≪暇潰し〜命懸けでツブせ〜≫卒業記念に教師とバトル!


<オープニング>


 床はギシギシ、柱はぼろぼろ。ここは廃校舎。今いるのは最奥の教室。
 そして、自分と仲間の前に現れたのは、教師の姿の地縛霊とウサギの妖獣。
 教師は2人。ジャージを着た体育教師と、ワイシャツにネクタイを締めた数学教師。
 ウサギは5匹。ふわふわの白いウサギが教師達を囲む。

「ありゃ……本当に本物が出てきてしまったんよ」
 肝試しのつもりだったんよ、と呟くのは宵凪・朔(遥陽在りて・b04318)。
「噂にはやっぱり根っこがあるもんだなー」
 江西・唯(闇灯橙陽・b03502)は、少し感心したように呟きにやりと笑った。
『さぁ、体育の時間だ! お前ら着替えもしないで何やってるっ!』
『おやおや、もう授業は始まってますよ……席について下さい』
 教師2人は口々に、一方は叫ぶように、一方はくぐもった声でぼそぼそと台詞を吐く。
「うーん、着替えて座ればいいのかな? ってそういう話じゃないよね」
 涼宮・杏樹(ステイゴールド・b03582)はチグハグな2人に首を傾げつつカードを構える。
「とりあえず、僕らがやるべき事は一つ!」
 同じようにカードを構える壷居・馨(スマイル王子・b08122)が、仲間達に目配せする。
 一斉にカードを掲げ、イグニッションと叫べば、我が手の中には愛用の武器達。
「卒業間際に教師とバトル! 中々良い記念になるんじゃねぇか?」
 神凪・円(守護の紅刃・b18168)は紅い刃を構えて笑う。
「この方達はここで眠って頂かねばなりません……参りましょう」
 淑やかに蟲笛を構える鴬生・聖雪(春宵に舞う鈴蘭・b20155)が促せば、渕埼・寅靖(縛鎖のキマイラ・b20320)がずいと前に出、鈍色の爪を構えた。
「ここは終わった場所。お前達の役目も終わりだ」
 黒翼の印が刻まれたロッドを携えるユエ・レイン(夜に舞う黒白の翼・b27417)が呼びかける。
「授業終了のチャイムを鳴らそう! 俺達の手で!」
 
 月が仄かに照らす教室。そこで、教師VS生徒の戦いが今、始まる――。

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参加者
江西・唯(闇灯橙陽・b03502)
涼宮・杏樹(ステイゴールド・b03582)
宵凪・朔(遥陽在りて・b04318)
壷居・馨(スマイル王子・b08122)
神凪・円(守護の紅刃・b18168)
鴬生・聖雪(春宵に舞う鈴蘭・b20155)
渕埼・寅靖(縛鎖のキマイラ・b20320)
ユエ・レイン(夜に舞う黒白の翼・b27417)



