホドのライバル蹴散らしてセンター滑る快感はだな〜……、友明にしては珍しいほどの長広舌。
「滑る、下る、落ちる……おまけにセンター……」
 再び治子が頭を押さえたのは言うまでもない。
「……スキーは登ることはできないんじゃないですか?」
 聞き返すイスカに友明はうんうんと頷き、治子はみたび溜息をつく。彼女とて別に縁起を担ぐ方ではないが試験直前に滑るの落ちるのは聞きたくない。もっとも受験前の食事にトンカツがつくのも御免こうむりたいところだが。
「イスカちゃん……いえ、もういいわ。とにかくスキーね」
 諦観の境地に至った治子は新たに紅茶を淹れる準備にかかる。丁寧にポットを温めて、時間を計って……落ち着きたいときはかえって単調な作業をするに限るのだ。

「ここのは結構キビシー奴だけどさっ、コース選べば皆楽しめるしぃ〜……」
 友明が広げたパンフレットの写真は飛雪舞う急坂だった。滑り降りる時には遠くの山並みが見渡せるようだし、何よりも遮るもののない空が綺麗だ。もちろんスノーボードのコースも充実している。初心者用には山を巡る緩やかなコースが用意されているが、こちらはちょっとしたスキー散歩みたいな感覚だという。
「私はできればスキーはあまり……」
 去年適性のなさを学んで来ましたしね、と治子がいえばじゃ温泉つかってれば、と友明は笑う。
「「温泉?」」
 少女達の声が揃った。
「ここのスキー場、源泉がすぐ隣にあることでゆーめーなんだよ」
 だからどこのロッジにも温泉があるし、彼らが借り切る予定のロッジには広大な露天風呂があるという。昼間はスキー、夜は温泉。まさに至れり尽くせりだ。
「滑んないなら温泉で遊んでてもいいし、ロープウェーもあるし……」
 スキーのリフトとは別に設けられたロープウェーからは雪の山々が望めるし、この時期ならば『モンスター』と呼ばれる樹氷を幾つも見ることができる。勿論スキーのコースにもあるのだが、モンスターがずらりと並ぶ様を上から眺めるのは一興だ。晴れていれば山頂の景色は絶景という他はない。
「じゃ、昼間はスキー、夜は温泉ということで」
 もちろん友明に否やはない。昼間は目一杯雪を楽しめるし、温泉はいつでも入り放題だ。
「温泉卵とかも作れるんだよなー」
 温泉つかりながらの乾杯というのも悪くない。ただ真夜中の露天なら髪が凍ってしまうから注意が必要だ。
「でも、時々は休憩しながらね」
 健康に良い温泉でもつかりっぱなしではたまらない。時にはロビーで休憩ということも必要だろう。冷たいお茶を用意しておきますからね、と笑う治子に友明は一も二もなく頷いて。
「じゃ、友達誘ってくんなっ」
 勢いよく教室を飛び出していく少年の背を見送りながら、少女達は微笑みを交わしあう。


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参加者
NPC:片岡・友明(中学生青龍拳士・bn0125)




