真昼の明かりどろぼう


<オープニング>


 海に面したダンスホール。夜には様々なパーティに使われ人の集まるここも、昼は無人となる。夜が来れば華やかに輝くであろうシャンデリアも真昼の今は消灯し、厚いカーテンに遮られた陽のほのかな明かりがかえって室内を暗く見せている。
 その眠ったような静かなダンスホールに、今は招かれざる客がいた。
「いーじゃないいーじゃない。やっぱりこういうのよね」
 シャンデリアを見上げて満足そうな女。派手好きなのか赤と黄色のセーターを着ている。
「ぶっちぎっちゃ、まずいかな? どうやって外すんスかねぇ。よ、こうか?」
 脚立に乗り、そのシャンデリアを外そうと格闘する男。張り付いたような笑顔がスーツと相まって営業のサラリーマンに見える。
「こんなにでかいとは思わなかったな、運ぶのだりぃ……」
 身体も態度も大きい金髪の男が、そばにあった椅子にどっかと腰掛ける。弾みで靴が床に置いてあった工具箱を蹴り、がちゃんと大きな音を立てた。
「音立てんじゃないよ馬鹿が。警報が鳴らないってことは上に管理人か誰かいるって事よわかってんの?」
「あぁ? オマエのその声がうるせえよ。管理人の前にオマエバラしてやろうか?」
「まあまあ。スマートにいきましょうよ、ね? ね?」
 まったくチームワークの欠片もない会話をしながら、隠密の欠片もないシャンデリア泥棒は続く。

「どろぼうは夜、というのはもう古い考えなんでしょうか。
 お集まりいただきありがとうございます。奥・弓木(高校生運命予報士・bn0073)と申します。

 今回の依頼ですが、シャンデリアどろぼうを捕まえてください。
 ……というのも、どろぼうが従属種ヴァンパイアなのです。それも皆、見えざる狂気に犯されてしまっている方たちです。
 従属種ヴァンパイアの方々が狙っているのは、ダンスホールの照明に使われている豪華なシャンデリアです。あ、ダンスホールと言っても、クラブとかバーとかそういった感じのものではなく、何と言いましょうか、……社交界! そう、室内楽をバックに紳士淑女があでやかにステップを踏む、そういうダンスホールです。
 調度品も素敵ですし、盗みたくなるのはわからないでもないですが……、そうですね。やはり勝手をさせるわけにはいきませんし、事情が知りたいので、盗難の阻止と、出来れば犯人の方々の生け捕りをお願いします。

 場所の詳しい説明をしますね。
 狙われているのはこの海沿いにあるダンスホールです。シャンデリアどろぼうの方々の犯行は未来のことですから、現場で待ち伏せることが出来るでしょう。どこで待つのかは皆さんにお任せしますが、相手がどこから来るかわからない事、先に発見されると警戒され逃げられてしまう可能性がある事を頭に入れて置いてくださいね。
 ダンスホールは2階建てです。と言っても、2階にあるのは控え室や管理室などですし、2階からの侵入はありません。問題の1階ですが、ロビーやいくつかの控え室や更衣室に倉庫などがあります。
 ダンスホールへの侵入経路ですが、まず素直に正面のロビーからドアを開けて入る場合がひとつ。そこから見てまっすぐ前は一面のガラス窓で、その窓を開けて出ると海に面したバルコニーになっています。浜に下りる階段もあるので、これがふたつめ。右手には控え室や更衣室に繋がる廊下があります。この廊下がみっつめ。さらに左には調理場や倉庫や、そこで働く人たちのための通用口がありまして、こちらがよっつめ。合計四つの入り口があります。ダンスホールに隠れるところはありませんが、他の部屋なら隠れるところに困らないでしょう。
 それと……、その時間なのですが、実は電話番を任されているバイトのお姉さんが2階の管理室にいまして、あまり危機感のない方なのか、ホールで大きな物音がするとロビーに下りてホールの様子を見に来てしまうんです。巻き込まれないよう少し気にかけてあげてください。

 逃げられないとなると、従属種のどろぼうの方々も武器を取り出して戦おうとすると思います。合計8人で、棘鉄球やバット、チェーンソーなどで武装しています。皆さんほどの強さではありませんし統率が取れているとも言いがたいですが、それでも油断は禁物です。