<リプレイ>

 何故か月明かりはなく、星のか細い光が教室を照らす。
 荒廃した教室。その教壇には教師が2人とウサギが5羽。
 そして生徒達が座るべき机側には、8人の能力者。

●授業開始の鐘が鳴る
 チャイム代わりになったのは、渕埼・寅靖(縛鎖のキマイラ・b20320)と涼宮・杏樹(ステイゴールド・b03582)の豪快な紅蓮撃。寅靖の紅蓮撃は、術者たる本人の落ち着きとは打って変わって、全てを燃やし尽くすほどに赤く燃え盛り、杏樹の紅蓮撃はややオレンジが混じった明るい紅で、彼女の髪の色と同じ色の火の粉が、キラキラと尾を引くように舞い踊る。
 その狙いの先は、ワイシャツにネクタイを結んだ数学教師。チョークとテスト用紙の弾幕で防ごうとするが、彼はどちらかというと力押しは得意ではない。二つの炎は易々と弾幕を打ち破り、数学教師の身体に強打を当てる。
「折角生徒扱いしてくれるというのなら、全力で応えようか」
 大人しくつもりは毛頭無いが、と不敵に笑う寅靖。在学中はどうも生徒ではなく教師と間違えられたため、卒業してから生徒扱いというのはなんとも不思議な感覚なようだ。
「床の状態も十分だね! どんどんいくよっ」
 踏み込んだ感覚を確かめ、杏樹はその場でとんとんっと軽快に跳ねて具合の良さをアピールする。結社の皆のいつもと違う顔が見られるのは不謹慎かもしれないけれど楽しいよね、とわくわくが押さえきれない表情で仲間達を振り返る。
 その中から飛び出してくるのは壷居・馨(スマイル王子・b08122)。
「こっちは任せて、思い切りやっちゃって下さい!」
 たたらを踏んだ数学教師と、その横の体育教師の間に身体をねじ込んで、発動するのはスラッシュロンド。星の留め具がキラリと輝き、闇色のマントが夜闇に溶けて不可視の刃となって敵を切り刻む。
 体育教師はスコア表の分厚い束でガードを試みるが、それごと腕をも巻き込んで切り裂いた。
 が、こちらは数学教師の得意とする所。テスト用紙を何枚か破いただけでダメージは通らない。
「悪い先生から仲間を護らせてもらうぜ!」
 次に来るであろう反撃は通させない、とばかりに神凪・円(守護の紅刃・b18168)はサイコフィールドを発動し、幻夢のバリアが仲間達を包み込む。
 二人にダメージが入った所でウサギが待ってましたとばかりに群がってくる。群がり具合は、数学教師の4羽、体育教師に1羽といったところか。
「もこもこ群がってるのは可愛いけど……ごめんなんよ!」
 宵凪・朔(遥陽在りて・b04318)は、その様子を見て数学教師を狙っていた炎の魔弾から森王の槍に切り替え、植物を束ねた槍を着弾させる。木や根を束ねたそれは、まるで降り注ぐように突き刺さり、ウサギも教師も巻き込んで痛みを与える。
「今回も暴れて行こうぜ!」
 江西・唯(闇灯橙陽・b03502)は相棒のジャックに声を掛けて前に行かせ、自分はそこから数学教師に向けてダークハンドを放つ。闇から出でしその手が数学教師を切り裂いて、そこに追い打ちのようにジャックが大鎌を振りかぶって遠心力を利用し、連続で切り裂く。
 ダークハンドをまともに受けた数学教師だが、連続斬りまでは食らってたまるかとばかりにチョークを変わり身にするようにばらまき、幾ばかのダメージを削るがそれでも死神の刃は薄くその身体を裂いた。
「卒業試験だとするならば、全力で行かねば失礼というものですねっ」
 白燐光を纏わせ、誰よりも明るく教室の様子を照らす鴬生・聖雪(春宵に舞う鈴蘭・b20155)。
 ミストファインダーにて透き通るレンズを呼び出し、己の射程を強化する。
「俺はまだ卒業生さんじゃないけど、皆のお手伝いを出来るように頑張る!」
 小学5年生のユエ・レイン(夜に舞う黒白の翼・b27417)は、卒業にはもう1年かかる。しかし今年卒業する仲間がいるならば、と思い、その手で魔弾の射手により魔方陣を呼び出して、己の魔力を高める。
 と、そこで数学教師と体育教師が同時にプリントの束を構える。
「来るぞ!」
 大人しく食らってやるなよ!と鋭く声を掛けるのは、教師の動きを注視していた円。
 しかし、大人しく食らわずとも、その攻撃を避けるのは中々至難。
 広くはない教室の中、範囲は全員に及び、紙の嵐が巻き起こる。
「うぁ……っ!」
「ぐっ……!」
 テスト用紙を避けてもスコア表が、スコア表を避けてもテスト用紙がそれぞれ迫り、襲い、鋭い縁で防具を、皮膚を削って行く。
「化学じゃないだけ、気持ち的にはまだマシか……」
 裂けた傷は浅くはない。強敵として申し分なし、と寅靖は森羅呼吸法にてその身体に力を宿し、癒す。
「数学のテストだから追加ダメージって感じー!」
 痛ー、となるべく床に落ちたsinやcosの文字を見ない様にしながら杏樹が傷に手を当てる。
 でも負けてらんないよね!と月色に輝く長剣に影を纏わせ、手近なウサギに黒影剣を一閃。
 ウサギは、そのふわふわの身体に似合わぬ鳴声を上げながら切り裂かれ、しかし一撃で落ちるほど弱くはなかった。
「こんな紙、怖くなーい!」
 と、馨は明るく言うが、その頬には切り傷。一番近くだから一番食らう、というわけではないが、傷はそこそこに深かった。
 そこへ、ユエの使役ゴーストであるモルモがふわりと寄ってきて、その頬を、傷をぺろぺろと舐めていけば、即座に血の跡も傷も消えて身体が楽になる。
 ありがとー、と馨が大切な仲間の一員に微笑めば、もきゅーと嬉しそうにモルモは鳴いた。
「さぁまた反撃しないとな!」
 円が励ます。声と共に土蜘蛛の祖霊が降臨するのは杏樹。癒しと力の加護を与え、切り裂かれた傷は塞がり力が戻る。
「まだまだこれからなんよ!」
 朔は魔弾の射手にて魔方陣を呼び、己の傷を癒して再び構えた箒はしゃらりと涼やかな音を奏でる。
「牽制ってのは中々難しいもんだなぁ」
 なぁジャック、と呼びかけつつ、ガードに成功した唯は再び、今度はウサギに向けてダークハンドを放つ。
 それは杏樹が攻撃したものとは別の個体。もし、同じ個体を狙うよう打ち合わせしていたなら1羽落とせていたであろう威力の攻撃は、またもウサギに耳障りな鳴声を上げさせるに止まった。
 ウサギは目の前に5羽。奇襲の可能性はなし。しかし思ったよりプリントによる攻撃が仲間にダメージを与えたようだ。
 戦況を把握しながら、聖雪はレンズを通して傷の深い仲間に白燐奏甲を届ける。
 ふわりと蟲たちが武器にまとわりついて、そのものに力を与えた。
 前哨戦はここまで。本番はここからだ。