<リプレイ>

●白銀の峰
 雪の山肌をなぞるかの様にリフトはスキーヤー達を運んでいく。ここまでくれば雪を頂いた山並も遥か下だ。晴れた空には大地の雪が舞いあがり、片岡・友明(中学生青龍拳士・bn0125)は14歳最初の日の朝を迎えた。
「誕生日おめでとうございます、友明君」
 不意にかかった声は竜也のもの。良い1年になるようにといわれて少年もにかりと笑い返す。
「また背が伸びたんちゃう?」
 祈一郎が笑いかければ、少年はおーよと胸を張った。一歩を踏み出せば耳元に爽快な風が生まれた。少年の心にはきっと翼もあるのだろう。
「友明も、なんか、すいすい滑るな」
 雪を蹴散らして降りてくる人影を紫空は羨ましそうに出迎える。スキーのできる男はこういう時5割増程かっこいい。
「誕生日おめでと。ひとつ大人になって落ち着き……ませんよね」
 クールな友明なんて笑っちゃうけど、と彼女が言えば友明は盛大にむくれ顔。
「……なったらなったで、治子たちが寂しがりそうだ」
 柾世も笑い、一緒に紫空を鍛えてやらないかと少年を誘う。だが友明だって好んで馬に蹴られたくはない。逃げた先に待ち構えていたのはつかさと湊。
「俺らに勝ったら後で美味いもん奢っちゃる!」
 この面子が顔を揃えればいつでも勝負事だというのはいい加減お約束。
「ついでに『撫でぽふ』な挨拶も控えてやる!」
 こう言われれば引く事など言語道断。尤も「撫でぽふ禁止」が条件になっていない事に気づいてはいない点はお笑い草だが。

 うって変わって初心者コースはベタ甘の世界。教える事を口実にいちゃつくカップル達を珪は不思議そうに眺めやり。
「体勢を身体に教えていく訳だな……」
 1人納得顔の珪に主税は『あれは趣旨が違ェからな』と嘆息する。
「……触れずとも教えられるのか?」
 純真なのか天然なのか珪の返答はまた微妙。どこまで触れていいものか……主税はそんな逡巡を振り切る様に珪の腰に手を回した。
 男女の機微も微妙な空気も真と小鳥には縁がない。不慣れな少女を教えながら降りてくる様はそれこそ2羽の小鳥の様で。
「眺め、良いですよね」
 少年は足元しか見ていなかった彼女の顔をそっと上げてやる。とても綺麗ですという言葉が自分に向けられている様な気がして、小鳥の頬に本の微かに朱が昇った。
 一方エドゥアルドとマイナは橇遊び。ガキみたいなトロい遊び方すんなと口では言いつつも、しっかり付き合ってくれるところがマイナには嬉しい。どんどんスピードが増していくのは少し怖いけれど、彼の背中につかまっていれば何故か安心で。
「す、進まないわ……どうすれば」
 スバルが膝をプルプルさせれば、氷采・陸もどうしたものかとおろおろと。
「足元見てっと怖いだけだぞ」
 颯爽と降りていく友明の背を追って視線を移せば確かに山は美しい。おめでとうと声をかけると少年はストックを大きく振ってくれた。

●風の如く
「そンじゃ早速すべ……あ、イヤ。遊ぼーカナ!」
 天虹の眼下にも白い山並み。空は薄水色に果てしなく、黒いウェアに身を固めた玲紋などはさながら燕の飛ぶ如く。北国生まれの紀里恵と千羽耶のボード捌きは地元民でさえほれぼれとする程。風を切り、風とひとつになる感覚は彼らにとっても久しぶりの心地よさ。斜面の緩む麓まで光の様に降りてゆけば、そこでは初心者組も大奮闘。
「黒瀬せんせー、お手本見せて、お手本!」
 きゃあきゃあと騒ぐチロ達を相手に和彦は何度も見本を見せる。スキーとは感覚が違うねと水澄花は興味津津。もっとも正真正銘の初心者達は完全に舞いあがっていて、転げるわ雪を被るわの大騒ぎ。
「ん、花乃木さん上手い上手い……!」
 専属カメラマンまでいるものだから、はしゃぎっぷりにも拍車がかかる。ファインダー越しに追いかける表情は思いもかけない一面を教えてくれて、弥琴の心にも暖かいものが生まれてくる。寒くないかとウィルは聞くけれど、この仲間といて心が冷える事などありえない。
「そんな事より……」
 注意する間もあらばこそ、仔猫の様にころがってきた風葉に巻き込まれ、ウィルもあっという間に雪達磨。シャッターを切る軽快な音に、仲間達の笑い声が重なった。
「……将来の予行演習だと思って頑張れ、和彦先生」
 千羽耶の応援に和彦が手を振り返せば、頑張って下さいねと繭も応援しつつ、優雅にすべりぬけていく。いいなあと羨ましがるチロに教師が教えるのはとっておきの秘訣。
「百聞は一見にしかずだ。行くぜ!」
 初心者軍団の驚愕の声が遠くの山々にまでこだまする。