 どんな事情があれどろぼうを見逃すわけにはいきませんし、その事情も知りたいので、是非生け捕りをお願いします。もし可能なら全員捕縛と言いたいところですが、難しいと思うので少なくとも一人は捕まえてください。戦いとなれば手を抜くことは出来ませんから、重傷を負わせてしまうのは仕方ないでしょう。
 犯人を動けない状態にしてくだされば、あとは他の方が移送するので皆さんは引き上げてください。皆さんが学園に連れて帰ってくる必要はありません。

 防犯にご協力お願いいたします。……なんて」

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参加者
市川・聡(高校生タオル愛好家・b00102)
穂村・みずる(樗の猟犬・b15649)
九曜・計都(隠剣・b25264)
朱童・羅偉(影狼・b25293)
一・楪(純白のネトル・b30921)
黒谷・誠之助(嚆矢・b32667)
八伏・椛(メイプルワイズ・b37345)
白衣・観音(鳥の巣箱の建築士・b53558)



<リプレイ>

●泥棒捕りが泥棒になる
 静まる真昼のダンスホール。
「お邪魔します」
 市川・聡(高校生タオル愛好家・b00102)が小声でロビーからつながる扉を開く。美しいシャンデリアはまだそこにあった。夜の活躍のために今は眠っているかのような、静的な美しさだ。
 そうっとしのぶような歩みは、彼らもまた招かれざる客である事を自覚しているからこそ。
「豪奢な電灯やなァ。持ってって何処に飾る気なんか知らんけど」
「歴史的価値とか骨董品とかっつ〜わけでもねぇみてぇだが、なんか目的があんのか?」
 黒谷・誠之助(嚆矢・b32667)と朱童・羅偉(影狼・b25293)が見上げてつぶやく。泥棒たちが何を盗むかはわかっている。
「本当ですわね。まったくわからない方々ですわ……」
 一・楪(純白のネトル・b30921)が小さく肩をすくめた。そう、わからないのは何故盗むのかだ。
「組織の後ろ盾を失ったはぐれ吸血鬼が拠点を築こうとしているようじゃな」
 八伏・椛(メイプルワイズ・b37345)が考察する。
「まァ、捕まえてみればわかるやろ」
「そうですわね」
「準備もぬかりなしじゃ」
 椛は『はくさい』と書かれたダンボールをかぶる。
「あ、やっぱりやるんやそれ」
 誠之助が笑った。
「見事な手際だ」
 九曜・計都(隠剣・b25264)はロビーに隠れられる場所を探しながら穂村・みずる(樗の猟犬・b15649)に声を掛ける。みずるは針金をいじりながら笑った。
「こういうのワリと得意なんですよ……」
 ロビーのドアには当然施錠がしてあった。ものの数分でそれを開けて見せたのがみずるだった。
「こうしてると自分たちが泥棒のような気がしてくるんでございますよ……」
 白衣・観音(鳥の巣箱の建築士・b53558)が言ってロビーのドアに鍵を掛けなおす。
「はは、本当だよ。……っと、それ重要だな」
 その意味に気付いて聡が頷いた。鍵が開いていたら変に思われるかもしれない。考えすぎとは言えない。
「潜伏場所の確認、しとこか」
 誠之助の言葉に全員が頷く。
 泥棒ごっこめいた潜入の高揚感は徐々に緊張感に変わっていった。

●工具箱キックスタート
 隠れ場所はバラバラだ。ホール左側、調理室や倉庫のある側には、椛、羅偉、観音が隠れている。
「隠れられそうでございますか?」
 倉庫に隠れる観音がそっとロビーを覗く。計都扮する黒猫が頷き返し、観葉植物の株にもぐりこんだ。
 調理場には先ほどのはくさいの段ボール箱が這っていた。
「ばれねぇかな……、大丈夫かなそれ」
 羅偉の言葉にダンボールの下から狼姿の椛が鼻を出す。
「いやそんなプロフェッショナルの道具ですからみたいな顔されてもなぁ。……ま、信じるけどさ」
 反対側、更衣室と控え室には、聡と誠之助、楪、みずるとその手伝いで同行した八重が準備万端で隠れている。
「……えっと、俺どこ行けばいいんでしたっけ」
「おーっと。市川がこっちの廊下塞がんと包囲にならんのやなかったっけ?」
「……そんな気がすげーしますね」
 などと慌てて位置取りを確認する一幕もあったが。

