はぁと


     



<オープニング>


 美樹がチラシを持ってきた。タイトル『ハートの会』。
 なんでも、ハート型の作品やお菓子を作る会らしい。
「アギト、一緒に行きましょう。ハートは心のカタチだから、やっぱり贈り物にはイイと思うんです」
「まあな、漢は心。すきな人には真心を贈る」
 アギトは想像してみた。はーと型のぼた餅やおにぎり。チキンライスではーと型、目玉焼きのはーと型……。
「せっかくバレンタインデーもありますから」
 美樹は想像した。ハート模様の手袋、ハートのペンダント、隅に小さくハートを編み込んだマフラー、それにもちろん、ハートのチョコレート!
「場所は家庭科室だから調理もできるそうですよ。ハートモチーフは小さくても構いませんが、心をいっぱい込めましょう」
「いや、あのな……俺はいかねぇ」
「味見係がいるかもしれないし、それに終わったあとはお茶会があるそうですよ?」 
「やっぱ行く。えーと何なに……」
 彼はチラシを広げると、棒読みした。

『編み物でもアクセサリーでもお菓子でも。なんでもハート型又はハートモチーフのものを作りましょう。心をこめればきっと思いは通じるはず! ちょっとくらい不格好でもいいじゃないですか!』

「作ったものは持って帰ってバレンタインデーに気になる人にプレゼントすることもできます」
「……そういう仕組みか。えーとそれから……」

『終わった後はお茶会です。
 ハートのクッキーにハートの型抜きフルーツ、紅茶を用意しています。
 お菓子の余りや端っこを持ち寄ったり、もちろん差し入れも歓迎です♪
 試食しあったり、完成した品物や大事な人の自慢話、恋の相談、本番の練習なんかも楽しいかも。
 バレンタインの準備のついでに、のんびりと楽しい午後を過ごしましょう』

「よし! じゃそこのあんたも一緒にいかねーか?」
 偶然通りかかったアナタをアギトは手招きした。
 食い物があるらしいぞ、と弱冠的が外れた誘い文句とともに……。

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参加者
NPC:桐生・アギト(中学生黒燐蟲使い・bn0187)




<リプレイ>

 2009年2月13日ハートの会於家庭科室。

(「ハート型なんて私には縁遠い形だわっ!」)
 怜はハート型に流し込んだべっこう飴を見つめていた。参加したからにはと、手頃なものを作ってみた。金いろの心は甘くてきっととっても美味しい。
 ハ、ハート型なんてなんだか照れくさ……なんでもないわっ!
 怜は一人ふるふると首を振る。
 別の席では2人の女子達が仲良く寄り添う様にお喋りしている。
「ハートって丸くて可愛くてホントに幸せの形って感じだよね」
 沙羅は心の形のローズクォーツを眺めて呟いた。想いを込めてハートを描けばその分だけ相手に届きそうな気がする。
「見てるだけで不思議と暖かな気持ちになるものね」
 隣で彩が柔らかな表情を浮かべた。ハートの形は想いをぎゅっと詰め込んだみたい。彩の手元で和柄の布が小さなハートになってゆく。
 視線がぱちっと出会って2人は思わず笑顔になる。
 ああ本当に。
 どうやってアナタにこの想いを届けようか……?

 ――この、心を?

●はぁとの会
 確かにハートは心を伝えるのに良い形ね……由衣は思う。気になる彼も隣で何やら制作中だ。
「ね、何を作ってるの?」
「企業秘密、と言う事で」
 司真は笑顔で誤魔化した。
「……気になるけど、後の楽しみが増えるかな」
 2人は黙々と作業に励む。

 アクセつくりに挑戦するカップル達は他にもいた。
「やぁ〜ん! 上手くできないよ!」
「どこが? 貸してみなよ」
 クリスチィーナと一はシルバーペンダントを作る。機械いじりが得意な一はアクセ作りも器用だった。
「ねぇ、うまく重なるかな?」
「図案通りだし重なると思うけど」
 照れ隠しにそんな事をいいながら一は二つのハートをくっつけてみた。
 