 ロープウェーから見下ろす景色はリフトのそれとは格が違った。モンスターと呼ばれる樹氷の森の上を通り過ぎ、遥か高みに登れば、本当に空を行くかのよう。了哉が持参したチョコは寒さでカチンと音をたてた。でも口に入れればすぐに溶けるよねと夕羽も上機嫌。今日は一杯運動して美味しくご飯を食べるんだもんね、と笑えば勿論友明にも否やはない。
「じゃ、行くかっ」
 2人のスノーボーダーと赤い橇が樹氷の森に飛び出していく。リュージュってこんな感じかなと思いを巡らせた了哉の耳に、『祝いー……尽くす!』と少年の雄叫びが聞こえてきた。
「樹氷って色々な条件が重なり合わないと出来ないらしいですね」
 滑りながら無双が説明すれば、るるは初めて目にする雪の神秘に感動しきり。ゆっくり進めば、やがてちょっとした展望台の様な岩に出た。ここからは遠く海が見えるのだと友明少年が教えてくれる。お誕生日のお祝いに無双が贈り物にとクッキーをさしだせば、じゃ早速とささやかなおやつタイムに突入し。
 ここから先は情け容赦ない上級者コース。余裕の滑りで雪花がコースを堪能していればやがて友明も追いついてくる。お誕生日おめでとうという為に並走すれば、お前上手いなと笑顔が返り。
「……誕生日おめでと、一緒に楽しもーな」
 いつの間にか追いついて来た玲紋と共に友明が飛びだせば、2人の姿はそれこそ飛ぶ様に小さくなっていき……。
「おっし皆、目印はあれだー!」
「待てK点!」
 天虹が叫べば、ウィルもすかさず呼応して。K点のKは梶原のK――玲紋を追いかける者達の声が微かに届く。彼らもきっと風になるこの瞬間を楽しんでいるのだろう。
「追いついたら勝ちとか叫んでねぇ?」
 確かにいざ尋常にだの、雪国生まれは負けないのと賑やかな声が降ってきている。
「じゃ、逃げるかー」
 玲紋は平然といい、友明は俺も鬼かよと叫び返す。でもこうして皆で滑るのも悪くない――2人は一気に風に乗った。

●大地のように
「固い雪のブロック作って、それを彫刻みたいに削る感じっス」
 ネコすけこと幸祐が語るのは丈夫な雪像の作り方。凛が用意した友明の写真をもとに佐依はさらさらと下絵描き。
「このような感じで宜しゅうございますかしら?」
 29日は肉の日だからテーマは『肉を持ってる片岡の像』。肉はやっぱマンガ肉だろと、恭平が満足そうに雪の山を見上げれば、鑑三郎はどこぞから梯子を持って来て。暈人と共にするすると登り、大雑把に形を取ると、下ではソープやハルが細かな細工に取り掛かる。腕にはバンダナね、と凛の彫刻もなかなかに細かい。
「躍動感が表現出来るといいよな!」
 ああでもないこうでもないと雪を削っていく作業はなかなかに熱い。勿論時には佐依とハルの紅茶でティータイム。
「こうやって一つの事を皆でやるのは楽しい事よの。寒いのも気にならぬわい」
 くるくると動きまわる仲間の姿を眺めつつ鑑三郎が笑えば、ハルも支えていた梯子をコンと叩いて。暈人が骨付き肉を再現しているその下には、何故かやけにリアルな家畜達。それが亮の手になる肉の元ならば、リュウタは雪で焚き火を再現する。育てて、焼いて、食う――それは友明少年の哲学を表している……のかもしれない。