 かくして、もう一度静けさを取り戻したダンスホールは、もう一度招かれざる客の訪問を受けることになる。
 鍵が外れたのは調理場の勝手口だった。
「お、ここキッチンか。あとでなんか食うもん持ってこうぜ」
「えー、冷蔵庫の中身とかきっと全部ナマっスよ。大津さん何か作れるんスか?」
「くだらないこと言ってないでさっさと片付けるよ。時間が惜しいんだ」
 冷蔵庫と調理台の隙間に居た羅偉、食材のダンボールに扮していた椛はその音に気付いたが、他の面々に伝える手段はない。決めた合図に耳を澄ませていてくれる事を願うばかりだ。
 ぞろぞろと入ってくる8人は潜んでいる者に気付く事もなくそのままホールの方へ入っていった。

 別に取り立てて大きな足音でも声でもない。だが、静かにしようとしているとは微塵も思えない窃盗団だった。
「(八重ちゃん、いけますか?)」
「(任せてくださいセンパイ!)」
 みずるが頷く、あとは、合図だけ。
 誰が用意したわけでもない。相手が勝手に鳴らしてくれるスターティングピストル。じっと息を潜めてその瞬間を待つ。
 その音は……。

 がちゃん。
 運命予報の未来視にあったという、工具箱を蹴るけたたましい音。
「行きます!」
 楪が控え室を飛び出し、廊下を駆ける。みずると誠之助がしっかりと続いていた。

●数瞬の包囲網
「音立てんじゃないよ馬鹿が。警報が鳴らないってことは上に管理人か誰かいるって事よわかってんの?」
「あぁ?」
 ホールの中央、佐田と大津がにらみ合う。が、直後、その視線は両側の扉へ向けられる事になる。
「な、こいつら……!」
 咄嗟のことで誰も動けない。その間に、右側から最初に走りこんだ楪、みずる、誠之助が一番逃走が容易であろう経路、バルコニー側に布陣する。左側からは椛がその三人の背後に付く。
 佐田の視線が、他の逃走経路を確認する。左は観音が、右は聡が塞いでいる。障害は一人ずつだがバルコニーへの道と違って狭い。そしてロビー側は……。
 ロビー側には、誰も居なかった。
「警備員には見えねぇが、ぶっ殺しゃ誰だって同じだろ」
「待てっ!」
 佐田の制止を聞かず、一人がバットを振りかざして楪に殴りかかった。
 頭蓋にバットがめり込む絵を想像して、泥棒の男の顔が嬉しそうに歪む。その顔に驚愕が浮かぶのにものの2秒も掛からなかった。
「ゆき、だるま?」
 バットが殴ったのは楪の頭蓋ではなく、楪が纏った雪だるま。その上、殴ったそれはへこみすらしなかった。
「不躾な方々には確りとした躾が必要ですわね」
「うがあああっ!」
 楪が、目の前の男を凍りつきそうな冷たい目で見る。同時に楪を中心に吹雪が渦巻いた。見事に浴びてしまった男が、文字通り凍り付いてゆく身体を掻き抱いて後ずさりする。
「天地秩序を組み直し、小迷宮を建築す……」
 突然に襲った吹雪に度肝を抜かれていたその他大勢の泥棒たちは、左側から聞こえてくる文言に不吉なものを感じてか二歩三歩後退する。
「逃げられるとは思わないことでございます」
 観音の静かな言葉と同時に、後退していた足が何かに引っかかる。
「畜生、妙な術を使いやがって」
「と、とりあえず、お、下ろして……っ!」
 脚立に乗ってシャンデリアに手をかけていた長富が悲痛な声を上げる。彼もまた、観音の作り出す迷宮に捕らわれていた。
 佐田は辛うじてその戒めを逃れたが、長富を含めて三人もの仲間が動けない。
「退却する。散らばるな。散らばれば潰されるよ」
 パニックを起こしかけている仲間に佐田が冷静な言葉をかけて立て直す。だが、それに従わない者も居た。
「テメェの指図は受けねぇ。正面がガラ空きじゃねぇか」
 大津だった。大柄の大津が誰も居ないロビー側の扉へ向けて走る。
 だが、彼の迅速な行動は裏目に出た。ロビーへの扉を開けた瞬間に大津はそのことを悟ったが、遅かった。
「クソがぁ……」
 まったく無警戒なボディーに計都の掌底が叩きこまれる。ただの掌底ではない。水の力篭もった渾身の掌底である。悪態一つ残して、大津がホール内へ吹き飛ばされる。さらに不幸な事に、大津の飛ぶ先には脚立があり、大津の体当たりを受けた脚立はだるま落としの要領で長富を残したまま倒れる。
「なんでえええ!!?」
 長富は、叫びながらホールの床にべたりと落ちた。
「計都ちゃん良いタイミング!」
「悪漢に容赦はせぬ」
 同じくロビー側に待機する羅偉に頷いて計都が構え直す。
 バルコニー側へ集中して逃げられては到底全員を捕まえることは不可能だ。それを防ぐための突入の時間差。ロビー側に人が居ないのは作戦のうちだった。
「……惜しい事をしました」
 大津が体勢を立て直すその前に、背後からみずるがつぶやいた。それに反応するより早く、みずるの爆水掌が閃き、大津が今度は反対側の壁に叩きつけられる。
「なに、が、だ……」
 言って、大津が気絶する。
「いえ、あなた方の主と同じ技を刻んで差し上げようと思ったのですが……」
 倒れた大津から興味を失うようにみずるが自分の手に視線を落とす。
「積み忘れてしまいました」
 佐田を除いた動ける三人が顔を見合わせる。ロビーを目指そうとしていた彼らが、一斉に方向転換しバルコニーに続くガラスへと走りだした。