 ヒドリと紅鈴がお揃いのIDペンダントを作っていた。
「紅鈴、どういう刻印をするんだ?」
「ヒーちゃん、『いつまでも一緒』ってどういう綴りだったかにゃ?」
「確か……」
 ゆっくり綴りを確かめ、小さなハートも忘れずに彫る。
「これ、14日に渡し合いっこしようにゃ」
「……、わかった」
 ヒドリは頬を染めて頷いた。

 チョコやお菓子のいい香りもする。

(「すきとか……恋する気持ちに、年齢とか身長とか、関係ないですよね?」)
 嘉月はお婆ちゃんから教わったくっきーを一生懸命作っていた。
 相手の方からは……きっと、小さくてかわいいくらいにしか思われてないと思う……けど。それでも頑張るって決めたのだ。
 葛はトリュフチョコを、アザレアはストロベリーチョコケーキを協力しあって作っていたし、姉弟でやってきた者達もいる。
 普段お世話になってるお礼を込めて……那由多はチョコを鍋に放り込もうとした。
「チョコを溶かす時は細かく砕いて湯煎にかける」
 即、弟のフォローが入る。多由也はレシピ本をしっかり準備していた。
 よし。秘めた想いはチョコに溶かして……。
「型に流して即冷蔵庫へ!」
「冷やす時は粗熱が取れてから」
 多由也は自分の分もチェックした。もしもの時の代用品だ。弟は姉思いなのである。

 理在も同じ様な行程を楽しんでいた。
「湯煎してー、型に入れて」
「じゅるっ」
「……木賊、つまみ食いするなよー?」
 理在は器用にチョコを扱いながら相方を睨み、彼のカラフルな飴に真っ黒が混じっているのに気づいた。
「それ、何味?」
 イカスミ味……。
「りーあには飴と一緒にチョコも上げるからぁねぇ〜」
 木賊の目には既にはぁとが浮かんでいる。
「んーやっぱチョコ美味しい」
 理在はチョコフォンデュを舐めて呟いた。

 つまみ食いか味見か、それが問題だ?!

「つばきさん? 何をしているのかしら……ダメよ?」
 朝朔はテキパキと作業を進めつつ、つばきの甘そうな指先を見つめる。
 ムースケーキを素敵に作りながらのチェックはさすがである。
 フィアだって思う。
 味見、必要……です、よね?
 一緒に来た世寿は、恋人の為のぼた餅を一生懸命形作っている。
「少しくらい歪でもハートはハートですわよね?」
 フィアは友人に同意の頷きを返し、見様見真似で作ったハートのぼた餅をこっそり食べた。
 美味しい……。

 女の子同士のお喋りも聞こえて来る。希兎と緑もヒミツの会話に夢中だったが、本来の目的も忘れたわけではない。
「しまちゃん、何作ってるの?」
「コーヒーゼリーですよ。ゆんちゃんはハートチョコ?」
 ふわり嬉しそうな笑顔が返ってきて、可愛いなあと希兎は思った。ハートモチーフって何だか照れるよね?
 別の調理台。
 くまとハートのクッキーを作りながら愛美は考える。
 ん〜、バレンタインは女の子の戦いっていうけど、まなは……戦えるのかなぁ?
 傍では先輩2人が恋バナの真っ最中だ。
「そりゃ大切な人へだからちゃんと心を込めてるよ」
 出来に多少は不安もあるが……。
 イディスは編み物、フレステアはクッキー作りに励む。

 彼と一緒なら制作時間も甘いかも。
「はあっ!」
 アドルはボウルを抱えて気合いをいれた。卵にグラニュー糖を加えて、白っぽくなるまで混ぜる……高速攪拌開始!
「アドルさん……。落ち着いて一緒にやりましょう」
 玲珠が優しく手を重ね、アドルフィーネはほわほわこくんと頷いた。

