●『クリスマスチョコパーティー』
部屋には、むせかえるような甘い香りが充満していた。 こたつの上には、色とりどりの果物やマシュマロ、ナッツ等々──。 そして鍋の中身はチョコレートが揺らめいている。チョコフォンデュである。 「星を見ながら鍋をつつく。貴重な経験だよなぁ。特に美琴と一緒だと♪」 「貴也君と一緒に、こたつで美味しい物食べながら、お星様が見られるのってすっごく幸せ♪」 貴也と美琴はラブラブモード全開で幸せそうに微笑み合った。 美琴は串にいちごを刺し、チョコレートの海で泳がす。 くるりと回して素早く引き上げ、しずくが垂れないよう注意する。 見事な手さばきで、貴也の口元まで運ぶと優しく囁いた。 「はい、あ〜ん♪」 「あ〜ん♪」 貴也もつられて、同じ言葉を返しながら口を開ける。 もぐもぐと食べる貴也を見ているだけで、美琴は嬉しい。 美琴は何かを思い出したように急に立ち上がろうとした。 貴也はそれを手で制して、再び座らせる。 「紅茶は後でいいよ。美琴も、はい、あ〜ん♪」 小振りのシューアイスでお返し。 「ありがとう♪」 くすぐったそうに美琴は軽く笑って、貴也からチョコレートを付けたシューアイスを食べる。 口いっぱいに広がる冷たいアイスと甘いチョコレート。 女の子からの好意には三倍返しが基本。 ただし、カロリーを気にしなければならないような事態は避けるため、ある程度加減が必要である。 あれこれ考えて、貴也は次の具材を慎重に選ぶ。 気が付くと、貴也の目の前に温かな紅茶が注がれていた。 驚いて顔をあげると、美琴がにっこりと笑顔を見せる。 「次は何を食べようか?」 「えーと……」 目移りしながらも、次から次へと様々な具材にチョコレートを絡ませて行く。 二人がふと窓の外を見上げると、空には宝石を散りばめたような眩いばかりの星たちがきらめいていた。 あまりの美しさに小さく歓声をあげ、手を握り合う。
こうして、クリスマスの夜は甘く甘く更けていった──。
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