●同じころ
 二階管理室。スーツの女性がデスクに座っていた。
 彼女の仕事は電話番。今日は昼間、この建物には彼女しかいない。そのはずだ。
「何の音だろう」
 にもかかわらず階下からは何か金属のぶつかる音や風音がする。気になった彼女は席を立ち、管理室のドアを開けて……。
「え……?」
 心地よい歌声を聴いたような記憶を最後に、意識を断たれた。
「どうもごめんなさい」
 ドアの裏に隠れていた八重の姿も、彼女の言葉にも気付かぬまま。

●盗人の理はどこへ
 ミストファインダーを展開していた観音が、佐田の投げた棘鉄球の直撃を受けて目を細める。
「お前ら、あいつ何とかするよ。そこ破って全員で逃げる。いいね?」
 佐田がバラバラに動き始めた味方を立て直すべく一喝する。バルコニーへと走り始めていた者たちがそれに呼応して、観音に視線を集中させる。
(「こらあかんな」)
 誠之助が内心で焦る。両脇の廊下は広くはないが、守りは一人ずつ。集中されて持ちこたえられるわけがない。
 加えて、観音は足止めができる事もあって敵にとって相当嫌な相手でもある。
「白衣、代わるで」
 言って、誠之助がオトリ弾を放つ。観音に向かっていた一人が我を忘れた怒りの目で誠之助を見た。
(「まず一人。間に合うかいな」)
 その男の怒りに任せた直線的な一振りを受け止めながら誠之助が観音を見る。
「だい、じょうぶ……、でございます」
 観音はそう言うが、佐田のあとに続いた二人からの攻撃を受けて窮地にあることは誰の目にも明らかだった。楪がそれを見て取って吹雪を止める。
「ご無理はなさいませんよう」
 観音にヤドリギの祝福が与えられる。
「聡くん、いけるか?」
「ういっす! いけます!」
 それを起点に、羅偉の水刃が観音に群がる一人を叩き、追撃とばかりに聡の牙道砲がその男を吹き飛ばす。
「背中が空いてますよ」
 残る一人をみずるが吹き飛ばしてホールのロビー寄りに送る。これで観音が集中されて突破される目はなくなった。
 動いたのは佐田だった。
「な!」
 防戦中の誠之助、踏み込んだみずる、回復に力を注ぐ楪を軽々通り越して佐田が向かったのは椛。
 ……ではなく、その背後。ガラスに覆われたバルコニー。
「一人で逃げる気か!」
 計都が即座に雷の魔弾を叩きつける。マヒこそないがそれはしっかりと佐田の背中に傷を残した。
「ここから先は一方通行じゃ! 進入は禁止!」
 椛は佐田の直進にぴたりと合わせ、雷でバランスを崩した佐田に呪言を叩きつけた。佐田の脇腹にぱっと鮮血が散る。
 これ以上追撃しては死んでしまうダメージだった。にもかかわらず、佐田は椛に見向きもせずにガラスを突き破り、そのまま走って逃げてゆく。
「なんと、凌駕しおった……」
 あっけに取られたのは椛だけではない。味方に指示を出しておきながら自分は逃げるなど誰が想像するだろう。
「あ、れ? 佐田さん?」
 それは、泥棒たちも同じだった。彼らはリーダーに見捨てられたのだ。それは頭が理解してもおいそれとは受け入れ難い事実だった。
