戒名音・瑠奈 & ユウカ・ファルニクス

●『魔法少女マジカル☆ユウカ&ルナ』

「遊園地、楽しいです……」
「うん、楽しいのー!」
 クリスマスイブの夜、遊園地で遊ぶ二人は、これからどのアトラクションに乗ろうかと相談し合っていた。だがその途中、ユウカが風景の端にひっかかるものを捉えた。
「瑠奈、あれを見て……」
 ユウカの指さした先を、瑠奈が見た。
 おそらくは高校生ほどと思われる一組のカップルが、一目でチンピラと分かる男達数人に囲まれているのが見える。周囲の人々は巻き込まれるのがイヤなのか、視線を逸らして素通りだ。
 ユウカが、瑠奈を見た。
「やりますか、瑠奈?」
 瑠奈もユウカを見た。
「もちろんなの! ユウカ、いくよ!」
 そして二人はイグニッションカードを掲げて、同時に叫んだ。
「「イグニッション!」」
 一方、カップルの方はいよいよ危機を迎えていた。
「よぉよぉ、ねーちゃんよぉ、俺達と遊ぼうぜェ、こんなヒョロいのやめてよぉ」
「や、やめてください!」
 男性の方が女性の前に立つが、しかしその顔色は蒼白で、その顔色を見てチンピラ共がまた笑う。
「頑張ってるねぇ、ボク〜? いいから引っ込んでろや!」
 と、夜なのにサングラスをかけたチンピラが、握った拳を男性目掛けて振るおうとした。
 ――そのとき!
「「おまちなさい!」」
 まさにここしかないというタイミングで中央広場に響き渡る、二人の少女の声。
「な、なに、どこだ!」
 チンピラ達が声の主を捜して辺りに視線を走らせる。程なく、サングラスが気付いた。
「あそこだ!」
 指さした先には広場を彩る巨大ツリー。そしてその前に立っている、オレンジ色と空色の二人の少女。
「今日は楽しいクリスマス!」
 ドン!
「恋人さんや家族の楽しいひとときを引き裂こうなんて許せないの!」
 ドン!
「静かに燃えゆく太陽、魔法少女ユウカ!」
 ユウカがポーズを取って、ドドン!
「輝き、道照らす月、魔法少女ルナ!」
 ルナもポーズを取って、ドドン!
「「二人合わせて、魔法少女マジカル☆ユウカ&ルナ、ここに参上!」」
 ドドーン!
 前口上、キメポーズ共に申し分ない登場シーンであった。
「私達は、家族や恋人の幸せを守る!」
「悪者の好きにはさせないの!」
 二人の魔法少女がチンピラ共を指さした。
「なんだぁ、このガキ……」
 と、まるっきり事態についていけていないチンピラ共だったが、そこで瑠奈の王者の風が発動。凶悪なまでの威圧感がチンピラ共のキモを凍てつかせた。
「ひ、ひぃっ! お見それしやしたぁ〜!」
 先程の男性よりもさらビビって、退散するチンピラ共を見送って、ユウカと瑠奈はカップルの方に優しい微笑みを向けた。
「では、良いクリスマスを……」
「いっぱい楽しんでね!」
 そうして二人の魔法少女がクリスマスの平和を守って去った後……、
「……なんだったんだ、今の?」
 やはり事態についていけていなかったカップルが、ポツリと呟いたのだった。



イラストレーター名:上原ひよ