●『あなたへのプレゼント』
仲間たちがたくさん集まっての賑やかなクリスマスパーティーも楽しかったけど、夜はソラと柾世、ふたりだけの時間。このまま家に帰ったら、せっかくのクリスマスがもう終わってしまう気がして、 「柾世……少しだけ、遠回りして、帰ろうか……」 なんて、ソラはおねだりしてみる。 鞄の中に大事にしまってあるクリスマスプレゼントは、去年は失敗してしまったから、今年こそはと内緒で仕上げたもの。せっかくのクリスマスプレゼントだから、やっぱりふたりきりになってから渡したくて、だけどなかなかタイミングがつかめなくて、こんな時間になってしまった。並んで歩きながら、思わずそわそわとして鞄を確かめてしまう。 柾世とソラが着いたのは、街がミニチュアのように見えるような建物の屋上。イルミネーションのきらめく街の喧騒から遠いこの場所はとても静かで、このどきどきと大きな音で鳴っている心臓の音も柾世に聞こえてしまいそうだ、とソラは思う。 ちょうど舞い出したらしい雪を眺めている柾世の横で、鞄から気付かれないようにそっとプレゼントを取り出して、大好きな人の名前を呼ぶ。 「柾世……」 振り向いた柾世の肩に、プレゼントの群青色をしたマフラーをふわりと掛けて。 「メリー、クリスマス……」 マフラーを引っ張って引き寄せ、ソラから柾世に、不意打ちの口付けをした。柾世の驚いた表情がなんだか可愛くて、おかしくて、愛しい。ぬくもりを確かめるようにマフラーに触れている柾世にぎゅっと抱きつき、彼の胸元に顔をうずめる。一緒にいて、どきどきするのはソラだけじゃないんだな……。ふんわりと抱き返されて柾世のはっきりとした鼓動の音が聞こえたから、なんだか少し、安心した。 「柾世、大好き……」 柾世の腕の中に収まって呟きながら、紫空は想う。 この腕の温もりも、メトロノームみたいな鼓動も全部、ソラのものでありますように。来年のクリスマスも、再来年のクリスマスも、その先もずっと、ずっと――。
| |