「うわああああ!」
 自棄を起こした一人がロビーへと突撃する。
「と、悪いけど通せねぇよ」
 チェーンソーの一撃を受けきり、羅偉が爆水掌でホールの中へ叩きこむ。叩きこまれた先は聡の目の前。
「神妙に縄にかかれ!」
 聡の渾身の一発を浴びてまた一人、ホールに倒れる。
 もはや戦いは組織対組織の体裁をなしていなかった。
「動け、動けっ!」
 足止めを受けていた長富が、その戒めを破ってバルコニーへと駆け出す。誠之助を執拗に攻撃していた一人も我を取り戻し、逃げようとする。
「おしまいではございません」
 観音はもう一度迷宮を組み上げた。長富はまたしてもその迷宮に足を取られる。
 共に逃げていた男が、横目で長富を見る。
「う、動けない……待って、頼む」
 長富の必死の懇願を見ながら、男はそれでも足を止めなかった。わるいな。そう言いたげな表情で逃げる男の背を見送って、長富ががっくりとうなだれた。
「……物取りにも通すべき道理はあるだろうに。許せんな」
 計都が短く息をつく。その尖った視線は、ここに居ない佐田の背を見ていた。
「気の毒やけど、動かれると困るんよ。勘弁してな」
 誠之助が長富の首の後ろを思い切り柄で叩く。
 気絶した長富が、ホールの床にどさりと崩れ落ちた。

●真昼の明かり
 動けなくなった彼らを前にして、椛が語る。
「ぬし達のような忠義の徒の主人ならばさぞや偉大な吸血鬼なのじゃろうな。その居城となれば歴史に残るものに違いなかろうて」
 リーダーは酷いもんだったけどな。と小声で茶々を入れる聡を目で制して椛がしれっと聞く。
「わっちも一度でいいから見てみたいものじゃが……どこらへんにあるのかの?」
 誘導尋問。ロープに縛られたまま意識は取り戻した長富が、少し考えてからあからさまな作り笑いを見せる。
「あ、案内させていただきます。この縄、解いてもらえないッスか」
「無意味ですよ」
 みずるが口を挟む。
「その人の言葉の真偽を確かめる方法が私たちにはありません。学園に任せましょう」
 椛が、少し考えてから頷いた。
「そうじゃな」
「さてと、とっとと退散しねぇと俺らが泥棒扱いされちまうかもな」
 羅偉が笑ってホールに背を向ける。
「昼のダンスホールというのは、ある意味新鮮でしたわ」
 楪がシャンデリアを見上げてつぶやいた。
 割れたガラスから日光が差し込めば、ホールは一気に明るくなる。
 シャンデリアには何の意味もない。
 これを盗もうとした者が居て、それを阻止した者が居る。そんなことはおそらく誰も知らないだろう。
 灯らぬ真昼のシャンデリアには、誰も注目しない。


マスター:寺田海月 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2009/02/12
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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