 レンジの傍ではるえるが奮闘していた。
「あわわ!」 
「あっつ!」
 隣を見れば貴浩が本を片手にクッキーを作っている。レベル高いなーと感心していたら、彼は林檎を手にとってフッと笑顔を向けた。
「るえるの好物だからな」
 心がぱぁっと明るくなる。彼の言葉の中にはきっと、優しいはぁとが隠れてる。

 当然ながら自分一人で勝負をかける者もいる。
 夜白は真剣に頑張っていた。
(「今年こそは……ちゃんとまともに食べれるものを作るわよっ!」)
 大きなハートの型を見つめ、ぎこちない手つきで慎重に作業を進める。きっときっとこのハートを完成させてリベンジするのよ!
 小夜も事情は似たようなものだ。失敗を繰り返したがもう同じ間違いはしない。今年こそはリベンジ、と材料をざーと投入する。……これくらいかな?
 歩は食い物と聞いてやってきたが、今はとりあえず日ごろお世話になってるあの人のためにハート型のタコ焼きを作っていた。
 材料はタコと調味料と根性。足りない物は三番目で補う。やってみせる!

 そんな中。
「最後にミントを飾って……っと」
 テトは本格的な菓子作りに取り組んでいた。ハート型のミルフィーユは結社で販売予定のスイーツ試作品なのだ。ついでにお茶会用に苺とクリームでささっとおやつを作っておく。
 傍らで結社員の桜がハートモチーフのポストカードを、アーリィンはチョコを作っていた。ホワイト、苺、ミルクの三色ハートだ。……ハート型って可愛いですよね。
「さすがはテトさん……。見事な手捌きですわ」
 春美はギラギラと目を輝かせる。お茶会が楽しみですわ……。

 他にも工夫を凝らしたはぁとが見られた。
 例えば日和はハートのポマンダーにサテンのリボンを巻いていた。
「つまり、あれ? 彼氏に『虫』がつかないようにって、そういう意味?」
 倫子はクローブの香りを楽しみながら、日和に話しかけた。
「え、何? 虫除けって……違う、断じて違うからねっ!!」
 みるみる真っ赤になる友人を見るのも、こんな日の醍醐味だ。

 ロビンにとって、ハート型と言えばモラピュアのおでこ以外あり得ない。なので使役のサンドの為に帽子をせっせと編んでいる。
 十は編みぐるみに集中していた。
「よしよし、可愛いぞヤギ男さん」
 ピンクのハートチョコを手に載せて、と出来栄えに何やらほくそ笑む。

「芽亜ちゃんはどんなの作ってるのー?」
「贈り物ですわ」
 芽亜はうちわで遊姫を扇いだ。いつも風のように駆け回っているあの方には、お似合いでしょう……空色のハート模様は彼の為に。
「私はお守りなんだけど……も、もうちょっと、かかるかなぁ」
 ハートや神社風の文字を一生懸命刺繍する。
「お茶会までには作り上げないとっ」
 遊姫はちくちく頑張った。

 真昼は深夜とハートを素焼きの土鈴に描いていた。ピンクを基調にした優しい絵だ。一心に絵付けをしながら、ぼんやりする青葉に助言する。
「お好きな物を描けば宜しいのです」

 ハートと聞いてクローバーを想像した者達もいた。
 丁寧に図案を見ながらマフラーを編むのは龍麻だ。
 流羽は、さてその素敵な案をどうやって実行するか悩みに悩んだ。ありきたりは嫌だしケーキは手間がかかって……で、決定したのはぷるるんプリン。お茶会用と自分用にたくさん用意する。
(「さってと、このプリンは誰にあげようかなー♪」)
 熾火はキラキラビーズを沢山広げていた。赤のハートに緑のクローバーを添えたらきっと綺麗だ。 気持ちをぎゅっと込めてチャームを作る。
 ハートの会なんて、とっても素敵……。たくさんの想い……が、この会でみんなハート型に……なるのですのね……。

