川原・世寿 & 白雪・咲夜

●『今年もまた二人で……』

 去年は、中だったので……今年は……外、で。

 クリスマスを迎えた銀誓館学園のパーティー会場には大きなクリスマスツリーがそびえるかのように立っていた。
 パーティー会場のどこからでも見えるそのツリーは学生達の手によって、今日という日の為に華やかなで見事な装飾が施されている。
 頂上へと取り付けられた星の飾り、青々とした葉を彩る赤や青、金や銀のボールやモール、雪の結晶を模したプレート、他にも種々様々な飾りが、まるで学生達からのプレゼントであるかのように樹の各所に為されていて、クリスマスに湧きたつ雰囲気を一層盛り上げていた。
 その装飾の最たるものは、頂上から幾重にも分かれて樹の下まで伝っているクリスマスライト、イルミネーションであろう。
 夜の訪れとともに色とりどりの鮮やかな光でツリーを照らし出すその立役者達は……今は出番を待つかのように、ツリーの各所を静かに彩っている。

 そのクリスマスツリーを見上げられる位置に備え付けられたベンチに、ツリーの輝く瞬間を待つ二人……二人での二度目のクリスマスを迎えた、咲夜と世寿の姿はあった。
 クリスマスに湧く学園を背景に二人の時はゆっくりと過ぎていき、やがて……空は次第に色を変え始める。 
 それを追いかける様に、十二月の寒気も強まっていく。
 恋人達の身を震わすほどに。
 寒そうだな……そう思った時、世寿の手は自然と自分のマフラーへと伸びた。
 不思議そうな顔をした咲夜の首に、手に持ったマフラーを一端からそっと巻き付ける。
「……こうする、と、暖かく、ないです、か?」
 ひとつのマフラーを共有し……そう言って満足した次の瞬間、
「これは恋人巻きと言うものですね?」
 さらりとした咲夜の言葉に一瞬きょとんとした後、世寿の頬は暖かいを通り越した。
 不思議な何かが湧きあがってくるようで、自然と頬が熱くなる。
 けれどそれは、咲夜も同じだったのかも知れない。
「……熱いぐらいだな」
 照れた様子でそう口にしながらも、咲夜は世寿の方へと……頭を傾けた。
 熱いというのは事実だが、寒さはもちろんある。
 寒くない筈がないのだ。
 肌を刺すような寒さは事実で……けれど、不思議と暖かくて。
 寒いのか、暑いのか?
 マフラーと一緒にそんな混乱まで共有した二人が、訳が分からなくなってしまいそうになったその時、

 目の前で鮮やかな花々が咲き乱れる様に、クリスマスツリーを飾っていた灯りが一斉に……夜を、見上げる二人を……照らし出した。

 まるでそれを待ちわびでもしていたかの様に……深い藍色に染まった空からゆっくりと、つぎつぎと、白い欠片達が舞い降り始める。
 周囲の景色もゆっくりと、空から降りるものたちの色へと染まっていく。
 吐く息はいっそう白くなり、寒気は強さを増していく。
 けれど、もう、その寒気が……二人を凍えさせる事は……なかった。



イラストレーター名:つづる