●『よくある主従のクリスマス☆』
何せクリスマスですから。マイハニーな坂城さんと室内でラブラブしようと思うのですよ! とはクロリスの談。 (「ラブラブにはセクハラも含めて、ね♪」) クロリスと祥は主従関係であり恋人同士。でもって男の子同士だった。 しかしどちらも女役はやりたくないと上下争いが絶えない。 とりあえずクリスマス料理を祥に作らせて、クロリスはその姿を見学している。 (「蝙蝠で良いならこの場で捌くのに…なかなか腕の見せ所がないなぁ」) なんだか猟奇的な想像をしながら、時々食器を運ぶ手伝いなぞしてみる。 それでもやっぱり、暇だった。 祥の方は良心的なもので、 (「好きとか甘い言葉とか口が裂けても言わないが、まぁ、こういう気になる相手が横に居るクリスマスも悪くはないな」) とか、ちょっといい気分で腕を振るう。 「あーそうだ、なんかリクエストあるか? クリスマスらしい料理とか」 「すき焼き」 「すき焼き!?」 和? 洋じゃなく和!? 既に作ってしまったブッシュ・ド・ノエルに蝙蝠型のチョコを乗せながら、すき焼きの材料揃ってたかな……と考える。 とりあえず何とかなるか、と最初に豆腐を手に取って、いざ包丁を入れんとしたその時! 「!!」 さわさわ。 気付かない間にクロリスが背後から接近していたのだ。それだけならまだしも、祥の身体ごしにつまみ食いなんかして。せっかく綺麗にクリーム塗ったのに! ……じゃなくって、もっと気になることが。 包丁片手に顔を青くして、ぎくしゃくした動きで振り向いて。 「……腰元で動くこの手は何かな?」 「何でしょう」 祥の妹もまた、こうしてじゃれつきながらつまみ食いをすることが多々ある。なのでそれ自体には慣れていたのだけど……。 「……うん、まあまあの味かな♪」 「味はいいから、それは何かな」 さわさわ。 「やぁ、包丁使ってたし、動き辛いかな〜と♪」 狙ってたのか。 「包丁持ってる時になにしやがるかこのお子様はっ! 危ないだろ!」 「指切り落としても再生しそうだし」 「しねーよ!」 今にも包丁を振り上げんばかりの勢いの祥の口元に、ちょん。 「まぁまぁ、坂城さんも食べる?」 クロリスの、クリームがたっぷり付いた指先。 「……っ」 なんとも、出鼻をくじかれた。 「へへー」 クリームを控えめに舐めて顔を赤くする祥に、クロリスは小悪魔のようにペロッと舌を出して笑む。 どうやらこちらの方が、一枚上手。
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