●最後の授業が終わる時
 数学教師にウサギを群がらせ、固めて各個撃破。その作戦は中々良かった。
 唯一、苦戦材料となったのは……数学教師への攻撃を牽制程度にしてしまったがために、最初のもふもふ群がる行動によって数学教師の傷は完全に癒えてしまい、ウサギが分散した事だ。
 ウサギは生徒たる能力者たちの合間を縫って、縦横無尽に齧って回る。
「く……させるか!」
 後衛へと迫るウサギを紅蓮撃の一撃の下に葬り去ったのは寅靖。
 それを皮切りに、ようやく分散していた攻撃が効いてきたのか、耐えていたウサギたちが床に沈み始めた。
 その寅靖の背に剛速球のボールが迫り来る。体育教師の攻撃。
 しかし無理矢理その射線に割り込んだのは馨。
「そんなボール、受け止めてみせる!」
 闇色のマントを翻し、包み込むように受け止めて完全にガードし切る。
 助かった、と寅靖が礼を言えば、いえいえ〜と馨はおどけて微笑んだ。
「モルモ! 前に出てパチパチ花火!」
 ユエが指示を飛ばし、もきゅと返事をして前に出たモルモを見送って、自身も炎の魔弾をウサギ残ったウサギの内1体に向けて叩き込む。
「勘弁してほしいなっ、それは!」
 杏樹が間一髪躱すのは、数学教師による抱擁。テスト用紙を切り刻むなんて悪い子だ、だからご褒美に抱きしめてあげようだなんて、支離滅裂すぎて数学じゃなくったって御免被りたい話。
「私がついてる! パーッといこうぜ!」
 励ます声。円が舞を舞って届けるのは赦し。寅靖と杏樹の封術を癒し、齧られた傷を治してゆく。
「なんだか負けてられない気分なんよ!」
 でも炎の魔弾よりは先にこっちなんよ!と朔が投げつけるのは植物の槍。森王の槍のダメージは慈悲があれど無慈悲。全てのウサギをまとめて葬り去った。
「俺も範囲攻撃があったらそれ出来たんだけどなぁ!」
 と軽口を叩く唯。しかしジャックと楽しそうに戦う姿は、彼にしか出来ない事だろう。死神姿のジャックが大鎌を振るい、その影から闇の手を伸ばす唯。これほどの連携が出来る2人はそうそういないはず。
 連携によって数学教師が膝をつく。しかしまだ倒れない。チョークを取り出し、それを唯に向けて投げつけようとするが……そのチョークは何かに浸食されるようにぼろぼろと崩れて床に零れた。
「させませんよ。熱血教育も宜しいですが、過ぎればひたすら迷惑なのです」
 魔蝕の霧。発生させたのは聖雪で、その視線はまるで積年の恨みだろうか。小さく微積分で泣いた記憶が蘇ったとかそういう訳ではないのですよと呟くからにはそうなのだろう。
「学舎での恩……忘れはしませんよ、先生」
 もう戻らぬ在校時代。少しの哀愁がその目に見えた気がした。寅靖はあらん限りの力に今まで世話になった教師への感謝を込めて、最早教師でないそれへと向けて紅蓮撃を放つ。
 炎に焼かれて崩れ落ちた数学教師。しかし戦いはまだ終わらない。
 残った体育教師が未だ健在で、欠けた分を補うかのようにスコア表をばら撒いた。
「また来るよ! 気をつけて!」
 ばら撒く奴は怖い、と注意していたユエが動作に気づいて呼びかける。
「抱きしめられるよりは撫でられたいかなっ!」
 挑発するように体育教師へ呼びかけながら、馨は再びスラッシュロンド。防御しようとしたプリント類を根こそぎ切り刻み、しかし傷を与えるには至らない。
「いつまでも生徒じゃないんだぜ……卒業させてもらうぜ、先生!」
 戦場を馬の姿のナイトメアが駆け抜ける。円のナイトメアランページが炸裂し、体育教師を挽き潰す。が、まだ膝をつかせるに至らない。
「体育教師ってだけあって堅いんよ……! でも!」
 先生たちも、もうこの学校とはお別れなんよ!と、朔が呼びかけるように声を張り、炎の魔弾が着弾する。
 その炎が炸裂する瞬間、一際輝きと勢いを増して爆発するように弾けて、体育教師を跡形もなく燃やし尽くしたのだった。