 雪像作りが着々と進んでいる頃、そのモデルは再び勝負を挑まれていた。山頂に吹く風はますます冴えてきたけれど、友明も龍麻も燃える様に熱かった。勝った方にジュース奢りなといわれれば友明が下りる訳にはいかない。一口乗せてもらいますよと騰蛇もやって来て、この日何度目かのスピード勝負が始まった。
「誕生日という事で花を持たせる必要はありませんよね?」
「たりめーだっ。花なんか持って滑れるかっ」
 全くかみ合っていない会話に苦笑しつつも、3人は一気に坂を下った。その先にこの日最も大きなサプライズが待っている事になど、無論友明が知る筈もなく。

「おお!」
 疾風の如くに滑り降りてきた友明が最初に見たのは、布をかぶった雪の山とアヒルの行列。
「「ハッピーバースデー・片岡!」」
 幾つもの声と同時に披露された雪像に、友明はしばしあんぐりと口をあけ……。
「……俺、こんな風に食ってんの?」
 サスガにアヒルこんなには食ってねーよな……ようやく発した言葉に仲間達は大爆笑。20キロ入りポテトチップスの巨大な袋を足元に従えた図はまさに食欲魔人という他はなく。『本物の肉じゃなくて悪いけどな』と恭平が笑い、こっちは本物だよと蒼馬はチョコタルトの大皿を。宝石の様に飾られたベリーは料理人の腕の確かさを物語っている様で。肉も本物があるからなと暈人もこっそりと耳打ちを。
「片岡、誕生日祝着だ。同じく1月生まれの神沢先輩、メフィ殿もおめでとう」
 良い1年になる事を……鑑三郎の音頭での乾杯は真っ白い湯気の立つホットココア。同じクラスで誕生日も2日違いってすごい偶然だよね、とメファシエルもにこやかで。雪像の下に並ぶ雪兎は彼女がクラスや結社の皆の思いを込めて作ったものだという。
「みんな、あんがとなー」
 杯を高々と掲げ、小さな少年は声を張り上げる。ソープがカメラを取り出せばそこからは一気に写真タイムになだれ込み……。小さな沢山の思い出が魔法の小箱に収まっていく。

●湯の花さいて
 ゆっくりと陽が傾いてゆく様を優雨はゆったりと眺めていた。露天は見晴らしのいい崖に湧いているらしく、雪の積もった岩の向こうにはなだらかな山並が見え、スキー場からは時折鈴の音の様な歓声が聞こえてくる。
「ちゃんと肩まで浸からねーと風邪引くぞ?」
 いきなり瑞鳳にぐいと沈められ、優雨はふわりと微笑んだ。お返しは勿論倍返し。今風邪引いたら受験に響きますからね、と笑う声に湯の音が重なった。
「友明達の勝負はどうなったんだろうねぇ」
 さっきまでシュトラールと共に背中の流しっこだの何だのと笑いあっていた声がいつの間にか止み、つばさ達は治子達の所へやって来ていた。
「多分、友明君が無謀なチャレンジ繰り返してますよ」
 イスカが笑えば、楽しそうだからいいと思うのと晶も囁く。勝負になったら年齢なんて関係なくなるよね……つばさの言葉は含蓄が深い。
「……おんせんたまご」
 女同士話がとんとんと弾む内、冥華は湯の上にお盆を浮かべた。真白な卵にイスカが目を丸くし、のんびりと湯を楽しんでいた由香里も美味しそうと微笑んで。
「そこに熱いお湯が湧いてるのよね」
 かぐらが指さした先には確かに濛々と湯気が立っている。一杯作ったから後で友明にも……と冥華が引き出した籠には確かにたっぷりの卵。半熟具合も絶妙で女の子達の密やかな笑いが広がっていく。
「友明も14か……元服の年だな」
 卵をつつきながら戒が呟けば、そろそろ成長して貰わないと、と治子は溜息をつく。
「片岡君も寂しくなってしまいますね……」
 たまには遊びに来て下さいねとさなえは笑い、あの腕白小僧は今しばらくあのままであってほしいがな、と戒はこっそりと苦笑い。

