イルミネーションの幻想街道


<オープニング>


「どう? この写真のイルミネーション、綺麗だよね」
 女子高生運命予報士は集まった能力者達に一枚の写真を見せた。
 写真には、見る者を幻想の世界へ誘うかのように光るイルミネーションの街道が写されている。
 どうやら、これはイルミネーションスポットの写真のようだ。
「別に彼氏と行ってきたとか、そういう自慢じゃないよ。この写真、ちょっと見にくいけど、ここに不自然な存在がいるんだ」
 運命予報士の指した場所には、木の下に写る不自然な女性の存在があった。
「ここはイルミネーションスポット、と言うにはちょっと寂しい場所なんだけど……人がいないから、いい条件でイルミネーションだけを撮れるというので、少しは観光客が来てるみたい。で、人がいないはずのこの場所に人が写ってる……ってことは」
 心霊写真、と口を揃えて能力者と運命予報士が合唱のように言った。
「かわいそうだけど、地縛霊になって大きな被害を出す前に何とかしないといけない。だから、残留思念に詠唱銀を振りかけて、地縛霊になった女性を倒して欲しいんだ」
 ゴーストとなったばかりの存在は、それほど力があるわけではない。
 力が無いうちに倒してしまおう、というものである。
「弱いといっても、気を抜いちゃダメ。ここに写っている女性は何が原因で現れるのかはわからない……けど、以前からこの場所ではいろいろ不幸なことが起こっていたらしいんだ」
 例えば、この木で首吊り自殺したとか……そう説明する運命予報士は、この他にもリビングデッドが存在する可能性を示唆した。
「ボクはこの写真が、イルミネーション街道のどこかっていうのはわからないんだ。ゴメンね。イルミネーションが点灯するのが17時頃みたいから……あ、確かこの近くに小さな温泉街があったはず。それまで、温泉にでも入って英気を養ったらいいかも。一応、チケットは用意しておくね。時間が近づいたら、写真を頼りにイルミネーションの場所を探してね。うーん、ボクもこのイルミネーションを見てみたいなぁ」
 それじゃ、ヨロシク! と元気に能力者達を送り出す運命予報士だった。

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参加者
ツカサ・カミナギ(烈火迅雷・b00171)
帝・飛鳥(真紅の華・b00405)
如月・皐(高校生ファイアフォックス・b00939)
甲子園・駆(ユキカタアケズ・b01625)
安潟・転智(白燐蟲使い・b02894)
天川・雪光(高校生魔剣士・b04010)
冥架・椋(血色の猫・b10692)
キャロル・モモカワ(高校生フリッカースペード・b13877)



<リプレイ>

●温泉街の片隅で
 能力者達は捜索前、温泉街の一角へ集まっていた。
「はい、みなさん。例の写真のコピーです」
 如月・皐(高校生ファイアフォックス・b00939)は、運命予報士から借りた写真のコピーを配る。コピーの画質はやや乱雑なものだったが、イルミネーションの場所や特定に必要なオブジェクトが認知できれば問題はない。
「ん、ありがと。私もその写真を借りようと思ってたのよね」
 コピーを受け取ると、安潟・転智(白燐蟲使い・b02894)はそれを手帳にはさみこむ。
「じゃ、見つかったら連絡くれよなー」
 甲子園・駆(ユキカタアケズ・b01625)は携帯で通話するしぐさをすると、捜索のペアとなる帝・飛鳥(真紅の華・b00405)と共にイルミネーションの街道へ向かう。
「綺麗なイルミネーションに温泉! んー、楽しみだ♪」
 ゴーストを倒す……頭の片隅には仕事の意識はあるものの、イルミネーションスポットの幻想的な風景を思い浮かべた飛鳥の顔には、うっすらとした恍惚感がにじんでいた。
「それじゃ……おれ達も、そろそろ……」
「ふふ……楽しみでござンすよぅ♪」
 天川・雪光(高校生魔剣士・b04010)とキャロル・モモカワ(高校生フリッカースペード・b13877)も足並みを揃えて出発した。しばらく歩くと、キャロルはそっと手を雪光の腕にからませてくる。雪光はキャロルの行為に身を委ね、二人は腕を組みながら街道へ向かった。
「俺達も行くか」
 ツカサ・カミナギ(烈火迅雷・b00171)も鎌木・里緒奈の手を優しく引っ張って促すと、彼女は恥ずかしげに首を小さく下に振って答える。
「じゃ、私達は情報収集ね。情報は鮮度が命なのよ。椋さん、早くしないと置いていくわよ?」
「わー! 待ってくれよっ!」
 初めてくる場所に一人で取り残されたら迷子になっちゃうよ! と、慌てて後ろを追いかける冥架・椋(血色の猫・b10692)に振り向く転智の表情は、いたずらっ子のような微笑を浮かべていた。

