●『永遠の祈りと小さな誓い』
恋人になってからまだ1ヶ月と経っていない淡毅と樹生は、初々しくも幸せそうな雰囲気に包まれていた。 窓の外でしんしんと降る雪は周囲の音を消し、2人きりの小さな家を静けさで包んでいる。 室内を照らすのは、赤々と燃える暖炉と、わずかな空気の動きにも揺らぐろうそくのやわらかな光。 ホームメイド感あふれる、ささいな、けれど穏やかな時間を過ごし。 「み……ホワイトクリスマスだなんて……すてきだね」 樹生はうっとりと嘆息を吐きながら、窓の外を眺めていた。 「……だな」 その肩に腕をまわしてそっと引き寄せる淡毅。短く紡がれた言葉は、照れからだろうか。 響くのは、薪のはぜる音。 二人は手を取り合うと、赤いリボンとガラスボールで飾りつけられたクリスマスツリーのそばへ向かった。そして、指をからめて強く手をつなぎ合う。 ツリーには金色のヤドリギがひと枝吊るされていて。 「ねえくろたん、知ってる? ヤドリギの下でキスをしたカップルは、末永く幸せになれるんだよ?」 甘えるような口調で、樹生は淡毅にヤドリギにまつわるジンクスを話した。 小さな枝に込められた、大きく強い想い。人々がヤドリギに託してきた願い。 それらが目に見えるようで、二人は楽しげにくすくすと笑いあった。 「この幸せが、永く続きますように」 「……ん」 ふわりとやわらかい微笑みを浮かべながら樹生は祈りを口にし、淡毅も応えるようにこくりと頷く。 依存していることを自覚している樹生。無意識のうちに甘えている淡毅。 お互いに支えあい、補いながら、これから先へ続く月日を過ごしていこう。 口にせずとも、心に抱いている想いは同じはず。 「私、くろたんに出逢えて幸せだよ」 「ああ、俺も樹生と出逢えて幸せだ」 額を寄せ合い、見つめあう。そして、距離はゼロになった。 そっと重ねた唇に乗せたのは、寄り添い続けるという誓い。 幸せに満ちた二人を見守るのは、炎の淡い光に照らされて光る、金色のヤドリギであった。
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