 アゲハは丁寧にハートのクッションを縫っていた。
「儚君には何時もお世話になってるから感謝の気持ちを込めるね」
 その儚はがくりとハートのミニフライパンを置く。
「カルメ焼き……失敗」
「それ、私お祭りの時しか見たこと無いよ?」
「べっこう飴に変更しよう、同じ材料だから。アギトも待っててね」
 自称味見係にも声をかけて、儚はアゲハの頭を撫でる。
「そういえばアギト君や矢代先輩は何を作ったんだろう?」
 アゲハはきょろきょろした。

●味見の日?
「アギト! こう言うのは形から入るのが大事だって聞いたぞー?」
 ヴァイはなぜかメイド服だった。今日は使役とお揃いで着られないのが残念だ。
「もう一着あるけど着る?」
「遠慮しとく……それにエプロンならもう借りた」
 巧斗はカウゼルのハートのクッキーをオーブンに入れてやった。既に自分用のハート型の容器には丸いモノトーンのトリュフが詰まっているし、手際よくお茶会用は皿に盛られていた。巧斗は家事全般が得意なのだ。
「上手にたくさんできたな」
「型抜きは我が、生地をのばすのはアギトに手伝ってもらった」
「桐生か、宜しくな」
 エプロン姿でアギトはちょこんと頭を下げる。後ろで括った髪が揺れた。
「あ、アギト君、せっかくだからテンパリングお願いできませんか?」
 靜は笑顔で何事も経験、少しだけでも、と誘った。
「つか、てんぱって何だ?」
「スイートなものを扱う時は笑顔も大事ですよ〜♪ はいアギトくん引き攣らない」
 美樹が靜のチョコにカオスな運命を予測していると、隣席から声がかかった。
「矢代親びん、今年は何を作られるんでしょう?」
「ガトーショコラと、これ手伝ってます」
 美樹は黒ビーズを見せた。
「雪葉さんは縫い物?」
「ええ。昨年は一緒にチョコを作りましたね。ちょっと悔しかったりとか……」
「またまた。雪葉さんの方が上手でした」
 思い出話しで盛り上がっていると、
「ねえねえ、美樹お兄ちゃん。編み物とかって経験ある?」
 雛菊が編みかけの手袋を持ってやって来る。
「ないけど本がありますよ?」
 2人は一緒に頁をめくる。

 ジローはアギト達を手伝いながら、相棒を思っていた。
 ハートと聞いて真っ先に連想したのは真グレートモーラットの額だった。ハートになるにはまだまだ精進が必要だ。……お前のおでこをハートにするために頑張るからな。心の中でそっと語りかける。

 ウィルは隅っこで細い針金をハートに細工していた。
(「要は心だよな」)
 贈る相手をイメージしながら、心を込めてじっくりと。
 つい夢中で作っていたら何時の間にか時間が経っている。ふと見ると、アギトが自分の席に戻って何やら熱中していた。エプロンもはずしてお手伝いは終わった様だ。
 そこへ……。
 遙は薄手のマフラーを手にすたすた歩いていった。
「アギトさん。『今は』渡す人がいないので代わりに受け取ってもらえませんか?」
「俺がか?」
「ハートマーク入りですけど、よければ使って下さいね?」
「……どうも」
 これも未来の恋の予行練習なのだ。

●はぁとのお茶会
 熾火はズラリと並んだはぁと菓子を楽しそうに眺めた。
 流羽の四ツ葉プリン。巧斗とカウゼルのトリュフにクッキー。
 皆の完成したお八つや差し入れの数々、ハートの果物にクッキーと紅茶もある。
 食えるだけ食わせてもらうッス!! 歩はワクワクした。
「オレのも食って食って? 感想聞かせてー」
 理在が大量のはぁとチョコを配ってまわる。
「美味しい……」
 小夜も紅茶を片手に一つもらった。感激しつつ自作チョコの事を考える……気に入ってくれるといいな。
 アゲハと儚も皿に沢山お菓子を盛った。美樹のお菓子も発見して味見してみる。
「集中した後だと甘い物が美味しー♪」