●街道捜索
「肌寒いですけど、暖かいでござンすよぅ♪ 雪光の旦那のおかげでございますねぇ」
 冬の肌を突き刺すような寒さから逃れようと、キャロルは雪光の腕にぬくもりを求めた。傍から見れば、誰もが情熱的なカップルと思うであろう……だが、キャロルに身を任せきりな雪光は、くすぐったくも甘い感情と、気恥ずかしさという窮屈感に板ばさみとなり、思うように言葉が出てこない。
 微熱のような情感に頭がぼーっとしそうな雪光だが……本来の目的が脳裏をよぎった瞬間、突然顔に冷水をかけられた時のように覚醒した。
 今回の仕事は、雪光が得意ではない分野だ……心霊スポットに近づくようなことはしたくないが、周囲の様子は確認しておかなければならない。

 黄昏時……
 街道はイルミネーションが点灯し始めた。
 小さな光の妖精が集まり始めたかのように、イルミネーションの光が拡大していく。
「……うわぁ。これは、すごいな」
 写真を元に場所の特定をしていた飛鳥も思わず足を止め、その情景をモバイルカメラに収めていく。
「へぇ……そこまで豪華なイルミネーションじゃなさそーだけど、ちょっとした穴場かもなー」
 最後に『いつか恋人と来てみたいかも』と、その光景を見た駆が思わずこぼした言葉に飛鳥が振り返ると、ちょっと照れ笑いを含んで『何でもない』とつぶやく。
「ま、いいお土産話にはなるか」
 口から微妙な溜息を漏らしつつも、飛鳥は画像を保存した。もちろん、それは友達に見せるための風景画像であり、心霊写真の場所を探り当てたわけではない。
 途中、二人は三脚をセットしてカメラをホールディングし、本格的な撮影をしている皐に出会った。
「それ、すごいな」
「妹達にもこの綺麗なイルミネーションを見せたいと思いまして。一人だけで楽しむのはもったいないですから」
 駆け寄ってきた飛鳥に答える皐。イルミネーション撮影だと、手ぶれは天敵である。しっかりとした機材が必要だ。飛鳥は携帯を取り出して画像を確認すると、やはりそれは顕著に現れている。
 もちろん、皐はただイルミネーションを撮影しているだけではない。借りた写真と場所の検証も同時に行っているのだ。
『一人で大変だろうけど、がんばれよー』と駆が声をかけると、皐はにこやかに手を振って答える。
 プライベートの時間を満喫した後、彼らは写真のコピーを片手にイルミネーション街道をゆっくりと散索した。

 別の場所では、転智と椋が写真のコピーを手に、街行く人々へ聞き込みをしていた。
「転智……おまえ、すげぇな」
 椋は転智の行動力に驚嘆した。写真を手がかりに、次々と通行人にイルミネーションの場所を尋ね、聞いた話を手帳に書きこんでいく。彼が驚いたのはそれだけではない。手帳に書きこまれた、その情報量。短い時間にも関わらず、手帳は細かな文字でびっしり埋まっていく。
「さて、だいたいの目星もついたし」
 聞き込みを終え、温泉街の名物らしい温泉まんじゅうを買って一息吐く二人。
「で、どうなんだ?」
「ちょっと待ってね」
 書き記した情報を見返す転智と、その手帳を覗きこむ椋。
 うーん、と頭をかきながら転智は何度も手帳とにらめっこ。情報収集は得意中の得意だが……整理、分類、検証の次の段階は、収集に比べてあまり得意でないらしい。
 少々、時間はかかったが、目的の場所の見当はついた。やはり『街のことは街の人に聞け』である。

