エトナ・ファンタリズム & 水無月・風紗

●『聖夜に誓うは永遠の愛』

 今日は楽しいクリスマス。恋人達にとっては格好のデートの口実だ。
 エトナと風紗も例に漏れず、ふたりで街を周り、クリスマスを楽しんでいた。
 ある店には大きなクリスマスツリー、ある店にはサンタクロース、どこもかしこもクリスマスムード一色で、イルミネーションに彩られた街はまるで現実の世界ではなく、おとぎ話の世界のようだった。
 ドレスアップしたふたりは、いつもとちょっと違う紳士と淑女。
 お揃いの青色で、風紗はタキシード、そしてエトナはドレス姿。
 まだどちらも高校生だけれど、こうしているとなんだかちょっぴり大人になった気分。

 しかし楽しい時間というものは、あっという間に過ぎてしまうもの。いつしか日は落ち、夜の闇が辺りを包む。店の明かりも次々と消えて……そうするとイルミネーションなどはより一層美しさを増すのだけれど、風紗は敢えて星明かりを選んだ。
 人気の無い公園の片隅にエトナを連れ出して。見上げれば一面の星空だった。
「きれい」
 街のネオンも、派手なイルミネーションもきれいだけど。自然の優しい美しさはまた格別だ。月と星だけのほのかな明かりの中、目が慣れてくればお互いの顔もよく見える。
 なんだかすごくベタだけど、そうした明かりの中で見るエトナの方が、人工の明かりよりも、自然の美しさよりも、ずっとずっときれいだよ。……なんて風紗は思いながら、小さな小箱をポケットから取り出した。
「?」
 興味深そうに見つめるエトナの前で小箱を開ける。中身は指輪。紅い宝石の付いたシンプルなものだった。
 まるで魔法を見ているかのようにじっと風紗の動きを見つめるエトナの左手をそっと取って、その薬指に指輪をはめた。
「わ……!?」
「よかった、ぴったりだ」
 エトナはしばらく左手を星明かりにかざしキラキラと光るそれを見つめて、そして、
「ありがとう! すごく嬉しいよ!!」
 ぴょんと風紗に抱きつき、軽くキス。
 その目尻にはほんのりと嬉し涙が浮かんでいて。
「うん、似合ってる」
「えへへ……」
 ちょっぴり照れくさい、背伸びしたふたりの、大人の時間。



イラストレーター名:笹本ユーリ