「ふえーくしゅ」
 あ〜、誰か噂してんなぁ……。盛大なくしゃみに露天の湯は大きく揺れる。片岡さんには感謝してますよと十六夜は笑い、こうしてのんびり過ごすのも悪くないでしょうと雅樹も労ってくれる。目一杯スキーやボードを楽しんできた体に温泉の熱は心地よい。
「この1年で随分と大きくなったね。友明少年なら一緒にいるみんなを守れる男になれると信じてるよ」
 孔明の祝いの言葉には一人前の男に扱われた様で友明は少々戸惑ったけれども、新に誘われて背中の流し合いに走る辺りはまだまだ子供。そして2人の背中が泡ばかりになった時、新は急に口を切る。
「……友明みたいに気が合う奴と出会えてすげー良かったと思ってる」
 これからもよろしくな。瞳を見て聞くには少しばかり気恥かしかったが、友明も深く頷いた。今日は彼らが「トモ」「新」と呼び合うようになった最初の日。

●そして夜が更けるまで
「さあ、そろそろ来る頃かしら」
 ハルが牛乳を用意しながら、身長を伸ばすにはこれよねと囁けば湧きおこるのは密やかな笑い。窓の外のテラスには雪のケーキ。今年のシュトラールの作品はフローズンフルーツ付きなのだ。
「……来たわね」
 笑い含みの檸檬の声がしてロビーにいた面々は素早く姿を隠す。誰もいないのかと入って来た友明を前に、檸檬はパチンと合図を送り……。
「何すんだよー」
 それは全くの油断だったと後に友明は思い出す。気づけば霧人と鷺宮・陸に完璧に抑え込まれていたのだから。
「友明くんの誕生日会を弄り……もとい、盛大にお祝いしようと……」
 にっこりとほんわかとにんまりを足して3倍にした様な笑顔で陸が告げれば、
「大丈夫……痛くしないよ」
 霧人が囁く。かぽっと友明の頭にはめられたのは犬耳バンド。
「うん、可愛い。やっぱりわんこっぽいイメージあるよね」
 可愛い言うなとすかさず突っ込んではみたものの、真っ赤になってじたばたする様はどこから見ても犬属性。今のうちですよと治子がカメラを構えれば級友達は友明中心にポーズを作る。
「これ、頑張って編んでみたんだけど」
 陽気がまっ白いマフラーをふわりと首にかける。ようやく立ち上がる事のできた少年に雅は唐辛子入りのココアを一杯。ほんの僅かの辛味が温泉饅頭の甘さによく似合う。
 ロビーには簡単なお茶の支度と贈り物の山。
「お誕生日おめでとう〜。今年は新しい事に挑戦してみない?」
 かぐらがコンピュータの本ならば騰蛇のそれはお風呂でも読める参考書。
「……べんきょー」
 突っ伏しかけた少年を救ったのはさなえがくれたスケートボード用の靴にグリップテープ。それから円がくれた少しだけレベルの高い布槍。
「誕生日おめでとう。一年なんてあっという間だな」
 1年前に比べたら格段に強くなった……そう続いた円の言葉に友明は思いきり顔を上げた。
「ほんとか? 俺強くなってる?」
 聞き返す少年に、集まった面々の優しい頷きが返って来た。去年皆に祝われていた13歳の少年はもういない。

 ――これからもっともっと強くなる。背も伸びて、超絶クールハンサムに……。

 ロビーに大きな笑い声が起こったのは甚だ納得はいかなかったけれど、やがて少年も一緒になって笑いだした。静かに更けてゆく雪山の空には、そんな彼らを言祝ぐ様に無数の星が瞬いている。


マスター:矢野梓 紹介ページ
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いまいち
参加者:65人
作成日:2009/01/30
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