●『永遠の誓いをキスに込めて』
街はクリスマス一色で、イルミネーションが瞬きクリスマスソングが途切れることなく鳴り響いていた。 聖夜のデートを楽しむリンドウと月凪は、足取りも軽くクリスマスムードに浸って楽しげにしている。 町中にはイルミネーションが施された木々がたくさんあったが、その中でも巨大なクリスマスツリーが特に目を引いた。 その光り輝くツリーの元で急にリンドウが足を止める。 大きなツリーに目を奪われ、美しさに月凪は感嘆のため息をこぼす。 はしゃぐ月凪とは対照的にリンドウが光を浴びながら静かに佇んで、おもむろに目を閉じた。 月凪はきょとんとして、不思議そうにリンドウの顔を見つめた。 恋人のいきなりの行動が理解できず、月凪はとりあえず先に歩を進めようと口を開きかける。 「……なぎ、左手出してみて?」 リンドウが月凪の声に被さるように、優しい口調で言う。 目を開き、微笑むリンドウ。 月凪は訳も分からないまま、真っ直ぐリンドウと向かい合った。 少し首をかしげながら、自分の左手を意識してしまい右手で軽くさする。 「ん、なんで……?」 そう問い返しながらも、言われるがままに左手をゆっくりと持ち上げリンドウの顔の近くで動きを止めた。 今、リンドウの目の前には月凪の左手がある。 その左手の薬指には、将来を誓い合った指輪が輝いていた。 まるで無限の幸福を暗示するように、きらきらと光る指輪を見つめるリンドウ。 「……♪」 「……!!」 さっと月凪の左手を取り、指輪に優しく口づけをした。 一瞬の出来事に、体を強張らせ驚きを隠せない月凪。 「ちょ……っ」 人前ということもあり月凪は顔を赤らめるも、嬉しい気持ちが前に出て手を離すことができない。 このまま永久に、時間が止まるような感覚に包まれる。 静かに指輪から唇を離し顔を上げ、リンドウは月凪の左手を離さず瞳を見つめた。 リンドウは短い言葉の中に、しっかりとした意思を込めて月凪に囁く。 「……愛してるよ」
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