●卒業しても終わらない物語
 轟音から解放された教室には、静寂と、ちょっぴり騒がしい音が戻る。
「何書くかなー」
 やっぱこれかな、と唯の手によってチョークで書かれたのは『ひまつぶサイコー!』という文字。
 直人の似顔絵が描きてぇ、と挑戦するも…………努力する事は素晴らしい事です。
「しかし、来世でもなんだか教師におなりになさる気が致しましたねぇ、あの方々」
 今し方戦い終えた相手を思い、おかしそうにクスクスと笑う聖雪が書くのは『いつまでも絶えぬ感謝と友情と共に希望の道を!』という言葉と、祝いの花模様。
「卒業おめでとうだよー!」
 そう言って朔を祝福するのは、暇つぶのログハウスなどを落書きしていたユエ。
 『暇潰しの皆にありがとう!また会おうなんよ』と書いていた朔は笑ってありがとうなんよ、と返しながら、でも皆もある意味卒業やね、と少し寂しそうに呟いた。
 首を傾げるユエに、『愛流美居羽都駆(I'll be back)』と書いていた杏樹が振り返って言う。
「結社は、今回解散で皆卒業だからね……」
 だからこそのこの言葉なんだけどねっ!と黒板に書いた文字を示した。
「写真撮るよー! じゃーん三脚持ってきました!」
 ジャックとモルモの絵を描き終え、馨が三脚を準備する。
 今年の卒業生さんは真ん中なんだよう、とユエが朔を引っ張り、朔を中心に段が組まれる。
 使役ゴーストって写るんだっけ?と呟きながらも、唯は分かんねぇけどジャックも入っとけ!と言って共に並ぶ。
 寅靖は黒板に『一期一会』と書き、小さく微笑んだ。この仲間たちとの一期一会はとても大切な一期一会。その出会いに感謝を。
 ふざけて派手な色で『ヒマツブ組参上!』や『夜露死苦』などと昔乍らの文句を書いていた円だが、皆の意識が黒板からカメラへと向いた隙に、その隅にさっと一言『皆大好きだぜ♪』と書く。
 全員並んだ所でタイマーをセットし、馨が急いで並んで――パシャリ。
 有難う、有難う、みんな大好き。口々に呟く言葉が夜闇に溶ける。
 けれど写真は笑顔。

 だって絆は、写真の笑顔と同じように、変わる事などないのだから。


マスター:黒峰虚 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2009/02/27
得票数:楽しい1  ハートフル29 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
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