 ミルフィーユとスライス苺の生クリーム掛けをテトがテーブルに並べた。味見用のミルフィーユを同行の皆に配る。
 アーリィンは生唾をのみ込み、桜は幸せそうに溜息をついた。春美は無言で味わいフォークを置いた。
「ど、どうだ?」
「……とても美味しいですわ」
 テトも大きく息をつく。
「さて、皆さん明日の予定はどうですか? 私の萌えの為に是非聞かせてくださいな」
「……あら春美、誘ってくれてるの?」
 桜は妙にいい笑顔だった。

 完成を喜び合う姿も見える。
「今回は、お付き合いいただき、ありがとうございます、ですよー」
「世寿、ぼたもち……誘ってくれて、ありがと……です」
 心づくしのぼた餅にフィアレスの頭の中も口の中もいっぱいになる。世寿の心もほんわりと……ぼた餅お一つ頂きます。
 多由也はできたてチョコを味見してホッと息をついていた。姉は成功品を嬉しそうにラッピングしている。
 自分のは友人にあげようと思う。どうやら代わりのチョコは必要ないらしい。

 緑は味見でなくてプレゼント、と綺麗に包んだ菓子を差し出す。
「はいこれ、ゆんちゃんへ」
 希兎は持ってきた白い花をたくさん緑の髪に飾ってあげた。

 お茶会もたけなわ。
 ジローは皆に飲み物を配って歩いた。ハート型のラテアートは少し歪だけど、
「まぁ、心意気をくんでくださいよ」
 アギトは珍しそうに受け取った。
 夏輝は空の紅茶カップを置いて立ち上がる。ラメピンクでラッピングしたチョコは可愛い出来だ。
「ね、アギトさまはもらう予定ある?」
「予定は未定」
「つまり今のところないのね」
「それがどうした?」
「秘密ー!」
 その背を見送っていると、
「こんにちわ、桐生」
 龍麻がやって来てマフラーの自慢をしてゆく。クローバー模様にさりげなくハートが編み込んであった。
「桐生は何を作ったんだい? まさか本当に食べに来ただけじゃないよね」
「べ、別に。手伝ってもらってばかりじゃねえし」
 アギトの横で小菊と美樹がくすくす笑う。クッキーを一つ摘んで小菊がそう言えば、とアギトを見た。
「呪髪で旋剣の構えをしたらどうなるんですか?」
「それを俺に聞くヤツがいるとは……」
 なぜか美樹が笑いを堪える。
「つか、俺ぁ魔剣士じゃねえぞ?」

 味見係としてもなかなか充実した一日だった。
 アギトは嘉月のクッキーを美味ぇと試食し、
「はい、お一つどうじょにゃ」
 紅鈴の桜羊羹も食べた。
「大丈夫だな」
 ヒドリが確認しさっさと冷蔵庫へ向かう。……毒味だった様だが美味かったから佳し。

 葛とアザレアもやって来た。葛が2人に差し出したのはイチゴとビターのトリュフチョコだ。
「どうぞ。試食であろうと、感謝の気持ちはこもってますよ?」
 アザレアがCiao!と挨拶すると、美樹は微笑み、アギトは早速チョコを摘みながら挨拶した。
「こんにちは」
「葛の後輩か? 宜しくな」
「……その、お味の方は如何でしょうか?」
「美味しいですよ」
 甘酸っぱいイチゴチョコを美樹が摘み、
「葛は菓子作り上手いな」
 アギトはビターをモグモグ食べた。

 ヴァイとは一緒にがっつり食べた。
「そうだ、この前は不躾な質問してご免な」
「別に気にしてねえぞ」
 フレステア達はクッキーをくれた。
「えと……肝試しのことは忘れて下さいね? ね?」
「あぁ、あの新手の修行な」
 久しぶり、という愛美とを交互に見てアギトは言う。
「じゃこれは口止め料か?」
 次には雛菊も来た。
「アギトお兄ちゃんは何作ったの?」
 と覗き込む。
「私は手袋」
「……はぁと蟲」