●温泉
 携帯で目的地発見の連絡を受け、ツカサは里緒奈と共に捜索で疲れた体を休めるために温泉へ向かった。
 せっかくだから二人きりで……
 仲間とは違う温泉をセレクトし、仲良く混浴露天風呂へ入ることに。
 芯まで冷えた体に露天風呂の湯はちょっと熱く感じた……でも、徐々に凍えた体が温まり、心も癒されてくる。
 ツカサは夜空を見上げた……ちらちらと雪が舞っている。
 暗闇の向こうに見える光はあのイルミネーションだろうか……光と雪のコラボレーションは風情漂うものだった。
 横を見ると、里緒奈は距離をとって恥ずかしそうにうつむいている。
「もっとこっちに来たらどうだ?」
 ツカサがいうと、里緒奈はブルブルと首を大きく横に振り、白皙の肌を赤く染める。
 仕方なく、ツカサはそっと近づき彼女の肩を抱き寄せ……二人だけの時間はゆっくりと過ぎていく……

 ゴースト討伐のための目的地集合時間は深夜零時。
 その間、他の能力者は運命予報士の用意した比較的大きな温泉を利用して体を温めていた。
「んー、絶景絶景♪」
 露天風呂の男湯では駆が我先にと一番乗りし、夜景が綺麗に見える場所を陣取っていた。
「混浴はさすがに俺は無理だぁ……」
 同じく男湯に入ってきた椋に『よう、ムック』と、向かえる駆。互いに恋人がいる身……混浴は気が引けるものだ。
 男同士、気兼ねなく温泉と景色を堪能する二人。
「さーて。疲れも取れたトコで、気を引き締めていかねーと」
 大きく体を伸ばす駆。その無防備な姿にちょっといたずら心が沸いた椋は、湯を両手ですくうと……

「うわー! 何するンだ!」
「ゴメン……つい……でも、そんな格好している駆が悪いんだよ」
「そんなことしやがって……こーだ!」
「わー★」

(「そんな……駆さんと椋さんが……」)
 ここは混浴露天風呂。皐は隣から聞こえてくる男同士の絡み合いに、常人の斜め上を行く……いや、突っ切るくらいの妄想を浮かべ、やや悶絶した表情をしていた。
 その隣では転智が自分と皐のスタイルを見比べている。そこへ……
「嫌ですよぅ……あんまり見つめないでくださいなァ」
 二人の反対側で湯に浸かる雪光の視界に入るようにキャロルが現れた。転智の『はぁ……』という溜息は水音にかき消され……
「さ、雪光の旦那。お背中をこちらに。妾がお流しさせていただくでござンすよぅ」
 視線の先にはキャロルと雪光の世界が広がっていた。