 初めまして、とやってきたのは朝朔とつばきだ。
「お裾分け。良かったら美樹さんもどうぞ」
「誘ってくれてありがとうの意と、お近づきの印をこめて!」
 味は保証付き、と言いかけて思わずつばきは口元を押さえる。別につまみ食いはしていない、味見しただけで……あれ?
 アギトも美樹も礼を言った。新しい出会いもこんな時の楽しみの一つだ。

 茅は自作バルーンアートの傍で、美樹を呼び止めた。
「これ、黒燐蟲なんだよ」
 ラブリーだろう、とホットチョコレートを渡す。
「チョコって惚れ薬らしいよ」
「じゃ俺、茅に惚れるんですか?」
「違う。黒り」
 烏龍茶がさっと横から差し出される。
「口直しにどうぞ」
「あ、どうも」
 美樹は笑顔で真昼に礼を言った。
 そして部屋の隅っこで。
「桐生さん」
 青葉は黒丸を一つ描いた土鈴を差し出した。
「いい音がするな」
「中玉がハートの形です。壊れたら判ります」
「壊したりしねぇ。大事にするから安心しろ」
 青葉はそっと胸に手を当ててみる。心はちゃんとそこにあって高らかに弾んでいた。

●はぁとの恋の物語
 ロビンは紅茶を一口飲んだ。
「ところでミツル、今日は私と遊んでてよかったの〜?」
「大事な友人と過ごす時間も楽しいものですよ」
 赤くなって照れる友人をロビンはニヤニヤ見つめる……。

「そういえば芽亜ちゃんは誰に渡すの?」
 お茶を手に遊姫がホッと息をつく。芽亜は微笑みながらうちわでお茶を扇いで冷ました。

「彼に文句なんて言わせないわよ。私が作ったんだから美味しいに決まってるもの」
 べ、別に彼の為とかじゃないんだからね、と遥華は熱いブレンドティーを啜った。パーセノープの淹れた紅茶はとても美味しい。
 そのパーサはハートの綺麗なクッキーを脇において、ニヤニヤ友人を見つめた。
「私はウィルソン一筋ですよ。ずっと一緒に居てくれたから、言葉はなくとも以心伝心なのです」
 それが彼女のフランケンシュタインBだと皆知っていた。
「僕は同じキャンパスに一目惚れしたひとがいる」
 レネは切々と彼の事を語る。
「精一杯の気持ちを込めて、きちんと告白するんだ。僕、頑張るよ!」
 お互い頑張ろうねと遥華がレネを撫でる。
 決戦の日はもう明日だ。

「ねぇ、倫子も好きな人にあげるんでしょ? 誰にあげるの?」
 クッキーをつまみながら日和が友人に反撃した。悪戯な視線を受け止めて倫子は苦笑いする。
「相手、ね。……またいつか会えることがあったら、その時にでも考えてみよう」
 うん、と倫子は一人納得し、巡る時を想う。

 ……恋バナは、はぁとの会の風物詩。

 貴浩は試食用の歪なチョコを摘んだ。
「きっとるえるの作った物は美味しいんだろうな」
 るえるはドキドキお願いする。
「プレゼント用はちゃんと確保してるから受け取ってね♪」

「おぉ、出た! 中身が出たよ玲くん!」
 アドルフィーネがはしゃぐ。上手くいって玲珠は内心ホッとした。
「でもハートを割るのってちょっと怖いな」
「……端っこから食べていけば大丈夫ですよ」
「そうだねっ」

「あーん」
 クリスチィーナが苺のチョコを摘んで微笑むと、一は言葉をなくした。赤くなりつつ口を開けると甘い時間が2人を包む。
 テーブルの上には2つの心の片割れが、寄り添う様に銀のはぁとを作ってる。

 由衣は贈られた髪留めを付けようとして裏に彫られた文字に吸い寄せられた。
「これ……」
「私の、気持ちですから」
 司真は照れ臭そうに目を逸らす。
「あたしも同じ気持ちよ……ありがとう」
 ――永久に君と共に。

 真心を込めたはぁと一丁、大切な人にどうか届きます様に……。


マスター:水上ケイ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:66人
作成日:2009/02/13
得票数:楽しい18  ハートフル13 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
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