●残留思念
 深夜零時。
 決戦の時間……能力者達は次々と連絡された場所に集まってくる。
「間に合ったか……俺で最後かな?」
 一人で露天風呂をゆっくりと楽しみ、イルミネーションの街道沿いを隅から歩き通してきた飛鳥が合流し、全員がそろった。目的の場所はイルミネーションから、やや離れた木の下。ここに残留思念が存在する。
 詠唱銀を振りかける前に全員イグニッションをし、即戦闘に移行できるように体勢を整えた。
「いよいよ……か」
 雪光は日本刀を構えた……現れる敵は『アレ』だ。体中に異様な緊張感が充満し、無意識に痛いと感じるほど刀を握りしめている。
「準備OK。んじゃ、いこうか」
 椋とツカサは魔弾の力を解放して魔方陣を召喚し、力場を得て魔力を増強させた。イルミネーションの光と魔方陣のエネルギーが発する光が、何とも幻想的な雰囲気を醸し出す……
 全員がコクリ、と一つ頷くと、バス停を手にした皐が写真と同じ場所の残留思念があるポイントに詠唱銀を振りかける。
 まるで化学反応を起こしているかのように、その場所に青白く、虚ろで朧げな存在が徐々に浮かんできた。
「うぉッ!」
 動顛にも悲鳴にもとれる声を発し、思わず後ずさりする雪光。突然の奇声に振向く仲間に『……石でつまずいただけだ』とごまかすと、実体化した地縛霊を指して注意を促す。
「無理矢理起こしちまって悪ィな……すぐ楽にしてやるからよ」
 姿を現した女性の地縛霊に、フェニックスのオーラをまとった駆が黒き戦斧で斬撃を繰り出す……荒々しくも美しいその様子は、まさに不死鳥の転舞のごとく。

 ――キャアァァァァ

 精神を破壊するかのような金切り声を上げる地縛霊。
 声につられてか、もう一体別の存在……首の骨が折れたリビングデッドがどこからともなく現れた。
「こいつなら大丈夫だ!」
 雪光は呼吸を整え、現れたリビングデッドに飛び掛った。皐もバス停を振り回して援護し、雪光はリビングデッドを二刀流での乱撃で地縛霊から引き離していく。
「とどまりたい理由はあるだろうが……死者は死者、あるべきところで休め」
 ツカサが気を集中すると、掌に集まった水流が水の刃を形成し、それを地縛霊に思い切り投げつける。放たれた水刃の手裏剣は深々と地縛霊に突き刺さり、そこへ椋が炎の魔弾を撃ち込む。刹那、地縛霊は炎に包まれ、業火に焼かれる罪人のごとし怨恨を含んだ悲鳴を上げる。
 そして『死者は行くべきところへ……消えなさい!』という激語と共に転智の放った白燐蟲が地縛霊を蝕み、飛鳥の影から伸びる漆黒の腕が、地縛霊を影爪でズタズタに切り裂いていく……地縛霊は断末魔の苦しみを、もがくことで表現し……末期を向かえた。
「大人しくしておくれよぅ♪ すぐに極楽に連れてってあげますからねぇ♪」
 キャロルの歌う鎮魂歌のような静かで優しい声が、リビングデッドの動きを止め……雪光がリビングデッドの首を刎ねたのは、地縛霊が消えるのと同時だった。

 終わった。

「イルミネーション街道の地縛霊、か……灯りが綺麗なだけに、何だか淋しく思えちまうな」
 駆はここにきて初めて少し表情を歪めた。この木で何があったかは誰もわからない……現世にとどまろうとする理由は同感するかもしれないが、ゴーストになれば問答無用で始末せざるを得ない。
「ふー、どうなるかと思ったぜ」
 雪光はイルミネーションを見上げながら大きな安息を吐く。隣にはキャロル。再び彼女が求める腕組を雪光は自然に受け入れた。真冬の夜の夢……情熱的な思い出は、イルミネーションの光と共に鮮明に脳裏に焼きついた。
「……今度はゴースト退治ではなく、普通にデートで来るとするか」
 帰り際、ツカサの自然に出た言葉に、里緒奈は両手を口にして驚きと嬉しさを表現する。そして、じっと目を見つめ合うと、ツカサは何も言わず里緒奈の髪をわしわしと撫で、そのまま二人は幻想街道の風景へ消えていった。
「ねぇ、写真一枚もらっていい?」
 飛鳥は皐に友達へ見せるための写真を一枚もらった。飛鳥の撮った写真は手ぶれでせっかくのイルミネーションが綺麗に写っていない。
「これなんかどうでしょう?」
 数枚の写真の中で一際目を引くイルミネーションの写真は……偶然の一致か因果か……心霊写真と同じ場所で撮られた写真だった。


マスター:えりあす 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2007/01/14
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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